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1037.衝撃
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「くるよっ!」
シュリくんの呼びかけと自分の気配探知だけを頼りに攻撃を放とうとしたけど、それよりも前に動きを止めてしまうほどの大きな声が辺りに響いた。
「アキトっ!!」
「え…」
突然名前を呼ばれた俺は、驚きに目を大きく見開いてそのまま固まってしまった。攻撃をするために構えていた手も、気づけば下ろしてしまっている。それぐらい、衝撃的だった。
「は…ハル?」
なんでこんなところにハルが?とか、あの殺気しか感じなかった気配ってもしかしてハルだったの?とか、色々と言いたい事はあるんだけど、そのどれもが言葉にはならなかった。
口から飛び出したのは、え、ほんもの?という呟きだけだった。
俺いつの間にか寝てて、夢でも見てるのかな?それともA級の魔物に、幻を見る魔法をかけられてるとか?
「ほんものだよ」
あ、そのくしゃりって笑い方、ハルがよくするやつだ。
そんな事を考えていると、切り株の向こうからひょこりとキースくんが顔を出した。
「…え…ハル兄…?」
どうやらキースくんにも、ちゃんとハルの姿が見えてるみたいだ。うん、ってことは、これは俺の夢とか幻を見せられてるってわけじゃないよね。
「ハル兄、本物のハル兄だ!」
キースくんは、大急ぎでこちらへと駆け寄ってきた。
「ああ、キースも無事だったか!良かった!」
俺とキースくんをぎゅっと両腕で抱きしめたハルは、はぁーと深い安堵の息を吐いた。
「二人が攫われたと聞いて、生きた心地がしなかったよ…無事で良かった」
噛み締めるようにそう呟いたハルの両腕は、プルプルと小刻みに震えている。
「心配かけてごめん」
「僕も…ごめんなさい」
「謝らないで。二人は悪くないよ。悪いのは…卑劣な罠を使った盗賊団だからね…」
俺から見ても怖いと思うぐらい凄みのある表情で、ハルはぼそりとそう答えた。
「あ、つい思いっきり抱きしめてしまったけど、二人とも怪我は無いかな?」
「うんっ!」
「二人とも怪我はしてないよ」
抱きしめるのをやめた後も、ハルの両手は俺とキースくんの手と繋がれたままだ。もうどこにも行かせないと言いたげなその動きが、くすぐったいけど嬉しい。
「それにしても、どうしてここにいるの?」
「この森の奥に、盗賊団のアジトがあるという情報があったんだ。それで捜索隊を編成して向かっている所だったんだが…アキトの魔力を感じたからここに来たんだ」
ああ、そうか。ハルは俺の魔力が見えるし感じられるんだったな。それなら納得だとキースくんと頷き合っていると、ハルは不思議そうに首を傾げながら尋ねてきた。
「キース、たしか気配を消す魔道具と防音結界の魔道具は…持っていなかったよな?」
「あー…うん、僕は持ってないよ」
「でも俺の気配探知に二人の気配は無かったし、声すら聞こえなかった」
どうしてだと首を傾げているハルに答えたいんだけど、いったい何から説明すれば良いんだろうと考え込んでしまった。
えっと、まずシュリくんと一緒にここまで逃げてきた事を説明して、それからシュリくんの魔法のおかげだよーって言う?でもそれだとシュリくんが人の言葉を喋れる事も説明しないと駄目だよね。
ただの馬だって事にしちゃうと、なんで名前を知ってるの?とかどうやって意思の疎通をしたの?って話しになっちゃうもんね。鋭いハルなら絶対にそこに気づくと思うんだ。
でもシュリくんは人の言葉が喋れる馬なんだよーって勝手にバラしちゃうのは良く無いと思う。かといって、ハルの目の前でシュリくんに話して良い?って聞くのも駄目だし…。
ぐるぐると考え込んでいると、切り株の向こうからシュリくんが小さな声でハルに話しかけた。
「あの…えっと…それはまどうぐじゃなくて、ぼくのまほうだよ」
「…きみは?」
驚いた様子がかけらも無かったから、どうやら切り株の向こうに誰かがいる事にはだいぶ前から気づいていたみたいだ。気配を消す魔法は、距離が近いと効かないのかな。
「ぼくはシュレラーウ。シュリってよんで」
「わかった、シュリだな。俺はハル。アキトの伴侶候補で、キースの兄だ」
姿を見せないシュリくんに、ハルは丁寧にそう声をかけた。
「あのね、ハル。シュリくんも攫われてきたんだ」
慌てて盗賊の仲間じゃないよと口を挟めば、ハルは分かってるよとあっさりと答えてくれた。もしそうならこんな魔法を使ったりしないからねと言われて、怒ってても冷静なハルって格好良いなんて思ってしまった。
シュリくんの呼びかけと自分の気配探知だけを頼りに攻撃を放とうとしたけど、それよりも前に動きを止めてしまうほどの大きな声が辺りに響いた。
「アキトっ!!」
「え…」
突然名前を呼ばれた俺は、驚きに目を大きく見開いてそのまま固まってしまった。攻撃をするために構えていた手も、気づけば下ろしてしまっている。それぐらい、衝撃的だった。
「は…ハル?」
なんでこんなところにハルが?とか、あの殺気しか感じなかった気配ってもしかしてハルだったの?とか、色々と言いたい事はあるんだけど、そのどれもが言葉にはならなかった。
口から飛び出したのは、え、ほんもの?という呟きだけだった。
俺いつの間にか寝てて、夢でも見てるのかな?それともA級の魔物に、幻を見る魔法をかけられてるとか?
「ほんものだよ」
あ、そのくしゃりって笑い方、ハルがよくするやつだ。
そんな事を考えていると、切り株の向こうからひょこりとキースくんが顔を出した。
「…え…ハル兄…?」
どうやらキースくんにも、ちゃんとハルの姿が見えてるみたいだ。うん、ってことは、これは俺の夢とか幻を見せられてるってわけじゃないよね。
「ハル兄、本物のハル兄だ!」
キースくんは、大急ぎでこちらへと駆け寄ってきた。
「ああ、キースも無事だったか!良かった!」
俺とキースくんをぎゅっと両腕で抱きしめたハルは、はぁーと深い安堵の息を吐いた。
「二人が攫われたと聞いて、生きた心地がしなかったよ…無事で良かった」
噛み締めるようにそう呟いたハルの両腕は、プルプルと小刻みに震えている。
「心配かけてごめん」
「僕も…ごめんなさい」
「謝らないで。二人は悪くないよ。悪いのは…卑劣な罠を使った盗賊団だからね…」
俺から見ても怖いと思うぐらい凄みのある表情で、ハルはぼそりとそう答えた。
「あ、つい思いっきり抱きしめてしまったけど、二人とも怪我は無いかな?」
「うんっ!」
「二人とも怪我はしてないよ」
抱きしめるのをやめた後も、ハルの両手は俺とキースくんの手と繋がれたままだ。もうどこにも行かせないと言いたげなその動きが、くすぐったいけど嬉しい。
「それにしても、どうしてここにいるの?」
「この森の奥に、盗賊団のアジトがあるという情報があったんだ。それで捜索隊を編成して向かっている所だったんだが…アキトの魔力を感じたからここに来たんだ」
ああ、そうか。ハルは俺の魔力が見えるし感じられるんだったな。それなら納得だとキースくんと頷き合っていると、ハルは不思議そうに首を傾げながら尋ねてきた。
「キース、たしか気配を消す魔道具と防音結界の魔道具は…持っていなかったよな?」
「あー…うん、僕は持ってないよ」
「でも俺の気配探知に二人の気配は無かったし、声すら聞こえなかった」
どうしてだと首を傾げているハルに答えたいんだけど、いったい何から説明すれば良いんだろうと考え込んでしまった。
えっと、まずシュリくんと一緒にここまで逃げてきた事を説明して、それからシュリくんの魔法のおかげだよーって言う?でもそれだとシュリくんが人の言葉を喋れる事も説明しないと駄目だよね。
ただの馬だって事にしちゃうと、なんで名前を知ってるの?とかどうやって意思の疎通をしたの?って話しになっちゃうもんね。鋭いハルなら絶対にそこに気づくと思うんだ。
でもシュリくんは人の言葉が喋れる馬なんだよーって勝手にバラしちゃうのは良く無いと思う。かといって、ハルの目の前でシュリくんに話して良い?って聞くのも駄目だし…。
ぐるぐると考え込んでいると、切り株の向こうからシュリくんが小さな声でハルに話しかけた。
「あの…えっと…それはまどうぐじゃなくて、ぼくのまほうだよ」
「…きみは?」
驚いた様子がかけらも無かったから、どうやら切り株の向こうに誰かがいる事にはだいぶ前から気づいていたみたいだ。気配を消す魔法は、距離が近いと効かないのかな。
「ぼくはシュレラーウ。シュリってよんで」
「わかった、シュリだな。俺はハル。アキトの伴侶候補で、キースの兄だ」
姿を見せないシュリくんに、ハルは丁寧にそう声をかけた。
「あのね、ハル。シュリくんも攫われてきたんだ」
慌てて盗賊の仲間じゃないよと口を挟めば、ハルは分かってるよとあっさりと答えてくれた。もしそうならこんな魔法を使ったりしないからねと言われて、怒ってても冷静なハルって格好良いなんて思ってしまった。
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