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1033.現在地は
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たくさん撫でられて幸せそうにしていた馬くんだけど、不意にハッと何かに驚いたように顔をあげた。
「…どうかした?追手?」
俺の気配探知では何も感じてないんだけど、馬くんにはもっと距離があっても分かるのかな。そう考えた俺が身構えながら聞いてみれば、馬くんはふるふると首を振った。
「そっちはまだだいじょうぶ。えっとね…」
俺とキースくんを交互に見つめながら、馬くんは躊躇いがちに口を開いた。
「ふたりもさらわれてきたなら、ここがどこなのかしらないよね。いまそれにきづいたの…」
「あーうん。俺は全然分からなかったんだけどね…」
「けど?」
不思議そうに尋ねてくる馬くんが安心できるようにと優しく撫でながら、俺はキースくんにちらりと視線を向けた。すぐに俺の視線の意味を察してくれたキースくんは、こくりとひとつ頷いてから口を開いた。
「あのね。僕はここがどこの領か分かるんだ」
「え…なんでわかるの?」
「あのね、その地域でしかしない、鳥の鳴き声がしてたから」
「とりのこえで、そこがどこかわかるの?すごいね!」
うんうんすごいよねと頷きながら同意していると、キースくんは照れくさそうにへへーと笑みを浮かべた。
「あ、あとね、もうひとつ分かった事があるんだ」
「もうひとつ?」
「もうひとつ分かった事って何?」
「あのね、ここはルティルーの森だと思うんだ」
「ルティルーの森?」
聞いた事のない地名に思わず首を傾げれば、キースくんは真剣な表情で教えてくれた。
「うん。えっとね、領都からはちょうど南側に位置する森なんだ」
「へーよくそこまで詳しい場所が分かったね…?」
「あれ。あそこに見えてるあの花、キャルっていう花なんだけどね。あれが、ルティルーの森にしか咲かない花なんだ」
キースくんの説明によると、このキャルという花はこの森から外に出した瞬間に枯れてしまうという何とも珍しい性質を持つ花らしい。手で持っている物はもちろん、魔導収納鞄に入れていてもこの森から一歩出たらそれだけで枯れてしまうんだって。
どういう原理なのって思わず聞いてしまったけど、詳しい事は分かってないって言われちゃったよ。ただこの花も数百年前の精霊の悪戯だとか、祝福だとか言われてるものらしい。
きっとこういう精霊が関係してる素材って、世界中の色んな所にあるんだろうな。
ちなみに薬草としての利用価値はかなり高いらしくて、この薬草をポーションなどに使いたい場合は、森の中に機材を持ち込んで加工したりする事もあるらしいよ。
持ち出せないからここで加工してみるっていう、その発想がすごいよね。さすがにこの世界の人たちは逞しいなと感心しちゃう。
ちなみにポーションとかに加工すれば、何の問題も無く持ち出せるというのも何だか不思議だ。
でもまあその花のおかげでここがどこか分かったんだから、キャルの花には感謝しないと駄目だよね。
「はーそれにしても、本当にすごいね」
「ううん。これはね、詳しい図鑑をくれた父さまのおかげだから」
うわーケイリーさんに伝えたいな、今の言葉。きっと覚えてたお前が偉いんだって、力いっぱい叫んでくれると思うな。
「あのね、ルティルーのもりって…どこにあるの?」
僕は聞いた事のない森なんだけど…と馬くんは不安そうにぽつりとそう呟いた。
「あ、ごめん。ウェルマール領だよ」
「うぇるまーるりょうって…へんきょう?」
「うん、そうとも言うよ」
キースくんの答えを聞くなり、馬くんはキラキラと目を輝かせた。
「へんきょう!それなら、ぼく、そこのいちばんえらいひとに、あいたいな!」
「一番偉い人って…領主様の事かな?」
一番偉い人って、たぶんそういう意味だよね?俺の質問に、馬くんはうんすぐに頷いた。
「どうして領主様に会いたいの?」
「えっとね、そのひとは、とうさまとかあさまが、いざというときにたよっていいっていってた、いいひとなの」
「へーそうなんだ!」
パァァッと一瞬で誇らし気な笑顔になったキースくんが、可愛くてたまらない。
急にお父さんの名前が出てきたから、ちょっと緊張してたんだろうな。馬くんのお父さんとお母さんからも信頼されてるからだって言われたのが、よっぽど嬉しかったらしい。
微笑ましく思った俺とは違って、理由の分からない馬くんは不思議そうに尋ねた。
「ねえ、なんでそんなにうれしそうなの?」
「あのね、その人は僕のお父さまなんだよ」
追手を気にしているのか賢いキースくんは、声を潜めて馬くんの耳元でそう囁いた。馬くんは驚いた様子で何度も瞬きを繰り返している。
その反応も可愛いな。
「…どうかした?追手?」
俺の気配探知では何も感じてないんだけど、馬くんにはもっと距離があっても分かるのかな。そう考えた俺が身構えながら聞いてみれば、馬くんはふるふると首を振った。
「そっちはまだだいじょうぶ。えっとね…」
俺とキースくんを交互に見つめながら、馬くんは躊躇いがちに口を開いた。
「ふたりもさらわれてきたなら、ここがどこなのかしらないよね。いまそれにきづいたの…」
「あーうん。俺は全然分からなかったんだけどね…」
「けど?」
不思議そうに尋ねてくる馬くんが安心できるようにと優しく撫でながら、俺はキースくんにちらりと視線を向けた。すぐに俺の視線の意味を察してくれたキースくんは、こくりとひとつ頷いてから口を開いた。
「あのね。僕はここがどこの領か分かるんだ」
「え…なんでわかるの?」
「あのね、その地域でしかしない、鳥の鳴き声がしてたから」
「とりのこえで、そこがどこかわかるの?すごいね!」
うんうんすごいよねと頷きながら同意していると、キースくんは照れくさそうにへへーと笑みを浮かべた。
「あ、あとね、もうひとつ分かった事があるんだ」
「もうひとつ?」
「もうひとつ分かった事って何?」
「あのね、ここはルティルーの森だと思うんだ」
「ルティルーの森?」
聞いた事のない地名に思わず首を傾げれば、キースくんは真剣な表情で教えてくれた。
「うん。えっとね、領都からはちょうど南側に位置する森なんだ」
「へーよくそこまで詳しい場所が分かったね…?」
「あれ。あそこに見えてるあの花、キャルっていう花なんだけどね。あれが、ルティルーの森にしか咲かない花なんだ」
キースくんの説明によると、このキャルという花はこの森から外に出した瞬間に枯れてしまうという何とも珍しい性質を持つ花らしい。手で持っている物はもちろん、魔導収納鞄に入れていてもこの森から一歩出たらそれだけで枯れてしまうんだって。
どういう原理なのって思わず聞いてしまったけど、詳しい事は分かってないって言われちゃったよ。ただこの花も数百年前の精霊の悪戯だとか、祝福だとか言われてるものらしい。
きっとこういう精霊が関係してる素材って、世界中の色んな所にあるんだろうな。
ちなみに薬草としての利用価値はかなり高いらしくて、この薬草をポーションなどに使いたい場合は、森の中に機材を持ち込んで加工したりする事もあるらしいよ。
持ち出せないからここで加工してみるっていう、その発想がすごいよね。さすがにこの世界の人たちは逞しいなと感心しちゃう。
ちなみにポーションとかに加工すれば、何の問題も無く持ち出せるというのも何だか不思議だ。
でもまあその花のおかげでここがどこか分かったんだから、キャルの花には感謝しないと駄目だよね。
「はーそれにしても、本当にすごいね」
「ううん。これはね、詳しい図鑑をくれた父さまのおかげだから」
うわーケイリーさんに伝えたいな、今の言葉。きっと覚えてたお前が偉いんだって、力いっぱい叫んでくれると思うな。
「あのね、ルティルーのもりって…どこにあるの?」
僕は聞いた事のない森なんだけど…と馬くんは不安そうにぽつりとそう呟いた。
「あ、ごめん。ウェルマール領だよ」
「うぇるまーるりょうって…へんきょう?」
「うん、そうとも言うよ」
キースくんの答えを聞くなり、馬くんはキラキラと目を輝かせた。
「へんきょう!それなら、ぼく、そこのいちばんえらいひとに、あいたいな!」
「一番偉い人って…領主様の事かな?」
一番偉い人って、たぶんそういう意味だよね?俺の質問に、馬くんはうんすぐに頷いた。
「どうして領主様に会いたいの?」
「えっとね、そのひとは、とうさまとかあさまが、いざというときにたよっていいっていってた、いいひとなの」
「へーそうなんだ!」
パァァッと一瞬で誇らし気な笑顔になったキースくんが、可愛くてたまらない。
急にお父さんの名前が出てきたから、ちょっと緊張してたんだろうな。馬くんのお父さんとお母さんからも信頼されてるからだって言われたのが、よっぽど嬉しかったらしい。
微笑ましく思った俺とは違って、理由の分からない馬くんは不思議そうに尋ねた。
「ねえ、なんでそんなにうれしそうなの?」
「あのね、その人は僕のお父さまなんだよ」
追手を気にしているのか賢いキースくんは、声を潜めて馬くんの耳元でそう囁いた。馬くんは驚いた様子で何度も瞬きを繰り返している。
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