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775.【ハル視点】カルツさんへ報告を
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見送りのためにと家の前まで出てきてくれたルセフ達四人は、優しい笑みを浮かべていた。
「依頼の後なのに、わざわざ見送りありがとう」
全員の顔を見回してからそう言えば、遠慮するなとか自分がしたいだけだからとかそんな優しい言葉が口々に返ってくる。本当にこいつらは気の良い奴ばかりだな。
アキトが知り会った冒険者パーティーが、こいつらで良かったと心から思う。
「あっちでも頑張ってこいよ」
「絶対にまた会おうな」
「気を付けていってらっしゃい」
「二人とも楽しんできてねー」
改めてそう言ってくる皆の言葉が嬉しくて、アキトと俺は顔を見合わせてから笑い合った。人に恵まれているのは良い事だな。また会いたいと思える。
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます。いってきます」
幸せな気分の俺達は、そのままスラテール商会へと続く裏路地を進んで行った。
予想外にもルセフ達の家で昼飯まで食べさせてもらったから、もしかしたらもうカルツさんも帰ってきているかもしれない。
そう思ってスラテール商会の店の横にある小道へと向かってみれば、ひっそりと存在している花壇を見つめているカルツさんの姿を発見した。
「あ!」
カルツさんがいると気づいた瞬間、アキトは嬉しそうに声を洩らした。相手がカルツさんじゃなかったら、妬いていたかもしれないと思うぐらい嬉しそうな声だった。
「おや?アキトさん、ハルさん」
声に反応してさっとこちらを見たカルツさんは、俺達に気づくとすぐににっこりと嬉しそうに笑みを浮かべた。
アキトもきっと嬉しそうに笑みを浮かべているんだろうなと微笑ましい気持ちで視線を向ければ、何故かアキトは下を向いてうつむいてしまっていた。
あーこれは周りに人がいるかどうかを確認せずに声を出した事を、反省しているんだろうな。街中に幽霊がいても反応せずに流せるアキトだが、相手がカルツさんとなると気が緩んだんだろう。
少しぐらいなら俺が誤魔化すから頼ってくれても良いんだがな。そう思いながら、俺はそっと目を閉じた。アキトを安心させるためには、早く周りの気配を探らないとな。
「…えっと、ハル?」
カルツさんに話しかけても良いかなと言いたげな声を聞きながら、俺は更に気配探知の範囲を広げた。
スラテール商会の店内ではカルツさんの息子さんが店番をしているようだが、今は女性の客と商談中のようだ。裏路地を歩いていたご老人は、左に曲がったからこちらには来ない。表通りを歩く人達はまだまだ遠い距離だから、声は聞こえないな。
そこまで確認してから、俺はぱちりと目を開いた。
「心配しなくても大丈夫みたいだよ。とりあえず近くには人の気配は無いから」
「ええ、ここは滅多に使われない道ですからね」
お久しぶりですと笑って挨拶をしてくれたカルツさんいわく、この店の横にある小道はかなり長い期間に渡って工事の都合で閉鎖されていた事があるらしい。
地元の人はこの道を使わない事に慣れてしまったし、特にどこかへの近道になるわけでもないからと滅多に使われていないそうだ。
なるほど、そんな理由で最近は使われなくなっていたのか。だがそのおかげでカルツさんと話しやすいのだから、ありがたい話しだな。
「カルツさん、改めてお久しぶりです」
「お久しぶりです」
「ええ、お二人ともお元気そうで何よりです」
少しだけ申し訳なさそうな表情になったカルツさんは小声で続けた。
「えーっと…以前話した情報収集の話でしたら、まだめぼしい情報は集まっていないんですが…」
すみませんと続きそうなカルツさんの言葉に、アキトと俺は慌てて手を振った
「いえ、そういう理由じゃないです!」
「そうですよ。そんなに簡単に情報が集まってくるとは思っていないですから」
「そうですか」
ホッとした様子を見せたカルツさんは、優しく微笑みながらアキトと俺をじっと見つめてきた。おそらく俺達が話を切り出すのを待ってくれているんだろう。
「アキトと俺は二人で辺境領に行く事になったんです」
「ああ。もしかして…ハロルド様の実家との顔合わせですか?」
カルツさんは俺の事は知ってるようだったから、この流れも驚きはしない。
「はい!」
「俺の実家から、愛しの伴侶候補を連れて早く会いに来いと…」
「それはそれは、お二人ともおめでとうございます」
俺達の辺境領行きをあまりにもあっさりとと受け入れてお祝いの言葉をくれたカルツさんに、俺はゆるりと首を傾げた。
「カルツさんは、驚かないんですね」
「ええ、私は辺境領とも取引のある商家の人間でしたから…ね。数度しかお会いした事はありませんが、あなたのご両親がどのような人かは分かっています」
少なくとも息子の選んだ人と会う事もせずに文句を言うような人達では無いでしょう?と悪戯っぽい笑みでカルツさんは続けた。
「…そういう風に言ってくれる人は珍しいですね」
だいたいは怖いとか会いたくないとか、頑張れとか言われるからな。規格外の両親な事は俺も分かっているからそう言われても別に苛立ったりはしないし理解はできるんだが、ここまであっさりと受け入れられるのは正直嬉しいものだな。
「お嫌でしたか?」
「いえ…嬉しいです」
「ハルさんとアキトさん、トライプールへはまた帰って来られるんですよね?」
「「はい!」」
即答した俺達に、カルツさんはふふと楽し気に笑ってくれた。
「遠い場所からにはなりますが、お二人の無事のお帰りを祈っていますよ。いってらっしゃい」
「「いってきます」」
「依頼の後なのに、わざわざ見送りありがとう」
全員の顔を見回してからそう言えば、遠慮するなとか自分がしたいだけだからとかそんな優しい言葉が口々に返ってくる。本当にこいつらは気の良い奴ばかりだな。
アキトが知り会った冒険者パーティーが、こいつらで良かったと心から思う。
「あっちでも頑張ってこいよ」
「絶対にまた会おうな」
「気を付けていってらっしゃい」
「二人とも楽しんできてねー」
改めてそう言ってくる皆の言葉が嬉しくて、アキトと俺は顔を見合わせてから笑い合った。人に恵まれているのは良い事だな。また会いたいと思える。
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます。いってきます」
幸せな気分の俺達は、そのままスラテール商会へと続く裏路地を進んで行った。
予想外にもルセフ達の家で昼飯まで食べさせてもらったから、もしかしたらもうカルツさんも帰ってきているかもしれない。
そう思ってスラテール商会の店の横にある小道へと向かってみれば、ひっそりと存在している花壇を見つめているカルツさんの姿を発見した。
「あ!」
カルツさんがいると気づいた瞬間、アキトは嬉しそうに声を洩らした。相手がカルツさんじゃなかったら、妬いていたかもしれないと思うぐらい嬉しそうな声だった。
「おや?アキトさん、ハルさん」
声に反応してさっとこちらを見たカルツさんは、俺達に気づくとすぐににっこりと嬉しそうに笑みを浮かべた。
アキトもきっと嬉しそうに笑みを浮かべているんだろうなと微笑ましい気持ちで視線を向ければ、何故かアキトは下を向いてうつむいてしまっていた。
あーこれは周りに人がいるかどうかを確認せずに声を出した事を、反省しているんだろうな。街中に幽霊がいても反応せずに流せるアキトだが、相手がカルツさんとなると気が緩んだんだろう。
少しぐらいなら俺が誤魔化すから頼ってくれても良いんだがな。そう思いながら、俺はそっと目を閉じた。アキトを安心させるためには、早く周りの気配を探らないとな。
「…えっと、ハル?」
カルツさんに話しかけても良いかなと言いたげな声を聞きながら、俺は更に気配探知の範囲を広げた。
スラテール商会の店内ではカルツさんの息子さんが店番をしているようだが、今は女性の客と商談中のようだ。裏路地を歩いていたご老人は、左に曲がったからこちらには来ない。表通りを歩く人達はまだまだ遠い距離だから、声は聞こえないな。
そこまで確認してから、俺はぱちりと目を開いた。
「心配しなくても大丈夫みたいだよ。とりあえず近くには人の気配は無いから」
「ええ、ここは滅多に使われない道ですからね」
お久しぶりですと笑って挨拶をしてくれたカルツさんいわく、この店の横にある小道はかなり長い期間に渡って工事の都合で閉鎖されていた事があるらしい。
地元の人はこの道を使わない事に慣れてしまったし、特にどこかへの近道になるわけでもないからと滅多に使われていないそうだ。
なるほど、そんな理由で最近は使われなくなっていたのか。だがそのおかげでカルツさんと話しやすいのだから、ありがたい話しだな。
「カルツさん、改めてお久しぶりです」
「お久しぶりです」
「ええ、お二人ともお元気そうで何よりです」
少しだけ申し訳なさそうな表情になったカルツさんは小声で続けた。
「えーっと…以前話した情報収集の話でしたら、まだめぼしい情報は集まっていないんですが…」
すみませんと続きそうなカルツさんの言葉に、アキトと俺は慌てて手を振った
「いえ、そういう理由じゃないです!」
「そうですよ。そんなに簡単に情報が集まってくるとは思っていないですから」
「そうですか」
ホッとした様子を見せたカルツさんは、優しく微笑みながらアキトと俺をじっと見つめてきた。おそらく俺達が話を切り出すのを待ってくれているんだろう。
「アキトと俺は二人で辺境領に行く事になったんです」
「ああ。もしかして…ハロルド様の実家との顔合わせですか?」
カルツさんは俺の事は知ってるようだったから、この流れも驚きはしない。
「はい!」
「俺の実家から、愛しの伴侶候補を連れて早く会いに来いと…」
「それはそれは、お二人ともおめでとうございます」
俺達の辺境領行きをあまりにもあっさりとと受け入れてお祝いの言葉をくれたカルツさんに、俺はゆるりと首を傾げた。
「カルツさんは、驚かないんですね」
「ええ、私は辺境領とも取引のある商家の人間でしたから…ね。数度しかお会いした事はありませんが、あなたのご両親がどのような人かは分かっています」
少なくとも息子の選んだ人と会う事もせずに文句を言うような人達では無いでしょう?と悪戯っぽい笑みでカルツさんは続けた。
「…そういう風に言ってくれる人は珍しいですね」
だいたいは怖いとか会いたくないとか、頑張れとか言われるからな。規格外の両親な事は俺も分かっているからそう言われても別に苛立ったりはしないし理解はできるんだが、ここまであっさりと受け入れられるのは正直嬉しいものだな。
「お嫌でしたか?」
「いえ…嬉しいです」
「ハルさんとアキトさん、トライプールへはまた帰って来られるんですよね?」
「「はい!」」
即答した俺達に、カルツさんはふふと楽し気に笑ってくれた。
「遠い場所からにはなりますが、お二人の無事のお帰りを祈っていますよ。いってらっしゃい」
「「いってきます」」
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