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1069.ハルの報告
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しばらくしてから俺達を両腕から解放したケイリーさんは、ハルにされたのと同じような質問をし始めた。
怪我はしてないのかい?という質問にしてないよと答えれば、今度はそれは今は回復してるって意味か、それとも一度も怪我はしなかったという意味かと尋ねられたりね。
心配してくれてるのに申し訳ないけど、あまりにもハルと同じ質問ばっかりするから、キースくんと顔を見合わせてふふっと笑ってしまったよね。
最初は不思議そうにしてたけど、ハルにも同じ事を聞かれたんですと教えればケイリーさんも笑ってくれたよ。
「父さん、そろそろ報告をしても良いかな?」
「ああ、取り乱してすまなかったな。報告を聞こう」
「その前に…まず最初に紹介したいんだが…」
「紹介?」
ハルはああとすぐに頷いた。
「実は二人と一緒にあの盗賊のアジトから逃げてきた子がいるんだ」
「なんだって?」
「このウマなんだけどね…」
まずはシュリくんが人の言葉を喋れる馬な事は言わずに、普通の馬として紹介するつもりみたいだ。
ハルは自分の背中に隠れるようにして立っているシュリくんに、そっと前へと出るように促した。
おずおずと顔を出したシュリくんを見たケイリーさんは、驚いた様子で大きく目を見開いた。しかもそのままの状態で、無言でじーっとシュリくんを見つめている。
あれ、ケイリーさんは別に馬が苦手とか聞いた事が無いんだけど、なんでこんな反応なんだろう。嫌がってるとか怖がってるとかじゃなくて、素直に驚いてる?それにしてもここまで反応が無くて無言のままっていうのもちょっと不安になる。
「あのね、この子がいなかったら、僕たち逃げて来れなかったんだよ!」
どうやらキースくんも、俺と同じように不安になったみたいだ。慌てた様子でシュリくんの事を説明しようとしたけど、それよりも前にケイリーさんが口を開いた。
「違っていたらすまないんだが…もしかして君はシュレラーウ…シュリじゃないのか?」
「えっ…?」
なんでケイリーさんがシュリくんの名前まで知ってるんだろう?
「…えっと…父さまは…シュリくんの事を、知ってるの?」
「ああ、実際にこうして会うのは初めてなんだが、噂は色々と聞いているからよく知ってるよ」
どういう事と言いたげに不思議そうに首を傾げたシュリくんに、ケイリーさんはふわりと笑みを浮かべた。
「グレースの友人…なんだろう?」
「は…?」
ハルも予想外だったのか、驚きの声を洩らした。
「もし良ければ、私とも普通に話してくれると嬉しいんだが…駄目かな?」
「うん!ぼくとグレース!ともだち!」
嬉しそうにそう答えたシュリくんに、キースくんは不思議そうにこてりと首を傾げた。
「シュリくんは、母さまの事を知ってるの?」
「グレース、キースのかあさま?」
「うん、そうだよ」
「そっか。えっとね、まどうぐのないかべをやぶればいい!っておしえてくれたの、グレースだよ」
あまりにも衝撃の事実に、俺とキースくんは思わず固まってしまった。
あー、でもそう言われれば確かに納得もできてしまった。魔道具じゃない壁を破れば良いとか―――うん、グレースさんなら言いそうだだと思ってしまった。
いや、すごく助かったし、そのおかげで俺達が逃げれたんだから感謝してるんだけどね。
「そうか…シュリと呼んでも?」
「いいよ」
「私の事はケイリーと呼んでくれ」
「わかった、ケイリー」
うんっと嬉しそうに頷いたシュリくんの様子を見て、ケイリーさんは口を開いた。
「シュリ、ひとつ聞きたいんだが、いつ頃攫われて来たのか分かるかい?」
「えっとねーたぶんだけど…にしゅうかんぐらい、まえ?」
え、そんなに前からあそこに攫われてきてたのか?
ケイリーさんは驚いた様子もなく、なるほどと頷いている。
「グレースが王家に呼び出されている理由が、今分かったよ」
「グレース、おうけによばれてるの?」
「ああ、そうなんだ」
会いたかったなと少し寂しそうに呟いたシュリくんに、ケイリーさんはすぐに会えるさと笑顔で答えている。
「あの…父さん、母さんが呼び出されている理由って…?」
「おそらくこの子が攫われてしまったから、それを公にしないために王家に呼ばれたんだろう」
「えっと…?」
「シュリは王家が保護しているウマだからね」
怪我はしてないのかい?という質問にしてないよと答えれば、今度はそれは今は回復してるって意味か、それとも一度も怪我はしなかったという意味かと尋ねられたりね。
心配してくれてるのに申し訳ないけど、あまりにもハルと同じ質問ばっかりするから、キースくんと顔を見合わせてふふっと笑ってしまったよね。
最初は不思議そうにしてたけど、ハルにも同じ事を聞かれたんですと教えればケイリーさんも笑ってくれたよ。
「父さん、そろそろ報告をしても良いかな?」
「ああ、取り乱してすまなかったな。報告を聞こう」
「その前に…まず最初に紹介したいんだが…」
「紹介?」
ハルはああとすぐに頷いた。
「実は二人と一緒にあの盗賊のアジトから逃げてきた子がいるんだ」
「なんだって?」
「このウマなんだけどね…」
まずはシュリくんが人の言葉を喋れる馬な事は言わずに、普通の馬として紹介するつもりみたいだ。
ハルは自分の背中に隠れるようにして立っているシュリくんに、そっと前へと出るように促した。
おずおずと顔を出したシュリくんを見たケイリーさんは、驚いた様子で大きく目を見開いた。しかもそのままの状態で、無言でじーっとシュリくんを見つめている。
あれ、ケイリーさんは別に馬が苦手とか聞いた事が無いんだけど、なんでこんな反応なんだろう。嫌がってるとか怖がってるとかじゃなくて、素直に驚いてる?それにしてもここまで反応が無くて無言のままっていうのもちょっと不安になる。
「あのね、この子がいなかったら、僕たち逃げて来れなかったんだよ!」
どうやらキースくんも、俺と同じように不安になったみたいだ。慌てた様子でシュリくんの事を説明しようとしたけど、それよりも前にケイリーさんが口を開いた。
「違っていたらすまないんだが…もしかして君はシュレラーウ…シュリじゃないのか?」
「えっ…?」
なんでケイリーさんがシュリくんの名前まで知ってるんだろう?
「…えっと…父さまは…シュリくんの事を、知ってるの?」
「ああ、実際にこうして会うのは初めてなんだが、噂は色々と聞いているからよく知ってるよ」
どういう事と言いたげに不思議そうに首を傾げたシュリくんに、ケイリーさんはふわりと笑みを浮かべた。
「グレースの友人…なんだろう?」
「は…?」
ハルも予想外だったのか、驚きの声を洩らした。
「もし良ければ、私とも普通に話してくれると嬉しいんだが…駄目かな?」
「うん!ぼくとグレース!ともだち!」
嬉しそうにそう答えたシュリくんに、キースくんは不思議そうにこてりと首を傾げた。
「シュリくんは、母さまの事を知ってるの?」
「グレース、キースのかあさま?」
「うん、そうだよ」
「そっか。えっとね、まどうぐのないかべをやぶればいい!っておしえてくれたの、グレースだよ」
あまりにも衝撃の事実に、俺とキースくんは思わず固まってしまった。
あー、でもそう言われれば確かに納得もできてしまった。魔道具じゃない壁を破れば良いとか―――うん、グレースさんなら言いそうだだと思ってしまった。
いや、すごく助かったし、そのおかげで俺達が逃げれたんだから感謝してるんだけどね。
「そうか…シュリと呼んでも?」
「いいよ」
「私の事はケイリーと呼んでくれ」
「わかった、ケイリー」
うんっと嬉しそうに頷いたシュリくんの様子を見て、ケイリーさんは口を開いた。
「シュリ、ひとつ聞きたいんだが、いつ頃攫われて来たのか分かるかい?」
「えっとねーたぶんだけど…にしゅうかんぐらい、まえ?」
え、そんなに前からあそこに攫われてきてたのか?
ケイリーさんは驚いた様子もなく、なるほどと頷いている。
「グレースが王家に呼び出されている理由が、今分かったよ」
「グレース、おうけによばれてるの?」
「ああ、そうなんだ」
会いたかったなと少し寂しそうに呟いたシュリくんに、ケイリーさんはすぐに会えるさと笑顔で答えている。
「あの…父さん、母さんが呼び出されている理由って…?」
「おそらくこの子が攫われてしまったから、それを公にしないために王家に呼ばれたんだろう」
「えっと…?」
「シュリは王家が保護しているウマだからね」
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