818 / 1,112
817.感謝の言葉
しおりを挟む
「いやぁ、こんなハルの姿を見れる日が来るとは、思ってもみなかったなー」
そう口にしたグレースさんは、ニコニコと楽し気に笑っている。グレースさんの隣に並んでいたケイリーさんも、温かい目でハルを見つめながらこくりと頷いた。
「本当にな。喜ばしい事だ」
「確かに――それにしても、ウィリアムの話は誇張表現じゃなかったんだな?」
ファーガスさんがぼそりとそんな事を呟いた途端、ウィリアムさんは大きく身体を揺らした。
「えぇーファグ兄ってば、俺の話を全然信じてくれてなかったの?あんなに色々話したのに?」
本当に悲しそうに聞こえる声色で嘆きだしたウィリアムさんは、今はしょんぼりと肩を落としている。まあ俺の所からだと、口元が笑ってるのが見えてるんだけどね。
「俺、傷付いたよ…」
迫真の演技を続けるウィリアムさんに、ファーガスさんは特に謝るでも無く苦笑しているだけだ。ちらっと視線を向けてみれば、ハルも無言のまま呆れ顔で見守っている。グレースさんとケイリーさんなんて、一瞬視線を向けただけで普通に会話を続けている。
なるほど。ウィリアムさんがこういうオーバーリアクションをするのは、きっといつもの事なんだろうな。
あれ、でもじゃあこれ何のためにしてるの?そう思った瞬間、キースくんが動いた。
「ウィル兄さん、元気だして!僕はちゃんと信じてたからね!」
肩を落としているウィリアムさんに、キースくんは大慌てで声をかけ続けている。必死で慰めようとする姿が可愛らしい。
「キース、それ本当?」
「うん、本当だよ、ウィル兄!」
ハル兄とアキトさんの事いっぱいお話してくれて嬉しかったよと、キースくんは笑顔で答えた。
うん、キースーくんは見ためだけじゃなくて、中身も天使かもしれないね。こんな反応をしてくれる弟がいたら、オーバーリアクションだって取りたくなると思う。
「キース、ありがとう!元気でたよ!」
笑顔を浮かべたウィリアムさんに頭を撫でられて、キースくんは嬉しそうに目を細めた。
「あ、そうだ、アキトくん。ひとつだけ話しておきたい事があるんだが、ちょっと良いかな?」
「はい、なんでしょうか?」
ケイリーさんの急な呼びかけに、俺はすこしだけ首を傾げながらも答えた。
「ここにいるみんなは、全員が目が覚めたハルから届いた手紙を読んだんだ」
「はい」
そりゃあ久しぶりに目覚めた家族からの手紙だから、全員が読むに決まってるよね。
「つまり、今ここにいる5人は、君の体質の事についても知っている事になる」
たしかハルは、家族にも俺が異世界人である事は言ってないんだよね。幽霊が見える体質については説明させて欲しいって言われて、もちろん良いよって答えたのは覚えてる。
「それを踏まえて聞いて欲しいんだが…」
「…はい」
一体何を言われるのかは、全く分からない。でも、さっきまでのあの歓迎っぷりを味わった後だから、不思議と怖いとは思わなかった。真剣な表情をしたケイリーさんの目を、俺はまっすぐ見つめ返す。
「俺達の悲願であるリスリーロの花を見つけてくれた事、そして俺達のところへと送り届けてくれた事に、心からの感謝を贈りたい」
ケイリーさんはそう言うとさっと頭を下げた。
「ありがとう、アキトくん」
えっと思う間も無く、グレースさんが、ファーガスさんが、ウィリアムさんさんが、そしてキースくんがそれぞれありがとうと口にしながら頭を下げる。
どういう事と思わず視線を向ければ、ハルはニコッと笑みを浮かべた。
あーなるほど。リスリーロの話になるってハルは予想できてたんだな。
「あの、顔をあげてください。私の体質を知っているなら分かってもらえると思うんですが、あれはハルが見つけたもので――」
だから俺はそんな風に言われるほどの事はしてないですと主張しようとしたけれど、最後まで言い終える前にハルに止められてしまった。
「いいや、あれはあの時の俺には届ける事ができなかったものだからね?もしアキトがいなかったら、俺はきっとまだあのリスリーロの前で立ち尽くしていたよ」
あのすこし不気味で危険な森の中で一人きり立ち尽くすハルを想像してしまって、ぞっとした。俺はハルを助けるためにこの世界に来たのかもしれない。そんな考えが、ふと頭を過った。
「そうだよ、アキトくん。あの時のハルに気づく事ができたのは君だけだった。だから心からの感謝を言わせて欲しかったんだ」
受け入れて欲しいと言われれば、俺の答えは決まっている。
「…えっと、どういたしまして」
すぐさまお礼の言葉を受け入れた俺に、顔をあげた皆は揃って笑顔を見せてくれた。
そう口にしたグレースさんは、ニコニコと楽し気に笑っている。グレースさんの隣に並んでいたケイリーさんも、温かい目でハルを見つめながらこくりと頷いた。
「本当にな。喜ばしい事だ」
「確かに――それにしても、ウィリアムの話は誇張表現じゃなかったんだな?」
ファーガスさんがぼそりとそんな事を呟いた途端、ウィリアムさんは大きく身体を揺らした。
「えぇーファグ兄ってば、俺の話を全然信じてくれてなかったの?あんなに色々話したのに?」
本当に悲しそうに聞こえる声色で嘆きだしたウィリアムさんは、今はしょんぼりと肩を落としている。まあ俺の所からだと、口元が笑ってるのが見えてるんだけどね。
「俺、傷付いたよ…」
迫真の演技を続けるウィリアムさんに、ファーガスさんは特に謝るでも無く苦笑しているだけだ。ちらっと視線を向けてみれば、ハルも無言のまま呆れ顔で見守っている。グレースさんとケイリーさんなんて、一瞬視線を向けただけで普通に会話を続けている。
なるほど。ウィリアムさんがこういうオーバーリアクションをするのは、きっといつもの事なんだろうな。
あれ、でもじゃあこれ何のためにしてるの?そう思った瞬間、キースくんが動いた。
「ウィル兄さん、元気だして!僕はちゃんと信じてたからね!」
肩を落としているウィリアムさんに、キースくんは大慌てで声をかけ続けている。必死で慰めようとする姿が可愛らしい。
「キース、それ本当?」
「うん、本当だよ、ウィル兄!」
ハル兄とアキトさんの事いっぱいお話してくれて嬉しかったよと、キースくんは笑顔で答えた。
うん、キースーくんは見ためだけじゃなくて、中身も天使かもしれないね。こんな反応をしてくれる弟がいたら、オーバーリアクションだって取りたくなると思う。
「キース、ありがとう!元気でたよ!」
笑顔を浮かべたウィリアムさんに頭を撫でられて、キースくんは嬉しそうに目を細めた。
「あ、そうだ、アキトくん。ひとつだけ話しておきたい事があるんだが、ちょっと良いかな?」
「はい、なんでしょうか?」
ケイリーさんの急な呼びかけに、俺はすこしだけ首を傾げながらも答えた。
「ここにいるみんなは、全員が目が覚めたハルから届いた手紙を読んだんだ」
「はい」
そりゃあ久しぶりに目覚めた家族からの手紙だから、全員が読むに決まってるよね。
「つまり、今ここにいる5人は、君の体質の事についても知っている事になる」
たしかハルは、家族にも俺が異世界人である事は言ってないんだよね。幽霊が見える体質については説明させて欲しいって言われて、もちろん良いよって答えたのは覚えてる。
「それを踏まえて聞いて欲しいんだが…」
「…はい」
一体何を言われるのかは、全く分からない。でも、さっきまでのあの歓迎っぷりを味わった後だから、不思議と怖いとは思わなかった。真剣な表情をしたケイリーさんの目を、俺はまっすぐ見つめ返す。
「俺達の悲願であるリスリーロの花を見つけてくれた事、そして俺達のところへと送り届けてくれた事に、心からの感謝を贈りたい」
ケイリーさんはそう言うとさっと頭を下げた。
「ありがとう、アキトくん」
えっと思う間も無く、グレースさんが、ファーガスさんが、ウィリアムさんさんが、そしてキースくんがそれぞれありがとうと口にしながら頭を下げる。
どういう事と思わず視線を向ければ、ハルはニコッと笑みを浮かべた。
あーなるほど。リスリーロの話になるってハルは予想できてたんだな。
「あの、顔をあげてください。私の体質を知っているなら分かってもらえると思うんですが、あれはハルが見つけたもので――」
だから俺はそんな風に言われるほどの事はしてないですと主張しようとしたけれど、最後まで言い終える前にハルに止められてしまった。
「いいや、あれはあの時の俺には届ける事ができなかったものだからね?もしアキトがいなかったら、俺はきっとまだあのリスリーロの前で立ち尽くしていたよ」
あのすこし不気味で危険な森の中で一人きり立ち尽くすハルを想像してしまって、ぞっとした。俺はハルを助けるためにこの世界に来たのかもしれない。そんな考えが、ふと頭を過った。
「そうだよ、アキトくん。あの時のハルに気づく事ができたのは君だけだった。だから心からの感謝を言わせて欲しかったんだ」
受け入れて欲しいと言われれば、俺の答えは決まっている。
「…えっと、どういたしまして」
すぐさまお礼の言葉を受け入れた俺に、顔をあげた皆は揃って笑顔を見せてくれた。
198
お気に入りに追加
4,145
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる