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1031.脱出
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「ねえ、さっきから、ぶつかっても衝撃が来ないのはなんで?」
まっすぐ廊下を走ってるうちにと思ったのか、キースくんが不思議そうにそう尋ねた。俺も気になる事を率直に聞いてくれて、本当に助かるよ。ありがとう、キースくん。
「えとね、ぼうぎょへきっていったら、わかる?」
「へえ、それって魔法ってこと?」
「うん、そうだよー」
二人も背中に乗せているとは思えないほど、軽やかに走りながら馬くんはそう教えてくれた。さっきから壁を壊して走ってと大忙しなのに、息すら弾んでないんだからすごいよね。
「さっきの部屋では俺は魔力が練れなかったんだけど、そこでも君は魔法を使えてたよね?」
さっきからそれも気になってたんだ。
「ああ、うまとひとは、まほうのつかいかたがちがうから」
「そうなの?」
「うん、えっとねー」
すごい速度で移動中とは思えないほど穏やかに説明をしようとしてくれたけれど、その瞬間背後から叫び声が聞こえてきた。
「おい、ここのかべ…なんで崩れてるんだよ!」
「知るかよ!」
「って、ああああああ、いたぁぁぁぁぁ!」
「は?おいおい、なんであの二人まで逃げてるんだよぉぉぉ!」
あ、今の声は見張りをしてた人の一人だな。
「鍵開けられないんじゃなかったのかよ!」
「そう言ったのはお前だろうが!」
「に、逃がすなー!」
「分かってるわ、指図すんな!」
「は?指図なんてしてねぇわ!」
「あ?してただろうが!」
「喧嘩してる場合か、とっとといけ、馬鹿ども!」
「誰が馬鹿だって?」
「お前別にお頭でも無いのに偉そうにしやがって」
「そうだそうだ!」
「いいから追いかけろ!」
うーん、口では思いっきり言い合いを繰り広げながらも、全員が武器を取り出したり魔力を練り出したりと忙しそうにしている。さっと弓を構えた盗賊もいるな。
こちらも魔力を練ろうかと考えた瞬間、馬くんはしっかりつかまっててねーと声をあげた。
「ちょっとだけ、そくどあげるから」
「ああ、頼む」
「おねがいっ!」
反射的に出た言葉に、馬くんは嬉しそうにぴょんっと軽くジャンプしてみせた。
「うん、まっかせてー!」
元気に答えた馬くんは、本当に一気に速度を上げてみせた。
「おい、やばいやばい」
「おい、玄関に向かってないか?」
「やばいって!」
「いやいや、あの扉はさすがに開けられないだろ!」
「ああ、そうだな!」
「よし扉の方まで追い込め!」
そんな声が、はるか後ろからうっすらと聞こえてくる。
「うーん、たしかにあのとびらはむりかも」
前方に見えてきた玄関らしき巨大な扉をちらりと見た馬くんは、でも…と言葉を続けた。
「そういうときはかべをつぶせばいいんだって、とうさまとかあさまのともだちがいってた!」
あーなるほど。だからさっきからずっと、馬くんはひたすら壁を潰してここまで来たのか。魔道具よりも壁の方が、攻略が楽だからって事なんだろうな。
普通なら、まずあんなにぽんぽん壁を壊せないんだけどね。
いやでもその教えが無かったら、ここまでこんなにあっさりと来る事はできなかっただろう。それを教えてくれたご両親のお友達さんに心のなかで感謝をしながら、俺は目の前に座っているキースくんの体を抱きしめるようにして体を丸めた。
「は…嘘だろう!?」
「おいおいおい、あの馬…」
「扉じゃないところを狙ってるのか!?」
背後からはたまに弓矢や魔法が飛んでくるけど、全て馬くんの魔法である防御壁とやらで弾かれている。
なすすべのない背後の盗賊たちの悲鳴が聞こえるなか、馬くんはすこしの躊躇もせずに、巨大な扉の真横の壁をぶち破った。途端に外気を肌で感じる。え、もしかして。
慌てて周りに視線を向ければ、そこには太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見える美しい森があった。
「わー外だ!出れた!」
「まだでただけだけどね」
「確かに!でもすごいよ!」
叫ぶようにそう答えながらちらりと後ろを振り返ってみれば、俺達が捕まっていた建物が遠くにちらりと見えた。
へぇ、あんな建物だったんだ。
外側から見た感じは、ただの森に飲み込まれた廃墟にしか見えない。でもあれは多分わざとそう見えるようにしているんだろうな。中は比較的綺麗だったし魔力封じの魔道具まであったんだから。
ただ外から見た建物の大きさよりも、中の方がだいぶ広かった気がするな。まあこの世界だと不思議な魔道具や魔法が普通にあるから、あり得ないような不思議ってわけでも無いか。
「あんな所にいたんだ…俺達」
背後からは逃がしたら殺されるとか逃げるなーという声に混じって、頼むから逃げないでくれよなんて懇願まで聞こえてくる状態だ。勝手に攫ってきておいて、そんな事を言われても困るんだけどね。
あ、じゃあって逃げるのをやめるわけがないだろ。
まっすぐ廊下を走ってるうちにと思ったのか、キースくんが不思議そうにそう尋ねた。俺も気になる事を率直に聞いてくれて、本当に助かるよ。ありがとう、キースくん。
「えとね、ぼうぎょへきっていったら、わかる?」
「へえ、それって魔法ってこと?」
「うん、そうだよー」
二人も背中に乗せているとは思えないほど、軽やかに走りながら馬くんはそう教えてくれた。さっきから壁を壊して走ってと大忙しなのに、息すら弾んでないんだからすごいよね。
「さっきの部屋では俺は魔力が練れなかったんだけど、そこでも君は魔法を使えてたよね?」
さっきからそれも気になってたんだ。
「ああ、うまとひとは、まほうのつかいかたがちがうから」
「そうなの?」
「うん、えっとねー」
すごい速度で移動中とは思えないほど穏やかに説明をしようとしてくれたけれど、その瞬間背後から叫び声が聞こえてきた。
「おい、ここのかべ…なんで崩れてるんだよ!」
「知るかよ!」
「って、ああああああ、いたぁぁぁぁぁ!」
「は?おいおい、なんであの二人まで逃げてるんだよぉぉぉ!」
あ、今の声は見張りをしてた人の一人だな。
「鍵開けられないんじゃなかったのかよ!」
「そう言ったのはお前だろうが!」
「に、逃がすなー!」
「分かってるわ、指図すんな!」
「は?指図なんてしてねぇわ!」
「あ?してただろうが!」
「喧嘩してる場合か、とっとといけ、馬鹿ども!」
「誰が馬鹿だって?」
「お前別にお頭でも無いのに偉そうにしやがって」
「そうだそうだ!」
「いいから追いかけろ!」
うーん、口では思いっきり言い合いを繰り広げながらも、全員が武器を取り出したり魔力を練り出したりと忙しそうにしている。さっと弓を構えた盗賊もいるな。
こちらも魔力を練ろうかと考えた瞬間、馬くんはしっかりつかまっててねーと声をあげた。
「ちょっとだけ、そくどあげるから」
「ああ、頼む」
「おねがいっ!」
反射的に出た言葉に、馬くんは嬉しそうにぴょんっと軽くジャンプしてみせた。
「うん、まっかせてー!」
元気に答えた馬くんは、本当に一気に速度を上げてみせた。
「おい、やばいやばい」
「おい、玄関に向かってないか?」
「やばいって!」
「いやいや、あの扉はさすがに開けられないだろ!」
「ああ、そうだな!」
「よし扉の方まで追い込め!」
そんな声が、はるか後ろからうっすらと聞こえてくる。
「うーん、たしかにあのとびらはむりかも」
前方に見えてきた玄関らしき巨大な扉をちらりと見た馬くんは、でも…と言葉を続けた。
「そういうときはかべをつぶせばいいんだって、とうさまとかあさまのともだちがいってた!」
あーなるほど。だからさっきからずっと、馬くんはひたすら壁を潰してここまで来たのか。魔道具よりも壁の方が、攻略が楽だからって事なんだろうな。
普通なら、まずあんなにぽんぽん壁を壊せないんだけどね。
いやでもその教えが無かったら、ここまでこんなにあっさりと来る事はできなかっただろう。それを教えてくれたご両親のお友達さんに心のなかで感謝をしながら、俺は目の前に座っているキースくんの体を抱きしめるようにして体を丸めた。
「は…嘘だろう!?」
「おいおいおい、あの馬…」
「扉じゃないところを狙ってるのか!?」
背後からはたまに弓矢や魔法が飛んでくるけど、全て馬くんの魔法である防御壁とやらで弾かれている。
なすすべのない背後の盗賊たちの悲鳴が聞こえるなか、馬くんはすこしの躊躇もせずに、巨大な扉の真横の壁をぶち破った。途端に外気を肌で感じる。え、もしかして。
慌てて周りに視線を向ければ、そこには太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見える美しい森があった。
「わー外だ!出れた!」
「まだでただけだけどね」
「確かに!でもすごいよ!」
叫ぶようにそう答えながらちらりと後ろを振り返ってみれば、俺達が捕まっていた建物が遠くにちらりと見えた。
へぇ、あんな建物だったんだ。
外側から見た感じは、ただの森に飲み込まれた廃墟にしか見えない。でもあれは多分わざとそう見えるようにしているんだろうな。中は比較的綺麗だったし魔力封じの魔道具まであったんだから。
ただ外から見た建物の大きさよりも、中の方がだいぶ広かった気がするな。まあこの世界だと不思議な魔道具や魔法が普通にあるから、あり得ないような不思議ってわけでも無いか。
「あんな所にいたんだ…俺達」
背後からは逃がしたら殺されるとか逃げるなーという声に混じって、頼むから逃げないでくれよなんて懇願まで聞こえてくる状態だ。勝手に攫ってきておいて、そんな事を言われても困るんだけどね。
あ、じゃあって逃げるのをやめるわけがないだろ。
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