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868.【ハル視点】部屋へ戻れば
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アキトの待っている部屋へと向かうべく足早に廊下を進んでいく俺に、すれ違う使用人たちは驚く様子も無く笑顔で声をかけてくる。
有事の際には全身を装備で固めた状態で全力で駆け抜けていても特に動じないのだから、早歩き程度で動じるはずもないか。
「ハロルド様、おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございます」
「ああ、おはよう。みんな元気だったか?」
「はい、全員欠ける事なくみんな元気ですよ。ハロルド様もお元気そうで何よりです」
「ああ、ありがとう」
笑顔を浮かべて答えれば、今度は伴侶候補を得た事への祝いの言葉があちこちからかけられる。きちんと一人一人に答えを返しながらも、足の速度は緩めずに廊下を進んでいく。
後はここを曲がれば、俺とアキトの宿泊している来客用の寝室だ。
アキトは派手なのが好きじゃないと伝えたせいか、部屋の家具の色味まで抑えられていたのには正直すこし驚いた。多分あの部屋も、アキトのためにわざわざ用意してくれたんだろうな。
そう思えば自然と笑みが浮かんでしまう。
さっと廊下の角を曲がれば、近づいてくる気配にこちらを警戒していたプーカの鋭い目とバチリと視線が交わった。
やってきたのが俺だと確認した途端、緊張感のある表情は一瞬で柔らかい笑みへと変わった。本当に全力で警戒してくれていたんだなと、その表情だけで伝わってくる。
「おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
答えながら、俺はちらりと閉まったままのドアへと視線を向ける。
「まだ起きてきてはいないみたい…だな?」
「ええ、部屋から出て来られてはいませんね」
目が覚めて部屋に一人きりだと気づけば、きっとアキトは部屋から出てくるだろう。出て来ていないという事はまだ眠っている可能性が高い。
間に合ったかとホッと息を吐く俺を、プーカは微笑ましそうに見守っている。
「不在の間のアキトの護衛、ありがとう」
「いえ、とんでもございません。お二人が部屋から出られるまでこちらにおりますので、何かあればお声がけください」
「ああ、ありがとう」
少し離れた所に移動してくれたプーカの気づかいに感謝しながら、俺は音を立てないように気を付けつつ息をひそめてそっとドアを開けた。
まだ自然と目が覚めていないなら、俺の立てた物音のせいで起こしてしまうのは可哀想だ。音を立てないように細心の注意を払い、うっすらと開いたドアの隙間に身体を滑りこませる。
よしうまくいったなと視線を上げれば、ベッドの上に座り込んだままじっとこちらを見ているアキトと目があった。
あー、これはすこし前に起きていたみたいだな。
「アキト、おはよう。もう起きたの?」
「おはよう、ハル。うん、よく寝たからすっきり目が覚めたよ」
ニコニコと笑顔をみせるアキトの顔色をそっと伺ってみる。うん、たしかに顔色は良いな。特に体調が悪い様子も無いようだ。
「あのさ…ハル、ごめん。俺昨日ここまで移動したの覚えてないんだけど…」
言い難そうに尋ねるアキトに、俺はあっさりと答える。
「ああ、確かに眠そうではあったけど、昨日はここまで自分の足で移動したよ?」
「え、そうなの?」
本当に?とすこし心配そうに見つめてくるアキトに笑顔で頷いてみせれば、途端にアキトはハーッと安堵の息を吐いた。
ハルに迷惑をかけてないなら良かったーと、アキトは小さな声で呟いている。別に迷惑だなんて思った事は無いんだがな。
「ラスが、俺の両親に説教してたのは覚えてる?」
「あー…うん。それはちゃんと覚えてる」
少し困った様子でそっと視線を反らしたのは、昨日の叱られている両親の姿を思い出してしまったからだろうな。
ラスもさすがに外部の人間がいる場所では、あんな風に両親を叱ったりはしない。
両親は誰に見られても特に気にしないだろうが、使用人に舐められていると受け取られれば辺境伯夫妻の評判にも関わるからな。
まあアキトはもう俺たちの家族だからと外部の人間扱いされなかった結果、あんな場面をいきなり目撃してしまったわけだが。
「その後はすぐに解散になったから、まっすぐこの部屋に戻ってきたよ?」
「そっか、それなら良かった」
どうやらようやく納得してくれたらしい。
ベッドから起き上がろうとするアキトにそっと手を差し出せば、きゅっとすぐに握り返された。
有事の際には全身を装備で固めた状態で全力で駆け抜けていても特に動じないのだから、早歩き程度で動じるはずもないか。
「ハロルド様、おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございます」
「ああ、おはよう。みんな元気だったか?」
「はい、全員欠ける事なくみんな元気ですよ。ハロルド様もお元気そうで何よりです」
「ああ、ありがとう」
笑顔を浮かべて答えれば、今度は伴侶候補を得た事への祝いの言葉があちこちからかけられる。きちんと一人一人に答えを返しながらも、足の速度は緩めずに廊下を進んでいく。
後はここを曲がれば、俺とアキトの宿泊している来客用の寝室だ。
アキトは派手なのが好きじゃないと伝えたせいか、部屋の家具の色味まで抑えられていたのには正直すこし驚いた。多分あの部屋も、アキトのためにわざわざ用意してくれたんだろうな。
そう思えば自然と笑みが浮かんでしまう。
さっと廊下の角を曲がれば、近づいてくる気配にこちらを警戒していたプーカの鋭い目とバチリと視線が交わった。
やってきたのが俺だと確認した途端、緊張感のある表情は一瞬で柔らかい笑みへと変わった。本当に全力で警戒してくれていたんだなと、その表情だけで伝わってくる。
「おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
答えながら、俺はちらりと閉まったままのドアへと視線を向ける。
「まだ起きてきてはいないみたい…だな?」
「ええ、部屋から出て来られてはいませんね」
目が覚めて部屋に一人きりだと気づけば、きっとアキトは部屋から出てくるだろう。出て来ていないという事はまだ眠っている可能性が高い。
間に合ったかとホッと息を吐く俺を、プーカは微笑ましそうに見守っている。
「不在の間のアキトの護衛、ありがとう」
「いえ、とんでもございません。お二人が部屋から出られるまでこちらにおりますので、何かあればお声がけください」
「ああ、ありがとう」
少し離れた所に移動してくれたプーカの気づかいに感謝しながら、俺は音を立てないように気を付けつつ息をひそめてそっとドアを開けた。
まだ自然と目が覚めていないなら、俺の立てた物音のせいで起こしてしまうのは可哀想だ。音を立てないように細心の注意を払い、うっすらと開いたドアの隙間に身体を滑りこませる。
よしうまくいったなと視線を上げれば、ベッドの上に座り込んだままじっとこちらを見ているアキトと目があった。
あー、これはすこし前に起きていたみたいだな。
「アキト、おはよう。もう起きたの?」
「おはよう、ハル。うん、よく寝たからすっきり目が覚めたよ」
ニコニコと笑顔をみせるアキトの顔色をそっと伺ってみる。うん、たしかに顔色は良いな。特に体調が悪い様子も無いようだ。
「あのさ…ハル、ごめん。俺昨日ここまで移動したの覚えてないんだけど…」
言い難そうに尋ねるアキトに、俺はあっさりと答える。
「ああ、確かに眠そうではあったけど、昨日はここまで自分の足で移動したよ?」
「え、そうなの?」
本当に?とすこし心配そうに見つめてくるアキトに笑顔で頷いてみせれば、途端にアキトはハーッと安堵の息を吐いた。
ハルに迷惑をかけてないなら良かったーと、アキトは小さな声で呟いている。別に迷惑だなんて思った事は無いんだがな。
「ラスが、俺の両親に説教してたのは覚えてる?」
「あー…うん。それはちゃんと覚えてる」
少し困った様子でそっと視線を反らしたのは、昨日の叱られている両親の姿を思い出してしまったからだろうな。
ラスもさすがに外部の人間がいる場所では、あんな風に両親を叱ったりはしない。
両親は誰に見られても特に気にしないだろうが、使用人に舐められていると受け取られれば辺境伯夫妻の評判にも関わるからな。
まあアキトはもう俺たちの家族だからと外部の人間扱いされなかった結果、あんな場面をいきなり目撃してしまったわけだが。
「その後はすぐに解散になったから、まっすぐこの部屋に戻ってきたよ?」
「そっか、それなら良かった」
どうやらようやく納得してくれたらしい。
ベッドから起き上がろうとするアキトにそっと手を差し出せば、きゅっとすぐに握り返された。
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