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1082.【ハル視点】探索隊
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「良かったな、ハル!」
そう言いながら俺の背中をバシバシと叩いてくるのは俺と同じ時期に騎士団に入った騎士だ。ありがとうと返している俺の姿を、ニコニコと笑顔を浮かべて見つめている騎士たちもいる。
使用人たちは無事だと聞いてホッとした様子で、うっすらと笑みを浮かべて頷き合っていた。
なかでも一番派手に喜んでくれているのは、衛兵たちだった。
「自分たちで逃げてくるなんてすげぇな」
「なーやるな、二人とも」
「いやー良かった良かった」
「階段を上りきったあの根性からして、すげぇやつだもんなー」
ぽんぽんと大きな声で笑い合っているのは、辺境領に辿り着いた時に俺達と一緒に階段を登った衛兵たちだ。なかでも師匠からは、良かったなと言いたげに優しい目で見つめられてしまった。
衛兵隊や騎士団の中にまぎれている陰護衛組は、まだ真剣な表情でじっと俺を見つめていた。自分の目で無事を確認したいんだろうな。
さてそろそろ殺気は無くなってきたと思うんだが、シュリは出てきてくれるだろうか。もし出て来れなかった場合はどう言い訳をするかを考えていると、背後で茂みが揺れる音が聞こえた。
くるりと振り返れば、全力で気配を消しているアキトと、キース、そしてシュリの姿があった。
良かった。ちゃんと出てきてくれたんだな。
「キース、アキト!無事で良かった!」
最初に俺の視線に気づいたのはファーガス兄さんだった。
「ファーガス兄さん、迎えに来てくれてありがとー!」
「ありがとうございます」
「本当に怪我はしていないんですか?」
人が多い場所ではあまり進んで発言をしないあのジルさんが、すごい勢いでそう尋ねた。ウィル兄と隊員の皆が驚いているなか、アキトとキースは嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。
「はい、二人とも無傷です!」
その場にいた探索隊から良く戻ったとか無事で良かったとか声をかけられる度に、アキトとキースは笑顔で答えを返している。
ああ、そうだ。今のうちにこの隊について説明しておくべきかな。
「アキト、キース。この探索隊は志願方式で参加を募ったものだから、それぞれが自分の意思で来てくれているんだよ」
命令や無理強いで参加した者はいないと、はっきりと言いきれば二人は驚いた様子で周りを見回した。
「探索隊に志願してくれてありがとうございます」
「みんな、ありがとう」
そんな風に律儀に一人ずつにお礼を言って回る二人の姿に、その場の空気が更に和んだ。
わいわいと盛り上がった会話がようやく落ち着いた所で、ウィル兄がじーっとシュリを見つめながら口を開いた。
「えっと…そっちの…ウマはーどうしたの?」
ウィル兄さんは、不思議そうに首を傾げてそう尋ねた。
まあどこから現れたんだとは思うよな。
説明をしようとするよりも前に、その場にいる全員の視線が一気にシュリに集まった。今は殺気が無いからか特に怯えた様子は無いが、これだけの人数で見つめられるのはまずいかもしれない。
慌てて移動しようとしたけれどそれよりも先に、さっと移動したのはキースだった。まるでシュリを視線から庇うように、両手を広げて立ち塞がった。
ううん、やっぱり兄のような気持ち――なんだろうか。体の大きさ的に隠しきれていないのが何とも微笑ましい。
そんな事を考えながら、俺はすっとキースの前に立った。
「あまり怖がらせないでくれよ。二人がここまで逃げて来れたのは、捕まえられてたこのウマのおかげもあるんだから」
ここで俺が主張すべき大事な事は二つ。
シュリが盗賊の所有していたウマでは無く攫われてきた被害者である事、そして二人を助けてくれた大事な仲間である事だ。
俺も認めているとはっきりと示すように言いきれば、周りの視線がすこしだけ和らいだ。
「ああ、そういえばアキトくんはウマに好かれるって言ってたねー」
むやみに視線を集めてしまった詫びのつもりか、ウィル兄はいつも通りののんきな声でそう言って笑った。
「なんと、アキト様は、ウマに好かれる人なのか」
「でも大人しそうで可愛いウマだよな」
「うわーこれはウマの世話係をやってるギュームが喜びそうな可愛さだな」
そんな言葉がぽんぽんと飛び交っている。ああ、ギュームならきっと嬉々として世話を焼くだろうな。間違いない。
シュリは本当に好意的に、探索隊のみんなに受け入れられた。
キースとアキトを乗せてくれてありがとうなーと礼を言う人や、嫌じゃなければ撫でても良いかな?と近づいていく人もいるほどだ。
まあ野生のウマが気に入った人に自分の意思でついてきたりするなんて事も、たまにはある事だからな。そう不自然でもないし、母さんを見ているからそもそも耐性があるんだろう。
心配し過ぎた?と言いたげなアキトとキースの、ホッとした表情は可愛かった。
そう言いながら俺の背中をバシバシと叩いてくるのは俺と同じ時期に騎士団に入った騎士だ。ありがとうと返している俺の姿を、ニコニコと笑顔を浮かべて見つめている騎士たちもいる。
使用人たちは無事だと聞いてホッとした様子で、うっすらと笑みを浮かべて頷き合っていた。
なかでも一番派手に喜んでくれているのは、衛兵たちだった。
「自分たちで逃げてくるなんてすげぇな」
「なーやるな、二人とも」
「いやー良かった良かった」
「階段を上りきったあの根性からして、すげぇやつだもんなー」
ぽんぽんと大きな声で笑い合っているのは、辺境領に辿り着いた時に俺達と一緒に階段を登った衛兵たちだ。なかでも師匠からは、良かったなと言いたげに優しい目で見つめられてしまった。
衛兵隊や騎士団の中にまぎれている陰護衛組は、まだ真剣な表情でじっと俺を見つめていた。自分の目で無事を確認したいんだろうな。
さてそろそろ殺気は無くなってきたと思うんだが、シュリは出てきてくれるだろうか。もし出て来れなかった場合はどう言い訳をするかを考えていると、背後で茂みが揺れる音が聞こえた。
くるりと振り返れば、全力で気配を消しているアキトと、キース、そしてシュリの姿があった。
良かった。ちゃんと出てきてくれたんだな。
「キース、アキト!無事で良かった!」
最初に俺の視線に気づいたのはファーガス兄さんだった。
「ファーガス兄さん、迎えに来てくれてありがとー!」
「ありがとうございます」
「本当に怪我はしていないんですか?」
人が多い場所ではあまり進んで発言をしないあのジルさんが、すごい勢いでそう尋ねた。ウィル兄と隊員の皆が驚いているなか、アキトとキースは嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。
「はい、二人とも無傷です!」
その場にいた探索隊から良く戻ったとか無事で良かったとか声をかけられる度に、アキトとキースは笑顔で答えを返している。
ああ、そうだ。今のうちにこの隊について説明しておくべきかな。
「アキト、キース。この探索隊は志願方式で参加を募ったものだから、それぞれが自分の意思で来てくれているんだよ」
命令や無理強いで参加した者はいないと、はっきりと言いきれば二人は驚いた様子で周りを見回した。
「探索隊に志願してくれてありがとうございます」
「みんな、ありがとう」
そんな風に律儀に一人ずつにお礼を言って回る二人の姿に、その場の空気が更に和んだ。
わいわいと盛り上がった会話がようやく落ち着いた所で、ウィル兄がじーっとシュリを見つめながら口を開いた。
「えっと…そっちの…ウマはーどうしたの?」
ウィル兄さんは、不思議そうに首を傾げてそう尋ねた。
まあどこから現れたんだとは思うよな。
説明をしようとするよりも前に、その場にいる全員の視線が一気にシュリに集まった。今は殺気が無いからか特に怯えた様子は無いが、これだけの人数で見つめられるのはまずいかもしれない。
慌てて移動しようとしたけれどそれよりも先に、さっと移動したのはキースだった。まるでシュリを視線から庇うように、両手を広げて立ち塞がった。
ううん、やっぱり兄のような気持ち――なんだろうか。体の大きさ的に隠しきれていないのが何とも微笑ましい。
そんな事を考えながら、俺はすっとキースの前に立った。
「あまり怖がらせないでくれよ。二人がここまで逃げて来れたのは、捕まえられてたこのウマのおかげもあるんだから」
ここで俺が主張すべき大事な事は二つ。
シュリが盗賊の所有していたウマでは無く攫われてきた被害者である事、そして二人を助けてくれた大事な仲間である事だ。
俺も認めているとはっきりと示すように言いきれば、周りの視線がすこしだけ和らいだ。
「ああ、そういえばアキトくんはウマに好かれるって言ってたねー」
むやみに視線を集めてしまった詫びのつもりか、ウィル兄はいつも通りののんきな声でそう言って笑った。
「なんと、アキト様は、ウマに好かれる人なのか」
「でも大人しそうで可愛いウマだよな」
「うわーこれはウマの世話係をやってるギュームが喜びそうな可愛さだな」
そんな言葉がぽんぽんと飛び交っている。ああ、ギュームならきっと嬉々として世話を焼くだろうな。間違いない。
シュリは本当に好意的に、探索隊のみんなに受け入れられた。
キースとアキトを乗せてくれてありがとうなーと礼を言う人や、嫌じゃなければ撫でても良いかな?と近づいていく人もいるほどだ。
まあ野生のウマが気に入った人に自分の意思でついてきたりするなんて事も、たまにはある事だからな。そう不自然でもないし、母さんを見ているからそもそも耐性があるんだろう。
心配し過ぎた?と言いたげなアキトとキースの、ホッとした表情は可愛かった。
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