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907.【ハル視点】予想外の出会い
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幼い頃から何度も訪れた事のある慣れた場所だから、アキトの案内役に徹しよう。
今朝出発した時はそんな事を考えていた筈なんだが、アキトと回ると見るもの全てが新鮮で、結局は一緒になって全力で楽しんでしまったな。
改めて見ると、この市場には変わった店が多い。
凹凸のある不思議な質感の紙をたくさん取り扱っている紙の専門店や、魔物素材の中でも爪だけを集めた店、一種類の果物だけを取り扱っている店など本当に様々だ。
一種類だけを取り扱ってる店の店員に、アキトが何故なのかと尋ねていたんだが、この果物が一番うまいからだと豪快に笑いながら答えられたのには、隣で聞いていて笑ってしまった。
戸惑いながらも、じゃあ買いますと答えたアキトも可愛かったな。
まあ直後に隣の果物の屋台の店員から、その言い方は周りの屋台に迷惑だって叱られていたんだが。
すまんすまんと謝る店員と本気で怒っているわけではないらしい隣の屋台店員のやりとりに、アキトは笑い出すのを必死で我慢しているようだった。
市場の途中には、ダンジョン産だと書かれた魔道具がずらりと並んだ屋台もあった。
アキトはかなり気になっている様子だったが、あの店は駄目だな。
ダンジョンからは出ない役に立たなさそうな魔道具も混ざっているし、何より値段設定が高すぎる。詳しくない客を引っかけようと思っているのがすぐに分かる悪質な店だ。
「あそこはやめておこう」
「…うん、分かった」
俺の言葉に、アキトは何故と聞くでもなくすぐに頷いて諦めてくれた。何かを察してくれたんだろうな。
少し歩いた所で視線を感じた俺は、ぐるりと周りを見渡した。遠くから俺とアキトを見守るように見つめていた騎士に見えるように、小さく手を動かした。近くに来てくれと指示を出せば、私服の二人はささっと歩き出した。
何かあったのだろうと察してくれたらしい騎士たちは、真剣な表情で俺達に近づいてくる。
「十三後ろの屋台、ダンジョン産の魔道具屋が悪質店だった」
すれ違い様にそう囁けば、二人組はコクリとすぐに頷いた。
「ご協力感謝します」
「ああ」
無駄話を一切せずにすぐさま去っていった二人は、ウィル兄の部隊の騎士だな。こういう時の対応に慣れている隊員なんだなと感心しながら、俺はアキトに視線を戻した。
そんな事を何度か繰り返して、俺が大丈夫だと判断した店だけを見て回っているうちに不意にアキトが声をあげた。
「ね、ハル、あれって…何?」
そう尋ねながらアキトがそっと指差したのは、ここから見えるいくつかの屋台の上に掲げられている灰色の丸いものだ。
「どれ?ああ、あれはね…」
アキトに説明をしようとした瞬間、雲の切れ目でもあったのか不意に太陽の光が辺り一面を照らした。
その瞬間、その丸いものが光を反射して七色に輝いた。
「えええ…何あれ…すっごい光ってる」
「あれがヌキプルだよ」
「え…ヌキプルってあの真っ白なスープに使われてたやつ!?」
キースくんの好物だって言ってたあのスープだよねと念を押してくるアキトに、俺はそうだよと悪戯っぽく笑いながら答えた。
「ヌキプルは普通に並べておいても灰色で目立たないからね。ああやって太陽の光を反射する場所に1個だけ飾ってるんだ」
そうすればこの屋台ではヌキプルを売ってるとすぐに分かるからだ。つまりヌキプルがそれだけ人気のある野菜だという事でもある。
アキトは面白そうに七色に光るヌキプルを観察している。眩しいと呟いてみたりクスクスと笑ったりするアキトを、幸せな気分で見つめていると不意に背後から声が聞こえてきた。
「え、すっごい派手な飾りがある。ね、あれ何?」
「ああ、あれは太陽の光を反射するヌキプルって野菜だな。お前…もうすこし外歩けよ…辺境領の名産品だぞ?」
「そうなんだ?」
「そうなんだって…お前な…」
「今日は珍しくこんな人混みに出てきたんだから、細かい事言うなって!」
ケラケラと笑った男の声はそれにしてもと続けた。
「あれはゲーミング野菜って感じだな」
「ゲー…何だって?」
困惑した様子の連れらしき男の言葉に、思わず頷きそうになってしまった。げーみんぐやさいなんて聞きなれない言葉に、思わず耳を澄ませてしまった。
「あー、えっとな、七色に光る物?を俺の故郷ではそう言うんだよ」
そこでアキトはそっと後ろを振り返った。アキトも気になったんだろうかと思いながら、俺も後ろを振り返る。
そこでは長めの前髪をした黒髪黒目の細身の青年が、茶色の髪をした連れの青年と話している所だった。
じっと見つめるアキトに、細身の青年はハッとした様子ですぐさま口を開いた。
「あー、ごめん、俺の声でかかった?」
「あ。いえ…違います。あの、俺も同じ事を思ってたので…気になって…」
アキトもげーみんぐやさいだと思っていたのか?それはつまり…?
青年は急に声をかけられたのに、アキトの髪色と目を順番に見てたちまち人懐こそうな笑顔になった。
「あ!もしかして同郷なのかな!?」
「かもしれないです!」
まさかこんな事になるとは、予想外だったな。
今朝出発した時はそんな事を考えていた筈なんだが、アキトと回ると見るもの全てが新鮮で、結局は一緒になって全力で楽しんでしまったな。
改めて見ると、この市場には変わった店が多い。
凹凸のある不思議な質感の紙をたくさん取り扱っている紙の専門店や、魔物素材の中でも爪だけを集めた店、一種類の果物だけを取り扱っている店など本当に様々だ。
一種類だけを取り扱ってる店の店員に、アキトが何故なのかと尋ねていたんだが、この果物が一番うまいからだと豪快に笑いながら答えられたのには、隣で聞いていて笑ってしまった。
戸惑いながらも、じゃあ買いますと答えたアキトも可愛かったな。
まあ直後に隣の果物の屋台の店員から、その言い方は周りの屋台に迷惑だって叱られていたんだが。
すまんすまんと謝る店員と本気で怒っているわけではないらしい隣の屋台店員のやりとりに、アキトは笑い出すのを必死で我慢しているようだった。
市場の途中には、ダンジョン産だと書かれた魔道具がずらりと並んだ屋台もあった。
アキトはかなり気になっている様子だったが、あの店は駄目だな。
ダンジョンからは出ない役に立たなさそうな魔道具も混ざっているし、何より値段設定が高すぎる。詳しくない客を引っかけようと思っているのがすぐに分かる悪質な店だ。
「あそこはやめておこう」
「…うん、分かった」
俺の言葉に、アキトは何故と聞くでもなくすぐに頷いて諦めてくれた。何かを察してくれたんだろうな。
少し歩いた所で視線を感じた俺は、ぐるりと周りを見渡した。遠くから俺とアキトを見守るように見つめていた騎士に見えるように、小さく手を動かした。近くに来てくれと指示を出せば、私服の二人はささっと歩き出した。
何かあったのだろうと察してくれたらしい騎士たちは、真剣な表情で俺達に近づいてくる。
「十三後ろの屋台、ダンジョン産の魔道具屋が悪質店だった」
すれ違い様にそう囁けば、二人組はコクリとすぐに頷いた。
「ご協力感謝します」
「ああ」
無駄話を一切せずにすぐさま去っていった二人は、ウィル兄の部隊の騎士だな。こういう時の対応に慣れている隊員なんだなと感心しながら、俺はアキトに視線を戻した。
そんな事を何度か繰り返して、俺が大丈夫だと判断した店だけを見て回っているうちに不意にアキトが声をあげた。
「ね、ハル、あれって…何?」
そう尋ねながらアキトがそっと指差したのは、ここから見えるいくつかの屋台の上に掲げられている灰色の丸いものだ。
「どれ?ああ、あれはね…」
アキトに説明をしようとした瞬間、雲の切れ目でもあったのか不意に太陽の光が辺り一面を照らした。
その瞬間、その丸いものが光を反射して七色に輝いた。
「えええ…何あれ…すっごい光ってる」
「あれがヌキプルだよ」
「え…ヌキプルってあの真っ白なスープに使われてたやつ!?」
キースくんの好物だって言ってたあのスープだよねと念を押してくるアキトに、俺はそうだよと悪戯っぽく笑いながら答えた。
「ヌキプルは普通に並べておいても灰色で目立たないからね。ああやって太陽の光を反射する場所に1個だけ飾ってるんだ」
そうすればこの屋台ではヌキプルを売ってるとすぐに分かるからだ。つまりヌキプルがそれだけ人気のある野菜だという事でもある。
アキトは面白そうに七色に光るヌキプルを観察している。眩しいと呟いてみたりクスクスと笑ったりするアキトを、幸せな気分で見つめていると不意に背後から声が聞こえてきた。
「え、すっごい派手な飾りがある。ね、あれ何?」
「ああ、あれは太陽の光を反射するヌキプルって野菜だな。お前…もうすこし外歩けよ…辺境領の名産品だぞ?」
「そうなんだ?」
「そうなんだって…お前な…」
「今日は珍しくこんな人混みに出てきたんだから、細かい事言うなって!」
ケラケラと笑った男の声はそれにしてもと続けた。
「あれはゲーミング野菜って感じだな」
「ゲー…何だって?」
困惑した様子の連れらしき男の言葉に、思わず頷きそうになってしまった。げーみんぐやさいなんて聞きなれない言葉に、思わず耳を澄ませてしまった。
「あー、えっとな、七色に光る物?を俺の故郷ではそう言うんだよ」
そこでアキトはそっと後ろを振り返った。アキトも気になったんだろうかと思いながら、俺も後ろを振り返る。
そこでは長めの前髪をした黒髪黒目の細身の青年が、茶色の髪をした連れの青年と話している所だった。
じっと見つめるアキトに、細身の青年はハッとした様子ですぐさま口を開いた。
「あー、ごめん、俺の声でかかった?」
「あ。いえ…違います。あの、俺も同じ事を思ってたので…気になって…」
アキトもげーみんぐやさいだと思っていたのか?それはつまり…?
青年は急に声をかけられたのに、アキトの髪色と目を順番に見てたちまち人懐こそうな笑顔になった。
「あ!もしかして同郷なのかな!?」
「かもしれないです!」
まさかこんな事になるとは、予想外だったな。
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