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864.楽しすぎる朝食
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「では改めて――いただきます」
「いただきまーす!」
「いただきます」
「私も、いただきます」
それぞれが口々にいただきますと言う声が、部屋中に広がった。
ルールにしちゃって本当に良かったのかなとまだちょっと気にはなるけど、みんなニコニコ笑顔で嬉しそうだからこれ以上何か言うのもな。
そっと視線を向ければ、目が合ったハルは優しく微笑むともう一度いただきますと口に出した。あ、ハルももう一回言うんだ。じゃあ俺も、みんなと一緒にもう一回言っておこうかな。
「…いただきます」
一人きりでこの世界に来て、最初は何となく習慣的に口にしていただけの『いただきます』という言葉。
生身に戻って食事ができるようになった時から、ずっと言ってみたかったんだとハルも一緒に言ってくれるようになったんだよね。あの時は嬉しかったから、よく覚えてる。
まさかさらに家族が増えた上に、そのみんなが嬉しそうにいただきますと言ってくれる日が来るなんて思ってもみなかったな。
―――あー、これは駄目だ。深く考えたら、泣いてしまうかもしれない。
もしここで急に俺が泣き出したら、きっとここにいる人たちは慌ててしまう。まだ知り会ったばかりの俺でも簡単に想像できるぐらいには、みんな優しい人達だから。
俺はぐっと涙を堪えると、パッと顔をあげてから口を開いた。
「どれもすごく美味しそうですね!」
「どれも美味いぞ」
ちょっとわざとらしい話題転換だったかもしれないけど、グレースさんは笑顔ですぐにそう答えてくれた。
「昨日みたいに豪華で正式な形式の料理も、もちろん美味いんだが――ラスの作るこういう料理も、私は好きなんだ」
「あー分かる。こういう気取らない料理も美味しいよねー」
ウィリアムさんも笑顔でうんうんと頷いている。
そう言われて改めて料理をみてみれば、確かに昨日のものと比べると飾り付けとかは少ないのかもしれない。でもどれもしっかり手間がかかった料理って感じで、すごく美味しそうだ。
「あ、アキトくん、私のお勧めはオムレツだよ」
わざわざ身を乗り出してそう教えてくれたのは、優しい笑みを浮かべたマチルダさんだ。
「ラスのオムレツは中に細かく刻んだ野菜が入ってるんだ」
「へぇーそれは美味しそうですね」
あれが美味しいこれがお勧めと教えてくれる皆のおかげで、無事に涙も引っ込んだ。
和やかな雰囲気の中で食べる料理は、どれも絶品だった。特にマチルダさんがお勧めしてくれたオムレツと、あの巨大な塊肉を薄切りにしたものが素晴らしかった。
料理自体はまるでローストビーフみたいだったんだけど、食べたことのないスパイスの風味をちょっとだけ感じるんだ。あくまで邪魔にならない程度のほんのちょっとの風味なんだけど、それだけで驚くほど美味しくなってるんだ。
ラスさんの料理の腕ってやっぱりすごいな。さすがレーブンさんとローガンさんのお父さんだ。料理上手な家系っていうのも、ちょっと羨ましい。
そういえば今日の食事は本当に家族だけのものだからと、気づけば給仕のメイドさん達も部屋から出ていってたんだよね。
だから本当にみんなのびのびと食事を楽しんでいた。お皿の料理が無くなってしまったらいそいそと自分で盛り付けにいったりしてね。
「ねぇ、アキト。このシュリュ肉の薄切りと、あっちのサラダをパンに挟んだら美味しいと思わない?」
にっこりと笑ったハルが急にそう言った時には、正直に言えばかなり驚いた。でも指先を見てみれば、あの牛肉みたいな薄切りとポテトサラダのような料理を指差してたんだよね。
うん、それは絶対に美味しいやつだ。
やってみる?と俺が反応するよりも前に、やってみようとみんながわっと移動したのにはついつい声を出して笑ってしまった。
ハルが俺のためにとサンドイッチを作ってくれたんだ。嬉しかったから、俺も自分が挟んだやつをハルに渡した。
そしたらそれを見ていたグレースさんとケイリーさん、ファーガスさんとマチルダさん、ウィリアムさんとジルさんも、お互いの作ったものを交換しだしたんだよね。
ちなみにキースくんの分のサンドイッチは、俺とハルで作らせてもらったよ。
ラスさんの美味しい料理を挟んでるんだから当然だけど、サンドイッチはめちゃくちゃ美味しかったよ。
「いただきまーす!」
「いただきます」
「私も、いただきます」
それぞれが口々にいただきますと言う声が、部屋中に広がった。
ルールにしちゃって本当に良かったのかなとまだちょっと気にはなるけど、みんなニコニコ笑顔で嬉しそうだからこれ以上何か言うのもな。
そっと視線を向ければ、目が合ったハルは優しく微笑むともう一度いただきますと口に出した。あ、ハルももう一回言うんだ。じゃあ俺も、みんなと一緒にもう一回言っておこうかな。
「…いただきます」
一人きりでこの世界に来て、最初は何となく習慣的に口にしていただけの『いただきます』という言葉。
生身に戻って食事ができるようになった時から、ずっと言ってみたかったんだとハルも一緒に言ってくれるようになったんだよね。あの時は嬉しかったから、よく覚えてる。
まさかさらに家族が増えた上に、そのみんなが嬉しそうにいただきますと言ってくれる日が来るなんて思ってもみなかったな。
―――あー、これは駄目だ。深く考えたら、泣いてしまうかもしれない。
もしここで急に俺が泣き出したら、きっとここにいる人たちは慌ててしまう。まだ知り会ったばかりの俺でも簡単に想像できるぐらいには、みんな優しい人達だから。
俺はぐっと涙を堪えると、パッと顔をあげてから口を開いた。
「どれもすごく美味しそうですね!」
「どれも美味いぞ」
ちょっとわざとらしい話題転換だったかもしれないけど、グレースさんは笑顔ですぐにそう答えてくれた。
「昨日みたいに豪華で正式な形式の料理も、もちろん美味いんだが――ラスの作るこういう料理も、私は好きなんだ」
「あー分かる。こういう気取らない料理も美味しいよねー」
ウィリアムさんも笑顔でうんうんと頷いている。
そう言われて改めて料理をみてみれば、確かに昨日のものと比べると飾り付けとかは少ないのかもしれない。でもどれもしっかり手間がかかった料理って感じで、すごく美味しそうだ。
「あ、アキトくん、私のお勧めはオムレツだよ」
わざわざ身を乗り出してそう教えてくれたのは、優しい笑みを浮かべたマチルダさんだ。
「ラスのオムレツは中に細かく刻んだ野菜が入ってるんだ」
「へぇーそれは美味しそうですね」
あれが美味しいこれがお勧めと教えてくれる皆のおかげで、無事に涙も引っ込んだ。
和やかな雰囲気の中で食べる料理は、どれも絶品だった。特にマチルダさんがお勧めしてくれたオムレツと、あの巨大な塊肉を薄切りにしたものが素晴らしかった。
料理自体はまるでローストビーフみたいだったんだけど、食べたことのないスパイスの風味をちょっとだけ感じるんだ。あくまで邪魔にならない程度のほんのちょっとの風味なんだけど、それだけで驚くほど美味しくなってるんだ。
ラスさんの料理の腕ってやっぱりすごいな。さすがレーブンさんとローガンさんのお父さんだ。料理上手な家系っていうのも、ちょっと羨ましい。
そういえば今日の食事は本当に家族だけのものだからと、気づけば給仕のメイドさん達も部屋から出ていってたんだよね。
だから本当にみんなのびのびと食事を楽しんでいた。お皿の料理が無くなってしまったらいそいそと自分で盛り付けにいったりしてね。
「ねぇ、アキト。このシュリュ肉の薄切りと、あっちのサラダをパンに挟んだら美味しいと思わない?」
にっこりと笑ったハルが急にそう言った時には、正直に言えばかなり驚いた。でも指先を見てみれば、あの牛肉みたいな薄切りとポテトサラダのような料理を指差してたんだよね。
うん、それは絶対に美味しいやつだ。
やってみる?と俺が反応するよりも前に、やってみようとみんながわっと移動したのにはついつい声を出して笑ってしまった。
ハルが俺のためにとサンドイッチを作ってくれたんだ。嬉しかったから、俺も自分が挟んだやつをハルに渡した。
そしたらそれを見ていたグレースさんとケイリーさん、ファーガスさんとマチルダさん、ウィリアムさんとジルさんも、お互いの作ったものを交換しだしたんだよね。
ちなみにキースくんの分のサンドイッチは、俺とハルで作らせてもらったよ。
ラスさんの美味しい料理を挟んでるんだから当然だけど、サンドイッチはめちゃくちゃ美味しかったよ。
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