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773.準備の最終段階
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ルタスさんとワルトさんに譲ってもらった席で、俺達はレーブンさんが作ってくれた朝食を堪能した。毎日日替わりで味付けや具材の変わるスープに、美味しいパン、果物やサラダまで、今日もどれも文句なしに美味しかった。
食事を終えた後は、自分たちの部屋に戻って辺境領行きのための荷物の準備だ。
普段の依頼でもよく使っているテントや採取用の手袋、それに装備品に問題が無いかをきっちり点検しながら、ひとつずつ魔導収納鞄の中へとしまいこんでいく。
ちなみにいつもは浄化魔法だけで終わらせていた俺の剣とか一応持ってる投げナイフの手入れなんかは、ハルが率先してやってくれたよ。
最近は魔法ばっかり使ってるから、剣はほとんどただの飾りになってるんだけどね。ハルに辺境領に行くなら魔法だけじゃない攻撃手段も持っておいて欲しいって言われたから、念のためにね。
武器も防具も採取関係の物も、問題なく荷造りできたと思う。
「アキト、これも手分けして持っていこう」
カチャカチャと音を立てながらテーブルの上に並べられていくのは、色々な種類のポーションだった。傷を回復するためのポーションから解毒用のポーションまで、ずらりと並んだ瓶に圧倒されてしまう。
「はい、これがアキトの分だよ。右から順番に下級、中級、最高級の回復薬だから注意してね」
ハルが順番に指差して教えてくれたポーションの瓶をまじまじと観察してみれば、等級が上がるにつれて中にあるキラキラの量が増えているのが分かる。これなら区別はつきそうだな。最高級の回復薬なんて、すこし黒っぽい液体の中にある金色っぽいキラキラがまるで宇宙みたいだ。
「すごい…綺麗だね」
「アキト、何かあったら躊躇せずに使ってね?」
値段を考えてとか、綺麗だからもったいないとか考えないようにして欲しいと、ハルは少し困り顔で続けた。
「さすがにそれはしないよ。危ないと思ったらちゃんと使う」
「うん、そうして」
「後は…何かあったっけ?魔物避けもさっきもらったし」
普段ならハルがまとめて持ってくれている事が多い滅多に使わないような物も、今回はきちんと等分にして分けなおした。ハルいわく、もしもの時に一人だけが物資を持っていると、もう一人の生存率が下がるからとの事だった。
辺境領ではそれが常識――というより、これも一種のゲン担ぎのような物らしい。
「そうしておいた方がいざという時に仲間や伴侶の心配をせずに、全力が出せるっていう先人の知恵だよ」
「はーそうなんだ」
色々と勉強になる事をちょくちょく教えてくれるのが楽しくて、俺は驚いたり笑ったりしながらひとつずつ準備を進めていった。
ハルの魔道具の点検も終わった所で、今度は二人で顔を寄せ合い買い忘れた物が無いかを確認していく。
「おそらく必要は無いとは思うんだが…携帯食料はもうすこし欲しいな」
「そうなんだ。俺は果実水がかなり減ってたよ」
果実水はお気に入りだからって色んな所で色んな味を買い足してるんだけど、それでもそろそろなくなりそうな気配だ。
「うん、果実水は必要だね」
「携帯食料は、前に行った雑貨屋さんかな?」
買い足したいものをいくつか紙に書き出して、俺達はまた街へと飛び出した。
「ただいまー」
「アキト、おかえり」
「ハルもおかえり」
「ふふ、ただいま」
いつものやりとりをした俺達は、荷物を下ろすとどちらともなくふうーと大きく息を吐いた。ため息というよりも達成感の息って感じかな。
今日はあれから、買い忘れた物を順番に買って回った。途中で屋台で買い食いなんかもしつつ、ハルの家族への手土産を二人で選んだりもした。
買った物もその場で等分に分けてしまっておいたから、これで準備は完了かな。
やりきったと満足しながらささっと二人分の浄化魔法をかければ、ハルは優しい笑みでありがとうとお礼を言ってくれた。俺も笑顔でどういたしましてと返す。
後は明日の移動か。魔法陣ってどんな感じなんだろう。椅子に座り込んだままぼんやりとそんな事を考えていると、不意にハルが声をあげた。
「アキト」
「ん?」
「えっと…アキトにプレゼントしたいものがあるんだけど…」
わざわざ座りなおしたハルは、言い難そうに言葉を詰まらせた。
「えっと…プレゼント?」
まずプレゼントって単語がこの世界でも使われてる事にびっくりしたけど、さすがにこの雰囲気の中でわざわざ指摘したりはしないよ。
何で急にプレゼント?と首を傾げた俺の目の前で、ハルは紙で包まれた何かを取り出すとそっとテーブルの上に載せた。
「これを、アキトに貰って欲しいんだ」
食事を終えた後は、自分たちの部屋に戻って辺境領行きのための荷物の準備だ。
普段の依頼でもよく使っているテントや採取用の手袋、それに装備品に問題が無いかをきっちり点検しながら、ひとつずつ魔導収納鞄の中へとしまいこんでいく。
ちなみにいつもは浄化魔法だけで終わらせていた俺の剣とか一応持ってる投げナイフの手入れなんかは、ハルが率先してやってくれたよ。
最近は魔法ばっかり使ってるから、剣はほとんどただの飾りになってるんだけどね。ハルに辺境領に行くなら魔法だけじゃない攻撃手段も持っておいて欲しいって言われたから、念のためにね。
武器も防具も採取関係の物も、問題なく荷造りできたと思う。
「アキト、これも手分けして持っていこう」
カチャカチャと音を立てながらテーブルの上に並べられていくのは、色々な種類のポーションだった。傷を回復するためのポーションから解毒用のポーションまで、ずらりと並んだ瓶に圧倒されてしまう。
「はい、これがアキトの分だよ。右から順番に下級、中級、最高級の回復薬だから注意してね」
ハルが順番に指差して教えてくれたポーションの瓶をまじまじと観察してみれば、等級が上がるにつれて中にあるキラキラの量が増えているのが分かる。これなら区別はつきそうだな。最高級の回復薬なんて、すこし黒っぽい液体の中にある金色っぽいキラキラがまるで宇宙みたいだ。
「すごい…綺麗だね」
「アキト、何かあったら躊躇せずに使ってね?」
値段を考えてとか、綺麗だからもったいないとか考えないようにして欲しいと、ハルは少し困り顔で続けた。
「さすがにそれはしないよ。危ないと思ったらちゃんと使う」
「うん、そうして」
「後は…何かあったっけ?魔物避けもさっきもらったし」
普段ならハルがまとめて持ってくれている事が多い滅多に使わないような物も、今回はきちんと等分にして分けなおした。ハルいわく、もしもの時に一人だけが物資を持っていると、もう一人の生存率が下がるからとの事だった。
辺境領ではそれが常識――というより、これも一種のゲン担ぎのような物らしい。
「そうしておいた方がいざという時に仲間や伴侶の心配をせずに、全力が出せるっていう先人の知恵だよ」
「はーそうなんだ」
色々と勉強になる事をちょくちょく教えてくれるのが楽しくて、俺は驚いたり笑ったりしながらひとつずつ準備を進めていった。
ハルの魔道具の点検も終わった所で、今度は二人で顔を寄せ合い買い忘れた物が無いかを確認していく。
「おそらく必要は無いとは思うんだが…携帯食料はもうすこし欲しいな」
「そうなんだ。俺は果実水がかなり減ってたよ」
果実水はお気に入りだからって色んな所で色んな味を買い足してるんだけど、それでもそろそろなくなりそうな気配だ。
「うん、果実水は必要だね」
「携帯食料は、前に行った雑貨屋さんかな?」
買い足したいものをいくつか紙に書き出して、俺達はまた街へと飛び出した。
「ただいまー」
「アキト、おかえり」
「ハルもおかえり」
「ふふ、ただいま」
いつものやりとりをした俺達は、荷物を下ろすとどちらともなくふうーと大きく息を吐いた。ため息というよりも達成感の息って感じかな。
今日はあれから、買い忘れた物を順番に買って回った。途中で屋台で買い食いなんかもしつつ、ハルの家族への手土産を二人で選んだりもした。
買った物もその場で等分に分けてしまっておいたから、これで準備は完了かな。
やりきったと満足しながらささっと二人分の浄化魔法をかければ、ハルは優しい笑みでありがとうとお礼を言ってくれた。俺も笑顔でどういたしましてと返す。
後は明日の移動か。魔法陣ってどんな感じなんだろう。椅子に座り込んだままぼんやりとそんな事を考えていると、不意にハルが声をあげた。
「アキト」
「ん?」
「えっと…アキトにプレゼントしたいものがあるんだけど…」
わざわざ座りなおしたハルは、言い難そうに言葉を詰まらせた。
「えっと…プレゼント?」
まずプレゼントって単語がこの世界でも使われてる事にびっくりしたけど、さすがにこの雰囲気の中でわざわざ指摘したりはしないよ。
何で急にプレゼント?と首を傾げた俺の目の前で、ハルは紙で包まれた何かを取り出すとそっとテーブルの上に載せた。
「これを、アキトに貰って欲しいんだ」
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