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1049.【ハル視点】隠し洞窟内は
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「あ、どうやら衛兵隊の調査に進展があったみたいだよ」
唐突に告げられたウィル兄さんの言葉に、あれこれとアジトについて考えながら話しあっていた俺達は、全員一斉に口を閉じた。
視線だけで続きを促せば、ウィル兄さんはノート型の魔道具を覗き込みながら話し始めた。
「どちら側かが分かったから、まず最初に橋の下を覆うように生えていたツタを全部切り取ったんだってーそれでも見た目は何も変わらなかったらしいんだけど…手で触れてみると質感が違うっていう報告が来たよ」
なんでもそこの橋はどうみても石材を使って作られているのに、手のひらで触れた質感はまるで鉄材製のようだったらしい。
「つまり質感まで偽装できるほどの魔道具では、無いと言う事だな」
あっさりとそう答えた父さんの言葉に、俺たちはえ…と声をあげた。いや、ファーガス兄さんは別に驚いてないみたいだな。声をあげたのは、俺とウィル兄さんとクレットだけか。
「あの…父さん、質感まで偽装できる魔道具も…あるのか?」
「ああ、一応はあるぞ。かなり珍しいものだから高値になるが…な」
そう言った父さんは、もしそれを使っているなら盗賊団の後ろにどこかの国がついていると疑ったかもしれないなと教えてくれた。
「ただそれが分かっただけで、魔法でも力技でもどうにもならなかったらしい。魔道具技師をここに連れてくるしかないかもって言ってる」
「それなら、さっき陰護衛に頼んでいるから、もうすぐ着くだろう」
「さすが、ファーガス兄さん」
にこっと嬉しそうに笑ったウィル兄は、すぐにノート型魔道具に書き込んだ。
「ファーガス兄さんに礼を言っておいてくれって、衛兵隊長からだよー」
「いや、職務を果たしたまでだ。そちらの働きに感謝をと返してくれるか?」
「了解ー!」
しばらくすると、魔道具技師が現場に到着したと報告が入った。
「これでどうにかなると良いんだが…」
ファーガス兄さんは少しだけ心配そうに、そう呟いた。
「あーそっか。もしこれがダンジョン産の隠蔽の魔道具だとすると…解除もそう簡単じゃないって可能性もあるのかー」
「まあそうだろうな。いくら質感がそのままだったとは言っても、近くで採取していた衛兵が気づかない程なら…かなり高性能な魔道具だからな」
ウィル兄さんと父さんはそう言い合うと、心配そうに眉間にしわを寄せた。
「一応俺がこの街で一番腕が良いと思う魔道具技師に声をかけて、事情を説明した上で向かってもらえるようにと手配はしたんだが…」
へぇ、そうなのか。ファーガス兄さんが一番腕が良いと思う魔道具技師って、いったい誰なんだろうと少しだけ興味が湧いた。まあ俺が尋ねる前にウィル兄が口を開いたから、名前は聞けなかったんだが。
「あ…え…?」
「ウィル、どうした」
「えっと…隠蔽の魔道具の解除、できたって!」
「えっ…もうできたのかっ!?」
驚きに思わず声を上げたのは、俺だけでは無かった。
「え…?」
「は?」
「もう?」
声をあげた父さんもファーガス兄さんも、そしてクレットも大きく目を見開いている。
「隠蔽の魔道具は地面に埋めるか真上に設置するかの二択だからと言って、橋の裏にひっそりと設置してあった魔道具本体をあっさりと発見したらしい…よ?」
「へぇ…それはすごいな…」
「そんな二択は、俺も知らなかったな」
「貴重な事を教えてもらってしまいました…」
幽霊になってから新しい事を知る事ができるなんて思ってもみなかったですと、クレットは嬉しそうに微笑んだ。
「あーでも残念ながら、室内に突入したけど誰もいなかったって…」
「そうか、もう放棄した後って事だろうか?」
「それともひと仕事しに行っているか…だな」
「迷惑な奴らだ」
「残るはルティルーの森にある廃墟だけ…か…」
そう、クレットが情報を教えてくれた牙蛇盗賊団のアジトは三つ。この時点で残るはルティルーの森の奥地にある廃墟だけとなった。もちろんクレットが知らないアジトが存在する可能性も、無いわけじゃないんだが…。
気持ちばかりが焦るけれど、そろそろ時間切れが近い。
「ハル、分かってると思うけど…全員帰らせるよ?」
つらそうな表情を浮かべながらも、ウィル兄は俺に向かってはっきりとそう声をかけた。
「…分かってる。さすがにアキトとキースのために命をかけてくれとは言えないからな」
だが自分一人が抜け出して命がけで助けに行くだけなら、何も問題は無いんじゃないか?そんな考えがふと頭を過った。
「一応言っておくが、一人で行こうとするのも禁止だぞ」
先手を打つかのような父さんの言葉に、俺は何も答えずにただじっと父さんを見返した。
唐突に告げられたウィル兄さんの言葉に、あれこれとアジトについて考えながら話しあっていた俺達は、全員一斉に口を閉じた。
視線だけで続きを促せば、ウィル兄さんはノート型の魔道具を覗き込みながら話し始めた。
「どちら側かが分かったから、まず最初に橋の下を覆うように生えていたツタを全部切り取ったんだってーそれでも見た目は何も変わらなかったらしいんだけど…手で触れてみると質感が違うっていう報告が来たよ」
なんでもそこの橋はどうみても石材を使って作られているのに、手のひらで触れた質感はまるで鉄材製のようだったらしい。
「つまり質感まで偽装できるほどの魔道具では、無いと言う事だな」
あっさりとそう答えた父さんの言葉に、俺たちはえ…と声をあげた。いや、ファーガス兄さんは別に驚いてないみたいだな。声をあげたのは、俺とウィル兄さんとクレットだけか。
「あの…父さん、質感まで偽装できる魔道具も…あるのか?」
「ああ、一応はあるぞ。かなり珍しいものだから高値になるが…な」
そう言った父さんは、もしそれを使っているなら盗賊団の後ろにどこかの国がついていると疑ったかもしれないなと教えてくれた。
「ただそれが分かっただけで、魔法でも力技でもどうにもならなかったらしい。魔道具技師をここに連れてくるしかないかもって言ってる」
「それなら、さっき陰護衛に頼んでいるから、もうすぐ着くだろう」
「さすが、ファーガス兄さん」
にこっと嬉しそうに笑ったウィル兄は、すぐにノート型魔道具に書き込んだ。
「ファーガス兄さんに礼を言っておいてくれって、衛兵隊長からだよー」
「いや、職務を果たしたまでだ。そちらの働きに感謝をと返してくれるか?」
「了解ー!」
しばらくすると、魔道具技師が現場に到着したと報告が入った。
「これでどうにかなると良いんだが…」
ファーガス兄さんは少しだけ心配そうに、そう呟いた。
「あーそっか。もしこれがダンジョン産の隠蔽の魔道具だとすると…解除もそう簡単じゃないって可能性もあるのかー」
「まあそうだろうな。いくら質感がそのままだったとは言っても、近くで採取していた衛兵が気づかない程なら…かなり高性能な魔道具だからな」
ウィル兄さんと父さんはそう言い合うと、心配そうに眉間にしわを寄せた。
「一応俺がこの街で一番腕が良いと思う魔道具技師に声をかけて、事情を説明した上で向かってもらえるようにと手配はしたんだが…」
へぇ、そうなのか。ファーガス兄さんが一番腕が良いと思う魔道具技師って、いったい誰なんだろうと少しだけ興味が湧いた。まあ俺が尋ねる前にウィル兄が口を開いたから、名前は聞けなかったんだが。
「あ…え…?」
「ウィル、どうした」
「えっと…隠蔽の魔道具の解除、できたって!」
「えっ…もうできたのかっ!?」
驚きに思わず声を上げたのは、俺だけでは無かった。
「え…?」
「は?」
「もう?」
声をあげた父さんもファーガス兄さんも、そしてクレットも大きく目を見開いている。
「隠蔽の魔道具は地面に埋めるか真上に設置するかの二択だからと言って、橋の裏にひっそりと設置してあった魔道具本体をあっさりと発見したらしい…よ?」
「へぇ…それはすごいな…」
「そんな二択は、俺も知らなかったな」
「貴重な事を教えてもらってしまいました…」
幽霊になってから新しい事を知る事ができるなんて思ってもみなかったですと、クレットは嬉しそうに微笑んだ。
「あーでも残念ながら、室内に突入したけど誰もいなかったって…」
「そうか、もう放棄した後って事だろうか?」
「それともひと仕事しに行っているか…だな」
「迷惑な奴らだ」
「残るはルティルーの森にある廃墟だけ…か…」
そう、クレットが情報を教えてくれた牙蛇盗賊団のアジトは三つ。この時点で残るはルティルーの森の奥地にある廃墟だけとなった。もちろんクレットが知らないアジトが存在する可能性も、無いわけじゃないんだが…。
気持ちばかりが焦るけれど、そろそろ時間切れが近い。
「ハル、分かってると思うけど…全員帰らせるよ?」
つらそうな表情を浮かべながらも、ウィル兄は俺に向かってはっきりとそう声をかけた。
「…分かってる。さすがにアキトとキースのために命をかけてくれとは言えないからな」
だが自分一人が抜け出して命がけで助けに行くだけなら、何も問題は無いんじゃないか?そんな考えがふと頭を過った。
「一応言っておくが、一人で行こうとするのも禁止だぞ」
先手を打つかのような父さんの言葉に、俺は何も答えずにただじっと父さんを見返した。
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