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843.【ハル視点】皆の気持ち
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楽しそうに声を上げて笑い続ける母さんを、俺は思わず眉間に皺を寄せて見つめた。
「母さん、なにがそんなに面白いんだ?」
「はー悪い悪い。ハルの不思議そうな顔が面白くて…なぁケイリー?」
分かるだろう?と急に話を振られた父さんまで、そうだなとあっさりとその言葉を肯定したのには少しだけ驚いた。こういう時は、母を注意する側に回る人なのに。
それにしても俺の不思議そうな顔が面白いというのはどういう意味だろう?そんなに変な顔をしていたんだろうか?
「面白い…ですか?」
どうやら同じことを疑問に思ったらしく、俺が聞くよりも前にアキトがそう尋ねてくれた。うん、さすがアキトだ。母さんはふふと笑ってから口を開いた。
「そうそう。ハルの表情がくるくる変わるのが、面白いんだ」
「きっとアキトくんのおかけで、感情が顔に出るようになったんだな」
父さんはしみじみとそう呟いた。
「……前は、出てなかったのか?」
「ああ、今ほどは出てなかったな。まあ俺たちは家族だから、お前の感情を読み取る事はできていたんたがな」
「ハル兄さんは、いつも笑顔だったからね」
僕も分かるよと、キースも自慢げに教えてくれる。
「そうそう、だから俺アキトくんと喋るハルを見て、あんなにびっくりしたんだもん」
ウィル兄さんも笑顔でそう付け加えた。
「…アキトと出逢ってから自分が変わったとは思っていたんだが、そんなに表情が変わっていたのか…?」
「うん、かなり変わってるよ」
良い方向にだけどなと、マティさんは柔らかく笑っている。
「そういえば、ハルさんの首を傾げる仕草は初めて見ましたね。アキトくんが同じ仕草をしているのを何度か見たので、おそらく一緒にいるうちにうつってしまったのでは?」
そんな冷静な分析をしながら声をかけてきたのは、ジルさんだ。
そういえば、俺にはそんな癖は無かったな。アキトが首を傾げるのを見ているうちに、自然とうつってしまったのか。
「わーごめんね、ハル」
何故か慌てた様子で謝りだしたアキトに、俺はぶんぶんと首を振ってから答えた。
「アキト、お願いだから謝らないで。俺はね、むしろ嬉しいよ」
「え…?」
嬉しい?と不思議そうに首を傾げるアキトに、自然な笑みが浮かんだ。
「無意識のうちにアキトの癖がうつるぐらい、一緒にいられたって事だからね」
それに、まだ気づいていないだけで、もしかしたらアキトにも俺の何かの癖がうつってるのかもしれないよねと続ける。
もしそうなら、それほど嬉しい事は無い。そう思いながら説明すれば、アキトは不意にふわりと笑みを浮かべた。
「うん、確かに嬉しいかも!」
元気に即答してくれたアキトが愛おしくて、思わずぎゅっとアキトを抱きしめてしまったのは仕方がない事だろう。
「それで?何でここまで飾り付けされてるの?」
みんなの笑いがひと段落するのを待ってから、俺はそう尋ねた。
もうすぐ誰かの訪問があるとか、何か理由があってされた飾り付けなんだろうなと思っての質問だったが、答えは予想外なものだった。
「それがなぁ、ハルの伴侶候補が来るなら、きちんと歓迎の気持ちを形にして見せたいって言い出してな?」
「言い出したって…誰が?」
俺はゆるりと首を傾げて、そう尋ねた。アキトの癖がうつっていると言われて嬉しかったから、今回のは実はわざとだ。
「きっかけは執事長とメイド長だな。まぁ参加した人数はもっと多いんだが」
「もっと多い…ってどういう意味だ?」
「はいはーい!あの天井の布飾りはジルと俺が選んだやつだよ!辺境領の特産の布から選んでてね、色合いにもこだわったんだー」
明るい声でそう宣言したウィル兄さんは、ジルさんに抱きつきながらそっと天井を指差した。照れ臭そうにしながらも、ジルさんがウィル兄さんを振り払う素振りは無い。
「私とファーガスは、二人で花を選んだよ」
そう言いながら、マティさんは近くにある花にちらりと視線を向ける。
「どんな花が好きかが分からなかったからな。あえて色とりどりにしてみたんだ」
バランスを取るのはかなり難しかったがそこはマティの感性でなんとかなと、ファーガス兄さんは笑顔で惚気てきた。
確かにすごく色とりどりな花だが、不思議とまとまりがある仕上がりだな。どうやらマティさんには、花選びの感性まであるらしい。
「はいっ!僕は母さんと父さんと一緒に、あの灯りをえらびました」
元気に手をあげたキースは、ニコニコと自慢げに笑いながらそう教えてくれた。
「先に布が決まっていたからな、それに合う灯りを選んだんだ」
「あー、私はそういうのは苦手だから、ほぼキースとケイリーが選んだんだけどな」
母さんだけはすこし困り顔でそう呟いた。確かにそういうのは苦手な人だよな。
「でも一緒にえらんだよ?」
「あーまあな」
そうだなと笑う母に、キースは嬉しそうに笑って頷いている。
「ほらボルテも」
父さんに名指しで促されたボルテは、苦笑しながらも一礼してから口を開いた。
「…私とメイド長は、皆様に選んで頂いた物の配置を決めさせて頂きました」
その後の最終的な飾り付けは、使用人総出で行いましたとボルテはさらりと続けた。
なるほど。この美しい飾り付けは、誰かのためにされたものではなく、アキトと俺のために家族から使用人まで総出で作り上げてくれたものなのか。
「そうなのか…」
その秘密を知ってから見ると、元々綺麗だと思っていた飾り付けがさらに綺麗に見えてくるから不思議だな。じわりと胸の中が温かくなった。
「その話を聞いたら、さらに綺麗に見えてきますね」
心からそう思っているのが分かるキラキラしたアキトの目を見て、ボルテはにっこりと笑みを浮かべた。
「気に入って頂けたなら何よりです」
「本当に、ありがとうございます」
使用人相手でも目を見て丁寧に答えるアキトの態度に、ボルテの雰囲気が更に和らいだのを感じる。アキトの事を可愛がってくれそうな人が増えたな。
そんな事を考えながら、俺はボルテに声をかけた。
「俺からも、ありがとう。皆にもお礼を言っておいてもらえるか?」
「もちろんです」
深々とお辞儀をしたボルテは、優しい笑みを浮かべて快諾してくれた。後でアキトと二人でお礼に何かできないか相談しよう。
「母さん、なにがそんなに面白いんだ?」
「はー悪い悪い。ハルの不思議そうな顔が面白くて…なぁケイリー?」
分かるだろう?と急に話を振られた父さんまで、そうだなとあっさりとその言葉を肯定したのには少しだけ驚いた。こういう時は、母を注意する側に回る人なのに。
それにしても俺の不思議そうな顔が面白いというのはどういう意味だろう?そんなに変な顔をしていたんだろうか?
「面白い…ですか?」
どうやら同じことを疑問に思ったらしく、俺が聞くよりも前にアキトがそう尋ねてくれた。うん、さすがアキトだ。母さんはふふと笑ってから口を開いた。
「そうそう。ハルの表情がくるくる変わるのが、面白いんだ」
「きっとアキトくんのおかけで、感情が顔に出るようになったんだな」
父さんはしみじみとそう呟いた。
「……前は、出てなかったのか?」
「ああ、今ほどは出てなかったな。まあ俺たちは家族だから、お前の感情を読み取る事はできていたんたがな」
「ハル兄さんは、いつも笑顔だったからね」
僕も分かるよと、キースも自慢げに教えてくれる。
「そうそう、だから俺アキトくんと喋るハルを見て、あんなにびっくりしたんだもん」
ウィル兄さんも笑顔でそう付け加えた。
「…アキトと出逢ってから自分が変わったとは思っていたんだが、そんなに表情が変わっていたのか…?」
「うん、かなり変わってるよ」
良い方向にだけどなと、マティさんは柔らかく笑っている。
「そういえば、ハルさんの首を傾げる仕草は初めて見ましたね。アキトくんが同じ仕草をしているのを何度か見たので、おそらく一緒にいるうちにうつってしまったのでは?」
そんな冷静な分析をしながら声をかけてきたのは、ジルさんだ。
そういえば、俺にはそんな癖は無かったな。アキトが首を傾げるのを見ているうちに、自然とうつってしまったのか。
「わーごめんね、ハル」
何故か慌てた様子で謝りだしたアキトに、俺はぶんぶんと首を振ってから答えた。
「アキト、お願いだから謝らないで。俺はね、むしろ嬉しいよ」
「え…?」
嬉しい?と不思議そうに首を傾げるアキトに、自然な笑みが浮かんだ。
「無意識のうちにアキトの癖がうつるぐらい、一緒にいられたって事だからね」
それに、まだ気づいていないだけで、もしかしたらアキトにも俺の何かの癖がうつってるのかもしれないよねと続ける。
もしそうなら、それほど嬉しい事は無い。そう思いながら説明すれば、アキトは不意にふわりと笑みを浮かべた。
「うん、確かに嬉しいかも!」
元気に即答してくれたアキトが愛おしくて、思わずぎゅっとアキトを抱きしめてしまったのは仕方がない事だろう。
「それで?何でここまで飾り付けされてるの?」
みんなの笑いがひと段落するのを待ってから、俺はそう尋ねた。
もうすぐ誰かの訪問があるとか、何か理由があってされた飾り付けなんだろうなと思っての質問だったが、答えは予想外なものだった。
「それがなぁ、ハルの伴侶候補が来るなら、きちんと歓迎の気持ちを形にして見せたいって言い出してな?」
「言い出したって…誰が?」
俺はゆるりと首を傾げて、そう尋ねた。アキトの癖がうつっていると言われて嬉しかったから、今回のは実はわざとだ。
「きっかけは執事長とメイド長だな。まぁ参加した人数はもっと多いんだが」
「もっと多い…ってどういう意味だ?」
「はいはーい!あの天井の布飾りはジルと俺が選んだやつだよ!辺境領の特産の布から選んでてね、色合いにもこだわったんだー」
明るい声でそう宣言したウィル兄さんは、ジルさんに抱きつきながらそっと天井を指差した。照れ臭そうにしながらも、ジルさんがウィル兄さんを振り払う素振りは無い。
「私とファーガスは、二人で花を選んだよ」
そう言いながら、マティさんは近くにある花にちらりと視線を向ける。
「どんな花が好きかが分からなかったからな。あえて色とりどりにしてみたんだ」
バランスを取るのはかなり難しかったがそこはマティの感性でなんとかなと、ファーガス兄さんは笑顔で惚気てきた。
確かにすごく色とりどりな花だが、不思議とまとまりがある仕上がりだな。どうやらマティさんには、花選びの感性まであるらしい。
「はいっ!僕は母さんと父さんと一緒に、あの灯りをえらびました」
元気に手をあげたキースは、ニコニコと自慢げに笑いながらそう教えてくれた。
「先に布が決まっていたからな、それに合う灯りを選んだんだ」
「あー、私はそういうのは苦手だから、ほぼキースとケイリーが選んだんだけどな」
母さんだけはすこし困り顔でそう呟いた。確かにそういうのは苦手な人だよな。
「でも一緒にえらんだよ?」
「あーまあな」
そうだなと笑う母に、キースは嬉しそうに笑って頷いている。
「ほらボルテも」
父さんに名指しで促されたボルテは、苦笑しながらも一礼してから口を開いた。
「…私とメイド長は、皆様に選んで頂いた物の配置を決めさせて頂きました」
その後の最終的な飾り付けは、使用人総出で行いましたとボルテはさらりと続けた。
なるほど。この美しい飾り付けは、誰かのためにされたものではなく、アキトと俺のために家族から使用人まで総出で作り上げてくれたものなのか。
「そうなのか…」
その秘密を知ってから見ると、元々綺麗だと思っていた飾り付けがさらに綺麗に見えてくるから不思議だな。じわりと胸の中が温かくなった。
「その話を聞いたら、さらに綺麗に見えてきますね」
心からそう思っているのが分かるキラキラしたアキトの目を見て、ボルテはにっこりと笑みを浮かべた。
「気に入って頂けたなら何よりです」
「本当に、ありがとうございます」
使用人相手でも目を見て丁寧に答えるアキトの態度に、ボルテの雰囲気が更に和らいだのを感じる。アキトの事を可愛がってくれそうな人が増えたな。
そんな事を考えながら、俺はボルテに声をかけた。
「俺からも、ありがとう。皆にもお礼を言っておいてもらえるか?」
「もちろんです」
深々とお辞儀をしたボルテは、優しい笑みを浮かべて快諾してくれた。後でアキトと二人でお礼に何かできないか相談しよう。
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