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「あ、もうこんな時間か」
サイクさんがそう声をあげるまで、俺とハルは夢中になって話に聞き入っていた。
話す内容が面白いのももちろんだけど、サイクさんって話し方がとにかく上手なんだよね。感動的なまでの話術に、すっかり引き込まれちゃってたよ。
「こんな時間…だって?」
不思議そうに魔道具を取り出して覗き込んだハルは、途端に両目を大きく見開いた。
「もう夕方近いのか。全く気づかなかった…」
「え、まだこんなに明るいのに?」
見上げた視線の先に見えるのは、まるで本物の青空のような不思議なダンジョンの天井だ。
「ああ。ダンジョンの中は、基本的には階層ごとに天候や時間帯が固定されてるからな」
まあ天気や時間帯があっという間に変わる階層――なんて例外もあるんだがなと、サイクさんは眉間にぎゅっとしわを寄せた嫌そうな顔で教えてくれた。
きっとサイクさんのパーティーは、その階層でたくさん苦労したんだろうな。そう想像が出来てしまったので、深くは聞かない事に決めた。
それにしてもダンジョンって、本当に不思議な事ばかりだな。
天候も時間帯も変わらないってことは、この階層はいつ来てもこの明るさの晴天って事か。逆にずっと夜で雨の階層とかもあるのかもしれない。
「俺も知識として知ってはいたんだが、一つの階層にここまで留まった事は無かったからな…」
気づけなかったのが悔しいと、ハルはしょんぼりと肩を落とした。
「慣れてないと仕方ないさ」
サイクさんによると、慣れてさえしまえば体内時計でだいたいの時間が分かるようになるらしい。自信が無いならハルの持ってるような魔道具を使うのも良い案だぞと教えてくれた。
「ハルなら、次からは小まめに時間を確認するだろう?」
「ああ、そうするよ」
だったら落ち込むなとハルを慰める姿は、まるでハルの本当のお兄さんみたいだ。なんでかな。見た目は全然似てないのに、ちょっとファーガスさんに似てるななんて思ってしまった。
「サイクさんは、これからどうするんだ?」
気持ちを切り替えて尋ねたハルに、サイクさんはんーと考えてから答えた。
「そうだな、今日はもう街へ帰るよ」
「それじゃあ、もし良ければ一緒に行かないか?」
「ああ、ぜひ」
予定が決まれば急いだほうが良いと、俺達はすぐにその場にあった荷物を片づけに取り掛かった。とは言っても、後はすこしの食器とマントぐらいだ。今日はテントとか張ってないからね。
「よし、忘れ物も無し!」
ささっと見て回って振り返れば、ハルもそうだねと笑顔で頷いてくれた。
「サイクさん、お待たせしました!」
「待たせてすまない
「いや、俺は荷物が少ないからな。気にすんな」
俺達よりも先に片付けを終えていたサイクさんは、あの巨大な斧を軽々と肩に担いで近づいてくる。
「行くか」
オ・アレシュのダンジョン内で転移ができる場所は、最終階層つまり一番地下だけらしい。しかも行先はあの衛兵さん達がいた出口の辺りに固定されていて、一方通行なんだって。
一番下にいるボスを倒せば一瞬で帰れるって事だけど、ハルもサイクさんも少しも迷わずに上へと戻る道を選んだ。
理由はここのダンジョンのボスと呼ばれる魔物たちが、なかなか面倒な相手だからだそうだ。
俺も驚いたんだけどね。そもそもダンジョンのボスって、一種類の魔物をさすわけじゃないんだって。ダンジョン内のボス部屋と呼ばれる部屋に湧いてくる、強い魔物を総称としてボスと呼んでるだけらしい。
うーん、これももしかして異世界人が広めたーってやつなのかな。
ここオ・アレシュのダンジョンでも数種類の魔物が確認されているらしいんだけど、そのどれもがとにかく防御力が高いのが特徴らしい。強さはそれほどでもないけど、攻撃が入り難くて戦闘時間が長引く。
その上、それほど良い素材が取れるわけでも無いという事で、あまり人気は無いらしい。
全てのダンジョンを踏破してやると豪語してる冒険者ぐらいしか挑もうとはしないボスなんだと、階段を上りながら教えてもらった。
俺達が話し込んでいる間に、ダンジョンの中にいる冒険者の数はかなり減っていた。夜は危険だからその前にと、初心者ほど早めに街に帰るんだって。
冒険者が減った分、魔物もたまにひょこっと現れるんだけど、ハルとサイクさんが競うようにして倒してしまう。
俺の出番は全く無いまま、あっという間にダンジョンの入口の所まで戻ってこれてしまった。
「サイク、どうだ。何か異変はあったか?」
不意にそう声をかけてきた衛兵さんに、サイクさんは慣れた様子で答えた。
「いや、何も無かったぞ」
「釣果は?」
「今日は9匹と友人が二人増えた」
ニヤリと笑って答えたサイクさんに、衛兵さん達もそれは良かったなと笑って答えている。
「そちらの二人も、ダンジョンはどうだった?」
「想像してたよりも、綺麗な場所でしたね」
「そうだろ?またおいで」
ニコニコ笑顔でそう言ってくれる衛兵さん達に見送られて、俺達は街へと続く街道へと足を向けた。
サイクさんがそう声をあげるまで、俺とハルは夢中になって話に聞き入っていた。
話す内容が面白いのももちろんだけど、サイクさんって話し方がとにかく上手なんだよね。感動的なまでの話術に、すっかり引き込まれちゃってたよ。
「こんな時間…だって?」
不思議そうに魔道具を取り出して覗き込んだハルは、途端に両目を大きく見開いた。
「もう夕方近いのか。全く気づかなかった…」
「え、まだこんなに明るいのに?」
見上げた視線の先に見えるのは、まるで本物の青空のような不思議なダンジョンの天井だ。
「ああ。ダンジョンの中は、基本的には階層ごとに天候や時間帯が固定されてるからな」
まあ天気や時間帯があっという間に変わる階層――なんて例外もあるんだがなと、サイクさんは眉間にぎゅっとしわを寄せた嫌そうな顔で教えてくれた。
きっとサイクさんのパーティーは、その階層でたくさん苦労したんだろうな。そう想像が出来てしまったので、深くは聞かない事に決めた。
それにしてもダンジョンって、本当に不思議な事ばかりだな。
天候も時間帯も変わらないってことは、この階層はいつ来てもこの明るさの晴天って事か。逆にずっと夜で雨の階層とかもあるのかもしれない。
「俺も知識として知ってはいたんだが、一つの階層にここまで留まった事は無かったからな…」
気づけなかったのが悔しいと、ハルはしょんぼりと肩を落とした。
「慣れてないと仕方ないさ」
サイクさんによると、慣れてさえしまえば体内時計でだいたいの時間が分かるようになるらしい。自信が無いならハルの持ってるような魔道具を使うのも良い案だぞと教えてくれた。
「ハルなら、次からは小まめに時間を確認するだろう?」
「ああ、そうするよ」
だったら落ち込むなとハルを慰める姿は、まるでハルの本当のお兄さんみたいだ。なんでかな。見た目は全然似てないのに、ちょっとファーガスさんに似てるななんて思ってしまった。
「サイクさんは、これからどうするんだ?」
気持ちを切り替えて尋ねたハルに、サイクさんはんーと考えてから答えた。
「そうだな、今日はもう街へ帰るよ」
「それじゃあ、もし良ければ一緒に行かないか?」
「ああ、ぜひ」
予定が決まれば急いだほうが良いと、俺達はすぐにその場にあった荷物を片づけに取り掛かった。とは言っても、後はすこしの食器とマントぐらいだ。今日はテントとか張ってないからね。
「よし、忘れ物も無し!」
ささっと見て回って振り返れば、ハルもそうだねと笑顔で頷いてくれた。
「サイクさん、お待たせしました!」
「待たせてすまない
「いや、俺は荷物が少ないからな。気にすんな」
俺達よりも先に片付けを終えていたサイクさんは、あの巨大な斧を軽々と肩に担いで近づいてくる。
「行くか」
オ・アレシュのダンジョン内で転移ができる場所は、最終階層つまり一番地下だけらしい。しかも行先はあの衛兵さん達がいた出口の辺りに固定されていて、一方通行なんだって。
一番下にいるボスを倒せば一瞬で帰れるって事だけど、ハルもサイクさんも少しも迷わずに上へと戻る道を選んだ。
理由はここのダンジョンのボスと呼ばれる魔物たちが、なかなか面倒な相手だからだそうだ。
俺も驚いたんだけどね。そもそもダンジョンのボスって、一種類の魔物をさすわけじゃないんだって。ダンジョン内のボス部屋と呼ばれる部屋に湧いてくる、強い魔物を総称としてボスと呼んでるだけらしい。
うーん、これももしかして異世界人が広めたーってやつなのかな。
ここオ・アレシュのダンジョンでも数種類の魔物が確認されているらしいんだけど、そのどれもがとにかく防御力が高いのが特徴らしい。強さはそれほどでもないけど、攻撃が入り難くて戦闘時間が長引く。
その上、それほど良い素材が取れるわけでも無いという事で、あまり人気は無いらしい。
全てのダンジョンを踏破してやると豪語してる冒険者ぐらいしか挑もうとはしないボスなんだと、階段を上りながら教えてもらった。
俺達が話し込んでいる間に、ダンジョンの中にいる冒険者の数はかなり減っていた。夜は危険だからその前にと、初心者ほど早めに街に帰るんだって。
冒険者が減った分、魔物もたまにひょこっと現れるんだけど、ハルとサイクさんが競うようにして倒してしまう。
俺の出番は全く無いまま、あっという間にダンジョンの入口の所まで戻ってこれてしまった。
「サイク、どうだ。何か異変はあったか?」
不意にそう声をかけてきた衛兵さんに、サイクさんは慣れた様子で答えた。
「いや、何も無かったぞ」
「釣果は?」
「今日は9匹と友人が二人増えた」
ニヤリと笑って答えたサイクさんに、衛兵さん達もそれは良かったなと笑って答えている。
「そちらの二人も、ダンジョンはどうだった?」
「想像してたよりも、綺麗な場所でしたね」
「そうだろ?またおいで」
ニコニコ笑顔でそう言ってくれる衛兵さん達に見送られて、俺達は街へと続く街道へと足を向けた。
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