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905.【ハル視点】市場で買い物を
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フライドポテトとやきとり、そしてりんご飴という俺にとっては珍しい、アキトにとっては懐かしいだろう料理を、二人で堪能した。
綺麗に全てを食べ終えた後、アキトは上目遣いにそっと俺を見あげてきた。
「美味しかったーちょっと食べすぎたかな、お腹いっぱいだ」
幸せそうな笑みを浮かべたその様子にホッとしたとは、さすがにアキトには言えないな。もしかしたら懐かしい料理を食べた事で、元の世界への気持ちが鮮明になって悲しむかと心配していたんだが。
どうやらいらない心配だったらしい。
「ああ、どれも美味しかったからね。俺も満足したよ」
「ハルはどれが一番好きだった?」
「うーん、あえて一つを選ぶなら、俺はやきとりが好きかな」
元々肉料理が一番好きな俺だが、それにしてもあれは本当に美味しかった。たれも塩もどちらもまた食べたいと思ってしまう味だった。
「ハルも気に入ってくれたなら、嬉しいな」
「すごく気に入ったよ、また来たいな」
「うん、また来ようね!」
ニコニコ笑顔のアキトに笑い返してから、俺達は屋台の並ぶ区画を出るべく歩き出した。
区画を出た所で、俺はアキトの手を引いて道の端へと寄った。移動を始める前に、これからの予定を相談したかったからだ。
「これからどうしようか?」
「これから?」
不思議そうにアキトが首を傾げる。まあ答えは分かってるんだけどね。俺はそうだよと頷いてから口を開いた。
「もし人が多すぎて疲れたなら、今日はここまでにしても良いんだけど…?」
こんなにワクワクした顔のアキトが、ここで帰るなんて言う筈が無いよな。うん、分かってる。
「俺はまだ市場巡りの続きしたいな。そう聞くってことはまだ先があるんだよね?」
「このまま進み続けたら、最終的に市場を通り抜けて違う通りに出るんだ。まだ端まではかなり距離があるよ?」
後悔しない?と匂わせた俺の質問に、アキトはむしろ嬉しそうに笑って即座に頷いた。
「そうなんだ!楽しみ!」
「俺も楽しみだよ。のんびりと見て回ろうか」
「うん、そうしよう」
急ぐ予定もないからと、俺達はそのままのんびりと市場の中の散策を楽しんだ。
市場の奥に行けば行くほど、たくさんの人がいる。おそらく市場の逆側から入ってきた人たちだろう。すれ違うほとんどの人が屋台の話をしているから、これから昼食に向かうんだろうな。
あれ以上混雑する前に、食事が終えられたのは運が良かったな。そんな事を考えていると、不意にアキトが声をあげた。
「あ、この辺りは装備品が多いんだね」
「ああ、本当だね」
他の街では滅多に見ない光景だが、ここ辺境ではよく見る光景だ。自分で作った武器や防具を出している人もいれば、ダンジョンで手に入れたものを売りさばいているだけの人まで様々だ。
安価で質の良い掘り出し物に出会える可能性もあるが、同時に何の価値も無いものに当たってしまう可能性もある。
その辺りは俺がきちんと見れば良いかと、アキトに視線を向けた。
「折角なら何か良いものが無いか見て回ろうか?」
「うん、良いね」
アキトと俺は二人揃って、装備品を扱っているお店を順番に回って行った。
ふと気になって俺が足を止めたのは、武器と防具がたくさん並んだ店だった。
「いらっしゃい!」
笑顔でそう声をかけてくれた屋台の店員は、身軽な前衛冒険者が好むような装備で全身を固めている。速度を重視して攻撃を仕掛ける戦い方なんだろうなと分析していると、店員は申し訳なさそうに俺とアキトに視線を向けた。
「悪い、今こっちの相手してっから、ゆっくり見ててくれるか?」
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」
俺達がそう答えれば、店員はそのまま大剣を見ていた客に向き直った。
どうやら大剣を指差してこっちの方が良いと主張する客に、値段は安いがこっちの方があんたに合ってると店員は勧めているようだ。
不思議に思って店内の武器をぐるりと眺めてみれば、柄の部分にどれも同じような飾りが彫り込まれているのに気づいた。
なるほど、これは全て彼が作った武器なのか。
アキトはちょっと不思議そうに首を傾げて、俺を見つめてくる。
「こっちから見ようか」
手招きをすれば、アキトは客と店員から離れてこっそりと声をかけてきた。
「なんだか…面白いやりとりだね」
「彼は商人と言うよりは鍛冶職人なんだろうね」
それにあの大剣は、今交渉している客には少し重すぎるように見える。さっき手にもって振っている所を見たが、わずかに剣先がぶれていた。あれでは攻撃も上手く入らないだろうし、重さのせいで疲れるのも早くなるだろう。
「だが良い目をしている」
「へーハルから見てもそうなんだ」
ふふと楽し気に笑ったアキトと一緒に、並んでいる武器や防具を順番に眺めてみる。
「このマントはヒコーの皮だね。軽いからアキトにもお勧めだよ?」
火に強いから今のマントとはまた違う使い方ができるんだ。そう説明しようとしたが、それよりも先にアキトが口を開いた。
「んー…でも今のマント気に入ってるからなぁ」
そうか、あの時俺が選んだマントを、アキトも気に入ってくれているのか。じわじわと嬉しい気持ちが湧いてくる。
「そっか」
そんな風に会話をしていると、店員の男性が待たせてすまないなと声をかけてきた。大剣を選んでいた客は、どうやら店員のお勧めの方を買って帰ったようだ。
きっとそちらを選んで良かったと感謝する日が来るぞと、しょんぼりとした客の背中を見送った。
「それで、何か気になるものはあったかい?」
俺はその質問を待っていた。さっきからずっと気にはなっていたが、さすがに店員の後ろに飾られている武器を勝手に取る事はできないからな。
「そこの短剣が気になってるんだが…」
「あー…これはな…ちょっと持ってみな?」
そう言って無造作に渡された短剣を受け取るなり、俺は何度か瞬きを繰り返す事になった。素材が何かまでは分からないが軽そうだなと思っていた。だが、これは想像以上の軽さだ。
「これは…随分軽いんだな?」
「ああ、素材も物も良いんだがな…軽量すぎて兄さんには物足りないだろ?」
その腰の剣を使いこなせる人にはお勧めできないと、店員は俺に向かってはっきりとそう言いきった。たしかに俺にはこれは物足りない重さだ。
「俺には確かに軽すぎるが…アキト?」
「あ、そっちの兄ちゃんにか?」
それなら話は変わるなと、店員はアキトにまっすぐ視線を向けた。
綺麗に全てを食べ終えた後、アキトは上目遣いにそっと俺を見あげてきた。
「美味しかったーちょっと食べすぎたかな、お腹いっぱいだ」
幸せそうな笑みを浮かべたその様子にホッとしたとは、さすがにアキトには言えないな。もしかしたら懐かしい料理を食べた事で、元の世界への気持ちが鮮明になって悲しむかと心配していたんだが。
どうやらいらない心配だったらしい。
「ああ、どれも美味しかったからね。俺も満足したよ」
「ハルはどれが一番好きだった?」
「うーん、あえて一つを選ぶなら、俺はやきとりが好きかな」
元々肉料理が一番好きな俺だが、それにしてもあれは本当に美味しかった。たれも塩もどちらもまた食べたいと思ってしまう味だった。
「ハルも気に入ってくれたなら、嬉しいな」
「すごく気に入ったよ、また来たいな」
「うん、また来ようね!」
ニコニコ笑顔のアキトに笑い返してから、俺達は屋台の並ぶ区画を出るべく歩き出した。
区画を出た所で、俺はアキトの手を引いて道の端へと寄った。移動を始める前に、これからの予定を相談したかったからだ。
「これからどうしようか?」
「これから?」
不思議そうにアキトが首を傾げる。まあ答えは分かってるんだけどね。俺はそうだよと頷いてから口を開いた。
「もし人が多すぎて疲れたなら、今日はここまでにしても良いんだけど…?」
こんなにワクワクした顔のアキトが、ここで帰るなんて言う筈が無いよな。うん、分かってる。
「俺はまだ市場巡りの続きしたいな。そう聞くってことはまだ先があるんだよね?」
「このまま進み続けたら、最終的に市場を通り抜けて違う通りに出るんだ。まだ端まではかなり距離があるよ?」
後悔しない?と匂わせた俺の質問に、アキトはむしろ嬉しそうに笑って即座に頷いた。
「そうなんだ!楽しみ!」
「俺も楽しみだよ。のんびりと見て回ろうか」
「うん、そうしよう」
急ぐ予定もないからと、俺達はそのままのんびりと市場の中の散策を楽しんだ。
市場の奥に行けば行くほど、たくさんの人がいる。おそらく市場の逆側から入ってきた人たちだろう。すれ違うほとんどの人が屋台の話をしているから、これから昼食に向かうんだろうな。
あれ以上混雑する前に、食事が終えられたのは運が良かったな。そんな事を考えていると、不意にアキトが声をあげた。
「あ、この辺りは装備品が多いんだね」
「ああ、本当だね」
他の街では滅多に見ない光景だが、ここ辺境ではよく見る光景だ。自分で作った武器や防具を出している人もいれば、ダンジョンで手に入れたものを売りさばいているだけの人まで様々だ。
安価で質の良い掘り出し物に出会える可能性もあるが、同時に何の価値も無いものに当たってしまう可能性もある。
その辺りは俺がきちんと見れば良いかと、アキトに視線を向けた。
「折角なら何か良いものが無いか見て回ろうか?」
「うん、良いね」
アキトと俺は二人揃って、装備品を扱っているお店を順番に回って行った。
ふと気になって俺が足を止めたのは、武器と防具がたくさん並んだ店だった。
「いらっしゃい!」
笑顔でそう声をかけてくれた屋台の店員は、身軽な前衛冒険者が好むような装備で全身を固めている。速度を重視して攻撃を仕掛ける戦い方なんだろうなと分析していると、店員は申し訳なさそうに俺とアキトに視線を向けた。
「悪い、今こっちの相手してっから、ゆっくり見ててくれるか?」
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」
俺達がそう答えれば、店員はそのまま大剣を見ていた客に向き直った。
どうやら大剣を指差してこっちの方が良いと主張する客に、値段は安いがこっちの方があんたに合ってると店員は勧めているようだ。
不思議に思って店内の武器をぐるりと眺めてみれば、柄の部分にどれも同じような飾りが彫り込まれているのに気づいた。
なるほど、これは全て彼が作った武器なのか。
アキトはちょっと不思議そうに首を傾げて、俺を見つめてくる。
「こっちから見ようか」
手招きをすれば、アキトは客と店員から離れてこっそりと声をかけてきた。
「なんだか…面白いやりとりだね」
「彼は商人と言うよりは鍛冶職人なんだろうね」
それにあの大剣は、今交渉している客には少し重すぎるように見える。さっき手にもって振っている所を見たが、わずかに剣先がぶれていた。あれでは攻撃も上手く入らないだろうし、重さのせいで疲れるのも早くなるだろう。
「だが良い目をしている」
「へーハルから見てもそうなんだ」
ふふと楽し気に笑ったアキトと一緒に、並んでいる武器や防具を順番に眺めてみる。
「このマントはヒコーの皮だね。軽いからアキトにもお勧めだよ?」
火に強いから今のマントとはまた違う使い方ができるんだ。そう説明しようとしたが、それよりも先にアキトが口を開いた。
「んー…でも今のマント気に入ってるからなぁ」
そうか、あの時俺が選んだマントを、アキトも気に入ってくれているのか。じわじわと嬉しい気持ちが湧いてくる。
「そっか」
そんな風に会話をしていると、店員の男性が待たせてすまないなと声をかけてきた。大剣を選んでいた客は、どうやら店員のお勧めの方を買って帰ったようだ。
きっとそちらを選んで良かったと感謝する日が来るぞと、しょんぼりとした客の背中を見送った。
「それで、何か気になるものはあったかい?」
俺はその質問を待っていた。さっきからずっと気にはなっていたが、さすがに店員の後ろに飾られている武器を勝手に取る事はできないからな。
「そこの短剣が気になってるんだが…」
「あー…これはな…ちょっと持ってみな?」
そう言って無造作に渡された短剣を受け取るなり、俺は何度か瞬きを繰り返す事になった。素材が何かまでは分からないが軽そうだなと思っていた。だが、これは想像以上の軽さだ。
「これは…随分軽いんだな?」
「ああ、素材も物も良いんだがな…軽量すぎて兄さんには物足りないだろ?」
その腰の剣を使いこなせる人にはお勧めできないと、店員は俺に向かってはっきりとそう言いきった。たしかに俺にはこれは物足りない重さだ。
「俺には確かに軽すぎるが…アキト?」
「あ、そっちの兄ちゃんにか?」
それなら話は変わるなと、店員はアキトにまっすぐ視線を向けた。
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