生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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873.【ハル視点】今後の予定

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 食事も終わりメイド達によって皿や料理が全て片づけられても、部屋から出て行こうとする人は誰もいなかった。

 両親とファーガス兄さん、それにウィル兄は、今日は昼から仕事の予定らしい。万が一何か問題が起きたらこの部屋まで呼びに来てくれるようになっているそうだ。

 ジルさんとマティさんは数日間は休みを取っているそうだし、はっきりとした予定がある人はいないようだ。

 それならとそのままのんびりと会話を楽しんでいると、話題が途切れた所で父さんが俺達に視線を向けて口を開いた。

「ところで、アキトくんとハルのこれからの予定は、もう決まっているのかい?」

 俺はすぐに首を振って答えた。

「いや、まだ細かい予定については全く決まってないな」

 ね?と視線を向ければ、アキトはこくこくと頷いてくれた。

 辺境領で食べたい物や、行きたい場所、買いたい物についてはたくさん話した。だが日程や順番などの細かいところについては、まだ全く相談できていない。

 ここに来るのが急に決まったから、時間が無かったというのも理由の一つだ。

「でも、魔法陣で移動してきたって事は、しばらくは滞在するんだよな?」

 ワクワクした様子を隠さず嬉しそうに笑いながらそう確認する母さんに、アキトもふわりと笑顔になった。

「はい!滞在させてもらいます!」

 嬉しそうに笑いながらそう答えたアキトに、母さんどころかこちらを見ていたみんなも一気に笑顔になった。さっきのアキトのこどものような笑顔を見たら、そんな反応になるのも仕方ないか。

「それは嬉しいなー!アキト、一緒に色々しような!」

 領主城前の森で採取してまわったり、気配の消し方と探り方の実地訓練もしようかと、母さんは指を折りながらニコニコ笑顔で提案した。

 伴侶候補の母親とでかける先としては、普通に考えればあり得ないものばかりだ。先輩冒険者から後輩冒険者への教えと言った方が納得できるようなものしかない。

 そんな提案に、アキトはキラキラと目を輝かせて答えた。

「はい、ぜひ!」

 即答に嬉しそうに笑う母と、楽しそうに目を輝かせるアキト。そんな二人のやりとりに、俺はそっと口を挟んだ。

「…ねぇ、アキト、俺との時間も作ってね…?」

 すこし寂しそうな言い方になってしまったのは、決して狙ったわけでは無い。ただアキトとの時間を全て母に奪われないようにと、必死だった。

 どうみても情けない顔をしているだろう俺を見て、アキトは不意にほわりと頬を赤く染めた。言葉にはならなかったが、口がかわいいと動いたのは見えた。

 こんな情けない反応をした厳つい男を捕まえて可愛いとは。正直に言えば驚きはしたが、アキトにそう言われるのは嫌いじゃない。

「もちろん!辺境領でも二人でいろいろしよーね!」
「ああ、ありがとう」

 優しいアキトの言葉に浸っていると、不意に声が聞こえてきた。

「こんなハルは珍しすぎて、気を抜くとうっかり笑いそうになるな」

 そうぽつりと呟いたのは、ファーガス兄さんだ。口にした途端、駄目だろうと言いたそうなマティさんにぐいっと手を引かれているが、嬉しそうにわらっている。まあそうなるよな。

「えー、俺はむしろこういうハルはじっくり観察したくなるけど?」

 ニヤニヤ笑顔で答えたウィル兄さんも、ジルさんに揶揄わないと叱られている。こちらも嬉しそうだから逆効果だろうな。

「キースはどう思う?」

 叱られながらも悪戯っぽくキースに尋ねたせいで、ウィル兄さんの説教時間はどうやら伸びるみたいだ。まあキースだけ仲間外れというのも良くないから、話を振ったこと事態は別に文句は無いんだが。

「え、僕は仲良しだなーって思います」

 うん、キースはやっぱり天使だな。

「兄さんたち、別に恥ずかしくないからなんとでも言ってくれ」

 キースはありがとうなと続ければ、ニコニコ笑顔が返ってきた。

「実地訓練も採取も、別にアキトだけとは言ってないだろう?もし良ければハルも来たら良いさ」

 母さんは、俺に向かって笑いながらそう告げた。そうか。俺も一緒に参加すれば良いのか。

「ああ、ぜひ参加させてもらうよ」
「どれぐらい腕が上達したか見せてくれ」
「もちろん、全力を出すよ」

 不敵に笑ってみせれば、母さんもニヤリと笑みを返してくる。これは良い訓練になりそうだ。



「それで、今日はどうするんだい?」

 二人で決めたら良いと判断を委ねられた俺たちは、ぱちりと視線を合わせた。

「アキトはどうしたい?」
「んー、俺は…辺境領のことをもっと知りたいな」
「そうか。それじゃあとりあえず、今日は街に遊びに行こうか?」

 気になる物があれば買い物をしても良いし、のんびり街中を見て回るだけでも良いしと俺は優しく続けた。

「うん、楽しそう!」
「決まったね」
「ハル、もし万が一街中で何かがあれば衛兵か騎士に伝えてくれ」
「ああ、分かった」

 予定が決まったなら行っておいでとみんなに見送られ、アキトと俺は部屋を後にした。

 辺境領巡り、アキトに楽しんでもらいたいな。
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