779 / 1,103
778.【ハル視点】仮眠
しおりを挟む
「あー…なるほど。それじゃあ今日は色々買って回ってたのか」
「ああ、だいたいの物は揃えられたと思う」
「そうか…二人とも依頼の時とは違う疲れ方をしてるだろうから、部屋で待ってたらどうだ?」
レーブンはアキトと俺を心配そうに見つめながら、そう提案してくれた。
きちんと時間を決めた約束をしてるわけじゃないから、いつローガンが来るかは分からないからだそうだ。
それにしても、レーブンにこうして気づかわれるのにもすっかり慣れてしまったな。最初はアキトのついでに程度の扱いだったと思うんだが、いつの間にか俺個人の事も気にかけてくれるようになっていた。
アキトの父親代わりということは、俺も義理の息子扱いなんだろうか。
もしアキトと出会う前の俺に、将来的にレーブンから気づかわれるようになるぞと言っても信じてもらえないだろうな。
そんな事をぼんやりと考えながら、俺はアキトに視線を向けた。
「アキト、レーブンの言葉に甘えようか」
「いいんですか?」
「ああ、ここでずっと待たせるわけにも行かないからな」
確かに受付の前にずっといたら、逆に邪魔になるだろうな。
「ローガンが来たらちゃんと呼びに行くから、安心してゆっくりしててくれ」
「ありがとう、レーブン」
「レーブンさん、ありがとうございます」
「おう、どういたしまして」
優しい笑みを浮かべたレーブンに見送られて、俺達は黒鷹亭の自室へと戻った。
「アキト、疲れた?」
自分たちの部屋に戻るなり、ぼーっと虚空を見つめていたアキトに俺は思わず声をかけた。
「うん、ちょっと疲れたかも。ハルも?」
「ああ、俺も疲れたな」
甘えるように俺も疲れたと声に出せば、アキトは何の前触れもなく浄化魔法を発動した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
さっと二人分の身体を清めたアキトは、そのままごろんとベッドに寝転がった。幸せそうにふわふわだと目を細めて笑う姿が、たまらなく可愛い。
「ハルも一緒にどう?」
悪戯っぽい笑みを浮かべてそう誘ってくるアキトに、俺は少しだけ考えてからそうだなと隣に寝転がった。確かに黒鷹亭のベッドは、柔らかくて寝心地が良いな。
「でもこうして寝転がると…なんだか急に眠くなってくるな」
小さくあくびをしながら、俺はぽそりとそう呟いた。自分で思っているよりも、俺も疲れていたらしい。
「うん、わかる…」
アキトもふわーと思いっきりあくびをしてから同意を返してくれる。
「寝ちゃだめっておもうと…よけいねむい…」
既に半分眠りかけのアキトは、目をつむっては開いてを何度も何度も繰り返している。きっと後で呼びにきてくれるレーブンに、迷惑をかけたら駄目だと思っているんだろうな。
そのまま寝て良いよと俺から声をかけるべきだろうか。レーブンが呼びに来たら、さすがに俺は目が覚める自信があるから二人とも眠ってしまっても問題は無いだろう。
そう考えて口を開こうとした時には、アキトはもう完全に眠りに落ちていた。すーすーとうっすらと聞こえてくる規則的な寝息を聞いていると、自然と眠気が増してくる。
ああ、俺もひと眠りするか。そう思って俺はそっと目を閉じた。
自然と目が覚めた俺は、まずはちらりとアキトに視線を向けた。さっきと同じ姿勢のままで寝ているアキトを確認してから、今度は窓の外へと視線を向ける。どうやらまだそれほど時間は経っていないようだ。
騎士の任務時には、交代制で数分の仮眠だけで済ませる事もある。それに慣れているせいか、どうやら俺は昼寝に向いていないらしい。
アキトとのんびりと昼寝ができないのは少しだけ寂しいが、そのおかげで幸せそうに眠るアキトを眺められるんだから良しとしよう。
しばらくしてレーブンが部屋へと向かってきている気配に気づいた俺は、アキトに声をかけた。
「アキト」
「んー…は…る…って!俺寝てた!?」
飛び起きたアキトに俺は柔らかく笑いかけながら、そっと窓の外を指差した。
「まだそんなに経ってないよ、ほら」
慌てて窓の外へと視線を向けたアキトは、ホッとした様子でようやく笑みを浮かべた。
「はー良かった。ぐっすり寝すぎて、すっごく長い間寝ちゃったかと思った」
「もうすこし寝かせておいてあげたかったんだけど…たぶんそろそろ…」
俺がそう言った瞬間、部屋のドアがノックされる音が聞こえてきた。さっと立ち上がってドアを開ければ、予想通りそこにはレーブンが立っていた。
「アキト、ハル。ローガンが来たぞ」
「分かった、知らせてくれてありがとう」
「ありがとうございます」
「ああ、気にすんな」
部屋を出て前を歩く背中についていけば、何故かそのままレーブンの私室のドアの前へと案内された。
受付は良いのかと思わず受付カウンターに視線を向ければ、そこには明らかに疲れた顔をしたルタスの姿があった。まだ土汚れのついた装備を身につけたままだから、今は多分依頼帰りなんだろう。
「それじゃあ、ルタス、あとは頼んだぞ」
「おう、まかせてくれー」
アキトと俺に気づくとルタスはひらひらと手を振りながら、レーブンに向かってそう答えた。
「そんなに時間はかからないと思うが…」
「分かってるって。話しをする間ここにいて手伝うだけで、美味しい料理と酒を出してくれるってんだから、文句なんてないよ!」
ああ、なるほど。ルタスはその条件で受付の交代を受け入れたのか。依頼帰りで疲れている所に、レーブンの料理と酒を出すと言われれば大抵の奴は飛びつくだろう。
「むしろごゆっくりー」
わざと俺とアキトに聞こえるように条件を口にしてくれただろうルタスの気遣いに感謝しながら、俺はレーブンの部屋の中へと足を踏み入れた。
「ああ、だいたいの物は揃えられたと思う」
「そうか…二人とも依頼の時とは違う疲れ方をしてるだろうから、部屋で待ってたらどうだ?」
レーブンはアキトと俺を心配そうに見つめながら、そう提案してくれた。
きちんと時間を決めた約束をしてるわけじゃないから、いつローガンが来るかは分からないからだそうだ。
それにしても、レーブンにこうして気づかわれるのにもすっかり慣れてしまったな。最初はアキトのついでに程度の扱いだったと思うんだが、いつの間にか俺個人の事も気にかけてくれるようになっていた。
アキトの父親代わりということは、俺も義理の息子扱いなんだろうか。
もしアキトと出会う前の俺に、将来的にレーブンから気づかわれるようになるぞと言っても信じてもらえないだろうな。
そんな事をぼんやりと考えながら、俺はアキトに視線を向けた。
「アキト、レーブンの言葉に甘えようか」
「いいんですか?」
「ああ、ここでずっと待たせるわけにも行かないからな」
確かに受付の前にずっといたら、逆に邪魔になるだろうな。
「ローガンが来たらちゃんと呼びに行くから、安心してゆっくりしててくれ」
「ありがとう、レーブン」
「レーブンさん、ありがとうございます」
「おう、どういたしまして」
優しい笑みを浮かべたレーブンに見送られて、俺達は黒鷹亭の自室へと戻った。
「アキト、疲れた?」
自分たちの部屋に戻るなり、ぼーっと虚空を見つめていたアキトに俺は思わず声をかけた。
「うん、ちょっと疲れたかも。ハルも?」
「ああ、俺も疲れたな」
甘えるように俺も疲れたと声に出せば、アキトは何の前触れもなく浄化魔法を発動した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
さっと二人分の身体を清めたアキトは、そのままごろんとベッドに寝転がった。幸せそうにふわふわだと目を細めて笑う姿が、たまらなく可愛い。
「ハルも一緒にどう?」
悪戯っぽい笑みを浮かべてそう誘ってくるアキトに、俺は少しだけ考えてからそうだなと隣に寝転がった。確かに黒鷹亭のベッドは、柔らかくて寝心地が良いな。
「でもこうして寝転がると…なんだか急に眠くなってくるな」
小さくあくびをしながら、俺はぽそりとそう呟いた。自分で思っているよりも、俺も疲れていたらしい。
「うん、わかる…」
アキトもふわーと思いっきりあくびをしてから同意を返してくれる。
「寝ちゃだめっておもうと…よけいねむい…」
既に半分眠りかけのアキトは、目をつむっては開いてを何度も何度も繰り返している。きっと後で呼びにきてくれるレーブンに、迷惑をかけたら駄目だと思っているんだろうな。
そのまま寝て良いよと俺から声をかけるべきだろうか。レーブンが呼びに来たら、さすがに俺は目が覚める自信があるから二人とも眠ってしまっても問題は無いだろう。
そう考えて口を開こうとした時には、アキトはもう完全に眠りに落ちていた。すーすーとうっすらと聞こえてくる規則的な寝息を聞いていると、自然と眠気が増してくる。
ああ、俺もひと眠りするか。そう思って俺はそっと目を閉じた。
自然と目が覚めた俺は、まずはちらりとアキトに視線を向けた。さっきと同じ姿勢のままで寝ているアキトを確認してから、今度は窓の外へと視線を向ける。どうやらまだそれほど時間は経っていないようだ。
騎士の任務時には、交代制で数分の仮眠だけで済ませる事もある。それに慣れているせいか、どうやら俺は昼寝に向いていないらしい。
アキトとのんびりと昼寝ができないのは少しだけ寂しいが、そのおかげで幸せそうに眠るアキトを眺められるんだから良しとしよう。
しばらくしてレーブンが部屋へと向かってきている気配に気づいた俺は、アキトに声をかけた。
「アキト」
「んー…は…る…って!俺寝てた!?」
飛び起きたアキトに俺は柔らかく笑いかけながら、そっと窓の外を指差した。
「まだそんなに経ってないよ、ほら」
慌てて窓の外へと視線を向けたアキトは、ホッとした様子でようやく笑みを浮かべた。
「はー良かった。ぐっすり寝すぎて、すっごく長い間寝ちゃったかと思った」
「もうすこし寝かせておいてあげたかったんだけど…たぶんそろそろ…」
俺がそう言った瞬間、部屋のドアがノックされる音が聞こえてきた。さっと立ち上がってドアを開ければ、予想通りそこにはレーブンが立っていた。
「アキト、ハル。ローガンが来たぞ」
「分かった、知らせてくれてありがとう」
「ありがとうございます」
「ああ、気にすんな」
部屋を出て前を歩く背中についていけば、何故かそのままレーブンの私室のドアの前へと案内された。
受付は良いのかと思わず受付カウンターに視線を向ければ、そこには明らかに疲れた顔をしたルタスの姿があった。まだ土汚れのついた装備を身につけたままだから、今は多分依頼帰りなんだろう。
「それじゃあ、ルタス、あとは頼んだぞ」
「おう、まかせてくれー」
アキトと俺に気づくとルタスはひらひらと手を振りながら、レーブンに向かってそう答えた。
「そんなに時間はかからないと思うが…」
「分かってるって。話しをする間ここにいて手伝うだけで、美味しい料理と酒を出してくれるってんだから、文句なんてないよ!」
ああ、なるほど。ルタスはその条件で受付の交代を受け入れたのか。依頼帰りで疲れている所に、レーブンの料理と酒を出すと言われれば大抵の奴は飛びつくだろう。
「むしろごゆっくりー」
わざと俺とアキトに聞こえるように条件を口にしてくれただろうルタスの気遣いに感謝しながら、俺はレーブンの部屋の中へと足を踏み入れた。
119
お気に入りに追加
4,148
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる