821 / 1,179
820.【ハル視点】兄弟たちとアキト
しおりを挟む
楽しげに話し込んでいる兄弟達とアキトにこっそりと近づいていけば、ちょうどキースが兄さんたちに頭を撫でられいるところだった。
俺にとってはいつもの光景だが、アキトは微笑ましそうにそんなやりとりを見守っている。
特に問題はなさそうかな。
そう思いながらさらに近づいていくと、不意にキースが慌てた様子で視線をうろうろと動かした。
ああ、予期せぬタイミングでアキトと目が合ったのか。
どうやら人見知りが発動してしまったらしい。二人の間をきちんと取り持たないとな。
慌てて歩く速度をあげようとしたが、それよりも前にキースが意を決したように視線をあげた。
「あの…えっと、階段、大変じゃなかった…ですか?」
ああ、アキトの心配をしてくれていたのか。うん、キースはやっぱり可愛いな。
そう思いながら見守っていると、アキトはさっとその場にしゃがみこんだ。
近い距離からキースの目をまっすぐ見つめて、笑顔で答える。
「すごく大変だったけどなんとか最後まで頑張りました。キースくん、心配してくれてありがとうございます」
アキトの感謝の言葉に、キースはふわりと嬉しそうに笑みを浮かべた。
照れ笑いを浮かべたキースを、ファーガス兄さんとウィル兄さんも微笑まし気に見つめている。
それにしても兄弟たちとアキトの性格は分かっているからそこまで心配はしていなかったが、想像以上に気が合ったようだ。
「アキト、勝手に両親と話こんじゃってごめんね。退屈してない?」
背後からそう声をかければ、アキトは笑顔で振り返った。慣れない場所なのに、ほったらかしにされたと怒っていないんだろうか。
「ううん、別に気にしなくて良いよ。皆さんと話してたから大丈夫」
むしろ楽しかったよと笑顔でそう教えてくれるアキトの姿に、肩の力が抜けた。
「みんな、アキトを退屈させないようにしてくれてありがとう」
心からの感謝をこめた言葉だったけれど、ファーガス兄さんは不服そうに眉間にしわを寄せながら口を開いた。
「ハル、俺達は別にアキトを退屈させないようにと話をしてたわけじゃないぞ」
本気で怒っているわけじゃなくただのポーズだと俺には分かるが、じろりと睨んでくるファーガス兄さんの視線はかなり鋭い。
この視線を向けられたら、普通の人ならまず間違いなく怯えるだろうなと思うぐらいの迫力だ。
まぁレーブンやローガンの強面にも一切動じないアキトには、全く問題はないようで俺たちのやりとりを興味深そうに観察している。
「そうそう、俺達はただアキト君と話したかっただけだから!」
明るい笑みを浮かべながらウィル兄さんは、そう言いきった。ちらりと視線を向ければ、アキトは嬉しそうに照れ笑いを浮かべている。
「まあ皆がアキト君と話したくなった原因は、俺が皆にアキト君の事いっぱい話したからだけどね」
へへーと笑ったウィリアム兄さんの横から、キースもひょこっと顔を出した。
「僕もアキトさんとお話してみたかったから」
「そうか。でも、ありがとう」
自分たちが話したかっただけというのは、きっと本当なんだろう。
それでも慣れない場所でアキトが一人にならなかった理由が、ここにいるみんななのは事実だから。
そっと手を伸ばして頭を撫でれば、キースは嬉しそうに声をあげて笑い出した。うん、俺の弟はやっぱり可愛いな。そしてそんなキースを微笑ましそうに笑いながら見つめるアキトも、たまらなく可愛い。
「まあ普段なら伴侶候補を放置するなと言いたい所なんだが――今回は仕方ないだろう」
もっと叱られるかと思っていたんだが、ファーガス兄さんはそう言うなり苦笑を浮かべるだけだった。
「もし俺が伴侶候補を連れてきたあの時に同じ事をされていたら、本気で怒って反撃していたし絶対に父に言いつけていたよ」
そうか、ファーガス兄さんの時は出会い頭の腕試しはなかったのか。
それにしてもファーガス兄さんの伴侶はかなり強い戦える人だが、それでも許せないものらしい。まぁアキトも戦える人なのに許せなかったんだから、そんなものか。
「あーそれは確かに。一人の時ならいくらでもって言えるんだけどな。愛しい伴侶に怪我させたら、いくら母さんでも許せない」
ウィル兄も笑顔を消した真剣な表情で同意している。
ウィル兄の場合は伴侶のジルさんが戦えない人だから、余計になんだろうな。
想像しただけでも不快だったのか、ウィル兄の眉間にくっきりと皺がよっていた。
うん、二人とも相変わらず伴侶を大事にしているみたいだ。
俺にとってはいつもの光景だが、アキトは微笑ましそうにそんなやりとりを見守っている。
特に問題はなさそうかな。
そう思いながらさらに近づいていくと、不意にキースが慌てた様子で視線をうろうろと動かした。
ああ、予期せぬタイミングでアキトと目が合ったのか。
どうやら人見知りが発動してしまったらしい。二人の間をきちんと取り持たないとな。
慌てて歩く速度をあげようとしたが、それよりも前にキースが意を決したように視線をあげた。
「あの…えっと、階段、大変じゃなかった…ですか?」
ああ、アキトの心配をしてくれていたのか。うん、キースはやっぱり可愛いな。
そう思いながら見守っていると、アキトはさっとその場にしゃがみこんだ。
近い距離からキースの目をまっすぐ見つめて、笑顔で答える。
「すごく大変だったけどなんとか最後まで頑張りました。キースくん、心配してくれてありがとうございます」
アキトの感謝の言葉に、キースはふわりと嬉しそうに笑みを浮かべた。
照れ笑いを浮かべたキースを、ファーガス兄さんとウィル兄さんも微笑まし気に見つめている。
それにしても兄弟たちとアキトの性格は分かっているからそこまで心配はしていなかったが、想像以上に気が合ったようだ。
「アキト、勝手に両親と話こんじゃってごめんね。退屈してない?」
背後からそう声をかければ、アキトは笑顔で振り返った。慣れない場所なのに、ほったらかしにされたと怒っていないんだろうか。
「ううん、別に気にしなくて良いよ。皆さんと話してたから大丈夫」
むしろ楽しかったよと笑顔でそう教えてくれるアキトの姿に、肩の力が抜けた。
「みんな、アキトを退屈させないようにしてくれてありがとう」
心からの感謝をこめた言葉だったけれど、ファーガス兄さんは不服そうに眉間にしわを寄せながら口を開いた。
「ハル、俺達は別にアキトを退屈させないようにと話をしてたわけじゃないぞ」
本気で怒っているわけじゃなくただのポーズだと俺には分かるが、じろりと睨んでくるファーガス兄さんの視線はかなり鋭い。
この視線を向けられたら、普通の人ならまず間違いなく怯えるだろうなと思うぐらいの迫力だ。
まぁレーブンやローガンの強面にも一切動じないアキトには、全く問題はないようで俺たちのやりとりを興味深そうに観察している。
「そうそう、俺達はただアキト君と話したかっただけだから!」
明るい笑みを浮かべながらウィル兄さんは、そう言いきった。ちらりと視線を向ければ、アキトは嬉しそうに照れ笑いを浮かべている。
「まあ皆がアキト君と話したくなった原因は、俺が皆にアキト君の事いっぱい話したからだけどね」
へへーと笑ったウィリアム兄さんの横から、キースもひょこっと顔を出した。
「僕もアキトさんとお話してみたかったから」
「そうか。でも、ありがとう」
自分たちが話したかっただけというのは、きっと本当なんだろう。
それでも慣れない場所でアキトが一人にならなかった理由が、ここにいるみんななのは事実だから。
そっと手を伸ばして頭を撫でれば、キースは嬉しそうに声をあげて笑い出した。うん、俺の弟はやっぱり可愛いな。そしてそんなキースを微笑ましそうに笑いながら見つめるアキトも、たまらなく可愛い。
「まあ普段なら伴侶候補を放置するなと言いたい所なんだが――今回は仕方ないだろう」
もっと叱られるかと思っていたんだが、ファーガス兄さんはそう言うなり苦笑を浮かべるだけだった。
「もし俺が伴侶候補を連れてきたあの時に同じ事をされていたら、本気で怒って反撃していたし絶対に父に言いつけていたよ」
そうか、ファーガス兄さんの時は出会い頭の腕試しはなかったのか。
それにしてもファーガス兄さんの伴侶はかなり強い戦える人だが、それでも許せないものらしい。まぁアキトも戦える人なのに許せなかったんだから、そんなものか。
「あーそれは確かに。一人の時ならいくらでもって言えるんだけどな。愛しい伴侶に怪我させたら、いくら母さんでも許せない」
ウィル兄も笑顔を消した真剣な表情で同意している。
ウィル兄の場合は伴侶のジルさんが戦えない人だから、余計になんだろうな。
想像しただけでも不快だったのか、ウィル兄の眉間にくっきりと皺がよっていた。
うん、二人とも相変わらず伴侶を大事にしているみたいだ。
149
お気に入りに追加
4,204
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる