1,135 / 1,179
1134.シュリくんの心配
しおりを挟む
たしかに声をかけたきっかけは、ギュームさんのお世話の仕方がそのテゴさんって人に似てるからだったのかもしれない。
でもそれだけじゃなかったんだね。
ちゃんとシュリくんはギュームさんのお世話の仕方を見て、タユさんからも色んな事を聞いて、この人なら大丈夫って認めたから声をかけたんだ。
まあそうだよね。他の人の前では話さないって事を、あれだけ徹底できるシュリくんだから。いくら気になる事があったからって、何も考えずにほいほい声をかけたりはしないと思う。
ちなみにギュームさんは、シュリくんから認められたというのがよっぽど嬉しかったのか、ずっとニコニコと満面の笑みを浮かべている。
馬の話になると止まらなくなるぐらい、本当に馬が大好きな人なんだもんな。
幸せそうで何よりですと微笑ましく思いながら、俺はそっとシュリくんに向かって尋ねた。
「ね、シュリくん、お腹空いてない?俺の魔力食べる?もし食べるならすぐに用意するけど…」
ラスさんが作ってくれたあの美味しいお外ごはんを食べてる時から、気になってたんだよね。だってシュリくんはまだ魔力しか食べられない上に、今はとりあえず俺の魔力だけが食べられるもの認定されてるんだから。
それなのに寝坊した上に、お昼ごはんまで食べちゃったからさ。シュリくんはお腹空いてないかな、大丈夫かなって気になってたんだ。
だから食後すぐに、厩舎に行きたいって話になったんだ。まあキースくんはシュリくんが元気か気になるし、ただ会いたいからって言ってたけど。
ただ会いたいからって言い方が、友達って感じですごく良いな。
「んーとねー…まだ、おなかがすいてるってほどじゃないかな。あとすうじつはがまんできるよ。でももしアキトがいいなら…ちょっとほしいかなってかんじなんだけど…」
つっかえながらも控え目にそう自分の希望を口にしたシュリくんは、何故かそこで俺じゃなくてハルに向かって口を開いた。
「でもアキトはつかれてないのかな?」
唐突に尋ねられたハルはすこしだけ驚いた顔をしたけれど、ぐっすりと眠ったし今は疲れてはいないと思うよとそう答えた。
戸惑いつつもすぐに答えられるハルって、何気にすごいよね。
「ね、シュリくん、今のって、なんで俺じゃなくてハルに聞いたの?」
不思議に思ってそう尋ねてみれば、シュリくんは、んーと悩みながらも答えてくれた。
「アキトはねーもしまりょくがなくなりそうなときでも、ぼくのためならとか…むりしそうだから?」
「え、そんな事ないよ。ねぇ?」
否定してくれると思って視線を向けたんだけど、ハルとキースくんは何故か二人揃って顔を見合わせた。
え、と思っていると、二人揃ってコクリと頷いた。
「いや、アキトはやるかも」
「うん、アキトくんはやりそう」
さすがに魔力枯渇の怖さは散々ハルから聞かされてるし、経験した事もあるんだからそんなことしないよと言ったけど、二人はいやいやと首を振るばかりだ。
まあ、シュリくんがお腹を空かせて倒れそうとかだったら、多少の無茶はするかもしれないけどさ。それでも魔力枯渇まではいかないと思うんだ。
「さっきの質問はそういう意味だったんだな。シュリ、アキトは魔力量がかなり多いんだ。だから、シュリが食べる量ぐらいなら、毎日の回復量で自然と補えるよ」
魔法を使った時でも常に余力があるんだと、ハルはシュリくんの目を見ながらはっきりとそう伝えた。
「そっかーよかった。アキトのつがいのハルがそういうなら、ほんとのことだね」
負担にならないなら魔力を食べさせて欲しいなーと、シュリくんは改めて可愛いおねだりをしてくれた。
そんなのいくらでも魔力を練るけど…そっか、つがいか。あまり使い慣れない表現に戸惑いつつも、なんとなく嬉しいのは何でだろう。
「…つがい…」
ぽつりと呟いたハルの声が聞こえてくる。あ、やっぱりハルも気になったよね。
「あれ、うまでいうつがいが、にんげんのはんりょでしょう?」
「あー…うん、合ってるな」
そうかシュリから見たら俺はアキトのつがいなんだなと、ハルは嬉しそうにふわりと微笑んだ。その笑顔があまりにも綺麗すぎて、直視できなかったよ。
慌てた俺はシュリくんに明るく声をかけた。
「よし、それじゃあ早速魔力練るよー」
「おねがいしまーす」
「まかせて」
頬が赤いのはきっとハルにも気づかれてるけど、指摘はされなかった。
でもそれだけじゃなかったんだね。
ちゃんとシュリくんはギュームさんのお世話の仕方を見て、タユさんからも色んな事を聞いて、この人なら大丈夫って認めたから声をかけたんだ。
まあそうだよね。他の人の前では話さないって事を、あれだけ徹底できるシュリくんだから。いくら気になる事があったからって、何も考えずにほいほい声をかけたりはしないと思う。
ちなみにギュームさんは、シュリくんから認められたというのがよっぽど嬉しかったのか、ずっとニコニコと満面の笑みを浮かべている。
馬の話になると止まらなくなるぐらい、本当に馬が大好きな人なんだもんな。
幸せそうで何よりですと微笑ましく思いながら、俺はそっとシュリくんに向かって尋ねた。
「ね、シュリくん、お腹空いてない?俺の魔力食べる?もし食べるならすぐに用意するけど…」
ラスさんが作ってくれたあの美味しいお外ごはんを食べてる時から、気になってたんだよね。だってシュリくんはまだ魔力しか食べられない上に、今はとりあえず俺の魔力だけが食べられるもの認定されてるんだから。
それなのに寝坊した上に、お昼ごはんまで食べちゃったからさ。シュリくんはお腹空いてないかな、大丈夫かなって気になってたんだ。
だから食後すぐに、厩舎に行きたいって話になったんだ。まあキースくんはシュリくんが元気か気になるし、ただ会いたいからって言ってたけど。
ただ会いたいからって言い方が、友達って感じですごく良いな。
「んーとねー…まだ、おなかがすいてるってほどじゃないかな。あとすうじつはがまんできるよ。でももしアキトがいいなら…ちょっとほしいかなってかんじなんだけど…」
つっかえながらも控え目にそう自分の希望を口にしたシュリくんは、何故かそこで俺じゃなくてハルに向かって口を開いた。
「でもアキトはつかれてないのかな?」
唐突に尋ねられたハルはすこしだけ驚いた顔をしたけれど、ぐっすりと眠ったし今は疲れてはいないと思うよとそう答えた。
戸惑いつつもすぐに答えられるハルって、何気にすごいよね。
「ね、シュリくん、今のって、なんで俺じゃなくてハルに聞いたの?」
不思議に思ってそう尋ねてみれば、シュリくんは、んーと悩みながらも答えてくれた。
「アキトはねーもしまりょくがなくなりそうなときでも、ぼくのためならとか…むりしそうだから?」
「え、そんな事ないよ。ねぇ?」
否定してくれると思って視線を向けたんだけど、ハルとキースくんは何故か二人揃って顔を見合わせた。
え、と思っていると、二人揃ってコクリと頷いた。
「いや、アキトはやるかも」
「うん、アキトくんはやりそう」
さすがに魔力枯渇の怖さは散々ハルから聞かされてるし、経験した事もあるんだからそんなことしないよと言ったけど、二人はいやいやと首を振るばかりだ。
まあ、シュリくんがお腹を空かせて倒れそうとかだったら、多少の無茶はするかもしれないけどさ。それでも魔力枯渇まではいかないと思うんだ。
「さっきの質問はそういう意味だったんだな。シュリ、アキトは魔力量がかなり多いんだ。だから、シュリが食べる量ぐらいなら、毎日の回復量で自然と補えるよ」
魔法を使った時でも常に余力があるんだと、ハルはシュリくんの目を見ながらはっきりとそう伝えた。
「そっかーよかった。アキトのつがいのハルがそういうなら、ほんとのことだね」
負担にならないなら魔力を食べさせて欲しいなーと、シュリくんは改めて可愛いおねだりをしてくれた。
そんなのいくらでも魔力を練るけど…そっか、つがいか。あまり使い慣れない表現に戸惑いつつも、なんとなく嬉しいのは何でだろう。
「…つがい…」
ぽつりと呟いたハルの声が聞こえてくる。あ、やっぱりハルも気になったよね。
「あれ、うまでいうつがいが、にんげんのはんりょでしょう?」
「あー…うん、合ってるな」
そうかシュリから見たら俺はアキトのつがいなんだなと、ハルは嬉しそうにふわりと微笑んだ。その笑顔があまりにも綺麗すぎて、直視できなかったよ。
慌てた俺はシュリくんに明るく声をかけた。
「よし、それじゃあ早速魔力練るよー」
「おねがいしまーす」
「まかせて」
頬が赤いのはきっとハルにも気づかれてるけど、指摘はされなかった。
580
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる