1,127 / 1,179
1126.ハーレの料理
しおりを挟む
ウィルさんの生野菜嫌いについて話していると、気づけばキースくんが何故か静かになっていた。一言も話さないキースくんが気になって視線を向ければ、キースくんは目の前にある木の実をたっぷり使ったサラダを、ひたすらまじまじと観察していた。
一体どうしたんだろう?と思わず三人で顔を見合わせてしまったけど、キースくんは何も言わずにもう一度サラダを口に運んだ。
二口目もモグモグとじっくり味わってから、キースくんは今度は不思議そうに首を傾げた。
「でも、このサラダ…こんなに美味しいのにね?」
なんでだろう?と言いたげなキースくんに、俺達は揃って笑みを浮かべた。
「ええ、私たちには美味しいサラダですよね」
「ああ、いつかこの良さがウィル兄にも分かるかもしれないぞ」
「そうかな?そうだと良いなー」
もしウィリアムさんがこのニコニコ笑顔で期待の眼差しをしたキースくんを見たら、頑張って食べようとするかもしれない。そう思ってしまうぐらい、キースくんは嬉しそうな笑顔だったよ。
まあ確かに好みは人それぞれだって分かってるけど、それでも何でだろうと思っちゃうぐらい、このサラダは美味しいよね。
アレルギーじゃないなら、いつか食べられるようになったら良いね――とは思うんだけど、ラスさんが作ってくれたとびきり美味しいサラダでも無理っていうのがね。何かきっかけが無いと無理なんじゃないかな。
えっと、例えばジルさんが作ってみる…とか?そしたら伴侶が作ったサラダだと大喜びして、元気に完食してくれそうな気がする。
そんな事をぼんやりと考えていると、ハルに声をかけられた。
「アキト?」
「ん?どうしたの?ハル」
「このハーレの料理はもう食べた?」
「ううん、まだだよ」
俺の好きな茄子に似た野菜ハーレを使った料理は、あまりにも美味しそうだったから、あえてまだ手をつけてなかったんだ。
せっかくだし後のお楽しみにしようかなーと思ってね。
「さっき食べてみたんだけど、きっとアキトはこれ、大好きな味だよ」
俺の食の好みもばっちり把握してくれてるハルに、ここまではっきりと断言されると自然とワクワクしてくるね。ここは後のお楽しみとか言ってる場合じゃなさそうだ。
「そうなんだ?それは楽しみー俺も食べてみるね」
そう答えながら、俺は皿の上に乗せたハーレの料理へと視線を向けた。
今日のハーレの料理は、俺も一度も見た事が無い調理法みたいなんだよね。
薄切りにしたハーレで肉と野菜が入った具材をぐるりと巻いて、それをしっかりと焼き色が着くまで焼き上げたものだ。ちなみにその上には、黄緑色の粘り気のあるソースがたっぷりとかけられている。
どんな食材を使ったどんな味のソースなのかは、現時点では全くの不明だ。
ちなみにこれも、串を刺してある料理のうちの一つなんだ。だからつまんでパクッといけちゃうんだよ。食べやすいっていうのも良いよね。
じっくり観察してからぽいっと口に放り込めば、ぶわりと口内に肉汁と野菜の甘みが広がった。これ、かかっているソースは、すこし酸味があるタレだな。
「…っ!美味しいっ!すごい!これ!」
具材とタレの感じは、ちょっと餃子にも似てる気がする。野菜は餃子よりももっと種類が多そうだけどね。生地の代わりに茄子――じゃなかったハーレの薄切りを使ってるって感じかな。
ハーレのとろける食感と、具材の旨味、あと見た目に反してさっぱり食べられる酸味があるこの黄緑色のソースがすごくよく合ってる。このソースは、酢醤油とかに近いかな。
美味しい。すごい。
それ以外の言葉が出て来なくなっちゃったよ。
「ああ、ハーレはアキトさんの好物なんでしたね」
「美味しそうに食べるね」
「アキトの好きな味だっただろう?」
ハルの言葉にコクコクと頷きを返しつつ、俺はキースくんとジルさんをじっと見つめてから口を開いた。
「キースくんもジルさんも、良かったらこれ食べてみてください」
思わずそう勧めれば、二人ともすぐに手を伸ばして串を取ってくれた。
「わ!とろとろだ!…んー美味しいね!」
「ね、美味しいよね!」
「これは確かに…癖になる味です」
二人にも気に入ってもらえたみたいで、何だか俺も嬉しくなってしまった。
一体どうしたんだろう?と思わず三人で顔を見合わせてしまったけど、キースくんは何も言わずにもう一度サラダを口に運んだ。
二口目もモグモグとじっくり味わってから、キースくんは今度は不思議そうに首を傾げた。
「でも、このサラダ…こんなに美味しいのにね?」
なんでだろう?と言いたげなキースくんに、俺達は揃って笑みを浮かべた。
「ええ、私たちには美味しいサラダですよね」
「ああ、いつかこの良さがウィル兄にも分かるかもしれないぞ」
「そうかな?そうだと良いなー」
もしウィリアムさんがこのニコニコ笑顔で期待の眼差しをしたキースくんを見たら、頑張って食べようとするかもしれない。そう思ってしまうぐらい、キースくんは嬉しそうな笑顔だったよ。
まあ確かに好みは人それぞれだって分かってるけど、それでも何でだろうと思っちゃうぐらい、このサラダは美味しいよね。
アレルギーじゃないなら、いつか食べられるようになったら良いね――とは思うんだけど、ラスさんが作ってくれたとびきり美味しいサラダでも無理っていうのがね。何かきっかけが無いと無理なんじゃないかな。
えっと、例えばジルさんが作ってみる…とか?そしたら伴侶が作ったサラダだと大喜びして、元気に完食してくれそうな気がする。
そんな事をぼんやりと考えていると、ハルに声をかけられた。
「アキト?」
「ん?どうしたの?ハル」
「このハーレの料理はもう食べた?」
「ううん、まだだよ」
俺の好きな茄子に似た野菜ハーレを使った料理は、あまりにも美味しそうだったから、あえてまだ手をつけてなかったんだ。
せっかくだし後のお楽しみにしようかなーと思ってね。
「さっき食べてみたんだけど、きっとアキトはこれ、大好きな味だよ」
俺の食の好みもばっちり把握してくれてるハルに、ここまではっきりと断言されると自然とワクワクしてくるね。ここは後のお楽しみとか言ってる場合じゃなさそうだ。
「そうなんだ?それは楽しみー俺も食べてみるね」
そう答えながら、俺は皿の上に乗せたハーレの料理へと視線を向けた。
今日のハーレの料理は、俺も一度も見た事が無い調理法みたいなんだよね。
薄切りにしたハーレで肉と野菜が入った具材をぐるりと巻いて、それをしっかりと焼き色が着くまで焼き上げたものだ。ちなみにその上には、黄緑色の粘り気のあるソースがたっぷりとかけられている。
どんな食材を使ったどんな味のソースなのかは、現時点では全くの不明だ。
ちなみにこれも、串を刺してある料理のうちの一つなんだ。だからつまんでパクッといけちゃうんだよ。食べやすいっていうのも良いよね。
じっくり観察してからぽいっと口に放り込めば、ぶわりと口内に肉汁と野菜の甘みが広がった。これ、かかっているソースは、すこし酸味があるタレだな。
「…っ!美味しいっ!すごい!これ!」
具材とタレの感じは、ちょっと餃子にも似てる気がする。野菜は餃子よりももっと種類が多そうだけどね。生地の代わりに茄子――じゃなかったハーレの薄切りを使ってるって感じかな。
ハーレのとろける食感と、具材の旨味、あと見た目に反してさっぱり食べられる酸味があるこの黄緑色のソースがすごくよく合ってる。このソースは、酢醤油とかに近いかな。
美味しい。すごい。
それ以外の言葉が出て来なくなっちゃったよ。
「ああ、ハーレはアキトさんの好物なんでしたね」
「美味しそうに食べるね」
「アキトの好きな味だっただろう?」
ハルの言葉にコクコクと頷きを返しつつ、俺はキースくんとジルさんをじっと見つめてから口を開いた。
「キースくんもジルさんも、良かったらこれ食べてみてください」
思わずそう勧めれば、二人ともすぐに手を伸ばして串を取ってくれた。
「わ!とろとろだ!…んー美味しいね!」
「ね、美味しいよね!」
「これは確かに…癖になる味です」
二人にも気に入ってもらえたみたいで、何だか俺も嬉しくなってしまった。
548
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる