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999.しょっぱいサンドは
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「それじゃあ、いただきます!」
ニコニコ笑顔でそう言ってくれたキースくんに微笑みかけてから、俺もいただきますと繰り返す。
うーん、甘いのとしょっぱいの、どっちから食べようかな。
少しだけ悩みながらちらりと視線を向ければ、キースくんはいそいそとしょっぱい方のサンドを開いていた。
よし、それなら俺もそうしようかな。
ワクワクしながら包みを開けば、美味しそうなサンドが登場した。
真っ白な丸いパンの間に、少し焦げ目がつくぐらいまで焼かれたマルックスと、薄くスライスして焼いたハーレがいくつも重ねられている。
特に目を引くのは、分厚く切って挟んである生のリクイマかな。トゲトゲのウニみたいなオレンジ色の皮を剥いても、中身もオレンジ色だったんだよね。
そのオレンジ色の下には、たっぷりと挟まれた香草の緑がちらりと見えている。
うん、彩りも良くてすごく美味しそうだ。
マルックスは鶏肉に似た味で、ハーレは茄子に似た味――それはもちろん俺も知ってる。
でも、そこに野菜や果物の目利きに自信があるらしいあの屋台のおじさんが選んでくれた、リクイマと香草が足されているんだよね。
つまり、味の想像が一切つかない。でもこんなに良い香りがするんだから、絶対に美味しいんだよ。
一体どんな味がするんだろうとワクワクしながら、具がたっぷり挟まったパンに思いっきりかぶりつく。
もぐもぐと口を動かしてじっくりと味わった後、俺はおもわずまじまじと手の中のサンドを見つめてしまった。
あー、これは…想像以上だ。このサンド、信じられないぐらい美味しい。
おじさんお勧めのリクイマという野菜は、まさかのトマトに似た味の野菜だった。
俺の世界の普通のトマトよりも、だいぶ甘みのある味だ。元の世界でフルーツトマトってのを食べた事があったけど、あれよりももっと甘いかもしれない。
うーん、それにしても鶏肉と茄子にトマトと香草を合わせるなんて…そんなの絶対に合うよね。どう考えても最高の組み合わせだ。
あのおじさんって一体何者なんだろう。魔法も使ってたし、ナイフさばきもただものじゃなかった。さらにこの料理の腕前だ。
「アキトくん…どう?」
ぐるぐるとそんな事を考えていた俺に、キースくんは少し不安そうに声をかけてきた。
うわー、やってしまった。俺が口にするなり固まってるから、もしかして美味しくなかったかもって心配させちゃったのか。俺は大慌てで口を開いた。
「すっごく美味しいよ!美味しすぎてびっくりしてた、心配かけてごめんね」
そう弁解した俺に、キースくんは途端に笑顔になった。
「ううん、美味しかったなら良かったー」
「うん、これは本当にすっごく美味しいよ。こんなすごいお店を教えてくれてありがとう、キースくん」
お礼の言葉を告げれば、キースくんは照れくさそうに笑いながら小さな声でどういたしましてと答えてくれた。
「あ、もし良かったら…アキトくん…僕のも食べてみる?」
キースくんはそう言うと、一口齧った自分のサンドを具材が見やすいようにと差し出して見せてくれた。
「僕が選んだのはねーウルリカの薄切り肉にー一番好きなあのヌキプルを潰したやつと、後はおまかせで頼んだ葉物野菜だよ」
これがそうと指差して教えてくれるキースくんに、俺はうんうんと頷きを返した。
ウルリカってのはダンジョンでハルが出してくれた、あの高級牛肉みたいなお肉だよね。キースくんの好物のヌキプルは、さつまいもとかぼちゃを足して割ったような風味の野菜だ。
そして例のあの七色に太陽の光を反射する、ゲーミング野菜でもある。
「いらない?」
首を傾げて聞いてくるキースくんに、俺はんーと少しだけ考えた。
もし食べてみる?って言われたのが他の人だったら、悩む間もなくすぐにお断りしてたと思う。
俺自身が嫌とかそういう理由じゃなくて、きっとハルが気にするだろうなーと思うから。
もしハルが知らない人の齧ったものを分けてもらって食べてたら、俺もちょっと嫌だもんな。俺ってもしかして――心が狭かったんだろうか。
でも相手はキースくん。ハルの可愛いがっている大事な弟で、今は俺の友達だ。断る理由なんてないよね。
「良いなら食べてみたいな」
「うん、じゃあはい」
「キースくんも嫌いな物が入ってないなら、どうぞ」
交換で俺のサンドを手渡せば、キースくんはぽつりと本当に友達みたいだと呟いた。
ニコニコ笑顔でそう言ってくれたキースくんに微笑みかけてから、俺もいただきますと繰り返す。
うーん、甘いのとしょっぱいの、どっちから食べようかな。
少しだけ悩みながらちらりと視線を向ければ、キースくんはいそいそとしょっぱい方のサンドを開いていた。
よし、それなら俺もそうしようかな。
ワクワクしながら包みを開けば、美味しそうなサンドが登場した。
真っ白な丸いパンの間に、少し焦げ目がつくぐらいまで焼かれたマルックスと、薄くスライスして焼いたハーレがいくつも重ねられている。
特に目を引くのは、分厚く切って挟んである生のリクイマかな。トゲトゲのウニみたいなオレンジ色の皮を剥いても、中身もオレンジ色だったんだよね。
そのオレンジ色の下には、たっぷりと挟まれた香草の緑がちらりと見えている。
うん、彩りも良くてすごく美味しそうだ。
マルックスは鶏肉に似た味で、ハーレは茄子に似た味――それはもちろん俺も知ってる。
でも、そこに野菜や果物の目利きに自信があるらしいあの屋台のおじさんが選んでくれた、リクイマと香草が足されているんだよね。
つまり、味の想像が一切つかない。でもこんなに良い香りがするんだから、絶対に美味しいんだよ。
一体どんな味がするんだろうとワクワクしながら、具がたっぷり挟まったパンに思いっきりかぶりつく。
もぐもぐと口を動かしてじっくりと味わった後、俺はおもわずまじまじと手の中のサンドを見つめてしまった。
あー、これは…想像以上だ。このサンド、信じられないぐらい美味しい。
おじさんお勧めのリクイマという野菜は、まさかのトマトに似た味の野菜だった。
俺の世界の普通のトマトよりも、だいぶ甘みのある味だ。元の世界でフルーツトマトってのを食べた事があったけど、あれよりももっと甘いかもしれない。
うーん、それにしても鶏肉と茄子にトマトと香草を合わせるなんて…そんなの絶対に合うよね。どう考えても最高の組み合わせだ。
あのおじさんって一体何者なんだろう。魔法も使ってたし、ナイフさばきもただものじゃなかった。さらにこの料理の腕前だ。
「アキトくん…どう?」
ぐるぐるとそんな事を考えていた俺に、キースくんは少し不安そうに声をかけてきた。
うわー、やってしまった。俺が口にするなり固まってるから、もしかして美味しくなかったかもって心配させちゃったのか。俺は大慌てで口を開いた。
「すっごく美味しいよ!美味しすぎてびっくりしてた、心配かけてごめんね」
そう弁解した俺に、キースくんは途端に笑顔になった。
「ううん、美味しかったなら良かったー」
「うん、これは本当にすっごく美味しいよ。こんなすごいお店を教えてくれてありがとう、キースくん」
お礼の言葉を告げれば、キースくんは照れくさそうに笑いながら小さな声でどういたしましてと答えてくれた。
「あ、もし良かったら…アキトくん…僕のも食べてみる?」
キースくんはそう言うと、一口齧った自分のサンドを具材が見やすいようにと差し出して見せてくれた。
「僕が選んだのはねーウルリカの薄切り肉にー一番好きなあのヌキプルを潰したやつと、後はおまかせで頼んだ葉物野菜だよ」
これがそうと指差して教えてくれるキースくんに、俺はうんうんと頷きを返した。
ウルリカってのはダンジョンでハルが出してくれた、あの高級牛肉みたいなお肉だよね。キースくんの好物のヌキプルは、さつまいもとかぼちゃを足して割ったような風味の野菜だ。
そして例のあの七色に太陽の光を反射する、ゲーミング野菜でもある。
「いらない?」
首を傾げて聞いてくるキースくんに、俺はんーと少しだけ考えた。
もし食べてみる?って言われたのが他の人だったら、悩む間もなくすぐにお断りしてたと思う。
俺自身が嫌とかそういう理由じゃなくて、きっとハルが気にするだろうなーと思うから。
もしハルが知らない人の齧ったものを分けてもらって食べてたら、俺もちょっと嫌だもんな。俺ってもしかして――心が狭かったんだろうか。
でも相手はキースくん。ハルの可愛いがっている大事な弟で、今は俺の友達だ。断る理由なんてないよね。
「良いなら食べてみたいな」
「うん、じゃあはい」
「キースくんも嫌いな物が入ってないなら、どうぞ」
交換で俺のサンドを手渡せば、キースくんはぽつりと本当に友達みたいだと呟いた。
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