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949.領主城での大騒ぎ
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「もうだいぶ遅くなったから、すこし急ごうか」
ハルがそんな風に言うなんて珍しいな。そう思いながら急かされるままに急いで城を目指した俺は、まさかこんな事態になってるなんて想像もしてなかったんだ。
城に戻るなり執事さんやメイドさんといった使用人の人達に、ご無事で何よりって言われた時点でちょっとあれ?とは思ったんだ。
でもそれに反応するよりも前に、すごい勢いで駆けこんできたハルの家族たちに取り囲まれてしまった。
「ああ、無事だったか!」
「ハル、アキトくん、二人とも帰って来るのが遅いぞ!」
ファーガスさんとケイリーさんは、ホッと息を吐きながら俺とハルに抱き着いてきた。
「二人とも、おかえりなさい」
「はー良かったー」
涙目のキースくんと、苦笑を浮かべたウィリアムさんもそう声をかけながら抱き着いてくる。
もう一塊の団子のような状態になっている俺達に、マチルダさんとジルさんまで控え目に抱き着いてきた。
「何があったのかと思ったよ」
「ご無事で何よりです、お二人とも」
ぎゅーぎゅー抱きしめられて苦しいけど、こんなに心配してくれてたんだと嬉しい気持ちも湧いてくる。
どうやらハルはこの反応を予想していたみたいで、そっと腰に回した手でずっと俺を支えてくれていた。もしハルの腕が無かったら、多分俺は皆の勢いと体重に負けて転がってたと思う。
満足するまで抱き着いてからそっと離れていったみなさんいわく、帰りが遅い俺とハルを本気で心配してくれていたらしい。
ここは危険と隣り合わせの辺境領で、しかも行先が難易度は低いとは言ってもダンジョン。さらに夜は危険だと知っているハルが一緒にいるというのに、夜になってもまだ帰って来る気配が無い。
そんな条件が三つも揃えば、心配するに決まっているだろうと言われると返す言葉もありません。サイクさんのダンジョンの話に夢中になってた事が、申し訳なくなってくる。
「大きな魔物が街道に出たと報告も上がって来ていたから、今から迎えに行くかと話し合っていたところなんだ」
ケイリーさんの言葉に、全員が揃ってコクコクと頷いた。
もし帰ってくるのがもう少し遅かったら、過剰戦力と言われた皆さんが全員揃って迎えに来てくれていたらしい。何なら騎士団や衛兵も連れていくつもりだったって。
ああ、なるほど。そう言われてみれば、夜なのに全員鎧とか武器とか完璧に装備してるね。だから抱き着かれた時にあんなに重かったのか。
「それについてはすまないとしか言えないな」
「何か予想外でもあったのか」
ケイリーさんの質問に、ハルはあったなと苦笑を浮かべて頷いた。
何があったかの説明はハルがしてくれるのかなと考えていた俺は、ふと使用人さん達の中にラスさんの姿があるのに気づいてしまった。
さっき解体してもらったルダリオンのお肉、すごく美味しいって言ってたよね。忘れないうちにラスさんに渡しておきたいな。
「あの、お土産があるんですけど…」
「お土産?アキトくんは律儀だねー」
ウィリアムさんは呆れ半分、嬉しさ半分って感じの笑顔でそう答えてくれた。ふと視界に入ったハルは、大きく目を見開いていた。あれ、なんでそんな顔してるんだろう。
「あの、これ、美味しいって聞いたので!」
そう前置きをしてからルダリオンのお肉を鞄から取り出したんだけど、その場にいた全員の視線が肉に集中してそのまま固まってしまった。
うーん、これは…どう考えても美味しそうとかそういう視線じゃないよね。
「…アキト…」
「駄目だった…?」
「いや、駄目では無いんだが…うん、説明よりも先に肉を見せると、みんなも混乱するかなと思って…ね」
ハルの言葉に、それもそうかと俺は慌ててみんなに視線を向けた。
「アキトくん、ハル、まず一点だけ良いか?」
皆を代表して、重々しい声でそう尋ねてきたのはファーガスさんだ。
「「はい」」
「これは報告のあった大きな魔物だな。二人とも怪我は?」
「「ありません」」
「よし、詳しい説明をしてもらおうか」
その後はみんな揃って別室へ移動して、あれよあれよと言う間に俺とハルへの質問コーナーが始まったよ。
俺が勢いに圧倒されている間に、ハルは落ち着いて今日の出来事の説明をしてくれた。サイクさんと知り会った事から、三人でルダリオンを倒した事まで、流れるような報告だった。
ちなみに俺が魔法を使った事を知ったファーガスさんが、サイクだけずるいと拗ねたように言い出した時にはちょっとだけ驚いた。
伴侶であるマチルダさんにさらりと宥められて機嫌はすぐに直ってたけどね。拗ねる姿がちょっと可愛かったなんて、本人にはとても言えない。
ハルがそんな風に言うなんて珍しいな。そう思いながら急かされるままに急いで城を目指した俺は、まさかこんな事態になってるなんて想像もしてなかったんだ。
城に戻るなり執事さんやメイドさんといった使用人の人達に、ご無事で何よりって言われた時点でちょっとあれ?とは思ったんだ。
でもそれに反応するよりも前に、すごい勢いで駆けこんできたハルの家族たちに取り囲まれてしまった。
「ああ、無事だったか!」
「ハル、アキトくん、二人とも帰って来るのが遅いぞ!」
ファーガスさんとケイリーさんは、ホッと息を吐きながら俺とハルに抱き着いてきた。
「二人とも、おかえりなさい」
「はー良かったー」
涙目のキースくんと、苦笑を浮かべたウィリアムさんもそう声をかけながら抱き着いてくる。
もう一塊の団子のような状態になっている俺達に、マチルダさんとジルさんまで控え目に抱き着いてきた。
「何があったのかと思ったよ」
「ご無事で何よりです、お二人とも」
ぎゅーぎゅー抱きしめられて苦しいけど、こんなに心配してくれてたんだと嬉しい気持ちも湧いてくる。
どうやらハルはこの反応を予想していたみたいで、そっと腰に回した手でずっと俺を支えてくれていた。もしハルの腕が無かったら、多分俺は皆の勢いと体重に負けて転がってたと思う。
満足するまで抱き着いてからそっと離れていったみなさんいわく、帰りが遅い俺とハルを本気で心配してくれていたらしい。
ここは危険と隣り合わせの辺境領で、しかも行先が難易度は低いとは言ってもダンジョン。さらに夜は危険だと知っているハルが一緒にいるというのに、夜になってもまだ帰って来る気配が無い。
そんな条件が三つも揃えば、心配するに決まっているだろうと言われると返す言葉もありません。サイクさんのダンジョンの話に夢中になってた事が、申し訳なくなってくる。
「大きな魔物が街道に出たと報告も上がって来ていたから、今から迎えに行くかと話し合っていたところなんだ」
ケイリーさんの言葉に、全員が揃ってコクコクと頷いた。
もし帰ってくるのがもう少し遅かったら、過剰戦力と言われた皆さんが全員揃って迎えに来てくれていたらしい。何なら騎士団や衛兵も連れていくつもりだったって。
ああ、なるほど。そう言われてみれば、夜なのに全員鎧とか武器とか完璧に装備してるね。だから抱き着かれた時にあんなに重かったのか。
「それについてはすまないとしか言えないな」
「何か予想外でもあったのか」
ケイリーさんの質問に、ハルはあったなと苦笑を浮かべて頷いた。
何があったかの説明はハルがしてくれるのかなと考えていた俺は、ふと使用人さん達の中にラスさんの姿があるのに気づいてしまった。
さっき解体してもらったルダリオンのお肉、すごく美味しいって言ってたよね。忘れないうちにラスさんに渡しておきたいな。
「あの、お土産があるんですけど…」
「お土産?アキトくんは律儀だねー」
ウィリアムさんは呆れ半分、嬉しさ半分って感じの笑顔でそう答えてくれた。ふと視界に入ったハルは、大きく目を見開いていた。あれ、なんでそんな顔してるんだろう。
「あの、これ、美味しいって聞いたので!」
そう前置きをしてからルダリオンのお肉を鞄から取り出したんだけど、その場にいた全員の視線が肉に集中してそのまま固まってしまった。
うーん、これは…どう考えても美味しそうとかそういう視線じゃないよね。
「…アキト…」
「駄目だった…?」
「いや、駄目では無いんだが…うん、説明よりも先に肉を見せると、みんなも混乱するかなと思って…ね」
ハルの言葉に、それもそうかと俺は慌ててみんなに視線を向けた。
「アキトくん、ハル、まず一点だけ良いか?」
皆を代表して、重々しい声でそう尋ねてきたのはファーガスさんだ。
「「はい」」
「これは報告のあった大きな魔物だな。二人とも怪我は?」
「「ありません」」
「よし、詳しい説明をしてもらおうか」
その後はみんな揃って別室へ移動して、あれよあれよと言う間に俺とハルへの質問コーナーが始まったよ。
俺が勢いに圧倒されている間に、ハルは落ち着いて今日の出来事の説明をしてくれた。サイクさんと知り会った事から、三人でルダリオンを倒した事まで、流れるような報告だった。
ちなみに俺が魔法を使った事を知ったファーガスさんが、サイクだけずるいと拗ねたように言い出した時にはちょっとだけ驚いた。
伴侶であるマチルダさんにさらりと宥められて機嫌はすぐに直ってたけどね。拗ねる姿がちょっと可愛かったなんて、本人にはとても言えない。
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