1,098 / 1,103
1097.特別な提案
しおりを挟む
「それで?」
ワクワクを隠さないケイリーさんに促されて、キースくんはえっとねと話し出した。
「アキトくんは僕と馬くんに隠れててって言って、魔力を練って攻撃準備に入ってくれたんだー」
「さすが、アキト様」
「魔法使いならではの機転ですな」
「不意打ちにこそ魔法は活きますからね!」
「いやいや、魔法はいつだって活躍できるっての!」
「はい、そこ喧嘩しない」
何だか揉めてる?と思ったけど、あっという間に仲裁まで終わっているのがすごいな。ぽんぽんと会話が進んでいくのが、気心が知れてる証拠というか仲が良いんだなと伝わってくる。使用人の人たちは、いつもこんな感じで喋ってるのかな。
「正直、ハルがすぐに名前を呼んでくれてなかったら…攻撃しちゃってたかもしれない…よね」
あー、改めて想像すると、かなり怖いな。手加減なしの俺の魔法でハルが怪我をするところとか、たとえただの想像だとしてもすごく嫌だ。攻撃しなくて良かったと思うと同時に、実際には無事だったけど怖くなってしまった。
「大丈夫だよ、ハルなら。即死じゃなければ回復ポーションで治るからね」
ケイリーさんのあまりにもあっさりした返答に、俺はえっと思わず声をあげた。嘘でしょう?
「そうそう、あんな事態にはもう巻き込まれないように俺も気をつけるけど、もし万が一があればああいう時は全力で攻撃して良いからね」
その方が俺も安心できるからと、ハルにまでそう言われてしまった。
えー…ハルにとっては危うく攻撃されそうになった話だし、ケイリーさんにとっても自分の息子が攻撃されるところだったって話なのに?あまりにも軽くない?
少し戸惑いながらも、俺は二人をちらりと見た。
二人は普通の事のようにニコニコ笑顔だ。嘘だろう?と思いながら視線を彷徨わせたけど、目があったキースくんもうんうんと頷いているし、ボルトさんを始め使用人の人たちも何とも思ってないみたいだ。
この辺は異世界ギャップというか、辺境領ギャップ?なのかな。
よし、決めた。今の俺にできる事は、気配探知の精度をもっと上げる事だよね。そうすればハルだって気配だけで分かるはずだから、間違えて攻撃する事もないと思う。
これからの課題を考えながら、俺はハルとケイリーさんに誤魔化すような笑みを返した。
あれこれと話し込んでいる間に、気づけば最初はいなかった使用人さんたちが増えている事に気がついた。
涙ぐみながら俺達の無事を喜んでくれる後から来た使用人さんたちを、最初からいた使用人さんたちが慰めている。
名残惜しそうにしながらも、仕事に戻りますと抜けていく使用人さんたちもいた。
「そうだ、ウマくんもすごかったんだよ!」
ニコニコ笑顔のキースくんが言葉を駆使してシュリくんを褒めちぎるのには、思わず俺も一緒になって同意した。
そんな事をしていると、あっという間に時間が過ぎてしまった。
「領主様、そろそろ夕食のご用意を致しましょうか?」
もうそんな時間なんだ。このまま解散になるのかな。
そう思ったんだけどね、ボルトさんからの声かけにケイリーさんは笑顔で答えた。
「今日は二人が無事に帰ってきた記念に、特別にみんなで夕食にしようか」
みんなで夕食?と思った次の瞬間、室内には歓声が響いた。さすが領主様。一生ついていきますなんて言葉が飛び交っている。
「えっと…ハル?」
どういうこと?と思わずハルに視線を向ければ、ハルは笑って頷いた。
「ああ、使用人のみんなも一緒にご飯を食べようって意味だね」
「えっ!良いの!?」
他の貴族と違ってここでは使用人と領主一家の距離が近いとは聞いていたけど、食事は別々に取るのが普通だった聞いてたからね。
思わず尋ねた俺に、父が良いと言うなら良いんだよとハルは笑って答えた。実際に有事の際には、使用人だろうと領主一家だろうと気にせず一緒に食事にするんだって。
「ではラスに確認して参ります」
ボルトさんはそう言うなりすぐに部屋から出ていった。使用人のみなさんはそわそわした様子でボルトさんの帰りを待っている。どうしたんだろうと珍しいみんなの反応を見つめていると、ハルがふふっと笑って教えてくれた。
「ラスが無理だって言う可能性もあるからって、みんな気にしてるんだよ」
なるほど。それでか。
しばらくして帰ってきたボルトさんは、ラスさんと一緒だった。
「最初からこうなるかもと思ってたよ」
ぶっきらぼうにそう言ったラスさんは、今日は大量に料理を仕込んでいるから安心しろと声を張り上げた。
「やったー」
「ラス料理長、ありがとう!」
「領主様最高!」
「ラスさんも最高!」
うおーと盛り上がる使用人さんたちの反応に、帰って来れて良かったなとしみじみと感じてしまった。
ワクワクを隠さないケイリーさんに促されて、キースくんはえっとねと話し出した。
「アキトくんは僕と馬くんに隠れててって言って、魔力を練って攻撃準備に入ってくれたんだー」
「さすが、アキト様」
「魔法使いならではの機転ですな」
「不意打ちにこそ魔法は活きますからね!」
「いやいや、魔法はいつだって活躍できるっての!」
「はい、そこ喧嘩しない」
何だか揉めてる?と思ったけど、あっという間に仲裁まで終わっているのがすごいな。ぽんぽんと会話が進んでいくのが、気心が知れてる証拠というか仲が良いんだなと伝わってくる。使用人の人たちは、いつもこんな感じで喋ってるのかな。
「正直、ハルがすぐに名前を呼んでくれてなかったら…攻撃しちゃってたかもしれない…よね」
あー、改めて想像すると、かなり怖いな。手加減なしの俺の魔法でハルが怪我をするところとか、たとえただの想像だとしてもすごく嫌だ。攻撃しなくて良かったと思うと同時に、実際には無事だったけど怖くなってしまった。
「大丈夫だよ、ハルなら。即死じゃなければ回復ポーションで治るからね」
ケイリーさんのあまりにもあっさりした返答に、俺はえっと思わず声をあげた。嘘でしょう?
「そうそう、あんな事態にはもう巻き込まれないように俺も気をつけるけど、もし万が一があればああいう時は全力で攻撃して良いからね」
その方が俺も安心できるからと、ハルにまでそう言われてしまった。
えー…ハルにとっては危うく攻撃されそうになった話だし、ケイリーさんにとっても自分の息子が攻撃されるところだったって話なのに?あまりにも軽くない?
少し戸惑いながらも、俺は二人をちらりと見た。
二人は普通の事のようにニコニコ笑顔だ。嘘だろう?と思いながら視線を彷徨わせたけど、目があったキースくんもうんうんと頷いているし、ボルトさんを始め使用人の人たちも何とも思ってないみたいだ。
この辺は異世界ギャップというか、辺境領ギャップ?なのかな。
よし、決めた。今の俺にできる事は、気配探知の精度をもっと上げる事だよね。そうすればハルだって気配だけで分かるはずだから、間違えて攻撃する事もないと思う。
これからの課題を考えながら、俺はハルとケイリーさんに誤魔化すような笑みを返した。
あれこれと話し込んでいる間に、気づけば最初はいなかった使用人さんたちが増えている事に気がついた。
涙ぐみながら俺達の無事を喜んでくれる後から来た使用人さんたちを、最初からいた使用人さんたちが慰めている。
名残惜しそうにしながらも、仕事に戻りますと抜けていく使用人さんたちもいた。
「そうだ、ウマくんもすごかったんだよ!」
ニコニコ笑顔のキースくんが言葉を駆使してシュリくんを褒めちぎるのには、思わず俺も一緒になって同意した。
そんな事をしていると、あっという間に時間が過ぎてしまった。
「領主様、そろそろ夕食のご用意を致しましょうか?」
もうそんな時間なんだ。このまま解散になるのかな。
そう思ったんだけどね、ボルトさんからの声かけにケイリーさんは笑顔で答えた。
「今日は二人が無事に帰ってきた記念に、特別にみんなで夕食にしようか」
みんなで夕食?と思った次の瞬間、室内には歓声が響いた。さすが領主様。一生ついていきますなんて言葉が飛び交っている。
「えっと…ハル?」
どういうこと?と思わずハルに視線を向ければ、ハルは笑って頷いた。
「ああ、使用人のみんなも一緒にご飯を食べようって意味だね」
「えっ!良いの!?」
他の貴族と違ってここでは使用人と領主一家の距離が近いとは聞いていたけど、食事は別々に取るのが普通だった聞いてたからね。
思わず尋ねた俺に、父が良いと言うなら良いんだよとハルは笑って答えた。実際に有事の際には、使用人だろうと領主一家だろうと気にせず一緒に食事にするんだって。
「ではラスに確認して参ります」
ボルトさんはそう言うなりすぐに部屋から出ていった。使用人のみなさんはそわそわした様子でボルトさんの帰りを待っている。どうしたんだろうと珍しいみんなの反応を見つめていると、ハルがふふっと笑って教えてくれた。
「ラスが無理だって言う可能性もあるからって、みんな気にしてるんだよ」
なるほど。それでか。
しばらくして帰ってきたボルトさんは、ラスさんと一緒だった。
「最初からこうなるかもと思ってたよ」
ぶっきらぼうにそう言ったラスさんは、今日は大量に料理を仕込んでいるから安心しろと声を張り上げた。
「やったー」
「ラス料理長、ありがとう!」
「領主様最高!」
「ラスさんも最高!」
うおーと盛り上がる使用人さんたちの反応に、帰って来れて良かったなとしみじみと感じてしまった。
569
お気に入りに追加
4,148
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる