生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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899.ケンの話

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 あまりに予想外のタイミングで唐突にケンから褒められた事で、どうやらレイさんは何やら吹っ切れたみたいだ。

 あとで聞いたんだけど普段はケンはあまりああいう事を言葉にしないんだって。だからあんな風に褒められる事なんて滅多に無いらしい。

 まだすこし緊張はしているみたいだし、俺とハルへの言葉は敬語と普通の言葉が入り混じってるけど、落ち着いた様子で全員分のお茶を入れてくれた。

「んー美味しいです!」
「それは良かった」
「うん、本当に美味いな」
「こ、光栄です」
「レイが入れたお茶は本当に美味しいよねー、専門店で飲むのにも負けないぐらいの味だと思うもん」

 自慢げにそう答えるケンに、またしてもレイさんは頬を赤く染めた。

「ね、アキトはいつ頃こっちに来たの?」

 もし答え難い事なら断ってねと前置きをしてから、ケンは控え目にそう尋ねてきた。

「えーっと…一年ぐらい前…かな?」
「ああ、それぐらいだな」

 あってる?と思わず視線を向けた俺に、ハルはすぐに頷いてくれた。

 自分で言って自分で驚いたんだけど、こっちに来てからもう一年も経つのか。知らない間に誕生日とか過ぎちゃったな。

「そっか、またそれぐらいなのか」
「ケンは?」
「ああ、俺は十年ぐらい前だな。隣国で知識目当てで召喚されたんだ」

 あっさりと笑いながら答えたケンに、俺とハルは思わず息を飲んだ。ケンは十年も前にこっちの世界に来たの?

「そんなに幼い頃に…苦労しただろう?」

 つらい話なら無理に話そうとしなくて良いからなと心配したハルが声をかければ、ケンは苦笑を洩らした。あれ、よく見ると隣のレイさんも何故か苦笑してるね。今結構重い話をしてたと思うんだけど。

「なあ、アキト、俺いくつぐらいに見えてる?」

 急に変わった話題に驚きながらも、俺は少し考えてから答えた。

「え、俺と同い年か…ちょっと上ぐらい?」

 本当は下手したら年下かもと思ってたなんて事は、さすがに言えなかった。

「あー…ごめん。まずアキトっていくつなんだ?」
「今二十一…あ、いや、二十二歳になったのかな…?」

 誕生日を超えたかどうか自信がない。それでもどうにかそう答えた俺に、ケンはあーと呟きながら視線を反らした。

「えっとな…よく誤解されるんだけどさぁ」
「うん、どうしたの?」

 誤解って何の事だろうと思いながらもコクコクと頷いて先を促した俺に、ケンは申し訳なさそうに続けた。

「十年前ってのは本当の話だけど、その時点でも俺はもう成人はしてたからな?」
「へ?」

 十年前でも成人してたって事は…。

「待って…?って事はつまり、ケンの年齢は三十以上って事!?」
「おう、今三十五だよ」

 ケンが三十五歳?嘘だよね?だってあの無邪気な笑顔を見たら、もしかしたら俺より若いかもしれないって思ったぐらいなのに?

 パクパクと口を開け閉めする俺の隣で、いち早く復活したハルが尋ねた。

「失礼な質問だが…今の年齢の話も…本当の話なんだよな?」
「ケンの年齢を聞いた人は皆それを聞きますね。間違いなく本当ですよ。ちなみに俺が出逢った五年前から、ケンは今の見た目でした」

 年を取ってもそれほど見た目が変わらない人なんですよと、レイさんは呆れ顔で続けた。

「へぇ、それはすごいな」
「年齢不詳でごめんなー」

 そう言ったケンは、ケタケタと楽し気に笑った。

「だが、例えしっかり成人済みだったとしても、急に異世界に召喚されたのなら心細かっただろう?大変だったな」

 習慣や環境まで全てが違う場所なんだからと続けたハルに、ケンとレイさんは顔を見合わせてからふわりと笑った。

「…ハロルド様はすごいですね」
「ね、さすが…だな」
「何だ…急に?」

 そう答えたハルは不思議さ半分、照れくささ半分といった様子で、ちょっと複雑そうな表情を浮かべている。滅多に見れない表情だ。

「既に成人してたって聞いて、それでも心配されたのは久しぶりなんだよ」
「…そうなのか?」
「そうなんだよ」
「なあ、ケン、最初から全部話せば良いんじゃないか?」
「そうだなー話すか。聞いてくれる?」
「「もちろん」」

 俺とハルの重なった答えに、ケンは仲良しだなともう一度笑ってくれた。
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