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1079.ウマ様のごはん
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「本当にキースくんには、いっぱい助けてもらったんです」
「アキト様…他にも何かあるのなら、ぜひ私たちに教えてください」
「「「「「ぜひっ」」」」」
綺麗に声を重ねた使用人さんたちに、俺はにっこりと笑みを返した。
「はいっ!聞いて下さい!」
「もう良いよーアキトくん」
キースくんにやんわりと止められてしまったけど、言いたいなとじっと見つめれば好きにしてと折れてくれた。
ううん、なんだか俺よりも精神年齢は上のような気がするな。
さてじゃあまずはアジトから出れた所から話すべきかな。
あ、でも…ここでシュリくんの事を名前で呼んで、なんで名前を知ってるんだーってなっても困るよね。よし、ここはキースくんの言ってた馬くん呼びを、採用させてもらおうかな。
「馬くんが壁を潰してくれたから、アジトからは結構簡単に出られたんです」
「お二人の命の恩人…いや恩ウマ…?なんですね」
キラキラと目を輝かせているのは、やっぱり馬の世話係の人だ。
「おい、後であちらのウマ様にお礼の品を持っていっても良いか?」
「私もぜひ!」
「俺もだ!」
あれ、いつのまにか馬様呼びになってる?
ちらりと視線を向ければシュリくんを隠すように立っている馬さんは、すこし呆れ顔で盛り上がる使用人さんたちを見ていた。
「いや…あの幼さだと、まだ食べ物は食べれないと思うぞ?」
あ、そこは喋る馬でも普通の馬でも同じなんだね。シュリくんだけが特別とかじゃないんだ。
「え、そうなのか?俺の秘蔵の肉を贈るつもりだったんだが無理なのか?」
「私のご褒美果物も無理ですか?」
「ああ、どっちもまだ無理だろうな。あれぐらいの歳なら魔力の方が良いんだが…そもそも合う魔力の人がいるかどうか…」
「キース様とアキト様の命を助けてくださったウマ様ですから…最優先で魔力のお試しをしてもらいましょう」
「ああ、それが良いな。使用人で無理なら騎士と衛兵にまで手を広げるべきだと思う。それも無理なら魔石を試すべきだろう」
真剣な表情でシュリくんのために相談を始めたボルトさんと世話係の人に、俺ははいと思わず挙手をしてから口を開いた。
「あの、俺の魔力は吸収してくれたので大丈夫だと思います」
「…あのぐらいの年齢だと攻撃のために練られた魔力は吸収できないんですが、よくご存じでしたね?」
わざわざその子に与えるために魔力を練ったって事ですよねと、嬉しそうに尋ねられてしまった。
うーん、これは困ったな。
いえ、攻撃のための魔力だと吸収できないーとか、さっきあなたが教えてくれるまで全く知りませんでした。ただシュリくんから、魔力が欲しいなって人の言葉で教えてもらったから魔力を練っただけです。
それが事実だけど、これは言えないもんね。さて、これはいったいどう誤魔化せば良いんだろう。
再び言葉に詰まった俺を助けてくれたのは、またしてもキースくんだった。
「あのね、逃げてる途中の休憩の時に、ラスさんの作ってくれたパンを出したんだけど、あの馬くんは食べてくれなくて…魔力を食べるって何かの本で見た事があったからそれをアキトくんに伝えたんだ」
おお、本をたくさん読んでるキースくんだから言える説得力のある説明だ。
「ああ、なるほど。キース様が知っていらっしゃったんですね」
世話係の人は、納得した様子でこくりとひとつ頷いた。
「今後…そちらのウマ様の食事は、アキト様にお願いしてもよろしいでしょうか?」
ケイリーさんとハル、そして俺と、順番に視線を動かしつつ、世話係の人にそう尋ねられた。
「うん、もちろん!」
「ああ、アキトくんが良いなら問題は無いよ。無理に他の人の魔力を試すのも、幼いからだの負担になるかもしれないからね」
「俺にとってもそのウマには恩があるからね。文句は無いよ」
三人で口々に答えれば、世話係の人はホッと息を吐いた。
「すみません、話しの邪魔をしてしまいましたね」
「いや、大事な事だからそれは良いんだが…アキトくん、他にもあるのかい?」
ニコニコと笑顔で尋ねてきたケイリーさんに、俺はハイッと元気に答えた。
「キャルの花を見つけて、ここはルティルーの森だってすぐに教えてくれたんです」
ここの森の街道には魔物を寄せる罠があるんだって話しも、しっかり説明してくれましたと答えれば、おおーとそこかしこから歓声があがった。
「キャルの花かーさすがキース様だな」
「森の中でその花だけを探すとなると、結構難しいんですよね」
「分かります。しかもキャルの花ですから」
「だよな。俺も一応見た目は知ってるつもりだけど…」
「見分けられる自信が無いよな」
使用人さんたちは口々にそう言うと、無理そうだと苦笑を浮かべた。
「アキト様…他にも何かあるのなら、ぜひ私たちに教えてください」
「「「「「ぜひっ」」」」」
綺麗に声を重ねた使用人さんたちに、俺はにっこりと笑みを返した。
「はいっ!聞いて下さい!」
「もう良いよーアキトくん」
キースくんにやんわりと止められてしまったけど、言いたいなとじっと見つめれば好きにしてと折れてくれた。
ううん、なんだか俺よりも精神年齢は上のような気がするな。
さてじゃあまずはアジトから出れた所から話すべきかな。
あ、でも…ここでシュリくんの事を名前で呼んで、なんで名前を知ってるんだーってなっても困るよね。よし、ここはキースくんの言ってた馬くん呼びを、採用させてもらおうかな。
「馬くんが壁を潰してくれたから、アジトからは結構簡単に出られたんです」
「お二人の命の恩人…いや恩ウマ…?なんですね」
キラキラと目を輝かせているのは、やっぱり馬の世話係の人だ。
「おい、後であちらのウマ様にお礼の品を持っていっても良いか?」
「私もぜひ!」
「俺もだ!」
あれ、いつのまにか馬様呼びになってる?
ちらりと視線を向ければシュリくんを隠すように立っている馬さんは、すこし呆れ顔で盛り上がる使用人さんたちを見ていた。
「いや…あの幼さだと、まだ食べ物は食べれないと思うぞ?」
あ、そこは喋る馬でも普通の馬でも同じなんだね。シュリくんだけが特別とかじゃないんだ。
「え、そうなのか?俺の秘蔵の肉を贈るつもりだったんだが無理なのか?」
「私のご褒美果物も無理ですか?」
「ああ、どっちもまだ無理だろうな。あれぐらいの歳なら魔力の方が良いんだが…そもそも合う魔力の人がいるかどうか…」
「キース様とアキト様の命を助けてくださったウマ様ですから…最優先で魔力のお試しをしてもらいましょう」
「ああ、それが良いな。使用人で無理なら騎士と衛兵にまで手を広げるべきだと思う。それも無理なら魔石を試すべきだろう」
真剣な表情でシュリくんのために相談を始めたボルトさんと世話係の人に、俺ははいと思わず挙手をしてから口を開いた。
「あの、俺の魔力は吸収してくれたので大丈夫だと思います」
「…あのぐらいの年齢だと攻撃のために練られた魔力は吸収できないんですが、よくご存じでしたね?」
わざわざその子に与えるために魔力を練ったって事ですよねと、嬉しそうに尋ねられてしまった。
うーん、これは困ったな。
いえ、攻撃のための魔力だと吸収できないーとか、さっきあなたが教えてくれるまで全く知りませんでした。ただシュリくんから、魔力が欲しいなって人の言葉で教えてもらったから魔力を練っただけです。
それが事実だけど、これは言えないもんね。さて、これはいったいどう誤魔化せば良いんだろう。
再び言葉に詰まった俺を助けてくれたのは、またしてもキースくんだった。
「あのね、逃げてる途中の休憩の時に、ラスさんの作ってくれたパンを出したんだけど、あの馬くんは食べてくれなくて…魔力を食べるって何かの本で見た事があったからそれをアキトくんに伝えたんだ」
おお、本をたくさん読んでるキースくんだから言える説得力のある説明だ。
「ああ、なるほど。キース様が知っていらっしゃったんですね」
世話係の人は、納得した様子でこくりとひとつ頷いた。
「今後…そちらのウマ様の食事は、アキト様にお願いしてもよろしいでしょうか?」
ケイリーさんとハル、そして俺と、順番に視線を動かしつつ、世話係の人にそう尋ねられた。
「うん、もちろん!」
「ああ、アキトくんが良いなら問題は無いよ。無理に他の人の魔力を試すのも、幼いからだの負担になるかもしれないからね」
「俺にとってもそのウマには恩があるからね。文句は無いよ」
三人で口々に答えれば、世話係の人はホッと息を吐いた。
「すみません、話しの邪魔をしてしまいましたね」
「いや、大事な事だからそれは良いんだが…アキトくん、他にもあるのかい?」
ニコニコと笑顔で尋ねてきたケイリーさんに、俺はハイッと元気に答えた。
「キャルの花を見つけて、ここはルティルーの森だってすぐに教えてくれたんです」
ここの森の街道には魔物を寄せる罠があるんだって話しも、しっかり説明してくれましたと答えれば、おおーとそこかしこから歓声があがった。
「キャルの花かーさすがキース様だな」
「森の中でその花だけを探すとなると、結構難しいんですよね」
「分かります。しかもキャルの花ですから」
「だよな。俺も一応見た目は知ってるつもりだけど…」
「見分けられる自信が無いよな」
使用人さんたちは口々にそう言うと、無理そうだと苦笑を浮かべた。
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