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948.逃げられた人
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ガサガサと音がしたと思ったら、次の瞬間には真っ暗な森から男性が一人飛び出してきた。
「無事か!?」
叫びながら全速力で駆けこんで来たのは、こちらの世界ではすっかり見慣れた筋肉質なお兄さんだった。
でもこの人、服装というか装備がちょっと不思議だ。
多分冒険者だとは思うんだけど、それにしてはなんだかあまりにも軽装なんだよね。この辺りでは滅多に見かけないレベルというか、トライプールの初心者冒険者みたいな装備を身に着けている。
あんな装備でさっきのルダリオンと戦える?と他人事ながら心配になってしまう。
あ、でも背負ってる盾だけはものすごく厳ついな。
まじまじと突然現れたお兄さんを観察していると、お兄さんはキョロキョロと視線を動かした。
「ルダリオン…倒してる…な…?」
倒れたままのルダリオンに気づくなり、お兄さんは困り顔でそう呟いた。
「はー…よりによってミルゴ、お前かよ」
「あれ、サイク…なんでここに?」
いや釣り帰りに決まってるかと、お兄さんは自己完結して苦笑を浮かべた。
「ああ、正解だ」
「…知り合いか?」
すこし警戒しつつハルが尋ねれば、サイクさんはああとすぐに頷いた。
「うちのパーティーの盾使い、ミルゴだ」
なるほど。この人がサイクさんのパーティーの盾使いさんか。そりゃあ盾も立派な物を使ってる筈だ。
「これ…どうしたんだ?」
「ああ、アキトが落としてくれて、ハルが転がしてくれて、俺がとどめをさした」
俺達を紹介するかのように手で示しつつ、サイクさんは笑顔で説明してくれた。
「まじかよ、うわー良かったーもし街に入り込んでたらどうしようってそればっかり考えて全速力で走ってきたんだよ」
「お前な、一人でルダリオンを相手にしたりすんなよ。お前の弓じゃまだどう考えても無理だろ」
「それぐらい分かってるっての。向こうから襲って来たんだから仕方ないだろ!しかも他の冒険者に攻撃しようとするから撒くのも無理だったし」
今日は休日だからと、軽装で森に入っていたのもまずかったらしい。もちろん鞄の中に装備は揃ってるけど、それに着替える隙が無かったんだって。
「しかも盾で攻撃を防ぎ過ぎて、俺に飽きたのか飛んでいっちゃってさ」
すっごい焦ったとミルゴさんは続けた。
「あー良かった。もし街に行ってたら、リーダーが倒してはくれるだろうけど…とか被害が出たらどうするかとか、久しぶりに色々考えたわ」
ふうーと息を吐いたミルゴさんは、兄さんらもありがとうなと俺達にもお礼を言ってくれた。
「俺はミルゴ。見ての通りの前衛盾使いだ」
「俺はハル、前衛剣士だな」
「あ、アキト、後衛の魔法使いです」
軽く自己紹介を終えた俺達は、さきほど倒したばかりのルダリオンに視線を向けた。ここにこのままにしておくわけにも行かないし、かといってこんな夜遅くに暗いなかで解体をするのも難しいだろう。
さてどうしようかと思ったんだけど、そこはミルゴさんが俺の責任で解体しようかと名乗り出てくれた。
なんでもミルゴさんは元々解体がかなり得意な人らしく、サイクさんのパーティーでも解体を担当している人らしい。
ハルとサイクさんが取り出した魔導具の灯りを頼りに、ミルゴさんは驚くほどのスピードでルダリオンを素材の山に変えてくれた。
ちなみに魔石はサイクさんと俺とハルがお互いに譲り合った結果、誰の物にするか全く決まらず、最終的に衛兵さんに寄付をするという形に落ち着いた。
ルダリオンの肉はとっても美味しいって聞いたから、遠慮せずに山分けにしてもらいました。
街の大門を通り抜けた所で、サイクさんとミルゴさんとは分かれる事になった。このまま衛兵の詰所に言って寄付をしてくれるらしい。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう」
「俺だけでは無傷で倒しきるのは難しかった…サイクさん、ありがとう」
ハルの言葉にそんな事ねぇだろうと、サイクさんは苦笑を浮かべている。
「あの、ミルゴさんも解体、ありがとうございました」
「いやいや、それ言うならこっちこそ倒してくれてありがとな。あと肉もすっごい嬉しい」
分けて貰った分は大事に食べるなとニコニコ笑顔のミルゴさんは、どうやら明るくてノリの良い人みたいだ。
「まあ機会があればまた会えるだろう」
「そうですね」
「それじゃー、二人とも元気でなー!」
「また」
「ああ、また」
笑顔で手を振って分かれた俺達は、そのまま領主城を目指して歩きだした。
「無事か!?」
叫びながら全速力で駆けこんで来たのは、こちらの世界ではすっかり見慣れた筋肉質なお兄さんだった。
でもこの人、服装というか装備がちょっと不思議だ。
多分冒険者だとは思うんだけど、それにしてはなんだかあまりにも軽装なんだよね。この辺りでは滅多に見かけないレベルというか、トライプールの初心者冒険者みたいな装備を身に着けている。
あんな装備でさっきのルダリオンと戦える?と他人事ながら心配になってしまう。
あ、でも背負ってる盾だけはものすごく厳ついな。
まじまじと突然現れたお兄さんを観察していると、お兄さんはキョロキョロと視線を動かした。
「ルダリオン…倒してる…な…?」
倒れたままのルダリオンに気づくなり、お兄さんは困り顔でそう呟いた。
「はー…よりによってミルゴ、お前かよ」
「あれ、サイク…なんでここに?」
いや釣り帰りに決まってるかと、お兄さんは自己完結して苦笑を浮かべた。
「ああ、正解だ」
「…知り合いか?」
すこし警戒しつつハルが尋ねれば、サイクさんはああとすぐに頷いた。
「うちのパーティーの盾使い、ミルゴだ」
なるほど。この人がサイクさんのパーティーの盾使いさんか。そりゃあ盾も立派な物を使ってる筈だ。
「これ…どうしたんだ?」
「ああ、アキトが落としてくれて、ハルが転がしてくれて、俺がとどめをさした」
俺達を紹介するかのように手で示しつつ、サイクさんは笑顔で説明してくれた。
「まじかよ、うわー良かったーもし街に入り込んでたらどうしようってそればっかり考えて全速力で走ってきたんだよ」
「お前な、一人でルダリオンを相手にしたりすんなよ。お前の弓じゃまだどう考えても無理だろ」
「それぐらい分かってるっての。向こうから襲って来たんだから仕方ないだろ!しかも他の冒険者に攻撃しようとするから撒くのも無理だったし」
今日は休日だからと、軽装で森に入っていたのもまずかったらしい。もちろん鞄の中に装備は揃ってるけど、それに着替える隙が無かったんだって。
「しかも盾で攻撃を防ぎ過ぎて、俺に飽きたのか飛んでいっちゃってさ」
すっごい焦ったとミルゴさんは続けた。
「あー良かった。もし街に行ってたら、リーダーが倒してはくれるだろうけど…とか被害が出たらどうするかとか、久しぶりに色々考えたわ」
ふうーと息を吐いたミルゴさんは、兄さんらもありがとうなと俺達にもお礼を言ってくれた。
「俺はミルゴ。見ての通りの前衛盾使いだ」
「俺はハル、前衛剣士だな」
「あ、アキト、後衛の魔法使いです」
軽く自己紹介を終えた俺達は、さきほど倒したばかりのルダリオンに視線を向けた。ここにこのままにしておくわけにも行かないし、かといってこんな夜遅くに暗いなかで解体をするのも難しいだろう。
さてどうしようかと思ったんだけど、そこはミルゴさんが俺の責任で解体しようかと名乗り出てくれた。
なんでもミルゴさんは元々解体がかなり得意な人らしく、サイクさんのパーティーでも解体を担当している人らしい。
ハルとサイクさんが取り出した魔導具の灯りを頼りに、ミルゴさんは驚くほどのスピードでルダリオンを素材の山に変えてくれた。
ちなみに魔石はサイクさんと俺とハルがお互いに譲り合った結果、誰の物にするか全く決まらず、最終的に衛兵さんに寄付をするという形に落ち着いた。
ルダリオンの肉はとっても美味しいって聞いたから、遠慮せずに山分けにしてもらいました。
街の大門を通り抜けた所で、サイクさんとミルゴさんとは分かれる事になった。このまま衛兵の詰所に言って寄付をしてくれるらしい。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう」
「俺だけでは無傷で倒しきるのは難しかった…サイクさん、ありがとう」
ハルの言葉にそんな事ねぇだろうと、サイクさんは苦笑を浮かべている。
「あの、ミルゴさんも解体、ありがとうございました」
「いやいや、それ言うならこっちこそ倒してくれてありがとな。あと肉もすっごい嬉しい」
分けて貰った分は大事に食べるなとニコニコ笑顔のミルゴさんは、どうやら明るくてノリの良い人みたいだ。
「まあ機会があればまた会えるだろう」
「そうですね」
「それじゃー、二人とも元気でなー!」
「また」
「ああ、また」
笑顔で手を振って分かれた俺達は、そのまま領主城を目指して歩きだした。
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