生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1127.気になる料理

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 テーブルの上には本当にたくさんの料理が並んでいるけど、中でも特に俺が気になったのは一口サイズの小さなパンに色んな具材が挟んであるやつだ。

 普通に切り分けたパンを使ってるサンドイッチとかなら、もちろんこっちの世界でも売られているし、俺も買って食べた事があるよ。

 どの街でも特に屋台とかで主に売られてるんだけど、安価で手軽に食べられるからか特に冒険者や旅人にすっごく人気なんだ。

 でもこれはそういうサンドイッチとかとは、全然違ってたんだよね。

 小さなサイズにわざわざ焼き上げたパンを上下に半分にして、その間にラスさんこだわりの手が込んだ料理が具材として挟んであるんだ。

 その見た目は皆には珍しいものだなと言われていたけど、俺からすれば一口で食べられるプチサイズのハンバーガーに見える。

 まあ、さすがに中の具材にハンバーグは挟まれてなかったけどね。

 でもポテトサラダっぽいのとか、分厚く切って焼いたお肉とか、野菜をじっくり焼いてちょっと濃いめに味付けしたのとか、どれも本当に美味しかった。

「アキトはそれがすごく気に入ったんだね」

 どうせなら全部の味を食べてみたいなと何度も手を伸ばしていたら、笑顔のハルにそう声をかけられた。おれは照れながらも、こくりと頷いた。

「うん、味もすっごく美味しいんだけど、この見た目もね…ちょっと懐かしくて」
「え、そうなの?」
「うん、故郷でね、こういう食べ物があったんだ。まあ挟んでる具材は全然違うし、もっと大きかったんだけどね」

 懐かしいなと思い出しながらハルにそう話していると、不意にジルさんから声をかけられた。

「アキトさん」
「はい!どうかしましたか?」

 あまりに真剣な表情に、俺は慌てて問いかける。

「…もしアキトさんさえよろしければ…ですが、ラスにこういう具材が挟んであったとかもっと大きなパンだったとかそういう情報を伝えてみるというのは…どうでしょう?」
「え…っ?でも、迷惑じゃないですか?」
「迷惑では無いですよ。アキトさんは懐かしい料理が食べられて嬉しいでしょうし、ラスもきっと新しい料理の事が知れて嬉しいでしょうから」

 もちろんアキトさんの気持ち次第ですがと、ジルさんは優しく笑ってそう続けた。

 思わずハルの方をちらりと見れば、ハルもうんうんと頷いて口を開いた。

「ラスならきっと大喜びで、張り切って作ろうとするだろうな。まあアキトの気が向いたら程度で良いけどな」

 ラスだけじゃなくレーブンとローガンに頼むという手もあるぞと、ハルはさらりと続けた。

「そっか…俺はそこまでの料理の腕が無いから再現とかはできないけど、ラスさんとかレーブンさん、ローガンさんなら作れるかもしれないんだ」
「ああ、むしろ頼られたと喜ぶだろうな」
「うん、今度機会があれば話してみようかな」

 俺はワクワクしながらジルさんに向かって笑顔をみせた。

「ジルさん、良い事を教えてくれてありがとうございます」
「いえ、余計な事で無かったなら良かったです」

 ニコニコと笑い合っていると、キースくんがそっと口を開いた。

「アキトくん…」
「ん?」
「その再現したやつ、うまくできたら僕も食べたい…なー」

 駄目かな?と言いたげにチラチラとこちらを見るキースくんの姿に、俺は即座に答えた。

「もちろん!まだ作ってくれるかも分からないけど、でも完成した時には一緒に食べてくれたら俺も嬉しいよ!」
「良かったー約束だよ」
「うん、約束しよ」

 へへーと笑い合った俺達は、今度は揃ってデザートへと手を伸ばした。



 四人で思いっきり食事を楽しんだ後は、俺とハル、キースくんの三人で厩舎へと向かう事になった。

 俺とキースくんが、シュリくんがどうしてるかが気になるって言ったからなんだけどね。

 ちなみにジルさんも来ないかなと思って誘ってはみたんだけど、そろそろウィルが起きてくる頃だと思うのでと言って帰っていったよ。

 あまりにも優しい笑顔で愛おしそうに言ってたから、思わずそっと視線を反らしちゃったよ。

 ウィリアムさんって本当にジルさんにすっごく愛されてるんだなーとか思っちゃった。
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