1,110 / 1,179
1109.ピクニッ…ク?
しおりを挟む
曲がりくねったリームの小道を抜けた先、周囲を色とりどりの花々と大小さまざまな木々に囲まれた美しい庭園の中に、その場所は用意されていた。
「こちらが、料理長と庭師が、最もお勧めしていた場所でございます」
「他の場所が良いとのご希望があれば、他にもいくつか候補を聞いておりますが…」
どうされますか?と声をかけてくれたメイドさんの声にも反応できないぐらい、俺は目の前の光景に驚いてしまっていた。
うーん、これは…俺の想像してた庭でご飯とは――あまりにもかけ離れてるね。
俺が想像してた庭でご飯っていうのは、庭の景色を楽しみながら布を敷いて食事を楽しむいわゆるピクニック――とか、何なら花見とかそういうのだったからね。
でも目の前のこれは、ガーデンパーティーとかそういうやつじゃないのかな。
まあ今までの人生でガーデンパーティーに参加した経験なんてたったの一度もないから、ただの俺の勝手な想像なんだけどね。でも、そう間違ってない気がする。
「わー!すごい!僕はここ、好きだよ!」
キースくんが無邪気に喜ぶ声が、隣から聞こえてくる。
うん、確かにガーデンパーティー会場としては、すごくお洒落だし良い場所だよね。
心の中だけでこっそりと同意した俺は、改めて周りをぐるりと見回してみた。
ここには本当にたくさんの種類の花々が、美しく咲き誇っている。
種類が多ければ多いほど、色が多ければ多いほど、まとまりが無くなりそうなものなんだけどね。そこもきっちりと計算して配置されているのか、どの花も惹き立てあっていてすごく綺麗だ。
あ、よく見れば、あそこにリームの花もあるな。
圧倒的なのは、周りの植物だけじゃない。
ここの地面には、白地に青い模様の入った陶器のようなタイルがずらりと敷き詰められている。
あのーこれってこのまま靴で踏んで良いやつですか?それとも土足厳禁でしょうか?と思わず敬語で聞きたくなるぐらいに、細やかな模様が描きこまれたそれは美しいタイルだ。
そしてその踏むのも怖いと思ってしまうタイルの上には、これまた繊細な彫刻が施された青色の木製テーブルと四つの椅子が並んでいる。ちゃんと庭用の物なのか、領主城の中では一度も見た事のないスタイルのテーブルと椅子だ。
それにしても、キースくんとジルさんの参加が決まって人数が増えたのはほんのすこし前なのに、ちゃんとここに既に四人分の椅子が用意されてるっていうのもすごいよね。
まあこれはこの場所がすごいっていうよりも、使用人さんたちがすごいんだけど。
「ああ、俺も嫌いじゃないが…こんな場所、前からあったか?」
不思議そうにぽつりとそう呟いたハルに、ジルさんはいいえとすぐに首を振って答えた。
「ここは私も初めて見ましたね。ただ庭で工事をしているという報告は五日ほど前から来ていましたから、おそらく最近になってからこっそりと作ったんでしょう。見事な場所ですね」
領主城内の、そういう細かい事もしっかりと把握してるんだ。
さすがジルさんだと感心しながら、俺は今度はそっと空を見上げた。
今日は起きた時からずっと雲一つない快晴で、リームの花を見ている時もじりじりと肌を焼くような日差しは感じてた。
日陰にいればそこまで暑い時期ってわけでも無いんだけど、さすがに直射日光を浴びていると多少は暑く感じる。
でもここではそれも関係無いんだよね。だって、きっちりと対策が取られているから。
周囲にある背の高いいくつかの木を上手に利用して、太陽の日差しを遮るためなんだろう薄い布がまるで屋根のように張られているんだ。
いや、周囲にある木をうまく利用してるってわけじゃないか。たぶんこのためだけに、不自然にならないように計算した上で背の高い木をあえて配置してるんだと思う。
庭師さんって本当にすごいな。
「アキトは?ここ、気に入った?」
あまりにも反応をしない俺を気にしてか、ハルが控え目にそう声をかけてくれた。慌てて視線をあげれば、ハルとジルさん、キースくんに、メイドさんたちまでがじっと俺を見つめていた。
あ、そういえば、さっきから俺だけ何も感想を言ってなかったな。あまりにも予想外だったからついつい観察してた。
「え、俺?うん。俺もすごく気に入ったよ」
あまりの豪華さにピクニック気分ではいられなくなったけど、初のガーデンパーティーって事で気分を切り替えていこう。
「それは良かった―――みんな気に入ったようなので、ここで頼むよ」
代表してハルがそう声をかければ、メイドさんたちはかしこまりましたと流れるような所作で礼をした。
「しばらくは周りの景色をご堪能ください」
そう前置きをしたメイドさんたちは、てきぱきと食器を取り出して並べ始めた。
「こちらが、料理長と庭師が、最もお勧めしていた場所でございます」
「他の場所が良いとのご希望があれば、他にもいくつか候補を聞いておりますが…」
どうされますか?と声をかけてくれたメイドさんの声にも反応できないぐらい、俺は目の前の光景に驚いてしまっていた。
うーん、これは…俺の想像してた庭でご飯とは――あまりにもかけ離れてるね。
俺が想像してた庭でご飯っていうのは、庭の景色を楽しみながら布を敷いて食事を楽しむいわゆるピクニック――とか、何なら花見とかそういうのだったからね。
でも目の前のこれは、ガーデンパーティーとかそういうやつじゃないのかな。
まあ今までの人生でガーデンパーティーに参加した経験なんてたったの一度もないから、ただの俺の勝手な想像なんだけどね。でも、そう間違ってない気がする。
「わー!すごい!僕はここ、好きだよ!」
キースくんが無邪気に喜ぶ声が、隣から聞こえてくる。
うん、確かにガーデンパーティー会場としては、すごくお洒落だし良い場所だよね。
心の中だけでこっそりと同意した俺は、改めて周りをぐるりと見回してみた。
ここには本当にたくさんの種類の花々が、美しく咲き誇っている。
種類が多ければ多いほど、色が多ければ多いほど、まとまりが無くなりそうなものなんだけどね。そこもきっちりと計算して配置されているのか、どの花も惹き立てあっていてすごく綺麗だ。
あ、よく見れば、あそこにリームの花もあるな。
圧倒的なのは、周りの植物だけじゃない。
ここの地面には、白地に青い模様の入った陶器のようなタイルがずらりと敷き詰められている。
あのーこれってこのまま靴で踏んで良いやつですか?それとも土足厳禁でしょうか?と思わず敬語で聞きたくなるぐらいに、細やかな模様が描きこまれたそれは美しいタイルだ。
そしてその踏むのも怖いと思ってしまうタイルの上には、これまた繊細な彫刻が施された青色の木製テーブルと四つの椅子が並んでいる。ちゃんと庭用の物なのか、領主城の中では一度も見た事のないスタイルのテーブルと椅子だ。
それにしても、キースくんとジルさんの参加が決まって人数が増えたのはほんのすこし前なのに、ちゃんとここに既に四人分の椅子が用意されてるっていうのもすごいよね。
まあこれはこの場所がすごいっていうよりも、使用人さんたちがすごいんだけど。
「ああ、俺も嫌いじゃないが…こんな場所、前からあったか?」
不思議そうにぽつりとそう呟いたハルに、ジルさんはいいえとすぐに首を振って答えた。
「ここは私も初めて見ましたね。ただ庭で工事をしているという報告は五日ほど前から来ていましたから、おそらく最近になってからこっそりと作ったんでしょう。見事な場所ですね」
領主城内の、そういう細かい事もしっかりと把握してるんだ。
さすがジルさんだと感心しながら、俺は今度はそっと空を見上げた。
今日は起きた時からずっと雲一つない快晴で、リームの花を見ている時もじりじりと肌を焼くような日差しは感じてた。
日陰にいればそこまで暑い時期ってわけでも無いんだけど、さすがに直射日光を浴びていると多少は暑く感じる。
でもここではそれも関係無いんだよね。だって、きっちりと対策が取られているから。
周囲にある背の高いいくつかの木を上手に利用して、太陽の日差しを遮るためなんだろう薄い布がまるで屋根のように張られているんだ。
いや、周囲にある木をうまく利用してるってわけじゃないか。たぶんこのためだけに、不自然にならないように計算した上で背の高い木をあえて配置してるんだと思う。
庭師さんって本当にすごいな。
「アキトは?ここ、気に入った?」
あまりにも反応をしない俺を気にしてか、ハルが控え目にそう声をかけてくれた。慌てて視線をあげれば、ハルとジルさん、キースくんに、メイドさんたちまでがじっと俺を見つめていた。
あ、そういえば、さっきから俺だけ何も感想を言ってなかったな。あまりにも予想外だったからついつい観察してた。
「え、俺?うん。俺もすごく気に入ったよ」
あまりの豪華さにピクニック気分ではいられなくなったけど、初のガーデンパーティーって事で気分を切り替えていこう。
「それは良かった―――みんな気に入ったようなので、ここで頼むよ」
代表してハルがそう声をかければ、メイドさんたちはかしこまりましたと流れるような所作で礼をした。
「しばらくは周りの景色をご堪能ください」
そう前置きをしたメイドさんたちは、てきぱきと食器を取り出して並べ始めた。
546
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる