宮廷追放された医師の薬屋ハーレムライフ~宮廷で女神の祝福を授かった医者だったが、医療ミスで田舎に追放されたので薬屋として生きていきます~

笹塚シノン

文字の大きさ
上 下
15 / 35

15 繁盛する薬屋

しおりを挟む
シャルロッテの協力の元、俺達の薬屋は瞬く間に全世界の国々に知られる事となった。

「シャルロッテ様、また数多くの発注が入りました!」

シャルロッテは他国に派遣していた薬屋の広報をしている者から注文を受け取る。
発注書を見るとざっと数千個単位の数字が記載されている。

「ありがとうございます! アーノルド、また大量に発注を頂いたみたいですよ」
「……すごいな。いや、本当にシャルロッテが用意してくれた機械のお陰で助かっているよ」

シャルロッテが用意してくれたポーション製造機の事を思い出しながら俺は答える。

(……もし前みたいに一つひとつポーションを作っていたら、数千個なんてそれだけで日が暮れてしまう)

シャルロッテが用意してくれた機械は単純で、俺がやる事は大量のタンクに入っている水に右手の力を注ぎこむだけだ。

(……後は機械で全自動で小さなビンに詰めていってくれるから本当に楽になったな)

おまけに俺の右手の力が入っているってだけで、ほぼ水を売っているようなものだ。
原価も小さなビンぐらいで必然的に売り上げも瞬く間に爆増していった。



そんな中、俺達は今日も押し寄せる多くのお客さんの対応に追われていた。
当然ながら接客が必要でシャルロッテやラミリアは接客の為、店内を忙しく動き回っている。

「すみませ~ん」
「いらっしゃいまセ!」

薬屋に入って来たお客さんにすぐラミリアが駆け寄る。
手慣れたもので、すっかり薬屋衣装も様になっているラミリアはとても元気な声で接客を行っている。

「……でも、本当に一国の君主であるシャルロッテが接客業ってのもさすがに悪い気がするんだが……もっと他に仕事があっただろう?」
「いえ、私が望んで行っている事ですので、アーノルドは気にしないでください」

シャルロッテはニコっと微笑みを浮かべる。

「……そっか? いや、本当に助かっているよ。それじゃ俺はちょっと裏に行ってくるから店を頼む」
「はい! ここは任せてください」

俺はシャルロッテに店を任せて裏に移動する。
裏ではオイドが売り上げを管理しており、大量の硬貨の整理を行っていた。

「オイド、お疲れ。……相変わらず大変そうだな」
「ふぉっふぉっふぉ、嬉しい悲鳴が止まらんわい。銀貨のままだと多すぎじゃからの、金貨に両替をして保管しておるが……それでももう金庫がいっぱいになってきておる」

オイドは大量にある金貨とそれを保管している金庫を見ながら答える。
ちなみに銀貨100枚で金貨1枚に取り換える事ができる。

「……だな。金貨がこんだけあったら何に使っていいか分からないぐらいだ」

俺は大量に余る金貨の使い道について考えるがまったく思いつかない。
そんな事を考えている時――

「アーノルド! 村長さんがお話があるようです」

――接客をしていたシャルロッテから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「あぁ、今行く! ……呼ばれたようだ。それじゃ引き続き頼むよ。オイド」
「ふぉっふぉっふぉ、任せるのじゃ!」

俺はオイドと別れるとシャルロッテ達がいる売り場に戻る。

「おまたせ。シャルロッテ」
「いえいえ、それでは私は他のお客さんの接客に戻りますね」
「頼むな」

俺は接客に戻ったシャルロッテを横目に来訪者である村長に視線を移す。

「……それで、俺に何か用ですか?」
「繁盛しているな。何、今日はこのネルド村の村長をアーノルドにお願いしようと思ってきたのだ」
「…………は? ……村長? なんで俺が」
「このネルド村がここまで栄えたのもアーノルドたちの尽力によるものが大きいからだよ。これからもこのネルド村の復興をアーノルドにお願いできないだろうか?」
「いやぁ……どうだろう」
(……正直、そんな糞面倒くさい事したくないんだが)

俺が断る気満々でいると――

「村の大勢も私の意見に賛同しているんだ。どうか、お願いできないだろうか?」

――薬屋の外で待機していた村人も村長の合図で薬屋に入ってくる。

「アーノルドさん! 村長になるの、私も賛成だわ!」
「先生が村長になってくれるなんて、とても安心できるわ!」
「お願いだ! 俺達の村の村長になってくれないか!」
(待て待て、だから一度に大勢で話しかけてくるなって!)

俺は薬屋に押し寄せてきた村人に圧倒されてしまう。

「えっと~…………すみません、ちょっと考えさせてもらってもいいですか? 返事は後ほどさせて頂きます」
「……わかった。嬉しい返答を期待しているぞ」

村長はそう言うと、率いていた村人と共に薬屋を後にする。

(……ふぅ、面倒なことになったな)

俺は忙しく働くシャルロッテ達を横目にそんな事を思うのだった。



その日の夜、村長になる件を皆に相談する。

「私は賛成です! アーノルドだったらネルド村を更に良い道へと導いてくれるでしょう」

シャルロッテは両手を合わせて俺が村長になる事に賛成のようだ。

「いや、簡単に言うけど――」
「――私も! アーノルドが村長、とても良いと思ウ!!」

俺の言葉を遮る勢いでラミリアも賛同してくる。

「はぁ……なんでそう思うんだよ。……なぁ、オイド」

俺はため息交じりにオイドに視線を向ける。

「仕方ないじゃろう、ネルド村にこれ程の売り上げをたたき出すポーションを生み出したのだからのぉ」
「……俺もこんなに売れるとは思ってもみなかったよ」
「じゃから、村長に選ばれるのも必然な事じゃ、諦めて引き受けてはどうかの?」
「う~ん……」

ラミリアとシャルロッテもとてもキラキラした目をして俺を見つめてくる。

(……そんな目で見られると断るに断れないんだが)
「……はぁ、わかったよ。やるよ、ネルド村の村長。……でも、まったく勝手が分からないからシャルロッテ、いろいろ教えてくれるか?」
「もちろんです、アーノルド!」

笑顔で承諾するシャルロッテ。
シャルロッテは薬屋開業から今日まで持てるすべての力を使って薬屋のポーションを全世界に広める為に尽力してくれていた。

「でも、本当によかったのか? ネルド村に移住してまで薬屋を手伝ってくれるなんて……ありがたいけど」
「いいのです。お父様もアーノルドのお陰で前以上に元気になりましたし、王位継承を行って頂きましたが、またしばらくはお父様が国に戻り、業務を行ってくれるという話になっております」

ギルバートはあれからすぐに目を覚まし、シャルロッテの申し出により国に戻り、シャルロッテと護衛・広報部隊はネルド村に残し、薬屋に協力してくれる運びとなったのだ。

「わかったよ。……それじゃ、明日にでも村長に俺が村長になる旨を伝えてくるよ」

こうして、何故か知らんが俺がネルド村の村長に抜擢ばってきされたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...