874 / 1,179
873.【ハル視点】今後の予定
しおりを挟む
食事も終わりメイド達によって皿や料理が全て片づけられても、部屋から出て行こうとする人は誰もいなかった。
両親とファーガス兄さん、それにウィル兄は、今日は昼から仕事の予定らしい。万が一何か問題が起きたらこの部屋まで呼びに来てくれるようになっているそうだ。
ジルさんとマティさんは数日間は休みを取っているそうだし、はっきりとした予定がある人はいないようだ。
それならとそのままのんびりと会話を楽しんでいると、話題が途切れた所で父さんが俺達に視線を向けて口を開いた。
「ところで、アキトくんとハルのこれからの予定は、もう決まっているのかい?」
俺はすぐに首を振って答えた。
「いや、まだ細かい予定については全く決まってないな」
ね?と視線を向ければ、アキトはこくこくと頷いてくれた。
辺境領で食べたい物や、行きたい場所、買いたい物についてはたくさん話した。だが日程や順番などの細かいところについては、まだ全く相談できていない。
ここに来るのが急に決まったから、時間が無かったというのも理由の一つだ。
「でも、魔法陣で移動してきたって事は、しばらくは滞在するんだよな?」
ワクワクした様子を隠さず嬉しそうに笑いながらそう確認する母さんに、アキトもふわりと笑顔になった。
「はい!滞在させてもらいます!」
嬉しそうに笑いながらそう答えたアキトに、母さんどころかこちらを見ていたみんなも一気に笑顔になった。さっきのアキトのこどものような笑顔を見たら、そんな反応になるのも仕方ないか。
「それは嬉しいなー!アキト、一緒に色々しような!」
領主城前の森で採取してまわったり、気配の消し方と探り方の実地訓練もしようかと、母さんは指を折りながらニコニコ笑顔で提案した。
伴侶候補の母親とでかける先としては、普通に考えればあり得ないものばかりだ。先輩冒険者から後輩冒険者への教えと言った方が納得できるようなものしかない。
そんな提案に、アキトはキラキラと目を輝かせて答えた。
「はい、ぜひ!」
即答に嬉しそうに笑う母と、楽しそうに目を輝かせるアキト。そんな二人のやりとりに、俺はそっと口を挟んだ。
「…ねぇ、アキト、俺との時間も作ってね…?」
すこし寂しそうな言い方になってしまったのは、決して狙ったわけでは無い。ただアキトとの時間を全て母に奪われないようにと、必死だった。
どうみても情けない顔をしているだろう俺を見て、アキトは不意にほわりと頬を赤く染めた。言葉にはならなかったが、口がかわいいと動いたのは見えた。
こんな情けない反応をした厳つい男を捕まえて可愛いとは。正直に言えば驚きはしたが、アキトにそう言われるのは嫌いじゃない。
「もちろん!辺境領でも二人でいろいろしよーね!」
「ああ、ありがとう」
優しいアキトの言葉に浸っていると、不意に声が聞こえてきた。
「こんなハルは珍しすぎて、気を抜くとうっかり笑いそうになるな」
そうぽつりと呟いたのは、ファーガス兄さんだ。口にした途端、駄目だろうと言いたそうなマティさんにぐいっと手を引かれているが、嬉しそうにわらっている。まあそうなるよな。
「えー、俺はむしろこういうハルはじっくり観察したくなるけど?」
ニヤニヤ笑顔で答えたウィル兄さんも、ジルさんに揶揄わないと叱られている。こちらも嬉しそうだから逆効果だろうな。
「キースはどう思う?」
叱られながらも悪戯っぽくキースに尋ねたせいで、ウィル兄さんの説教時間はどうやら伸びるみたいだ。まあキースだけ仲間外れというのも良くないから、話を振ったこと事態は別に文句は無いんだが。
「え、僕は仲良しだなーって思います」
うん、キースはやっぱり天使だな。
「兄さんたち、別に恥ずかしくないからなんとでも言ってくれ」
キースはありがとうなと続ければ、ニコニコ笑顔が返ってきた。
「実地訓練も採取も、別にアキトだけとは言ってないだろう?もし良ければハルも来たら良いさ」
母さんは、俺に向かって笑いながらそう告げた。そうか。俺も一緒に参加すれば良いのか。
「ああ、ぜひ参加させてもらうよ」
「どれぐらい腕が上達したか見せてくれ」
「もちろん、全力を出すよ」
不敵に笑ってみせれば、母さんもニヤリと笑みを返してくる。これは良い訓練になりそうだ。
「それで、今日はどうするんだい?」
二人で決めたら良いと判断を委ねられた俺たちは、ぱちりと視線を合わせた。
「アキトはどうしたい?」
「んー、俺は…辺境領のことをもっと知りたいな」
「そうか。それじゃあとりあえず、今日は街に遊びに行こうか?」
気になる物があれば買い物をしても良いし、のんびり街中を見て回るだけでも良いしと俺は優しく続けた。
「うん、楽しそう!」
「決まったね」
「ハル、もし万が一街中で何かがあれば衛兵か騎士に伝えてくれ」
「ああ、分かった」
予定が決まったなら行っておいでとみんなに見送られ、アキトと俺は部屋を後にした。
辺境領巡り、アキトに楽しんでもらいたいな。
両親とファーガス兄さん、それにウィル兄は、今日は昼から仕事の予定らしい。万が一何か問題が起きたらこの部屋まで呼びに来てくれるようになっているそうだ。
ジルさんとマティさんは数日間は休みを取っているそうだし、はっきりとした予定がある人はいないようだ。
それならとそのままのんびりと会話を楽しんでいると、話題が途切れた所で父さんが俺達に視線を向けて口を開いた。
「ところで、アキトくんとハルのこれからの予定は、もう決まっているのかい?」
俺はすぐに首を振って答えた。
「いや、まだ細かい予定については全く決まってないな」
ね?と視線を向ければ、アキトはこくこくと頷いてくれた。
辺境領で食べたい物や、行きたい場所、買いたい物についてはたくさん話した。だが日程や順番などの細かいところについては、まだ全く相談できていない。
ここに来るのが急に決まったから、時間が無かったというのも理由の一つだ。
「でも、魔法陣で移動してきたって事は、しばらくは滞在するんだよな?」
ワクワクした様子を隠さず嬉しそうに笑いながらそう確認する母さんに、アキトもふわりと笑顔になった。
「はい!滞在させてもらいます!」
嬉しそうに笑いながらそう答えたアキトに、母さんどころかこちらを見ていたみんなも一気に笑顔になった。さっきのアキトのこどものような笑顔を見たら、そんな反応になるのも仕方ないか。
「それは嬉しいなー!アキト、一緒に色々しような!」
領主城前の森で採取してまわったり、気配の消し方と探り方の実地訓練もしようかと、母さんは指を折りながらニコニコ笑顔で提案した。
伴侶候補の母親とでかける先としては、普通に考えればあり得ないものばかりだ。先輩冒険者から後輩冒険者への教えと言った方が納得できるようなものしかない。
そんな提案に、アキトはキラキラと目を輝かせて答えた。
「はい、ぜひ!」
即答に嬉しそうに笑う母と、楽しそうに目を輝かせるアキト。そんな二人のやりとりに、俺はそっと口を挟んだ。
「…ねぇ、アキト、俺との時間も作ってね…?」
すこし寂しそうな言い方になってしまったのは、決して狙ったわけでは無い。ただアキトとの時間を全て母に奪われないようにと、必死だった。
どうみても情けない顔をしているだろう俺を見て、アキトは不意にほわりと頬を赤く染めた。言葉にはならなかったが、口がかわいいと動いたのは見えた。
こんな情けない反応をした厳つい男を捕まえて可愛いとは。正直に言えば驚きはしたが、アキトにそう言われるのは嫌いじゃない。
「もちろん!辺境領でも二人でいろいろしよーね!」
「ああ、ありがとう」
優しいアキトの言葉に浸っていると、不意に声が聞こえてきた。
「こんなハルは珍しすぎて、気を抜くとうっかり笑いそうになるな」
そうぽつりと呟いたのは、ファーガス兄さんだ。口にした途端、駄目だろうと言いたそうなマティさんにぐいっと手を引かれているが、嬉しそうにわらっている。まあそうなるよな。
「えー、俺はむしろこういうハルはじっくり観察したくなるけど?」
ニヤニヤ笑顔で答えたウィル兄さんも、ジルさんに揶揄わないと叱られている。こちらも嬉しそうだから逆効果だろうな。
「キースはどう思う?」
叱られながらも悪戯っぽくキースに尋ねたせいで、ウィル兄さんの説教時間はどうやら伸びるみたいだ。まあキースだけ仲間外れというのも良くないから、話を振ったこと事態は別に文句は無いんだが。
「え、僕は仲良しだなーって思います」
うん、キースはやっぱり天使だな。
「兄さんたち、別に恥ずかしくないからなんとでも言ってくれ」
キースはありがとうなと続ければ、ニコニコ笑顔が返ってきた。
「実地訓練も採取も、別にアキトだけとは言ってないだろう?もし良ければハルも来たら良いさ」
母さんは、俺に向かって笑いながらそう告げた。そうか。俺も一緒に参加すれば良いのか。
「ああ、ぜひ参加させてもらうよ」
「どれぐらい腕が上達したか見せてくれ」
「もちろん、全力を出すよ」
不敵に笑ってみせれば、母さんもニヤリと笑みを返してくる。これは良い訓練になりそうだ。
「それで、今日はどうするんだい?」
二人で決めたら良いと判断を委ねられた俺たちは、ぱちりと視線を合わせた。
「アキトはどうしたい?」
「んー、俺は…辺境領のことをもっと知りたいな」
「そうか。それじゃあとりあえず、今日は街に遊びに行こうか?」
気になる物があれば買い物をしても良いし、のんびり街中を見て回るだけでも良いしと俺は優しく続けた。
「うん、楽しそう!」
「決まったね」
「ハル、もし万が一街中で何かがあれば衛兵か騎士に伝えてくれ」
「ああ、分かった」
予定が決まったなら行っておいでとみんなに見送られ、アキトと俺は部屋を後にした。
辺境領巡り、アキトに楽しんでもらいたいな。
758
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる