65 / 108
閑話:【本能寺の変】陰謀論
04
しおりを挟む【本能寺の変】の【謎】について、私は色々と思案を巡らせましたが……結局は定説に辿り着いてしまいます。要は謀反の動機が【魔が差した】とする説ですね。他にも朝廷や徳川家康、羽柴秀吉が黒幕という説もあるようですが……どれも決め手に欠けているように思えます。
うーん。わからないですね。コムさんの方を見てみますと……そちらも【謎】が解けたようには見えません。【陰謀論】や【オカルト】から考察しているであろうコムさんが苦戦するくらいなんです。真面目で誠実で清廉潔白かつ容姿端麗な私が考えたところで、解けなくても仕方ありませんよね。ここは適当に……突飛な意見でも出して、お茶を濁すことにでもしましょう。
「ふふ、わかりましたよ。【本能寺の変】の【謎】を解く……その答えとやらを」
私は名探偵気取りで、そう発しました。そして決めポーズとして、右手の人差し指をデルピュネーさんに突きつけて言うのです。
「犯行は……人の手によるものではなかった! そうですよね……デルピュネーさん、瀬戸さん」
自分で言っておいて何ですけど、じゃあ誰がやったんだと言われたら……どうしましょう。宇宙人説で逃げ切るしかありません。
「な……なんだってー!」
瀬戸さんは私のテンションに乗ってくれたのか、大きなアクションと共に驚嘆してくれました。それにしても、乗ってくれたにしては迫真の驚き方ですね。これは、ひょっとして……
「なぜ……なぜ、わかったのじゃ!?」
えっと、本意ではありませんでしたが……私、正解を引いてしまったようです。
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
山勘で正解を引き当てた私は……気まずい思いと戦っています。鮫と戦った朝比奈義秀、織田信長を討った明智光秀以上に苦しい戦いを強いられているのです。なぜかと言えば、なぜ正解したのか……それが自分でもわからないのです。助けてコムさん。私はコムさんに助力を求める視線を送りました。するとコムさんは、その視線からそっと眼を逸したのです。
「正解されて、悔しいのじゃ~」
「まさか……知っているとは思いませんでした」
私の気持ちも知らないまま、デルピュネーさんと瀬戸さんは私を称賛してくれます。そもそも『知っているとは思いませんでした』と言われた私ですら、知っているとは思いませんでしたからね。それは驚くでしょう。それどころか……私が一番驚いたまであります。さて、それで……この場をどう切り抜けましょうか。とりあえずは、わかっている素振りで……この場を乗り切るとしますか。
「ヒントはアタイって言ってたのが……決め手ですかね」
私は、さも知った顔で嘯きます。歴代の名探偵の素振りを思い返しながら、それを演じる努力も忘れません。そうだ、眼鏡を具現化しましょう。それをクイクイやっていれば……はい、それっぽい!
「あちゃ~。ヒントを出しすぎてしまったのじゃ~」
「ちょっと、調子に乗りすぎてしまいましたね」
お願いしますから早く解答を言ってくれませんか。知ったかぶりしているのは精神的に辛いんです。しかし、そんな私の願いは叶いません。デルピュネーさんと瀬戸さんは反省会を行っています。どこの語り口が悪かったのかとか、どこでバレてしまったのかを……一つ一つ確認しています。
本当にごめんなさい。どこも悪くなければ、どこででもバレていませんでした。ただ、私の山勘が悪かったんです。
そんな私の心中には【順逆無二門 大道徹心源 五十五年夢 覚来帰一元】が去来するのでした。
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
「バレてしまった以上はしょうがありませんね。その通り……解答は【ヒト型爬虫類陰謀論】です」
瀬戸さんはため息一つつくと、消沈したまま……そう言いました。もう一度言いますね。消沈したまま……【ヒト型爬虫類陰謀論】と、そう言ったんです。【ヒト型爬虫類陰謀論】という言葉を聞いたのは……私の人生でも始めてでしょう。いや、もう死んでいるので人生というのは適切ではありませんね……人生・死後を含めても始めてです。
「つまりですね……朝比奈義秀も明智光秀も【ヒト型爬虫類】こと【レプティリアン・ヒューマノイド】だったんです。そう考えれば……異常な怪力や、鮫を三匹も捕まえてくる事にも納得できますよね」
できません。
「光秀の前半生がわからないのも、それが原因なのじゃ。キンカン頭であったのも納得いくじゃろ? なにしろ爬虫類なのじゃからな」
いきません。
「そしてですね。【順逆無二門 大道徹心源 五十五年夢 覚来帰一元】からは……寿命が五十五年と読み取る事ができますよね」
まあ……それくらいなら許容しましょう。
「ここで豆知識なのじゃが、コモドオオトカゲの寿命は五十年と言われており……これこそが光秀が【ヒト型爬虫類】である証左なのじゃ! さらにはコモドオオトカゲは腐肉を喰らう。これこそ安土城で腐った料理を出した理由なのじゃ~。要点をまとめるとじゃな、つまり……光秀は【ヒト型爬虫類コモドオオトカゲ科】であったと導き出されるのじゃ~」
許容して大損しましたね。
「じゃ……お客様をお送りしますね」
私はお客様の帰宅を外まで送ることにしました。はい、本人達にその意思が無いのは知っていますけど……これは強行しなければなりません。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ。ひょっとすると……今こそが人類の危機かもしれんのじゃ」
「待って……もっと話を聞いてくださいってば。ええと【コモドオオトカゲ】を【アナグラム】するとですね……」
ちょっと気になったので、デルピュネーさんと瀬戸さんを扉へと強制連行するのは一時停止しました。そして続きを促します。
「【コモドオオトカゲ】は【コドモオオトカゲ】になるんです。これは子孫にも【ヒト型爬虫類】が潜んでいるのを意味していて……とにかく地球が危ないんですよ……あ、ちょっと待って、押さないでください」
いやいや……本日はためになる話をありがとうございました。私は勢いよく扉を開くと、両名を押し出し……勢いよく扉を閉めます。
「他にも【コモドオオトカゲ】は【トドモオコゲガオ】になるのじゃ~。これこそがトドやオットセイが顔が黒くなった理由なのじゃ~」
扉を挟んで、まだ何か言っています。いけませんね、今度からこの扉は防音にしましょう。そして私はソファーに戻るのです。コムさんの瞳は……まだ輝いていました。これには私も、トドのような表情を浮かべるのでした。
休題 『ヒト型爬虫類陰謀論』 了
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
無惨・悲惨・凄惨・陰惨……そして杜撰
蓮實長治
ミステリー
残虐な殺人事件の裁判の筈だったが……例によって何かがおかしい……。
そして、問われるのは刑事裁判における「疑わしきは被告人に有利に」とは何か?←そうかな?
なお、R15指定は、暴力犯罪をギャグとして描いている場面が有る為です。性的表現は期待しないで下さい。
(また、殺人などの暴力犯罪をギャグとして描写する事を不快に思われる方は御注意下さい。)
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」に同じモノを投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
復讐の旋律
北川 悠
ミステリー
昨年、特別賞を頂きました【嗜食】は現在、非公開とさせていただいておりますが、改稿を加え、近いうち再搭載させていただきますので、よろしくお願いします。
復讐の旋律 あらすじ
田代香苗の目の前で、彼女の元恋人で無職のチンピラ、入谷健吾が無残に殺されるという事件が起きる。犯人からの通報によって田代は保護され、警察病院に入院した。
県警本部の北川警部が率いるチームが、その事件を担当するが、圧力がかかって捜査本部は解散。そんな時、川島という医師が、田代香苗の元同級生である三枝京子を連れて、面会にやってくる。
事件に進展がないまま、時が過ぎていくが、ある暴力団組長からホワイト興産という、謎の団体の噂を聞く。犯人は誰なのか? ホワイト興産とははたして何者なのか?
まあ、なんというか古典的な復讐ミステリーです……
よかったら読んでみてください。
完結【第7回ホラー・ミステリー小説大賞サスペンス応募作】宝石の行方
Mr.後困る
ミステリー
ルイ王国のラズ公爵家の令嬢リーゼはルイ王国王太子のマーカスと婚約破棄を行った。
マーカスの不貞が原因でリーゼの長年の妃教育を加味した慰謝料は
広大な領地、 莫大な賠償金、 リーゼの隣国マーズ王国の王子との婚姻許可と多岐に渡った。
リーゼは王都のタウンハウスを引き払っている時
新しい婚約者であるマーズ王国王子のメイズがやって来た。
『マーカスが腹いせで嫌がらせに来るだろう』
そう判断したメイズは多くの護衛を引き連れて来た。
案の定、 マーカスが兵を引き連れてやって来た、 何故か顔を包帯で隠して。
そして嫌がらせに来たのではなく、 シー子爵令嬢の誘拐犯としての逮捕だった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる