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1016.【ハル視点】食事の時間
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当たり前のように全員が揃っていただきますと口にした事が、なんだか自分の事のように嬉しかった。
あーもしアキトがここにいたら、きっと感動したんだろうな。もしかしたら涙目になっていたかもしれない。その後、皆がいただきますって言ってくれたよと喜んでいる姿を想像してみると、それだけでついつい笑顔がこぼれてしまった。
「あーハル、今アキトくんの事考えてたでしょー?」
目敏く気づいて揶揄うようにそう声をかけてきたウィル兄に、俺はにっこりと笑みを浮かべてさらりと答えた。
「ああ、ちょうど今アキトの事を考えてたよ」
離れていても大切な人の事を考えるのは、別に恥ずかしい事じゃないだろう。堂々とそう言い返せば、父さんはふふと微笑まし気に笑みを浮かべた。
「そうだな。伴侶や伴侶候補について考えていれば、自然と笑顔になるのは仕方ないさ」
「ああ、それはそうだな」
父とファーガス兄さんが笑いながらそう答えれば、ウィル兄もあー確かに俺もジルを思えば笑顔になるなーと返してくる。
うん。他の場所ではどうだか分からないが、すくなくとも我が家ではこれが当たり前だ。
「はい、お皿ー」
「ありがとう」
礼を言って受け取った皿を手に、テーブルの上にならんだ料理に視線を向ける。
今日の料理は、大皿にどっさりと用意されているのを自分たちで取り分ける方式のようだ。
「どれも美味そうだな」
「うん、どれから食べようか悩むなー」
「悩む?」
「俺は皆よりは小食だからねー」
ウィル兄はそう言うなり、真剣な表情で料理を見比べ始めた。ああ、そう言われれば確かに我が家の中では小食な方かもしれないな。
「今日は肉料理が多いな」
嬉しそうにぽつりとそう呟いたファーガス兄さんに、俺はそうだなと笑顔で答えた。ラスの作る肉料理は、どれを食べても絶品だからな。肉料理がたくさんあるのは、素直に嬉しいと思う。
「会議の参加者に出す料理と同じものにしてもらったから、そのせいもあるのかもしれないな」
「へーそうなんだ。騎士も衛兵も肉料理好きだもんねー」
「肉が苦手な奴のために、ちゃんと魚料理もいくつかあるみたいだな。うん、さすがラスだ」
普段はあまりラスの料理を食べられない人たちにも美味しく食べて欲しいと、色々と考えて作られた料理なんだな。
今日の料理の味付けは、どちらかというと分かりやすいものが多そうだ。あまり複雑な味付けだと、食べ慣れていない人を困惑させてしまうかもしれないと考えたんだろうな。
だがその分、手は一切抜いていないのがラスらしい所だな。
例えばこの赤紫色をした細長い野菜だ。
これは皮ごと食べる事ができる野菜の一種だ。家庭料理や屋台飯なら、皮ごと調理される事の方が多いし、その方が一般的だと言える。
だがこの料理に使われている分は、全ての皮が綺麗に剥いて取り除かれている。
興味本位でなんで皮を剥いているのかと聞いてみた事があるんだが、ラスの返事は食感と味の染み方が違うんだ――だった。
例えばこっちの肉料理。
これは普通に調理しても硬すぎるため、基本的に煮込み料理にしか使えないと言われている肉だ。だがラスは、それをじっくりと時間をかけて蒸し焼きにしてからほぐすようにしている。
そうする事で手間は恐ろしくかかるが、驚くほど柔らかくなるんだよな。
例え分かりやすい味付けに変更されていても、作り手がラスなら文句なしで美味しい。それを知っている俺達は、わいわいと話しながら料理を取り分けていった。
取り分けた料理をいそいそと口に運べば、想像以上の美味しさに笑ってしまいそうになった。
「美味いな」
「こっちのマルックスのやつ、すっごい美味しいよー」
「マルックスのなんてあったか?」
「あ、これこれ」
「うん、今日も美味しいな」
ぽつぽつと感想を言ったり料理のお勧めをし合う時以外は、俺達の食事中は静かなものだ。
今ここにいるのは、父と兄が二人、そして俺だけだ。もしここに母がいれば父に話しかけてそこから話しが広がったりもするんだが、今はいないからな。
アキトがいれば俺もあれこれと話しをするんだが、ここにいる顔ぶれだと別に無理に会話をしなくても良いかと思ってしまう。
うん。まあ、静かな食事もたまには良いものだよな。
俺達が食事を楽しんでいたこの時、まさかアキトとキースの身にあんな事が起きているなんて、この時の俺は思ってもみなかったからな。
あーもしアキトがここにいたら、きっと感動したんだろうな。もしかしたら涙目になっていたかもしれない。その後、皆がいただきますって言ってくれたよと喜んでいる姿を想像してみると、それだけでついつい笑顔がこぼれてしまった。
「あーハル、今アキトくんの事考えてたでしょー?」
目敏く気づいて揶揄うようにそう声をかけてきたウィル兄に、俺はにっこりと笑みを浮かべてさらりと答えた。
「ああ、ちょうど今アキトの事を考えてたよ」
離れていても大切な人の事を考えるのは、別に恥ずかしい事じゃないだろう。堂々とそう言い返せば、父さんはふふと微笑まし気に笑みを浮かべた。
「そうだな。伴侶や伴侶候補について考えていれば、自然と笑顔になるのは仕方ないさ」
「ああ、それはそうだな」
父とファーガス兄さんが笑いながらそう答えれば、ウィル兄もあー確かに俺もジルを思えば笑顔になるなーと返してくる。
うん。他の場所ではどうだか分からないが、すくなくとも我が家ではこれが当たり前だ。
「はい、お皿ー」
「ありがとう」
礼を言って受け取った皿を手に、テーブルの上にならんだ料理に視線を向ける。
今日の料理は、大皿にどっさりと用意されているのを自分たちで取り分ける方式のようだ。
「どれも美味そうだな」
「うん、どれから食べようか悩むなー」
「悩む?」
「俺は皆よりは小食だからねー」
ウィル兄はそう言うなり、真剣な表情で料理を見比べ始めた。ああ、そう言われれば確かに我が家の中では小食な方かもしれないな。
「今日は肉料理が多いな」
嬉しそうにぽつりとそう呟いたファーガス兄さんに、俺はそうだなと笑顔で答えた。ラスの作る肉料理は、どれを食べても絶品だからな。肉料理がたくさんあるのは、素直に嬉しいと思う。
「会議の参加者に出す料理と同じものにしてもらったから、そのせいもあるのかもしれないな」
「へーそうなんだ。騎士も衛兵も肉料理好きだもんねー」
「肉が苦手な奴のために、ちゃんと魚料理もいくつかあるみたいだな。うん、さすがラスだ」
普段はあまりラスの料理を食べられない人たちにも美味しく食べて欲しいと、色々と考えて作られた料理なんだな。
今日の料理の味付けは、どちらかというと分かりやすいものが多そうだ。あまり複雑な味付けだと、食べ慣れていない人を困惑させてしまうかもしれないと考えたんだろうな。
だがその分、手は一切抜いていないのがラスらしい所だな。
例えばこの赤紫色をした細長い野菜だ。
これは皮ごと食べる事ができる野菜の一種だ。家庭料理や屋台飯なら、皮ごと調理される事の方が多いし、その方が一般的だと言える。
だがこの料理に使われている分は、全ての皮が綺麗に剥いて取り除かれている。
興味本位でなんで皮を剥いているのかと聞いてみた事があるんだが、ラスの返事は食感と味の染み方が違うんだ――だった。
例えばこっちの肉料理。
これは普通に調理しても硬すぎるため、基本的に煮込み料理にしか使えないと言われている肉だ。だがラスは、それをじっくりと時間をかけて蒸し焼きにしてからほぐすようにしている。
そうする事で手間は恐ろしくかかるが、驚くほど柔らかくなるんだよな。
例え分かりやすい味付けに変更されていても、作り手がラスなら文句なしで美味しい。それを知っている俺達は、わいわいと話しながら料理を取り分けていった。
取り分けた料理をいそいそと口に運べば、想像以上の美味しさに笑ってしまいそうになった。
「美味いな」
「こっちのマルックスのやつ、すっごい美味しいよー」
「マルックスのなんてあったか?」
「あ、これこれ」
「うん、今日も美味しいな」
ぽつぽつと感想を言ったり料理のお勧めをし合う時以外は、俺達の食事中は静かなものだ。
今ここにいるのは、父と兄が二人、そして俺だけだ。もしここに母がいれば父に話しかけてそこから話しが広がったりもするんだが、今はいないからな。
アキトがいれば俺もあれこれと話しをするんだが、ここにいる顔ぶれだと別に無理に会話をしなくても良いかと思ってしまう。
うん。まあ、静かな食事もたまには良いものだよな。
俺達が食事を楽しんでいたこの時、まさかアキトとキースの身にあんな事が起きているなんて、この時の俺は思ってもみなかったからな。
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