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1009.【ハル視点】兄達の拘束
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騎士団員にはすこし申し訳ない結果にはなったが、無事に護衛の手配はできた。それならすぐにでも、アキトとキースの所に戻らないとな。
「護衛の手配、ありがとう兄さんたち」
改めてお礼を言えば、二人ともニコリと笑顔を浮かべた。
「気にするな。護衛は大事だからな」
「どういたしましてー」
「それじゃあちょっと二人の見送りに行ってくるから」
そう言ってさっさと部屋から出ようとしたが、途端に呼び止められてしまった。
「まあ待て、ハル」
「そうそう、ちょっと待ってよ。ハル」
「なんだ?」
急いでいるんだがと視線を向ければ、二人はすっと立ち上がって俺の方へと近づいてきた。
「俺達も一緒に見送りに行くよ」
「え、なぜ?今日は会議の準備で忙しかったから、朝食すら食べに来れなかったんだろう?」
「ああ、その通りだな」
「俺もみんなと一緒にごはん食べたかったんだけどねー」
「それなのに見送りには一緒に来るのか?」
むしろそんな時間があるなら、マティさんとジルさんに会いにいきそうなものなのに。思わずそう呟けば、二人は確かにと笑って頷いた。
「でもさーハルが誘惑に負けて一緒にでかけちゃったら困るんだよねー」
「いや、でかけないよ」
今回の会議がもし自分に全く関わりが無い内容だったら、まあその可能性はあったかもしれないが。ルダリオンの件があるだけに、参加して欲しいと言われれば拒否もできない。さすがに今回の会議には、サイクさんも呼べないだろうからな。
「そんな事をするなら、護衛の手配を頼みに来たりしない」
「まあそうだろうけど。でももしアキトくんが一緒に行きたかったなーなんて言ったら?」
あーなるほど。それは揺らぐかもしれない。
「ほら、いまそれは揺らぐなとか思ったでしょ?そういう顔してたよー?」
ウィル兄、頼むから勝手に俺の心の中を読まないで欲しい。
「まあ伴侶に望まれれば、俺だって会議から逃げたくなるからな」
気持ちは分かると言いつつ、ファーガス兄さんの腕がガシッと俺の肩に回された。
「俺も気持ちは分かるよーでも駄目ー」
ニコニコ笑顔のウィル兄も、逆側から同じように俺の肩に腕を回す。
「だから、逃げないって」
「なんだ、二人の見送りぐらいさせてくれよ」
「そうだぞー会議の前に、癒しの弟たちに会いたいんだってー」
俺はふうと一つため息を吐いた。こうなったら二人はそう簡単には諦めないだろう。ここで二人を説得するのも面倒だ。
待っているアキトとキースに、何かあったのかと心配されそうだしな。
あっさりと二人を振り払う事を諦めた俺は、そのまま二人を両側に引きつれたまま玄関横の部屋へと戻る事になった。
「護衛の手配、してきたよ」
そう声をかけた俺をじーっと見つめてから、アキトとキースは順番にファーガス兄さんとウィル兄にも視線を向けた。
そりゃあこんな恰好で帰って来たら、困惑もするよな。
「えっと…お二人ともどうかしたんですか?」
「兄様たちは…なんでそんなにくっついてるの?」
兄達の突拍子の無い行動には慣れている筈のキースも、この登場の仕方はさすがに予想外だったらしい。パチパチと何度も瞬きをしつつ、不思議そうに見つめながらそう尋ねてくる。
「あー、まずは二人ともこんな恰好で登場してすまない、驚かせてしまったな」
ファーガス兄さんは俺の肩を抱いたまま、アキトとキースに向かって丁寧に謝罪した。謝罪するぐらいなら、そろそろ離してくれても良いんだよ。
「いえ、大丈夫です」
「うん、僕もびっくりしたけど大丈夫だよ」
「それならよかった。さっき突然、ハルが護衛の手配を頼むと言いながらいきなり執務室まで来たんだ」
「それがあまりにも唐突過ぎたから、一体何事だって問いただしたんだけどねー?」
苦笑しながらそう答えているウィル兄も、どうやらまだ手を離すつもりは無いみたいだ。
「なぁ、いい加減離してくれないか、兄さんたち?」
「いやー退屈な会議よりも愛しの伴侶候補と可愛い弟との買い物の方が良い!なんて言われたら、さすがに離せないよねー」
あー確かに説明する時にそんな事を言ったな。
「手を離した瞬間全力で逃げるだろうし」
そんな風におどけて笑うウィル兄の言葉の後には、きっとまあさせないけどと続くんだろうな。言葉にしなくてもそれぐらい分かってる。
そこまで警戒しなくても、本当に逃げ出す気は無いんだが。
「ああ、今回の会議にはハルも参加して貰わないと困るんだ。何といってもルダリオンと戦った当事者だからな」
ファーガス兄さんの言葉に、俺は苦笑しながらも分かってるよと答えた。もしそうじゃなかったら、大事な用があると言ってとっくに全力で撒きにかかってる。
「護衛の手配、ありがとう兄さんたち」
改めてお礼を言えば、二人ともニコリと笑顔を浮かべた。
「気にするな。護衛は大事だからな」
「どういたしましてー」
「それじゃあちょっと二人の見送りに行ってくるから」
そう言ってさっさと部屋から出ようとしたが、途端に呼び止められてしまった。
「まあ待て、ハル」
「そうそう、ちょっと待ってよ。ハル」
「なんだ?」
急いでいるんだがと視線を向ければ、二人はすっと立ち上がって俺の方へと近づいてきた。
「俺達も一緒に見送りに行くよ」
「え、なぜ?今日は会議の準備で忙しかったから、朝食すら食べに来れなかったんだろう?」
「ああ、その通りだな」
「俺もみんなと一緒にごはん食べたかったんだけどねー」
「それなのに見送りには一緒に来るのか?」
むしろそんな時間があるなら、マティさんとジルさんに会いにいきそうなものなのに。思わずそう呟けば、二人は確かにと笑って頷いた。
「でもさーハルが誘惑に負けて一緒にでかけちゃったら困るんだよねー」
「いや、でかけないよ」
今回の会議がもし自分に全く関わりが無い内容だったら、まあその可能性はあったかもしれないが。ルダリオンの件があるだけに、参加して欲しいと言われれば拒否もできない。さすがに今回の会議には、サイクさんも呼べないだろうからな。
「そんな事をするなら、護衛の手配を頼みに来たりしない」
「まあそうだろうけど。でももしアキトくんが一緒に行きたかったなーなんて言ったら?」
あーなるほど。それは揺らぐかもしれない。
「ほら、いまそれは揺らぐなとか思ったでしょ?そういう顔してたよー?」
ウィル兄、頼むから勝手に俺の心の中を読まないで欲しい。
「まあ伴侶に望まれれば、俺だって会議から逃げたくなるからな」
気持ちは分かると言いつつ、ファーガス兄さんの腕がガシッと俺の肩に回された。
「俺も気持ちは分かるよーでも駄目ー」
ニコニコ笑顔のウィル兄も、逆側から同じように俺の肩に腕を回す。
「だから、逃げないって」
「なんだ、二人の見送りぐらいさせてくれよ」
「そうだぞー会議の前に、癒しの弟たちに会いたいんだってー」
俺はふうと一つため息を吐いた。こうなったら二人はそう簡単には諦めないだろう。ここで二人を説得するのも面倒だ。
待っているアキトとキースに、何かあったのかと心配されそうだしな。
あっさりと二人を振り払う事を諦めた俺は、そのまま二人を両側に引きつれたまま玄関横の部屋へと戻る事になった。
「護衛の手配、してきたよ」
そう声をかけた俺をじーっと見つめてから、アキトとキースは順番にファーガス兄さんとウィル兄にも視線を向けた。
そりゃあこんな恰好で帰って来たら、困惑もするよな。
「えっと…お二人ともどうかしたんですか?」
「兄様たちは…なんでそんなにくっついてるの?」
兄達の突拍子の無い行動には慣れている筈のキースも、この登場の仕方はさすがに予想外だったらしい。パチパチと何度も瞬きをしつつ、不思議そうに見つめながらそう尋ねてくる。
「あー、まずは二人ともこんな恰好で登場してすまない、驚かせてしまったな」
ファーガス兄さんは俺の肩を抱いたまま、アキトとキースに向かって丁寧に謝罪した。謝罪するぐらいなら、そろそろ離してくれても良いんだよ。
「いえ、大丈夫です」
「うん、僕もびっくりしたけど大丈夫だよ」
「それならよかった。さっき突然、ハルが護衛の手配を頼むと言いながらいきなり執務室まで来たんだ」
「それがあまりにも唐突過ぎたから、一体何事だって問いただしたんだけどねー?」
苦笑しながらそう答えているウィル兄も、どうやらまだ手を離すつもりは無いみたいだ。
「なぁ、いい加減離してくれないか、兄さんたち?」
「いやー退屈な会議よりも愛しの伴侶候補と可愛い弟との買い物の方が良い!なんて言われたら、さすがに離せないよねー」
あー確かに説明する時にそんな事を言ったな。
「手を離した瞬間全力で逃げるだろうし」
そんな風におどけて笑うウィル兄の言葉の後には、きっとまあさせないけどと続くんだろうな。言葉にしなくてもそれぐらい分かってる。
そこまで警戒しなくても、本当に逃げ出す気は無いんだが。
「ああ、今回の会議にはハルも参加して貰わないと困るんだ。何といってもルダリオンと戦った当事者だからな」
ファーガス兄さんの言葉に、俺は苦笑しながらも分かってるよと答えた。もしそうじゃなかったら、大事な用があると言ってとっくに全力で撒きにかかってる。
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