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1100.目を覚ましたら

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 ん、もう朝?

 何の前触れもなく不意に目を覚ました俺は、まだぼんやりとしたままの寝ぼけた頭でうっすらとそんな事を考えた。そーっとほんの少しだけ目を開いて天井を見上げてみれば、明らかに部屋の中が明るい。

 うん、これは間違いなくもう朝だよね。もしかしたら昼かも?いやでも、正直に言ってしまうとまだ眠い。

 まるでふかふかの雲の上のようなこのベッドで、このまま二度寝してしまいたい。きょうの予定はまだ何も決まってないし、もうちょっと寝ようかな。

 よし、そうしよう。

 二度寝する事をあっさりと決めた俺は、何げなく寝返りを打とうとしたけれど――動組事ができなかった。

 あれ、体が動かない…?なんで?

 俺は目をつむったまま、まだ半分ぐらい眠ってる気がする頭でのんびりと考えてみる。

 えっと…たしか昨日は領主城のみんなで、賑やかで美味しい食事会を楽しんだんだよね。それでその後は…?

 あ、そうだ。自分たちの部屋に戻るなり、本当に無事で良かったってハルが声をかけてくれたんだった。

 しかもこの部屋に一人だと無駄に部屋が広く感じて寂しかったんだって、すっごく珍しい事にハルがぼそっと弱音を吐いてくれたんだ。

 ハルはあんまり俺に弱い所を見せたくないみたいなんだよね。だからこれはすっごく珍しい事なんだよ。別に弱い所を見せて欲しいーってわけじゃないんだけど、自然なハルの気持ちを見せてくれるのがちょっと嬉しかったんだ。

 ちょっと目が覚めてきた気がする。

 う…しょんぼりしてたハルに自分から抱き着いてキスしたのも思い出しちゃったよ。二人でくっついてちょっとイチャイチャした後で、今日はアキトを抱きしめて寝ても良い?って可愛いお願いをされたんだ。

 あーちゃんと思い出せて良かった!

 抱きしめて寝たいって言われたのに、目が覚めたら俺がベッドから抜け出してた。もし万が一そんな事になってたら、きっとハルもショックだろうからね。本当に思い出せて良かったよ。

 という事はとそーっと目を開いて視線だけを動かせば、そこには幸せそうに眠るハルの姿があった。さっきは本当にうっすら目を開いただけだったし、天井しか見てなかったから気づかなかったんだな。

 ハルは俺を両腕でがっしりと抱きこんだまま、すやすやと気持ちよさそうに眠っている。

 うん、これだけ思いっきりホールドされてたら、ベッドから抜け出す心配はしなくて良かったかもしれない。

 それにしても、ハルの寝顔は今日も驚くほどに綺麗だ。正直起きてる時よりも寝てる時の方が、綺麗さを感じるんだよね。起きてる時は格好良いの方が先に来るからさ。

 静かにハルの寝顔に見惚れていると、綺麗な金色のまつげが不意にふるりと震えた。

 あ、もしかして…起きる?

 そう思いながらじーっとハルの様子を伺っていると、ゆっくりと開いていくまつげの隙間から俺の大好きな紫色の瞳がちらりと見えた。

「ん…」

 まだ眠いのかとろんとしているハルの紫色の瞳は、なんだかひどく色っぽく感じる。見てはいけないものを見てるような気分だけど、同時にこの瞬間を見逃したくないとも思うんだよね。

 誘惑に負けてじっとみつめていると、瞳にだんだんと意思がこもってくる。

 完全に起きたのを確認してから、俺は笑顔で声をかけた。

「おはよ、ハル」

 ハルはパチパチと何度か瞬きを繰り返してから、不意にへにゃりと笑みを浮かべた。

「おはよう、アキト」

 そう言ったハルは、自分の腕をじっと見てから心配そうに続けた。

「思いっきり抱き着いてたみたいだけど…ちゃんと眠れた?」
「うん、ぐっすり眠ってたよ」

 さっき目を覚ますまでずーっと熟睡してたと伝えれば、ハルは良かったと強張っていた体の力を抜いた。

 ハルに抱きしめられてて、俺が寝れないなんて事があるわけないよ。この腕の中が、一番安心できる場所なんだから。

「ハルもぐっすり寝れた?」
「ああ、アキトのおかげでね。夢も見ずにぐっすりだったよ」
「それなら良かった」
「あーまだ起きたくないな」

 あれ、ハルがそういう事をいうのは珍しいな。

「じゃあ二度寝しちゃう?」
「魅力的なお誘いだね」

 こうして二人でベッドに転がったまま、クスクスと笑い合うのってすごく贅沢な時間だな。ここに帰って来れて良かったと、心から思うよ。
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