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947.空を飛ぶ魔物
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ああいう大型の空を飛ぶ魔物は、基本的に翼の付け根のあたりに魔力を集める場所があるんだ。ハルは落ち着いた声でそう教えてくれた。
「羽の力だけで飛んでるわけじゃなくて、あの巨体を魔力を使って浮かせているって言えば分かりやすいかな。羽ばたいた瞬間に、一瞬だけ光ってるんだけど…分かる?」
こんな事態でも分かりやすいハルの説明を聞いて、こちらを睨みながら飛び続ける魔鳥をじっと観察してみた。
あ、うん。確かに一瞬だけ淡く光ってる場所がある。
「うん、あの左側の羽の付け根の淡く光ってる場所で合ってる?」
「ああ、そこだ。魔力を集める場所に攻撃を与えられれば、あの巨体を浮かせ続ける事はできなくなるんだ」
ちなみにルダリオンなら、アキトの得意な土魔法が一番相性が良いよ。ちゃんとそこまで教えてくれたハルに、俺は分かったありがとうとすぐに頷いた。
ちらりと視線を向ければ、油断なく魔鳥を見据えていたサイクさんもちらりとこちらを見た。パチリと目が合う。
本当に出来るのかとか、落とす自信はあるのかとか。聞きたい事は色々あると思うんだ。だって俺とサイクさんは今日知り会ったばかりだし。でもサイクさんはそういう言葉を一切言わなかった。
ただ無言ですっと斧を構ると、いつでも攻撃できる体勢になって待機してくれている。ハルだけじゃない。サイクさんだって、今日出会ったばかりの俺を信じてまかせてくれてるんだ。
二人の期待に答えたい。
高ぶる気持ちを何とか抑え込んでして、俺は練り上げていた魔力を使ってつぶてを作った。
もっと大きく、もっと鋭く。
練り上げた魔力をさらに研ぎすまして作り上げたつぶては、まるでハリのように細く尖った形状になった。
初めて作った形だけど、使っている魔力の密度は高いから普段よりも硬度はある筈。
「羽ばたきなおした瞬間、一瞬だけ動きが止まる。そこを狙って」
すっと剣を構えたハルの言葉にこくりと頷いて、俺はすーっと息を吸いながら狙いを定めた。
うん、いける。
危険だと判断したのかルダリオンは更に高度をあげたけど、俺は構わずつぶてを放った。
シュッと音を立てて放たれたつぶては、ルダリオンの左の翼の付け根に突き刺さった。途端に上がる恐ろしい鳴き声に、サイクさんは怯むでもなくニヤリと笑った。
「アキト、良い腕だな」
「ありがとうございます!」
叫び返しながらもう一度魔力を練る。もう出番は無いかもしれないけど、こうしておくとすぐに魔法が発動できるから便利なんだよね。
「ハル、爪の牽制を頼んで良いか?」
「ああ、とどめは頼む」
不規則に羽ばたきながら下りてきたルダリオンは、地面に落ちてからも戦意を失わなかった。器用に片脚で立ち上がり、もう片足の爪をかざして襲い掛かってくる。
地面に落とされたのがよほど悔しかったのか、それともここにいる三人で一番弱いのが俺だからかな?
理由は分からないけど、狙われているのは明らかに俺だった。
「アキトを狙うとは…」
あ、ハルの怒りのスイッチが入りました。流れるようにルダリオンと切り結んだハルは、そのまま相手の勢いを上手く使ってゴロリと地面に転がしてみせた。
サイクさんはその一瞬の隙を見逃さずに一気に距離を詰めると、そのまま巨大な斧を頭上にまで振り上げた。あの斧をあんな高さに持ち上げるって、どんな腕力してるんだろう。
ギュワァァッと一鳴きしたルダリオンは、そのまま動かなくなった。
「さすがだな」
「いや、アキトがいなかったらそもそも攻撃が届いてねぇし、ハルがいなけりゃここまで楽にとどめはさせてねぇ」
だからすごいってのはこっちの台詞だと、サイクさんは楽し気に笑みを浮かべた。
「…待ってくれ、何か来る…魔物ではなさそうだが…」
不意にそう声をあげたハルに、俺とサイクさんは驚きつつも警戒態勢に戻った。魔物じゃないって言ってたけど、さっきのルダリオンに驚いた動物とかが暴走してるとかかな。
そんな事を考えていると、遠くから徐々に近づいてくる声が聞こえてきた。
「うわー頼むから誰も死んでませんように!あと街に飛び込んでませんように!!被害がでていませんようにー!!!」
あ、これ魔物でも動物でもなく人だね。しかも多分この人、ルダリオンに逃げられて警告のための笛をならした人だと思う。
「羽の力だけで飛んでるわけじゃなくて、あの巨体を魔力を使って浮かせているって言えば分かりやすいかな。羽ばたいた瞬間に、一瞬だけ光ってるんだけど…分かる?」
こんな事態でも分かりやすいハルの説明を聞いて、こちらを睨みながら飛び続ける魔鳥をじっと観察してみた。
あ、うん。確かに一瞬だけ淡く光ってる場所がある。
「うん、あの左側の羽の付け根の淡く光ってる場所で合ってる?」
「ああ、そこだ。魔力を集める場所に攻撃を与えられれば、あの巨体を浮かせ続ける事はできなくなるんだ」
ちなみにルダリオンなら、アキトの得意な土魔法が一番相性が良いよ。ちゃんとそこまで教えてくれたハルに、俺は分かったありがとうとすぐに頷いた。
ちらりと視線を向ければ、油断なく魔鳥を見据えていたサイクさんもちらりとこちらを見た。パチリと目が合う。
本当に出来るのかとか、落とす自信はあるのかとか。聞きたい事は色々あると思うんだ。だって俺とサイクさんは今日知り会ったばかりだし。でもサイクさんはそういう言葉を一切言わなかった。
ただ無言ですっと斧を構ると、いつでも攻撃できる体勢になって待機してくれている。ハルだけじゃない。サイクさんだって、今日出会ったばかりの俺を信じてまかせてくれてるんだ。
二人の期待に答えたい。
高ぶる気持ちを何とか抑え込んでして、俺は練り上げていた魔力を使ってつぶてを作った。
もっと大きく、もっと鋭く。
練り上げた魔力をさらに研ぎすまして作り上げたつぶては、まるでハリのように細く尖った形状になった。
初めて作った形だけど、使っている魔力の密度は高いから普段よりも硬度はある筈。
「羽ばたきなおした瞬間、一瞬だけ動きが止まる。そこを狙って」
すっと剣を構えたハルの言葉にこくりと頷いて、俺はすーっと息を吸いながら狙いを定めた。
うん、いける。
危険だと判断したのかルダリオンは更に高度をあげたけど、俺は構わずつぶてを放った。
シュッと音を立てて放たれたつぶては、ルダリオンの左の翼の付け根に突き刺さった。途端に上がる恐ろしい鳴き声に、サイクさんは怯むでもなくニヤリと笑った。
「アキト、良い腕だな」
「ありがとうございます!」
叫び返しながらもう一度魔力を練る。もう出番は無いかもしれないけど、こうしておくとすぐに魔法が発動できるから便利なんだよね。
「ハル、爪の牽制を頼んで良いか?」
「ああ、とどめは頼む」
不規則に羽ばたきながら下りてきたルダリオンは、地面に落ちてからも戦意を失わなかった。器用に片脚で立ち上がり、もう片足の爪をかざして襲い掛かってくる。
地面に落とされたのがよほど悔しかったのか、それともここにいる三人で一番弱いのが俺だからかな?
理由は分からないけど、狙われているのは明らかに俺だった。
「アキトを狙うとは…」
あ、ハルの怒りのスイッチが入りました。流れるようにルダリオンと切り結んだハルは、そのまま相手の勢いを上手く使ってゴロリと地面に転がしてみせた。
サイクさんはその一瞬の隙を見逃さずに一気に距離を詰めると、そのまま巨大な斧を頭上にまで振り上げた。あの斧をあんな高さに持ち上げるって、どんな腕力してるんだろう。
ギュワァァッと一鳴きしたルダリオンは、そのまま動かなくなった。
「さすがだな」
「いや、アキトがいなかったらそもそも攻撃が届いてねぇし、ハルがいなけりゃここまで楽にとどめはさせてねぇ」
だからすごいってのはこっちの台詞だと、サイクさんは楽し気に笑みを浮かべた。
「…待ってくれ、何か来る…魔物ではなさそうだが…」
不意にそう声をあげたハルに、俺とサイクさんは驚きつつも警戒態勢に戻った。魔物じゃないって言ってたけど、さっきのルダリオンに驚いた動物とかが暴走してるとかかな。
そんな事を考えていると、遠くから徐々に近づいてくる声が聞こえてきた。
「うわー頼むから誰も死んでませんように!あと街に飛び込んでませんように!!被害がでていませんようにー!!!」
あ、これ魔物でも動物でもなく人だね。しかも多分この人、ルダリオンに逃げられて警告のための笛をならした人だと思う。
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