1,079 / 1,103
1078.感謝の気持ち
しおりを挟む
うーん、そう言われてみれば…グレースさんとは色んな事を話してきたけど、馬についての話しをした事はまだ一度も無かったな。
そもそもグレースさんが馬に好かれる体質だって事すら、さっき教えて貰って知ったばっかりだからね。
でもシュリくんと会うのをご両親から許してもらえたって事は、きっとグレースさんも馬が好きなんだと思うんだ。馬嫌いな人を大事な息子と会わせたりしないだろうから。
王都からグレースさんが帰ってきたら、そういう話しもしてみたいな。
「それでね、馬くんのおかげでアジトからは逃げれたんだけど…」
キースくんの話しをみんなと一緒になってうんうんと聞いていた俺は、そこである事に気づいてハッと顔をあげた。
キースくん、さっきから俺とシュリくんの事はいっぱい話してるのに、自分の活躍は全然説明してない!
これは駄目だと思わずガタッと音を立てて立ち上がれば、部屋中の視線を集めてしまった。特に話しをしていたキースくんは、びっくりしたのか大きな目でじっとこちらを見上げている。
わー話しを遮っちゃってごめんね。すっごい罪悪感が湧いてくる。
「あ、えっと…」
キースくんのすごかった話しも聞いて欲しいですって、いったいどう話しを切り出せば良いんだろう。
ここにいるのは名前までは知らなくても、全員顔見知りの人ばかりだ。そんな状況でも、これだけたくさんの視線が集まってくると、さすがにちょっと焦ってしまう。
あわあわと言葉を選んでいると、不意に隣から声がかかった。
「どうしたのアキト、何か話したい事でもあるの?」
どこまでも優しいハルの問いかけに、俺はそっと肩の力を抜いた。ありがとう、ハル。俺が困ってると絶対に気づいてくれるのが、さすがハルだよね。
ほらまずは座ってと促されて座りなおせば、キースくんが申し訳なさそうに俺を見つめていた。
「ごめんね、アキトくんも話したかったよね。僕ばっかり話してて…」
「ううん、そうじゃないんだ!キースくんが話してくれて助かってるし、話すの上手だから俺もうんうんって聞いてたんだけどね…」
「でも…?」
不思議そうに首を傾げるハルを横目で見ながら、俺はぐっと力を込めて言い放った。
「キースくんの活躍を、しっかりと話したいなと思っただけなんだ!」
「えっ…」
びっくり顔を浮かべたキースくんは、次の瞬間には慌てた様子でそんなの良いよと口にしたけど周りから止められている。
「俺もキースの活躍、ちゃんと聞きたいな」
「私も聞きたい」
ハルとケイリーさんにそう言われたキースくんは、でもと言葉を濁した。
「私もぜひ知りたいです」
「アキト様、どうぞ!」
「キース様の活躍を、どうか教えてください」
口々にそう言う使用人さんたちは、本当にキースくんの事が大好きなんだろうな。キースくんは照れくさそうだけど、すっごく嫌だーって表情じゃなさそうだ。
あ、壁の所に立ってるボルトさんに至っては、さっとノートと魔導具のペンを取り出して構えている。しっかり書き留めるつもりみたいだ。
「キースくん…話しても良い?」
どうしても駄目って言われたら諦めないと駄目かなと聞いてみれば、キースくんは恥ずかしそうにしながらもこくりと頷いてくれた。
よし、許可は貰ったぞ。
「まずキースくんの知識にびっくりしたのは、捕まっていた部屋から脱出する…前でした。キースくんは鳥の声だけで、ここがウェルマール領内だって気づいて教えてくれたんです」
「鳥の声で…?」
不思議そうに首を傾げながらそう呟いている人もいれば、ああ、あれかと言いたげに頷いている人、さすがキース様と涙ぐんでいる人もいるね。
「ディーセルプ…だね?」
あ、やっぱりハルはあの鳥の鳴き声も知ってるんだね。
「そう、その鳥の声がするからって教えてくれたんだ」
「でも…それはただ…たまたま知ってただけで…」
恥ずかしそうなキースくんに、俺はそれは違うよと首を振った。
「知っててもキースくんが黙ってたら、俺は知らないままだったよ」
ん?どういう意味?と首を傾げたキースくんに、俺は笑顔で答えた。
「俺を安心させるためにそれをわざわざ教えてくれたのが、すっごく嬉しかったんだ。キースくん教えてくれてありがとう」
しかも自分も攫われてるあんな状況で、だからね。
「そうだよ、キース。俺からも…アキトを安心させてくれてありがとう。キースが一緒で良かったよ」
伸ばした手で優しく頭を撫でられたキースくんは、へへと笑みを浮かべた。
そもそもグレースさんが馬に好かれる体質だって事すら、さっき教えて貰って知ったばっかりだからね。
でもシュリくんと会うのをご両親から許してもらえたって事は、きっとグレースさんも馬が好きなんだと思うんだ。馬嫌いな人を大事な息子と会わせたりしないだろうから。
王都からグレースさんが帰ってきたら、そういう話しもしてみたいな。
「それでね、馬くんのおかげでアジトからは逃げれたんだけど…」
キースくんの話しをみんなと一緒になってうんうんと聞いていた俺は、そこである事に気づいてハッと顔をあげた。
キースくん、さっきから俺とシュリくんの事はいっぱい話してるのに、自分の活躍は全然説明してない!
