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898.お茶の用意
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「おふたりともどうぞこちらに座ってください」
緊張感の残る硬い声でそう言うと、レイさんはぎこちない動きで椅子を勧めてくれた。よくよく見ると指先が震えてる。
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」
お礼の言葉を言って俺達は素直に横並びの椅子に座ったけど、レイさんはまだその場に立ったままだ。
ちなみにケンは普通に俺達と同じタイミングでいそいそと椅子に座ってたから、室内に立っている人はレイさんだけだ。
うーん、座って下さいって、お店兼自宅だろう場所にお邪魔してる側の俺達が言うのも何か変だよね。かといって声をかけなかったら、ずっと立ちっぱなしになりそうで心配になってしまう。
どうしよう?どうしようか?とハルと視線だけで会話を交わしていると、不意にケンが口を開いた。
「なぁ、レイ」
「ん?どうした、ケン」
反射的に答えたらしいレイさんに、ケンは楽し気に続ける。
「さっき途中で待てって言われたから、実はまだ大事なお客さん達に飲み物の一つも出してないんだけど…」
大丈夫なのかな?と言い出しそうな心配そうな顔をしたケンを見て、レイさんはハッとした表情に変わった。あ、ちょっと市場でみたレイさんに近づいた。
「もちろん俺が用意しても良いんだけど、レイの方がお茶入れるの上手いよね?」
「そうだな。すぐに用意する!」
レイさんはそう言うなり、俺とハルに失礼しますと声をかけてから奥の方へと入っていった。
えっと、今俺達がいる場所にキッチンらしきものがあるんだけど、大丈夫かな?
「ああ、心配しなくても多分良い茶葉とお菓子でも探しに行っただけだよ」
「そうなんだ」
「まさかあそこまで動揺させてしまうとは…レイさんには申し訳ない事をしたな」
ハルは困り顔でケンに向かって声をかけた。
「ああ、いや、それは気にしなくて良いよ…ただ…俺がねー貴族相手の対応とかそういうのすごく苦手なんだけど…大丈夫かな?」
そういうの慣れてないからさーと苦笑しながらも真剣な表情で続けたケンに、ハルはむしろ軽い口調で話してくれた方が嬉しいくらいだと即答した。
うん、ハルはそうだよね。貴族だからとかそういう対応を求めている所を、見た事が無いもん。
「あー良かった!敬語ぐらいは喋れるけどさ、貴族相手の対応とか知らないし。アキトの伴侶候補は優しいね?」
「え、うん、ハルは優しいよ」
しかも格好良いなんて思ってしまったけど、さすがにそれは口にしなかった。ハルは急に俺に褒められたと、嬉しそうに笑ってくれた。可愛い笑顔だ。
「だが俺はケンさんの伴侶候補のレイさんも、すごい人だと思うよ?」
「へ?あんなに分かりやすく緊張してたのに?」
思わずと言った様子でそう尋ねたケンに、ハルは笑ってコクリと頷いた。
「ああ。ここに到着するなり、俺の素性について尋ねただろう?」
「うん、そうだったね」
「それまでは移動中もずっと、常に俺とケンさんの間に立つように立ち回ってたからね」
「え…そうなの?アキト気づいてた?」
そう言われても、俺にも全然分からなかった。
「ううん、全く気づいてなかった」
普通に前を歩いてる二人を、後ろから追いかけてるだけだと思ってた。
「しかもきちんと気配探知をかけながらだったよ。それに俺が気づいたから、余計に警戒させたんだと思うんだ」
「あー…なるほど」
普段はあんな聞き方をする奴じゃないから、ちょっと意外だったんだよねとケンは答えた。
「気配探知に気づいた事で俺の強さを察した上で、それでも直球で尋ねてしまうぐらいレイさんは君を守ろうとしているって事だからね」
やっぱりすごい人だよ。そう続けたハルに、ケンは照れくさそうに、でも嬉しそうに満面の笑みを見せた。ケンって、笑うとこどもっぽい笑顔になるんだな。
「お待たせしました!茶葉とお菓子をお持ちしました!」
慌てた様子でトレイを掲げて帰ってきたレイさんに、ケンはちらりと視線を向けた。俺とハルはそんなケンの様子を微笑ましく見守っている。
「ん?どうした?」
「いや、なんでも?俺の伴侶候補は良い男だなーと思って?」
ケンの言葉に、レイさんはボッと耳まで真っ赤になった。
「は?何だ急に!」
うん、レイさんは褒められなれてない、ちょっと可愛らしい人だ。
緊張感の残る硬い声でそう言うと、レイさんはぎこちない動きで椅子を勧めてくれた。よくよく見ると指先が震えてる。
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」
お礼の言葉を言って俺達は素直に横並びの椅子に座ったけど、レイさんはまだその場に立ったままだ。
ちなみにケンは普通に俺達と同じタイミングでいそいそと椅子に座ってたから、室内に立っている人はレイさんだけだ。
うーん、座って下さいって、お店兼自宅だろう場所にお邪魔してる側の俺達が言うのも何か変だよね。かといって声をかけなかったら、ずっと立ちっぱなしになりそうで心配になってしまう。
どうしよう?どうしようか?とハルと視線だけで会話を交わしていると、不意にケンが口を開いた。
「なぁ、レイ」
「ん?どうした、ケン」
反射的に答えたらしいレイさんに、ケンは楽し気に続ける。
「さっき途中で待てって言われたから、実はまだ大事なお客さん達に飲み物の一つも出してないんだけど…」
大丈夫なのかな?と言い出しそうな心配そうな顔をしたケンを見て、レイさんはハッとした表情に変わった。あ、ちょっと市場でみたレイさんに近づいた。
「もちろん俺が用意しても良いんだけど、レイの方がお茶入れるの上手いよね?」
「そうだな。すぐに用意する!」
レイさんはそう言うなり、俺とハルに失礼しますと声をかけてから奥の方へと入っていった。
えっと、今俺達がいる場所にキッチンらしきものがあるんだけど、大丈夫かな?
「ああ、心配しなくても多分良い茶葉とお菓子でも探しに行っただけだよ」
「そうなんだ」
「まさかあそこまで動揺させてしまうとは…レイさんには申し訳ない事をしたな」
ハルは困り顔でケンに向かって声をかけた。
「ああ、いや、それは気にしなくて良いよ…ただ…俺がねー貴族相手の対応とかそういうのすごく苦手なんだけど…大丈夫かな?」
そういうの慣れてないからさーと苦笑しながらも真剣な表情で続けたケンに、ハルはむしろ軽い口調で話してくれた方が嬉しいくらいだと即答した。
うん、ハルはそうだよね。貴族だからとかそういう対応を求めている所を、見た事が無いもん。
「あー良かった!敬語ぐらいは喋れるけどさ、貴族相手の対応とか知らないし。アキトの伴侶候補は優しいね?」
「え、うん、ハルは優しいよ」
しかも格好良いなんて思ってしまったけど、さすがにそれは口にしなかった。ハルは急に俺に褒められたと、嬉しそうに笑ってくれた。可愛い笑顔だ。
「だが俺はケンさんの伴侶候補のレイさんも、すごい人だと思うよ?」
「へ?あんなに分かりやすく緊張してたのに?」
思わずと言った様子でそう尋ねたケンに、ハルは笑ってコクリと頷いた。
「ああ。ここに到着するなり、俺の素性について尋ねただろう?」
「うん、そうだったね」
「それまでは移動中もずっと、常に俺とケンさんの間に立つように立ち回ってたからね」
「え…そうなの?アキト気づいてた?」
そう言われても、俺にも全然分からなかった。
「ううん、全く気づいてなかった」
普通に前を歩いてる二人を、後ろから追いかけてるだけだと思ってた。
「しかもきちんと気配探知をかけながらだったよ。それに俺が気づいたから、余計に警戒させたんだと思うんだ」
「あー…なるほど」
普段はあんな聞き方をする奴じゃないから、ちょっと意外だったんだよねとケンは答えた。
「気配探知に気づいた事で俺の強さを察した上で、それでも直球で尋ねてしまうぐらいレイさんは君を守ろうとしているって事だからね」
やっぱりすごい人だよ。そう続けたハルに、ケンは照れくさそうに、でも嬉しそうに満面の笑みを見せた。ケンって、笑うとこどもっぽい笑顔になるんだな。
「お待たせしました!茶葉とお菓子をお持ちしました!」
慌てた様子でトレイを掲げて帰ってきたレイさんに、ケンはちらりと視線を向けた。俺とハルはそんなケンの様子を微笑ましく見守っている。
「ん?どうした?」
「いや、なんでも?俺の伴侶候補は良い男だなーと思って?」
ケンの言葉に、レイさんはボッと耳まで真っ赤になった。
「は?何だ急に!」
うん、レイさんは褒められなれてない、ちょっと可愛らしい人だ。
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