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912.【ハル視点】ケンさんの年齢
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唐突にケンさんから褒められた事で、どうやらレイさんは何やら吹っ切れたみたいだ。
あとで聞いた話だが、普段はケンさんはあまりああいう事をはっきりと言葉にはしないらしい。だからあんな風に褒められる事なんて、滅多に無いそうだ。
こっそりと二人のおかげだと礼を言われたぐらいだから、本当に珍しいんだろうな。
まだすこし緊張はしているようだし、アキトと俺への言葉は敬語と普通の言葉が入り混じった状態だが、落ち着いた様子で全員分のお茶を入れてくれた。
「んー美味しいです!」
「それは良かった」
「うん、本当に美味いな」
思わずそんな言葉をこぼしてしまうぐらいに、美味しいお茶だった。
「こ、光栄です」
「レイが入れたお茶は本当に美味しいよねー、専門店で飲むのにも負けないぐらいの味だと思うもん」
自慢げにそう答えるケンさんに、レイさんはまた頬を赤く染めている。伴侶候補同士が仲が良いのは、なんとも微笑ましいな。
「ね、アキトはいつ頃こっちに来たの?」
もし答え難い事なら断ってねと前置きをしてから、ケンさんは控え目にそう尋ねた。アキトへの配慮に満ちた尋ね方に、ケンさんへの好感度がまた少しあがった。
「えーっと…一年ぐらい前…かな?」
あってる?と言いたげにこちらを見たアキトに、俺はすぐに頷いた。
「ああ、それぐらいだな」
「そっか、またそれぐらいなのか」
「ケンは?」
「ああ、俺は十年ぐらい前だな。隣国で知識目当てで召喚されたんだ」
あっさりと笑いながら答えたケンさんに、アキトと俺は思わず息を飲んだ。
十年も前に召喚されたのか…。
「そんなに幼い頃に…苦労しただろう?つらい話なら無理に話そうとしなくて良いからな」
そう声をかければ、ケンさんは苦笑を洩らした。隣のレイさんも、一緒になって苦笑しているな。どういう事だ?
「なあ、アキト、俺いくつぐらいに見えてる?」
急に変わった話題に驚きいた様子だったが、アキトは少し考えてから答えた。
「え、俺と同い年か…ちょっと上ぐらい?」
「あー…ごめん。まずアキトっていくつなんだ?」
「今二十一…あ、いや、二十二歳になったのかな…?」
アキトの答えに、ケンさんはあーと呟きながらそっと視線を反らした。
「えっとな…よく誤解されるんだけどさぁ」
誤解?
「うん、どうしたの?」
「十年前ってのは本当の話だけど、その時点でも俺はもう成人はしてたからな?」
「へ?」
十年前で成人という事は。
「待って…?って事はつまり、ケンの年齢は三十以上って事!?」
「おう、今三十五だよ」
にっこりと笑って答えたケンさんに、アキトは驚いた様子でパクパクと何度も口を開け閉めしている。何て言えば良いか分からない。そんな反応だな。
それにしても三十五歳か。とてもそうは見えないな。
「失礼な質問だが…今の年齢の話も…本当の話なんだよな?」
じっと見つめながらそう確認してしまったが、視線を向けられたレイさんは楽し気に笑って答えた。
「ケンの年齢を聞いた人は皆それを聞きますね。間違いなく本当ですよ。ちなみに俺が出逢った五年前から、ケンは今の見た目でした」
年を取ってもそれほど見た目が変わらない人なんですよと、レイさんはどこか呆れ顔で続けた
「へぇ、それはすごいな」
「年齢不詳でごめんなー」
そう言い放ったケンさんは、楽し気に声をあげて笑っている。
本人の中で笑って告げられる話になっているのは良い事だが、召喚されたばかりの頃はそう簡単な話じゃなかっただろう。
「だが、例えしっかり成人済みだったとしても、急に異世界に召喚されたのなら心細かっただろう?大変だったな」
習慣や環境まで全てが違う場所なんだからと続けた俺に、ケンさんとレイさんは顔を見合わせてからふわりと笑った。
「…ハロルド様はすごいですね」
「ね、さすが…だな」
「何だ…急に?」
どうしてこんな当たり前の事を言っただけで、そんな反応をされるのか。不思議な気持ちと、いきなり褒められた動揺で変な顔をしていたかもしれない。
「既に成人してたって聞いて、それでも心配されたのは久しぶりなんだよ」
「…そうなのか?」
うちの家族なら、おそらく全員が心配すると思うんだが。
「そうなんだよ」
「なあ、ケン、最初から全部話せば良いんじゃないか?」
「そうだなー話すか。聞いてくれる?」
「「もちろん」」
アキトと俺のぴたりと重なった答えに、ケンさんは仲良しだなともう一度笑ってくれた。
あとで聞いた話だが、普段はケンさんはあまりああいう事をはっきりと言葉にはしないらしい。だからあんな風に褒められる事なんて、滅多に無いそうだ。
こっそりと二人のおかげだと礼を言われたぐらいだから、本当に珍しいんだろうな。
まだすこし緊張はしているようだし、アキトと俺への言葉は敬語と普通の言葉が入り混じった状態だが、落ち着いた様子で全員分のお茶を入れてくれた。
「んー美味しいです!」
「それは良かった」
「うん、本当に美味いな」
思わずそんな言葉をこぼしてしまうぐらいに、美味しいお茶だった。
「こ、光栄です」
「レイが入れたお茶は本当に美味しいよねー、専門店で飲むのにも負けないぐらいの味だと思うもん」
自慢げにそう答えるケンさんに、レイさんはまた頬を赤く染めている。伴侶候補同士が仲が良いのは、なんとも微笑ましいな。
「ね、アキトはいつ頃こっちに来たの?」
もし答え難い事なら断ってねと前置きをしてから、ケンさんは控え目にそう尋ねた。アキトへの配慮に満ちた尋ね方に、ケンさんへの好感度がまた少しあがった。
「えーっと…一年ぐらい前…かな?」
あってる?と言いたげにこちらを見たアキトに、俺はすぐに頷いた。
「ああ、それぐらいだな」
「そっか、またそれぐらいなのか」
「ケンは?」
「ああ、俺は十年ぐらい前だな。隣国で知識目当てで召喚されたんだ」
あっさりと笑いながら答えたケンさんに、アキトと俺は思わず息を飲んだ。
十年も前に召喚されたのか…。
「そんなに幼い頃に…苦労しただろう?つらい話なら無理に話そうとしなくて良いからな」
そう声をかければ、ケンさんは苦笑を洩らした。隣のレイさんも、一緒になって苦笑しているな。どういう事だ?
「なあ、アキト、俺いくつぐらいに見えてる?」
急に変わった話題に驚きいた様子だったが、アキトは少し考えてから答えた。
「え、俺と同い年か…ちょっと上ぐらい?」
「あー…ごめん。まずアキトっていくつなんだ?」
「今二十一…あ、いや、二十二歳になったのかな…?」
アキトの答えに、ケンさんはあーと呟きながらそっと視線を反らした。
「えっとな…よく誤解されるんだけどさぁ」
誤解?
「うん、どうしたの?」
「十年前ってのは本当の話だけど、その時点でも俺はもう成人はしてたからな?」
「へ?」
十年前で成人という事は。
「待って…?って事はつまり、ケンの年齢は三十以上って事!?」
「おう、今三十五だよ」
にっこりと笑って答えたケンさんに、アキトは驚いた様子でパクパクと何度も口を開け閉めしている。何て言えば良いか分からない。そんな反応だな。
それにしても三十五歳か。とてもそうは見えないな。
「失礼な質問だが…今の年齢の話も…本当の話なんだよな?」
じっと見つめながらそう確認してしまったが、視線を向けられたレイさんは楽し気に笑って答えた。
「ケンの年齢を聞いた人は皆それを聞きますね。間違いなく本当ですよ。ちなみに俺が出逢った五年前から、ケンは今の見た目でした」
年を取ってもそれほど見た目が変わらない人なんですよと、レイさんはどこか呆れ顔で続けた
「へぇ、それはすごいな」
「年齢不詳でごめんなー」
そう言い放ったケンさんは、楽し気に声をあげて笑っている。
本人の中で笑って告げられる話になっているのは良い事だが、召喚されたばかりの頃はそう簡単な話じゃなかっただろう。
「だが、例えしっかり成人済みだったとしても、急に異世界に召喚されたのなら心細かっただろう?大変だったな」
習慣や環境まで全てが違う場所なんだからと続けた俺に、ケンさんとレイさんは顔を見合わせてからふわりと笑った。
「…ハロルド様はすごいですね」
「ね、さすが…だな」
「何だ…急に?」
どうしてこんな当たり前の事を言っただけで、そんな反応をされるのか。不思議な気持ちと、いきなり褒められた動揺で変な顔をしていたかもしれない。
「既に成人してたって聞いて、それでも心配されたのは久しぶりなんだよ」
「…そうなのか?」
うちの家族なら、おそらく全員が心配すると思うんだが。
「そうなんだよ」
「なあ、ケン、最初から全部話せば良いんじゃないか?」
「そうだなー話すか。聞いてくれる?」
「「もちろん」」
アキトと俺のぴたりと重なった答えに、ケンさんは仲良しだなともう一度笑ってくれた。
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