生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1110.ガーデンパーティー!

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「みなさま、大変お待たせいたしました」
「準備が整いました」

 食器を並べていたメイドさんたちからそう声をかけられるまでの時間は、まるであっという間だったように感じられた。

 図鑑を読むのが趣味なキースくんと、仕事柄情報収集が得意なジルさん、そして信頼の知識量を持つハルの三人がここにはいるからね。

 待っている間は、周りに咲いている花や植えられている木についてその三人が色んな事を教えてくれてたんだ。花の名前とか木の種類とか、素材にもなるものはその効能、それに使い道や生息地域とかも教えてくれたよ。

 三人とも説明がうまいから、聞き入っている間に準備が終わっちゃったって感じだ。

「みなさま、どうぞこちらへ」
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます!」
「ありがとー」
「ありがとうございます」

 口々にお礼の言葉を返しつつ、俺達は揃って椅子へと腰を下ろした。

 テーブルの上にはビシッとしわ一つない白いテーブルクロスが敷かれていて、そこに綺麗なお皿やカトラリーが並んでいる。

 うーん、さらにガーデンパーティーっぽさが増したな。

「本日は、どのように料理をお出ししましょうか?」

 すっとお辞儀をしたメイドさんたちからの質問に、ハルはぐるりと皆の顔を見回した。

 えーっと、どのように出すかって事は、給仕が必要でしょうかって意味なのかな?たぶんそうだよね。他に考えられる意味があるかなと考えを巡らせている間に、最初に口を開いたのはジルさんだった。

「私は特に希望はありませんから、みなさんにおまかせします」

 次にはーいと元気に手をあげたのは、キースくんだ。

「僕もハル兄とアキトくんにまかせるよー」

 笑顔のキースくんに、ハルはうっすらと笑みを浮かべてこくりとひとつ頷いた。

「分かった。アキトは?二人に給仕をしてもらった方が良い?」

 あ、やっぱりそういう意味だったんだね。さりげなく出された助け船に感謝しながら、俺は口を開いた。

「えっと…俺もハルにおまかせで!」

 メイドさんたちにずっとつきっきりで給仕をしてもらうっていうのは、一般家庭出身の俺的には正直に言うとまだちょっと荷が重い。

 もちろん絶対に嫌だーってわけじゃないんだよ。領主城の使用人さんたちは、俺にも優しい人ばっかりだから。でもそれが分かっていても、それでもやっぱり緊張しちゃうんだよね。

 緊張すると分かっているのに給仕は無しでと言わなかった理由は、たった一つ。目の前にいるメイドさんたちに失礼かなと思ったからだ。だって緊張するから給仕は無しでーなんて言われたら、信用されてないと思うかもしれないでしょう?

 うまい説明が思いつかなかったから、ハルに丸投げさせてもらった――とも言う。

「そうか、分かった」

 ハルはそう言うと、メイドさんたちに優しく声をかけた。

「みんなにまかされてしまったから…そうだな。今日はのんびりと食事を楽しみたいから、全て先に並べてもらえるかな」

 わ、こう言えば良かったのか。この言い方なら、メイドさんたちにも信用されてないとは思われないよね。

 さすがハルだと思わず尊敬の眼差しを向けていると、ちらりとこちらを見たハルが嬉しそうにふふっと笑った。

 あーこれは、俺が緊張するからって分かった上で、俺のためにそう言ってくれたやつだね。ありがとうと視線だけで伝えれば、どういたしましてと視線だけで返された。

「かしこまりました。すぐにご用意いたしますね」


 
 テーブルの上にずらりと並んだ料理は、どれもラスさん渾身の作なんだろうなと分かるぐらいに華やかなものばかりだった。

 野菜や果物をたっぷり使った彩りの綺麗なサラダ。数種類のスープに、ラスさんの作る美味しいパンの山。メインには魚料理と肉料理の両方が用意されているみたいだ。

 しかもデザートとして、ラスさんの得意料理だというゼリーのようなお菓子や、上にクリームで飾り付けられた一口サイズのカップケーキまである。

 うん、これは確かに四人で食べても、余裕で足りるぐらいの量だね。

 何がすごいって、昨日の夕食会で食べた料理が一種類も無い事だ。ラスさんって、いったいどれだけの種類の料理が作れるんだろう。

「こちらは魔道具となっております」

 メイドさんは料理を見つめる俺達の前に、そっと小さなベルのようなものを取り出してみせてくれた。

「何かご用がある時にはこちらを鳴らしていただければ、すぐに誰かが参りますので」

 金色の親指ほどの大きさのベルをテーブルの隅にそっと置くと、メイドさんたちはすぐに失礼しますと小道を戻っていった。
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