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842.【ハル視点】美しい飾り付け
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廊下を行く俺たちのすぐ後ろを歩いているのは、ウィル兄さんとジルさんに、キースを加えた三人組だ。更にその後ろを歩くファーガス兄さんとマティさんは、かなり距離を空けてのんびりと追ってきている。
「キースくんとこうして話しができるのは、すこし久しぶりですね。なかなか会いにいけなくてすみません」
申し訳なさそうなジルさんがキースに話しかけている声が、背後から聞こえてくる。ジルさんとキースは読書好き同士、すごく気が合うんだよな。
他の人相手なら嫉妬するだろうウィル兄も、キースとジルさんの組み合わせはニコニコと笑顔で見守っている。
「ううん、ジルさんはいっつも忙しいからね」
僕は全然気にしてないよと、キースはすぐにそう答えた。もっと会いたいとか、構って欲しいとか、そういう事をキースは滅多に自分から言わないんだよな。
よくよく見れば表情や仕草には出ているから、俺達家族はキースの気持ちを読み取るのが上手くなってしまった。
「確かに最近はすこし忙しかったんですが、数日間は休みを取れたんですよ」
「え、そうなのっ?」
ジルさんの言葉を聞くなり嬉しそうに弾む声が、なんとも微笑ましい。
「ええ、また最近読んだ本の話でも、聞かせて貰えますか?」
優しい声でそう尋ねたジルさんに、キースは何故か言い淀んだ。
「えっと…」
一体どうしたんだ?と振り返ろうとすれば、アキトもちょうど同じタイミングで後ろを振り返ろうとしている所だった。
アキトもキースの事を気にかけてくれているんだな。
嬉しい気持ちを噛み締めながら様子を伺えば、口をつぐんだキースはウィル兄さんを気にしているのが分かった。
あー、これは久しぶりの空き時間なら、きっと伴侶と過ごしたいよね?と気にしている顔だな。
まだ幼いのにそんな事にまで配慮できるなんて、なんて優しい子だろう。
――やっぱりキースは天使かもしれないな?
俺としてはジルさんと久しぶりに話したいと主張しても良いと思うんだが、キースは言わないんだよな。
まあここで弟大好きなウィル兄が、何も言わずに黙っている筈が無い。
「あ、俺もキースの好きな本の話、聞きたいなーまた色々読んだんだろ?」
優しい声でそう促されたキースは、何度もパチパチと瞬きを繰り返している。
え、本当にジルさんと一緒に過ごしても良いの?しかもウィル兄さんも一緒にいてくれるの?そう考えているのが手に取るように分かった。表情に出てしまう所も、可愛いんだよな。
「うん、色々読んだけど…ウィル兄さんもジルさんと一緒に聞いてくれるの?」
「もちろん!ジルとキースと一緒に休日を過ごせたら、絶対に楽しいからねー大歓迎だよ」
「ほら、ウィルもこう言ってますよ?キースくん」
「うんっ!じゃあ楽しみにしてるっ!」
「それじゃあ、どこで集まりましょうか?」
「えっとね、どうせなら最近のお気に入りの本を見せたいな」
「よし、それじゃあ応接室にしようか。あそこなら本を広げられるから…」
「それなら第三応接室が…」
そんな微笑ましいやりとりを聞きながら歩いていけば、目的地である広間にはあっという間に辿り着いた。
「うわぁー…すごい、綺麗…」
案内された部屋に入るなり、アキトは感嘆の声をあげた。
ああ、確かにこれはすごいなと、俺も一緒になって部屋の中をぐるりと見回す。
普段はもう少し古風で落ち着いた広間なんだが、今日は色とりどりの生花があちこちに飾り付けられていてとても華やかだ。高い天井を活かして、美しい布の飾りが幾重にも垂れ下げられており、魔道具の温かい灯りでうっすらと照らしだされている。
こんなに華やかな飾り付けがされているのは、この家で生まれ育った俺も初めて見た光景だ。かつて王族が我が家に立ち寄られた時でも、ここまでの飾り付けはされていなかった。
驚きながら部屋の中をぐるりと見回していると、父の声が聞こえてきた。
「アキトくん気に入ったかい?」
どうやらさきほどのアキトの呟きが聞こえていたらしく、ふふと楽し気に笑いながらの質問だ。
「はい、すっごく綺麗ですね!」
「気に入ったなら良かった。ハルはどうだ?」
話を振られた俺は苦笑しながら答える。
「うん…俺も気に入ったよ。まぁ、それ以上に驚いてるけどね」
「あれ?ハルも驚いてるの?」
「うん、俺も驚いてるよ。この部屋がここまで飾り付けられることなんて、滅多にない事だからね」
どうしてここまでの飾り付けがされているんだろう?
不思議に思って首を傾げれば、不意に母さんが声を上げて笑い出した。
「キースくんとこうして話しができるのは、すこし久しぶりですね。なかなか会いにいけなくてすみません」
申し訳なさそうなジルさんがキースに話しかけている声が、背後から聞こえてくる。ジルさんとキースは読書好き同士、すごく気が合うんだよな。
他の人相手なら嫉妬するだろうウィル兄も、キースとジルさんの組み合わせはニコニコと笑顔で見守っている。
「ううん、ジルさんはいっつも忙しいからね」
僕は全然気にしてないよと、キースはすぐにそう答えた。もっと会いたいとか、構って欲しいとか、そういう事をキースは滅多に自分から言わないんだよな。
よくよく見れば表情や仕草には出ているから、俺達家族はキースの気持ちを読み取るのが上手くなってしまった。
「確かに最近はすこし忙しかったんですが、数日間は休みを取れたんですよ」
「え、そうなのっ?」
ジルさんの言葉を聞くなり嬉しそうに弾む声が、なんとも微笑ましい。
「ええ、また最近読んだ本の話でも、聞かせて貰えますか?」
優しい声でそう尋ねたジルさんに、キースは何故か言い淀んだ。
「えっと…」
一体どうしたんだ?と振り返ろうとすれば、アキトもちょうど同じタイミングで後ろを振り返ろうとしている所だった。
アキトもキースの事を気にかけてくれているんだな。
嬉しい気持ちを噛み締めながら様子を伺えば、口をつぐんだキースはウィル兄さんを気にしているのが分かった。
あー、これは久しぶりの空き時間なら、きっと伴侶と過ごしたいよね?と気にしている顔だな。
まだ幼いのにそんな事にまで配慮できるなんて、なんて優しい子だろう。
――やっぱりキースは天使かもしれないな?
俺としてはジルさんと久しぶりに話したいと主張しても良いと思うんだが、キースは言わないんだよな。
まあここで弟大好きなウィル兄が、何も言わずに黙っている筈が無い。
「あ、俺もキースの好きな本の話、聞きたいなーまた色々読んだんだろ?」
優しい声でそう促されたキースは、何度もパチパチと瞬きを繰り返している。
え、本当にジルさんと一緒に過ごしても良いの?しかもウィル兄さんも一緒にいてくれるの?そう考えているのが手に取るように分かった。表情に出てしまう所も、可愛いんだよな。
「うん、色々読んだけど…ウィル兄さんもジルさんと一緒に聞いてくれるの?」
「もちろん!ジルとキースと一緒に休日を過ごせたら、絶対に楽しいからねー大歓迎だよ」
「ほら、ウィルもこう言ってますよ?キースくん」
「うんっ!じゃあ楽しみにしてるっ!」
「それじゃあ、どこで集まりましょうか?」
「えっとね、どうせなら最近のお気に入りの本を見せたいな」
「よし、それじゃあ応接室にしようか。あそこなら本を広げられるから…」
「それなら第三応接室が…」
そんな微笑ましいやりとりを聞きながら歩いていけば、目的地である広間にはあっという間に辿り着いた。
「うわぁー…すごい、綺麗…」
案内された部屋に入るなり、アキトは感嘆の声をあげた。
ああ、確かにこれはすごいなと、俺も一緒になって部屋の中をぐるりと見回す。
普段はもう少し古風で落ち着いた広間なんだが、今日は色とりどりの生花があちこちに飾り付けられていてとても華やかだ。高い天井を活かして、美しい布の飾りが幾重にも垂れ下げられており、魔道具の温かい灯りでうっすらと照らしだされている。
こんなに華やかな飾り付けがされているのは、この家で生まれ育った俺も初めて見た光景だ。かつて王族が我が家に立ち寄られた時でも、ここまでの飾り付けはされていなかった。
驚きながら部屋の中をぐるりと見回していると、父の声が聞こえてきた。
「アキトくん気に入ったかい?」
どうやらさきほどのアキトの呟きが聞こえていたらしく、ふふと楽し気に笑いながらの質問だ。
「はい、すっごく綺麗ですね!」
「気に入ったなら良かった。ハルはどうだ?」
話を振られた俺は苦笑しながら答える。
「うん…俺も気に入ったよ。まぁ、それ以上に驚いてるけどね」
「あれ?ハルも驚いてるの?」
「うん、俺も驚いてるよ。この部屋がここまで飾り付けられることなんて、滅多にない事だからね」
どうしてここまでの飾り付けがされているんだろう?
不思議に思って首を傾げれば、不意に母さんが声を上げて笑い出した。
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