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826.印象的な話
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ハルの家族とはあれこれと色々な話をしたけれど、中でも特に印象的だったのは幽霊が見える体質について話した時だった。
「なあ、アキトの幽霊が見えるっていうその体質は、生まれつきのものなのか?」
話のきっかけは、不意にグレースさんがそう尋ねてきた事だった。
「はい、見えるのは生まれつきですね」
別に隠す事でもないしとすぐにそう答えたんだけど、ハルを除くその場にいる全員が急に沈鬱な表情になったんだ。
うん、あれには正直かなり驚いたよね。
あまりに急な表情の変化に戸惑ってたら、周りのみんなも慌てた様子ですぐに説明はしてくれたんだけどね。
なんでもハルの手紙を読んで俺の体質について知った後、ここにいる全員で一部屋に集まって話をする時間が設けられたんだそうだ。
そこで最初に話題になったのが、俺のその幽霊が見える体質が一体いつからのものなのかって事だったらしい。
もし後天的に身に着いたものなら、まずは急に見えるようになった事実を受け入れるのが大変だろうし、きっと視界に入る幽霊にも恐怖するだろう。
だけど、こちらはまだ隠そうと思えば、隠し通せる可能性がある。
逆にもしその能力が生まれつきのものだとしたら、幼い頃から見える事を隠し通す事なんて絶対にできないだろう。何が見えて何が見えないのが普通なのかなんて、赤子に区別がつくわけがない。
その場合は、周りから恐れられたり敬遠されたりするかもしれない。
そんな想像をしてしまったんだと、みんなは口々にそう教えてくれた。
ああ、なるほど。だからさっきの生まれつき発言で、あんなにつらそうな表情になったのか。
「アキトくん…つらい思いをたくさんしてきたんじゃないか…?」
ケイリーさんは心配そうにしながら、俺の目を見てそう尋ねてくれる。
「うまれつきか――特に幼い頃は大変だっただろ」
そう呟いたグレースさんは、今は母親のような温かい視線で俺を見つめている。
「俺達はもう体質の事は知っているんだし、何も隠さなくて良いからな」
そう告げたファーガスさんは、どんな事でも相談してくれとうっすらと笑みを浮かべた。
「そうそう。俺達はその体質ごとアキトくんを受け入れるからさー何も気にせずハルの正式な伴侶になってね」
おどけるようにしてそんな優しい言葉を告げてくれたのは、ウィリアムさんだ。
「ぼくはアキトさん、すごいとおもいます」
やっぱりキラキラの目をしたキースくんは、俺を見上げてそう呟いた。
「あ、えっと…まずは…心配してくれてありがとうございます」
なんとかお礼の言葉を口にはしたけど、もうその時点で俺はちょっと泣きそうになっていた。
だってさ、俺はずっとこの体質を隠して生きてきたんだよ。仲の良い友人やクラスメイト達にも告げずにずーっとね。
まあこの世界に来てからは、何人かには打ち明けたんだけど。
でも、気味悪がられるかもとか、怖がられるかもとか、敬遠されるかもとか、そういう可能性はいつも頭のどこかにあった気がする。
まさかこの体質について知って、過去の俺の事まで心配してくれるそんな優しい人たちがいるなんて思ってもみなかったんだ。
あー駄目だ!深く考えたら、絶対に泣いてしまう。考えるな。
「生まれつきですけど、父も同じ体質だったし、母は見えないけれど…その、理解はしてくれている人でしたから…」
いきなり泣き出さないようにと必死で我慢しながらぎこちなくそう続ければ、周りはわっと一気に盛り上がった。
「そうか、それは良かった!体質を理解してくれる人が身近にいたのか!」
「うーん、遺伝だったのかー。その可能性は全然考えなかったな!」
まだまだ想像が足りなかったかと、ケイリーさんとグレースさんは顔を見合わせてからホッと安堵の息を吐いた。
「ご両親が受け入れてくれているというのは、やはり大きいな」
「あー確かにこどもにとってそれは大きいよね」
「アキトさんがつらくなくてよかったー」
仲の良い兄弟たちは、本当に嬉しそうにニコニコと笑い合っている。
――あー…本当にこの人たちはすごいな。さすがハルの家族だ。
じわりと視界が滲んでしまった所で、くいっと優しく肩が引かれた。そのままぽすりとされるがままにもたれかかれば、綺麗な紫色の瞳がそっと俺を覗き込んできた。
「アキト…大丈夫?」
心配そうな視線に、俺はぐいっと涙の滲んだ目を拭った。確かに泣きそうだったけど、まだ泣いてないからね。強がるようにまっすぐにハルの目を見つめ返してから、俺は口を開いた。
「うん、大丈夫。悲しいわけじゃないからね」
むしろ嬉しいと小さな声で続ければ、ハルはふわりと優しく笑ってからきゅっと抱きしめてくれた。
「なあ、アキトの幽霊が見えるっていうその体質は、生まれつきのものなのか?」
話のきっかけは、不意にグレースさんがそう尋ねてきた事だった。
「はい、見えるのは生まれつきですね」
別に隠す事でもないしとすぐにそう答えたんだけど、ハルを除くその場にいる全員が急に沈鬱な表情になったんだ。
うん、あれには正直かなり驚いたよね。
あまりに急な表情の変化に戸惑ってたら、周りのみんなも慌てた様子ですぐに説明はしてくれたんだけどね。
なんでもハルの手紙を読んで俺の体質について知った後、ここにいる全員で一部屋に集まって話をする時間が設けられたんだそうだ。
そこで最初に話題になったのが、俺のその幽霊が見える体質が一体いつからのものなのかって事だったらしい。
もし後天的に身に着いたものなら、まずは急に見えるようになった事実を受け入れるのが大変だろうし、きっと視界に入る幽霊にも恐怖するだろう。
だけど、こちらはまだ隠そうと思えば、隠し通せる可能性がある。
逆にもしその能力が生まれつきのものだとしたら、幼い頃から見える事を隠し通す事なんて絶対にできないだろう。何が見えて何が見えないのが普通なのかなんて、赤子に区別がつくわけがない。
その場合は、周りから恐れられたり敬遠されたりするかもしれない。
そんな想像をしてしまったんだと、みんなは口々にそう教えてくれた。
ああ、なるほど。だからさっきの生まれつき発言で、あんなにつらそうな表情になったのか。
「アキトくん…つらい思いをたくさんしてきたんじゃないか…?」
ケイリーさんは心配そうにしながら、俺の目を見てそう尋ねてくれる。
「うまれつきか――特に幼い頃は大変だっただろ」
そう呟いたグレースさんは、今は母親のような温かい視線で俺を見つめている。
「俺達はもう体質の事は知っているんだし、何も隠さなくて良いからな」
そう告げたファーガスさんは、どんな事でも相談してくれとうっすらと笑みを浮かべた。
「そうそう。俺達はその体質ごとアキトくんを受け入れるからさー何も気にせずハルの正式な伴侶になってね」
おどけるようにしてそんな優しい言葉を告げてくれたのは、ウィリアムさんだ。
「ぼくはアキトさん、すごいとおもいます」
やっぱりキラキラの目をしたキースくんは、俺を見上げてそう呟いた。
「あ、えっと…まずは…心配してくれてありがとうございます」
なんとかお礼の言葉を口にはしたけど、もうその時点で俺はちょっと泣きそうになっていた。
だってさ、俺はずっとこの体質を隠して生きてきたんだよ。仲の良い友人やクラスメイト達にも告げずにずーっとね。
まあこの世界に来てからは、何人かには打ち明けたんだけど。
でも、気味悪がられるかもとか、怖がられるかもとか、敬遠されるかもとか、そういう可能性はいつも頭のどこかにあった気がする。
まさかこの体質について知って、過去の俺の事まで心配してくれるそんな優しい人たちがいるなんて思ってもみなかったんだ。
あー駄目だ!深く考えたら、絶対に泣いてしまう。考えるな。
「生まれつきですけど、父も同じ体質だったし、母は見えないけれど…その、理解はしてくれている人でしたから…」
いきなり泣き出さないようにと必死で我慢しながらぎこちなくそう続ければ、周りはわっと一気に盛り上がった。
「そうか、それは良かった!体質を理解してくれる人が身近にいたのか!」
「うーん、遺伝だったのかー。その可能性は全然考えなかったな!」
まだまだ想像が足りなかったかと、ケイリーさんとグレースさんは顔を見合わせてからホッと安堵の息を吐いた。
「ご両親が受け入れてくれているというのは、やはり大きいな」
「あー確かにこどもにとってそれは大きいよね」
「アキトさんがつらくなくてよかったー」
仲の良い兄弟たちは、本当に嬉しそうにニコニコと笑い合っている。
――あー…本当にこの人たちはすごいな。さすがハルの家族だ。
じわりと視界が滲んでしまった所で、くいっと優しく肩が引かれた。そのままぽすりとされるがままにもたれかかれば、綺麗な紫色の瞳がそっと俺を覗き込んできた。
「アキト…大丈夫?」
心配そうな視線に、俺はぐいっと涙の滲んだ目を拭った。確かに泣きそうだったけど、まだ泣いてないからね。強がるようにまっすぐにハルの目を見つめ返してから、俺は口を開いた。
「うん、大丈夫。悲しいわけじゃないからね」
むしろ嬉しいと小さな声で続ければ、ハルはふわりと優しく笑ってからきゅっと抱きしめてくれた。
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