これは駄目だと思わずガタッと音を立てて立ち上がれば、部屋中の視線を集めてしまった。特に話しをしていたキースくんは、びっくりしたのか大きな目でじっとこちらを見上げている。
わー話しを遮っちゃってごめんね。すっごい罪悪感が湧いてくる。
「あ、えっと…」
キースくんのすごかった話しも聞いて欲しいですって、いったいどう話しを切り出せば良いんだろう。
ここにいるのは名前までは知らなくても、全員顔見知りの人ばかりだ。そんな状況でも、これだけたくさんの視線が集まってくると、さすがにちょっと焦ってしまう。
あわあわと言葉を選んでいると、不意に隣から声がかかった。
「どうしたのアキト、何か話したい事でもあるの?」
どこまでも優しいハルの問いかけに、俺はそっと肩の力を抜いた。ありがとう、ハル。俺が困ってると絶対に気づいてくれるのが、さすがハルだよね。
ほらまずは座ってと促されて座りなおせば、キースくんが申し訳なさそうに俺を見つめていた。
「ごめんね、アキトくんも話したかったよね。僕ばっかり話してて…」
「ううん、そうじゃないんだ!キースくんが話してくれて助かってるし、話すの上手だから俺もうんうんって聞いてたんだけどね…」
「でも…?」
不思議そうに首を傾げるハルを横目で見ながら、俺はぐっと力を込めて言い放った。
「キースくんの活躍を、しっかりと話したいなと思っただけなんだ!」
「えっ…」
びっくり顔を浮かべたキースくんは、次の瞬間には慌てた様子でそんなの良いよと口にしたけど周りから止められている。
「俺もキースの活躍、ちゃんと聞きたいな」
「私も聞きたい」
ハルとケイリーさんにそう言われたキースくんは、でもと言葉を濁した。
「私もぜひ知りたいです」
「アキト様、どうぞ!」
「キース様の活躍を、どうか教えてください」
口々にそう言う使用人さんたちは、本当にキースくんの事が大好きなんだろうな。キースくんは照れくさそうだけど、すっごく嫌だーって表情じゃなさそうだ。
あ、壁の所に立ってるボルトさんに至っては、さっとノートと魔導具のペンを取り出して構えている。しっかり書き留めるつもりみたいだ。
「キースくん…話しても良い?」
どうしても駄目って言われたら諦めないと駄目かなと聞いてみれば、キースくんは恥ずかしそうにしながらもこくりと頷いてくれた。
よし、許可は貰ったぞ。
「まずキースくんの知識にびっくりしたのは、捕まっていた部屋から脱出する…前でした。キースくんは鳥の声だけで、ここがウェルマール領内だって気づいて教えてくれたんです」
「鳥の声で…?」
不思議そうに首を傾げながらそう呟いている人もいれば、ああ、あれかと言いたげに頷いている人、さすがキース様と涙ぐんでいる人もいるね。
「ディーセルプ…だね?」
あ、やっぱりハルはあの鳥の鳴き声も知ってるんだね。
「そう、その鳥の声がするからって教えてくれたんだ」
「でも…それはただ…たまたま知ってただけで…」
恥ずかしそうなキースくんに、俺はそれは違うよと首を振った。
「知っててもキースくんが黙ってたら、俺は知らないままだったよ」
ん?どういう意味?と首を傾げたキースくんに、俺は笑顔で答えた。
「俺を安心させるためにそれをわざわざ教えてくれたのが、すっごく嬉しかったんだ。キースくん教えてくれてありがとう」
しかも自分も攫われてるあんな状況で、だからね。
「そうだよ、キース。俺からも…アキトを安心させてくれてありがとう。キースが一緒で良かったよ」
伸ばした手で優しく頭を撫でられたキースくんは、へへと笑みを浮かべた。
633
お気に入りに追加
4,148
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる