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1071.帰り道
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「よし、じゃあそろそろ領主城に帰ろうか。城で待つことを決めた使用人の皆も、きっと今頃そわそわしながら二人の帰りを待っているだろうしな」
早く顔を見せて安心させてやってくれと続けたケイリーさんに、ハルはちょっと待ってくれと声をかけた。
「どうした?」
不思議そうなケイリーさんの向かい側で、俺とキースくん、そしてシュリくんも首を傾げている。
「ここからの帰り道なんだが…俺達は一緒には行けないから。父さんだけ、先に領主城まで帰って欲しいんだ…」
「えっ、一緒に帰らないのか!?」
どうしてと言いたげなびっくり顔のケイリーさんに、ハルは重々しくこくりと頷いた。
「ああ、一緒には帰れない」
「…なぜだ?」
理由を教えてくれと、ケイリーさんは真剣な声でそう尋ねた。うんうん、俺も理由が気になると頷けば、ハルはふふと笑みを浮かべた。
「父さんのその恰好からして、今回はここの衛兵詰所をきちんとした公式の形で訪問してるんだろう?」
ハルの言葉であらためてケイリーさんの姿をじっくりと見てみれば、確かに服装がいつもとは全く違ってた。
もちろんケイリーさんはいっつもお洒落だし、普段から格好良い服を着てるんだよ。あまり服に詳しくない俺が見ても、きっと高級なんだろうなーって思うような、でも品が良いっていう素敵な服を身に着けてるんだ。
でも今日着ているのは、一度も見た事のない色んな飾りがたくさんついてる服だ。
ぱっと見た感じは地味に見えるのに、よくよく見れば目立たない色の糸を使った細かい刺繍がたくさん施されていたり、勲章のようなものがつけられていたり、用途は分からないけど肩の辺りから胸元に垂らされている布もある。
動きやすそうだし格好良い軍服みたいな作りなんだけど、でも同時に貴族の威厳も感じる――そんな服だ。
ケイリーさんにすっごく似合ってるな。まさに本の中で描かれてていた英雄の姿って感じがする。
「まあ…そうだな。今回は衛兵の普段からの活躍に感謝をと、公式の文書も出しての訪問だよ」
ここに案内してくれた衛兵さんは急な訪問に戸惑った様子だったけど、ちゃんとそういう根回しもしてるんだね。さすがケイリーさん。
「やっぱりそうか。それで…?しっかりと正装を着ているのに、まさかここまで一人で来たなんてわけはない…よな?」
ハルは少しだけ心配そうに、眉間にぐっとしわを寄せて尋ねた。父さんならやりかねないとか思ってそうな顔だな。
「まさか!今は裏の訓練場にいて貰っているが、ちゃんと護衛にと騎士団が一隊ついてきてくれてるよ」
そう答えたケイリーさんは、誤解だと言いたげにすっごく慌てている。
「そうか、思いつきで飛び出してなくて良かったよ…」
まあボルトがいるから大丈夫だとは思っていたんだがと、ハルはぼそりと小声で続けた。
どうやらその一言は、しっかりとケイリーさんの耳にも聞こえていたみたいだ。そっと視線を反らしたその反応からして、多分護衛を手配してくれたのはボルトさんなんだろうな。
「護衛の騎士隊を連れた正装の領主様と一緒に領主城へと帰るなんて、絶対に目立ってしまうだろう?それじゃあ、せっかく冒険者の装備に変えた意味が無くなる」
うん、まあ間違いなくすっごく目立つだろうな。特にここの人たちって領主様を大好きみたいだからね。きっとここに来るときも、すっごい大騒ぎだったんだろうなーって俺でも分かる。
「あー…良い言い訳が何も思いつかない…」
ケイリーさんはぼそりとそう言うと、寂しそうにしょんぼりと肩を落とした。ああ、申し訳なさに、じゃあ一緒に帰りますと言いたくなってしまう。
「悪いが今回は諦めてくれ」
「…ああ、分かった」
しぶしぶながらも、何とかケイリーさんはハルの提案を受け入れてくれた。
「父さんが出発した後で、俺達はすこしだけ時間をずらしてから帰るよ。父さんは使用人の皆に二人が無事に見つかったって事を伝えて欲しい」
「ああ、きちんと伝えるよ」
「それに…城に戻れば母さんにも連絡が取れる。早く連絡してシュリをご両親に会わせてやりたいし…父さんも早く母さんに会いたいだろ?」
あ、さすがハル。言い方がうまいなと感心していたら、ケイリーさんは嬉しそうにすくっと立ち上がった。
「そうだな!そうしよう!だがあまり時間を開けすぎないでくれよ」
心配した使用人たちが街へ飛び出していくぞと笑いながら告げたケイリーさんは、笑顔で部屋から出ていった。
早く顔を見せて安心させてやってくれと続けたケイリーさんに、ハルはちょっと待ってくれと声をかけた。
「どうした?」
不思議そうなケイリーさんの向かい側で、俺とキースくん、そしてシュリくんも首を傾げている。
「ここからの帰り道なんだが…俺達は一緒には行けないから。父さんだけ、先に領主城まで帰って欲しいんだ…」
「えっ、一緒に帰らないのか!?」
どうしてと言いたげなびっくり顔のケイリーさんに、ハルは重々しくこくりと頷いた。
「ああ、一緒には帰れない」
「…なぜだ?」
理由を教えてくれと、ケイリーさんは真剣な声でそう尋ねた。うんうん、俺も理由が気になると頷けば、ハルはふふと笑みを浮かべた。
「父さんのその恰好からして、今回はここの衛兵詰所をきちんとした公式の形で訪問してるんだろう?」
ハルの言葉であらためてケイリーさんの姿をじっくりと見てみれば、確かに服装がいつもとは全く違ってた。
もちろんケイリーさんはいっつもお洒落だし、普段から格好良い服を着てるんだよ。あまり服に詳しくない俺が見ても、きっと高級なんだろうなーって思うような、でも品が良いっていう素敵な服を身に着けてるんだ。
でも今日着ているのは、一度も見た事のない色んな飾りがたくさんついてる服だ。
ぱっと見た感じは地味に見えるのに、よくよく見れば目立たない色の糸を使った細かい刺繍がたくさん施されていたり、勲章のようなものがつけられていたり、用途は分からないけど肩の辺りから胸元に垂らされている布もある。
動きやすそうだし格好良い軍服みたいな作りなんだけど、でも同時に貴族の威厳も感じる――そんな服だ。
ケイリーさんにすっごく似合ってるな。まさに本の中で描かれてていた英雄の姿って感じがする。
「まあ…そうだな。今回は衛兵の普段からの活躍に感謝をと、公式の文書も出しての訪問だよ」
ここに案内してくれた衛兵さんは急な訪問に戸惑った様子だったけど、ちゃんとそういう根回しもしてるんだね。さすがケイリーさん。
「やっぱりそうか。それで…?しっかりと正装を着ているのに、まさかここまで一人で来たなんてわけはない…よな?」
ハルは少しだけ心配そうに、眉間にぐっとしわを寄せて尋ねた。父さんならやりかねないとか思ってそうな顔だな。
「まさか!今は裏の訓練場にいて貰っているが、ちゃんと護衛にと騎士団が一隊ついてきてくれてるよ」
そう答えたケイリーさんは、誤解だと言いたげにすっごく慌てている。
「そうか、思いつきで飛び出してなくて良かったよ…」
まあボルトがいるから大丈夫だとは思っていたんだがと、ハルはぼそりと小声で続けた。
どうやらその一言は、しっかりとケイリーさんの耳にも聞こえていたみたいだ。そっと視線を反らしたその反応からして、多分護衛を手配してくれたのはボルトさんなんだろうな。
「護衛の騎士隊を連れた正装の領主様と一緒に領主城へと帰るなんて、絶対に目立ってしまうだろう?それじゃあ、せっかく冒険者の装備に変えた意味が無くなる」
うん、まあ間違いなくすっごく目立つだろうな。特にここの人たちって領主様を大好きみたいだからね。きっとここに来るときも、すっごい大騒ぎだったんだろうなーって俺でも分かる。
「あー…良い言い訳が何も思いつかない…」
ケイリーさんはぼそりとそう言うと、寂しそうにしょんぼりと肩を落とした。ああ、申し訳なさに、じゃあ一緒に帰りますと言いたくなってしまう。
「悪いが今回は諦めてくれ」
「…ああ、分かった」
しぶしぶながらも、何とかケイリーさんはハルの提案を受け入れてくれた。
「父さんが出発した後で、俺達はすこしだけ時間をずらしてから帰るよ。父さんは使用人の皆に二人が無事に見つかったって事を伝えて欲しい」
「ああ、きちんと伝えるよ」
「それに…城に戻れば母さんにも連絡が取れる。早く連絡してシュリをご両親に会わせてやりたいし…父さんも早く母さんに会いたいだろ?」
あ、さすがハル。言い方がうまいなと感心していたら、ケイリーさんは嬉しそうにすくっと立ち上がった。
「そうだな!そうしよう!だがあまり時間を開けすぎないでくれよ」
心配した使用人たちが街へ飛び出していくぞと笑いながら告げたケイリーさんは、笑顔で部屋から出ていった。
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