970 / 1,103
969.自由な訓練
しおりを挟む
どうやらファーガスさんの話は、かなりあっさりと終わったみたいだ。
まあここには声は全く聞こえてこないから、集まっていた早朝訓練の参加者さん達が揃って移動をし始めたのを見て、終わったんだって気づいただけなんだけどね。
それにしても早いなーと思ったけど、確かにファーガスさんの性格からしてこういう場所であまり長々と話しそうじゃないよね。気を付けて訓練に挑めとか、全力を尽くせとか言って終わってくれそう。
話が短いって、校長先生とかだったらかなり好かれる理由になるよね。
移動を始めた参加者さん達は、それぞれが思い思いに広い訓練場の各地に散らばっていった。
「あ…ハル見失っちゃいました…」
話し終わったファーガスさんに意識を向けている間に、さっきまでいた場所にハルがいなくなってたんだ。不覚すぎる。
しょんぼりと肩を落としながら呟けば、ジルさんも俺と同じように肩を落としながらボソリと呟いた。
「…私も、ウィルを見失いました」
二人揃って見失うとか、想像もしてなかったな。それだけ参加者が多いって事でもあるんだけどさ。
「俺はファーガスさんに意識を向けてる間に、ハルが移動しちゃったみたいで」
「さっきは自分の隊の隊員がいたので、そちらを見ている間に…同じくウィルも移動したようです」
俺とジルさんは顔を見合わせた。
「少なくともここにいるのは確実ですよね」
「ええ、参加はしているので、ここにいるのは絶対です」
「探しましょう!ウィルさんを見つけたら言いますね」
「ありがとうございます。私もハルさんを見つけたら報告します」
こうして共同戦線を張った俺達は、さっきまでよりも真剣な目で訓練場を見回し始めた。
訓練場を見ていて気づいたんだけど、騎士団の訓練って言うともっとこう皆でまとまって武器を構えて振るとかそういうのかなーと思ってたんだ。勝手な俺の騎士団のイメージなんだけどね。
あ、あと外周をひたすらぐるぐる走って、体力をつけるーとかね。
そういう体育会系のノリなのかと勝手に思ってたんだけど、こうして見ている限りでは早朝訓練の内容はかなり自由みたいだ。
それぞれ自分のしたい訓練に打ち込むのが普通みたいで、大剣をひたすら素振りしている人もいれば、片隅にある的めがけて少しずつ距離を変えながら魔法を打ち続けている人もいる。
「早朝訓練って…かなり自由に訓練をするんですね」
まだウィルさんもハルも見つけられていないのに、思わずジルさんにそう声をかけてしまった。ジルさんは怒るでも呆れるでもなく、すぐにええと頷いてくれた。
「ウィルからは日によって違う内容だと聞いた事がありますので、どうやら今日は自由に訓練の日みたいですね」
ジルさんによると全員揃って走り込みをする日もあれば、総当たりでひたすらに対人戦をする日、それに魔物相手の戦いの実践をしようとダンジョンに向かう日なんてものもあるらしい。
「ああ、でも前半と後半で内容を変える日もあるとは聞きましたね」
「なるほど。訓練に集中できるようにって毎日内容を変えてるんですね…すごいな」
「ええ、本当にすごいと思います。ちなみにこの早朝の訓練内容は、ファーガスさんとケイリーさんが一緒に考えているそうですよ」
お二人ともかなり忙しいと聞いていたけど、こういう事がたくさん重なったせいなんだろうな。
「それにマチルダさんも相談に乗る事があると言ってました」
そんな事を話しながらも、俺もジルさんも視線だけは止めていない。
あ、あっちにいる大きな盾を構えている人なんて、近くにいた人に声をかけて数人がかりで攻撃をしてもらってそれを見事にしのいでいる。って、一瞬だけ見えた顔に見覚えがあるんだけど
「あれ…?」
「どうしました?ハルさんが見つかりましたか?」
「いえ、あのハルでもウィリアムさんでもないんですが…この間ルダリオンの時に知り合った盾使いのミルゴさんがいました」
あっちの大きな盾で複数に切りかかられている人ですと教えれば、ジルさんは驚いた様子でそちらを見た。
「あー…切りかかっているのは全員うちの隊員ですから…たぶんあの辺りにウィルもいますね」
「え、そうなんですか?」
「ええ、騎士で無い方を相手にして、あそこまでまとまって本気の攻撃をするなら、間違いなくウィルの指示です」
ジルさんの断言に、俺はハルもあの辺りにいるのかなと視線を向けた。
まあここには声は全く聞こえてこないから、集まっていた早朝訓練の参加者さん達が揃って移動をし始めたのを見て、終わったんだって気づいただけなんだけどね。
それにしても早いなーと思ったけど、確かにファーガスさんの性格からしてこういう場所であまり長々と話しそうじゃないよね。気を付けて訓練に挑めとか、全力を尽くせとか言って終わってくれそう。
話が短いって、校長先生とかだったらかなり好かれる理由になるよね。
移動を始めた参加者さん達は、それぞれが思い思いに広い訓練場の各地に散らばっていった。
「あ…ハル見失っちゃいました…」
話し終わったファーガスさんに意識を向けている間に、さっきまでいた場所にハルがいなくなってたんだ。不覚すぎる。
しょんぼりと肩を落としながら呟けば、ジルさんも俺と同じように肩を落としながらボソリと呟いた。
「…私も、ウィルを見失いました」
二人揃って見失うとか、想像もしてなかったな。それだけ参加者が多いって事でもあるんだけどさ。
「俺はファーガスさんに意識を向けてる間に、ハルが移動しちゃったみたいで」
「さっきは自分の隊の隊員がいたので、そちらを見ている間に…同じくウィルも移動したようです」
俺とジルさんは顔を見合わせた。
「少なくともここにいるのは確実ですよね」
「ええ、参加はしているので、ここにいるのは絶対です」
「探しましょう!ウィルさんを見つけたら言いますね」
「ありがとうございます。私もハルさんを見つけたら報告します」
こうして共同戦線を張った俺達は、さっきまでよりも真剣な目で訓練場を見回し始めた。
訓練場を見ていて気づいたんだけど、騎士団の訓練って言うともっとこう皆でまとまって武器を構えて振るとかそういうのかなーと思ってたんだ。勝手な俺の騎士団のイメージなんだけどね。
あ、あと外周をひたすらぐるぐる走って、体力をつけるーとかね。
そういう体育会系のノリなのかと勝手に思ってたんだけど、こうして見ている限りでは早朝訓練の内容はかなり自由みたいだ。
それぞれ自分のしたい訓練に打ち込むのが普通みたいで、大剣をひたすら素振りしている人もいれば、片隅にある的めがけて少しずつ距離を変えながら魔法を打ち続けている人もいる。
「早朝訓練って…かなり自由に訓練をするんですね」
まだウィルさんもハルも見つけられていないのに、思わずジルさんにそう声をかけてしまった。ジルさんは怒るでも呆れるでもなく、すぐにええと頷いてくれた。
「ウィルからは日によって違う内容だと聞いた事がありますので、どうやら今日は自由に訓練の日みたいですね」
ジルさんによると全員揃って走り込みをする日もあれば、総当たりでひたすらに対人戦をする日、それに魔物相手の戦いの実践をしようとダンジョンに向かう日なんてものもあるらしい。
「ああ、でも前半と後半で内容を変える日もあるとは聞きましたね」
「なるほど。訓練に集中できるようにって毎日内容を変えてるんですね…すごいな」
「ええ、本当にすごいと思います。ちなみにこの早朝の訓練内容は、ファーガスさんとケイリーさんが一緒に考えているそうですよ」
お二人ともかなり忙しいと聞いていたけど、こういう事がたくさん重なったせいなんだろうな。
「それにマチルダさんも相談に乗る事があると言ってました」
そんな事を話しながらも、俺もジルさんも視線だけは止めていない。
あ、あっちにいる大きな盾を構えている人なんて、近くにいた人に声をかけて数人がかりで攻撃をしてもらってそれを見事にしのいでいる。って、一瞬だけ見えた顔に見覚えがあるんだけど
「あれ…?」
「どうしました?ハルさんが見つかりましたか?」
「いえ、あのハルでもウィリアムさんでもないんですが…この間ルダリオンの時に知り合った盾使いのミルゴさんがいました」
あっちの大きな盾で複数に切りかかられている人ですと教えれば、ジルさんは驚いた様子でそちらを見た。
「あー…切りかかっているのは全員うちの隊員ですから…たぶんあの辺りにウィルもいますね」
「え、そうなんですか?」
「ええ、騎士で無い方を相手にして、あそこまでまとまって本気の攻撃をするなら、間違いなくウィルの指示です」
ジルさんの断言に、俺はハルもあの辺りにいるのかなと視線を向けた。
657
お気に入りに追加
4,148
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる