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1011.【ハル視点】緊急会議のはじまり
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ようやく二人の拘束から解放された俺は、そのまますぐに会議室へと向かう事にした。早く終わればアキトとキースに合流しても良いんだよなと、ふと思いついてしまったからだ。
兄達は急かす俺に苦笑しながらも、抵抗するでもなく素直に速度を上げてくれた。あー、きっと俺が考えてる事なんて、伴侶愛の強い二人にはしっかりバレてるんだろうな。まあ急いでくれるなら文句は無いが。
急ぎ足で廊下を進んで行き、辿り着いたのは騎士団本部の中にある大会議室だ。
「お待ちしておりました」
にっこりと笑顔で出迎えたのは、さっきまで一緒に見送りをしていた筈の執事長のボルトだった。きっと裏の廊下を駆使して、ここまで来たんだろうな。
「領主様はまだですが、どうぞ中でお待ちください」
そんな声と共に招き入れられた部屋の中には、既に数名の騎士団隊長たちと衛兵隊長たちの姿があった。椅子に座って何かを話しながら待機していたようだが、一番前を歩いているファーガス兄さんに気づいた瞬間全員がザッと一斉に立ち上がった。
「「「「「おはようございます」」」」」
騎士団員だけならともかく衛兵たちまでぴたりと重なった声に、ファーガス兄さんは少しだけ困惑した様子で答えた。
「…ああ、おはよう。みんな、楽にしてくれ」
いきなり会話をやめてしかも立ち上がって挨拶をされるなんて、やっぱり俺は恐れられているんだろうか――とか考えていそうな顔だな。
多分この反応は、単純に兄への敬意から来るものだと思うんだが。まあそのあたりの誤解についてはここで俺達が何か言うよりも、マティさんが後で言ったほうが伝わるから良いか。
「おはようー」
ウィル兄も、この兄と部下達のすれ違いには慣れ切っているんだろう。何事もなかったかのように普通にのんびりと返事を返した。
「おはよう」
挨拶を返しながら兄たちに続いて部屋の中へと足を進めれば、あっと声があがった。ん?と視線をあげれば、じっと俺を見つめている騎士団員たちと目があった。
「今日の会議はハロルド様も参加して下さるんですね」
「ああ、参加させてもらう事になった」
よろしく頼むと返してから、俺はファーガス兄さんに席に座ろうと合図を送った。まずファーガス兄さんが座らないと、ここにいる誰も座ろうとしないだろうからな。
「ファーガス様、失礼します。こちらの書類なんですが…」
「それは…ありがとう。今受け取っておく」
渡された書類を真剣に読んでいるファーガス兄さんは、手渡した騎士団員が周りから羨ましそうに見つめられている事にも気づいていない。
「この光景もすっかり見慣れたねー」
「相変わらずなんだな」
ウィル兄の呟きに、俺は苦笑しながらそう答えた。
しばらくして会議の参加予定者が全員揃うと、執事長に案内された父がするりと部屋へと入ってきた。きっと領主様よりも遅くなってしまったと萎縮させないために、別室で待機していたんだろうな。
そんな事を考えながら、俺は周りと同じくさっと立ち上がり騎士の敬礼姿勢を取った。騎士の敬礼を行わない衛兵たちも、さっと姿勢を正し胸に手を当てている。
「みんな、朝早くからすまないな」
真剣な表情でその場の全員を見回した父さんは、落ち着いた声でそう声をかけた。
「予定の時間よりもすこし早いが、揃っているようなので緊急会議を始めよう。ファーガス」
指名されたファーガス兄さんは、一気に集まった視線にも動じずに口を開いた。
「はい。本日の会議の議題は、最近発生している領内の不自然な魔物の襲撃についてだ」
ピリッと引き締まった空気の中、ファーガス兄さんはそう切り出した。
「最初に魔物の襲撃が確認されたのは、A級である魔鳥ルダリオンだ。当初はまだルダリオンであるとは判明しておらず、強い魔物が現れたと衛兵からの報告があった」
「ルダリオンは確かに危険ですね」
「A級の中でも、物理攻撃が得意な騎士にはかなり厄介な相手です」
「確かに不自然ですね。この辺りには崖は存在していないのに…」
この領の会議では、参加者全員がいつでも会話に参加する権利がある。これはかなり前の領主の代からずっと続いている会議の規則だ。
俺の予想では、きっと規則にでもしないと、領主一家しか発言しなかったんだろうけどな。だがその規則のおかげで全員が物怖じせずに発言するから、会議が早く終わる。
「危険を排除すべく騎士団を向かわせようとしていたが、それよりも前にルダリオンはこちらのハロルドと伴侶候補であるアキト、そして冒険者のサイクの三人により退治された」
数人の衛兵と騎士たちは、驚いた様子でじっと俺を見つめてきた。全く反応していない人たちは、おそらくサイクさんとミルゴさんからの寄付について早朝訓練の場で騒いだ場所にいたか、その話しを聞いたんだろうな。
「さすがハロルド様」
「いや、俺だけでは倒しきれなかったからな。アキトとサイクさんがいたおかげだ」
素直にそう口にしたが、なぜか納得してくれた様子はなかった。謙遜しているとか思われていそうだな。
ここにいる人たちは皆優秀な人ばかりだが、俺達領主一家への信頼がちょっと強すぎるんだよな。
兄達は急かす俺に苦笑しながらも、抵抗するでもなく素直に速度を上げてくれた。あー、きっと俺が考えてる事なんて、伴侶愛の強い二人にはしっかりバレてるんだろうな。まあ急いでくれるなら文句は無いが。
急ぎ足で廊下を進んで行き、辿り着いたのは騎士団本部の中にある大会議室だ。
「お待ちしておりました」
にっこりと笑顔で出迎えたのは、さっきまで一緒に見送りをしていた筈の執事長のボルトだった。きっと裏の廊下を駆使して、ここまで来たんだろうな。
「領主様はまだですが、どうぞ中でお待ちください」
そんな声と共に招き入れられた部屋の中には、既に数名の騎士団隊長たちと衛兵隊長たちの姿があった。椅子に座って何かを話しながら待機していたようだが、一番前を歩いているファーガス兄さんに気づいた瞬間全員がザッと一斉に立ち上がった。
「「「「「おはようございます」」」」」
騎士団員だけならともかく衛兵たちまでぴたりと重なった声に、ファーガス兄さんは少しだけ困惑した様子で答えた。
「…ああ、おはよう。みんな、楽にしてくれ」
いきなり会話をやめてしかも立ち上がって挨拶をされるなんて、やっぱり俺は恐れられているんだろうか――とか考えていそうな顔だな。
多分この反応は、単純に兄への敬意から来るものだと思うんだが。まあそのあたりの誤解についてはここで俺達が何か言うよりも、マティさんが後で言ったほうが伝わるから良いか。
「おはようー」
ウィル兄も、この兄と部下達のすれ違いには慣れ切っているんだろう。何事もなかったかのように普通にのんびりと返事を返した。
「おはよう」
挨拶を返しながら兄たちに続いて部屋の中へと足を進めれば、あっと声があがった。ん?と視線をあげれば、じっと俺を見つめている騎士団員たちと目があった。
「今日の会議はハロルド様も参加して下さるんですね」
「ああ、参加させてもらう事になった」
よろしく頼むと返してから、俺はファーガス兄さんに席に座ろうと合図を送った。まずファーガス兄さんが座らないと、ここにいる誰も座ろうとしないだろうからな。
「ファーガス様、失礼します。こちらの書類なんですが…」
「それは…ありがとう。今受け取っておく」
渡された書類を真剣に読んでいるファーガス兄さんは、手渡した騎士団員が周りから羨ましそうに見つめられている事にも気づいていない。
「この光景もすっかり見慣れたねー」
「相変わらずなんだな」
ウィル兄の呟きに、俺は苦笑しながらそう答えた。
しばらくして会議の参加予定者が全員揃うと、執事長に案内された父がするりと部屋へと入ってきた。きっと領主様よりも遅くなってしまったと萎縮させないために、別室で待機していたんだろうな。
そんな事を考えながら、俺は周りと同じくさっと立ち上がり騎士の敬礼姿勢を取った。騎士の敬礼を行わない衛兵たちも、さっと姿勢を正し胸に手を当てている。
「みんな、朝早くからすまないな」
真剣な表情でその場の全員を見回した父さんは、落ち着いた声でそう声をかけた。
「予定の時間よりもすこし早いが、揃っているようなので緊急会議を始めよう。ファーガス」
指名されたファーガス兄さんは、一気に集まった視線にも動じずに口を開いた。
「はい。本日の会議の議題は、最近発生している領内の不自然な魔物の襲撃についてだ」
ピリッと引き締まった空気の中、ファーガス兄さんはそう切り出した。
「最初に魔物の襲撃が確認されたのは、A級である魔鳥ルダリオンだ。当初はまだルダリオンであるとは判明しておらず、強い魔物が現れたと衛兵からの報告があった」
「ルダリオンは確かに危険ですね」
「A級の中でも、物理攻撃が得意な騎士にはかなり厄介な相手です」
「確かに不自然ですね。この辺りには崖は存在していないのに…」
この領の会議では、参加者全員がいつでも会話に参加する権利がある。これはかなり前の領主の代からずっと続いている会議の規則だ。
俺の予想では、きっと規則にでもしないと、領主一家しか発言しなかったんだろうけどな。だがその規則のおかげで全員が物怖じせずに発言するから、会議が早く終わる。
「危険を排除すべく騎士団を向かわせようとしていたが、それよりも前にルダリオンはこちらのハロルドと伴侶候補であるアキト、そして冒険者のサイクの三人により退治された」
数人の衛兵と騎士たちは、驚いた様子でじっと俺を見つめてきた。全く反応していない人たちは、おそらくサイクさんとミルゴさんからの寄付について早朝訓練の場で騒いだ場所にいたか、その話しを聞いたんだろうな。
「さすがハロルド様」
「いや、俺だけでは倒しきれなかったからな。アキトとサイクさんがいたおかげだ」
素直にそう口にしたが、なぜか納得してくれた様子はなかった。謙遜しているとか思われていそうだな。
ここにいる人たちは皆優秀な人ばかりだが、俺達領主一家への信頼がちょっと強すぎるんだよな。
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