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767.カルツさんとローガンさん
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久しぶりの再会だったから色々話したい事はあったんだけど、それはカルツさん本人から優しい笑顔で止められてしまった。
「まだこれから色々な所に行かないとでしょう?」
商売の関係で何度も辺境領に行ったというカルツさんいわく、辺境領に行くための準備はやりすぎだと思うぐらいしておいた方が良いんだって。
「そうなんですか」
「ええ…でもアキトさんにはハルさんがついているんですから、こんな一商人の忠告は必要なかったですね」
ハルさんがハロルド様だって知っているのに、ついつい口から出てしまいましたと苦笑いを浮かべたカルツさんに、ハルはゆるりと首を振った。
「いいえ。アキトと俺を心配しての忠告、ありがたく受け取ります」
「そう言って頂けると助かります」
ふふと笑ったカルツさんは、俺とハルをじっと見つめてから口を開いた。
「それでは、またお二人にお会いできる日を楽しみにしていますね」
「はい、ありがとうございます」
「カルツさん、絶対にまた会いにきますから!」
「ええ、ぜひ。お待ちしてます」
穏やかな笑みを浮かべて手を振ってくれるカルツさんに、俺とハルも小さく手を振って別れた。
スラテール商会の小道から更に奥へと進んだ裏路地の階段を、俺とハルは手を繋いだままゆっくりと下っていく。狭い階段で手を繋いでいるせいでちょっと歩きにくいんだけど、前から人は来てないからまあ良いかな。
なんだかハルの手を離したくない気分なんだ。
「アキト、次はどこに行きたい?」
ハルの質問に、俺はんーと考えこんでから答えた。
「えーっと…ローガンさんの所はどうかな?」
たしか白狼亭は、スラテール商会からもそんなに遠くなかった筈だよね。そう思って提案してみたんだけど、ハルは困り顔で頭をかいた。
「あれ?ここからだとそんなに遠くなかったと思ったんだけど、間違ってた?」
「うん、それは正解なんだけどね…今日はたしか月に一度の買い出しで白狼亭は店休日だから…店に行っても会えないんだ」
「え、そうなの?」
なんかお店に行けばローガンさんには会えると、勝手に思い込んじゃってたよ。
ハルいわく、白狼亭は毎月一日に買い出しのためのお休みを取るんだって。常連にいつが休みだっていちいち説明するのが面倒だって、ローガンさんがその日に決めたらしい。
ローガンさんらしいワイルドなエピソードだな。
でもそっか。今日を入れても二日しか空きが無いんだから、今日のうちにローガンさんにも会いにいくつもりだったんだけどな。
「アキト、しょんぼりするのはまだ早いよ」
「え?」
「ローガンはね、買い出しの日はいつも黒鷹亭に行くらしいよ」
「黒鷹亭に?」
本当にレーブンさんとローガンさんって仲良し兄弟だよね。
「ああ、良い酒があったとか珍しい食材があったとか、いちいちそういう理由をつけて顔を出すらしいんだ」
白狼亭の常連が教えてくれたんだと、ハルは笑って続けた。
「じゃあ早く黒鷹亭に帰らないとだね!」
「うん。ちょっと急ごうか」
ハルはそう言うとすっと手を上げて細い道を指差した。
「あっちの路地の方が近道なんだ。だからあそこの白い花の花壇を右に曲がって、その次の角で左だよ」
的確に道案内をしてくれるハルにお礼を言ってから、また二人で路地を歩きだす。
「あ、そういえば、アキト」
「ん?」
「ちょっと気になってたんだが、クリスとカーディさんには挨拶しなくて良かったのか?」
アキトが挨拶したい人に入るかと思っていたんだが、とハルは不思議そうに尋ねてくる。
うん、俺もクリスさんとカーディにはできれば挨拶してから行きたいんだけどね、今回はできない理由があるんだ。
「あー…数日前にさ、カーディにばったり会ったでしょ?」
再会した場所がまたしても広場の屋台の前で、しかもお互い屋台飯を買い込んでる所だったのにはカーディと二人で笑ってしまった。
「ああ、会ったな」
「あの時にね、カーディがこっそり教えてくれたんだけど」
「そういえば二人だけで話してる時間があったな」
久しぶりなんだし話してて良いよって、ハルは別の屋台に並びに行ってくれたんだよね。
「クリスさんが、今度は水属性のドラゴンの魔石を手に入れたんだって言ってたんだ」
しかもそれは前にイーシャルで取引して手に入れた火属性の物よりも、更に大きな魔石だったらしい。小さな声でそう続ければ、ハルは明らかに呆れ顔で苦笑を浮かべた。
「あー…なるほど。もうある程度想像はできたな」
うん、ハルの想像通りだと思うよ。
「その魔石のせいで、今はまた新しい魔道具開発に夢中なんだーって言ってたんだ。だからその…邪魔したら駄目かなーと思って」
「ああ、そうだな…まああの二人ならメロウかレーブンから情報が回るだろうしな」
ハルはそう言って、いざとなればレーブンに伝言を頼んでおこうと笑って続けた。
「あ、黒鷹亭見えてきた!」
「普段とは違う道にしてみたんだが、こっちの道の方が近い気がするな…?」
「うん、確かにそんな感じだね」
のんびりとそんな事を喋りながら、俺達は揃って黒鷹亭のドアをくぐった。
「まだこれから色々な所に行かないとでしょう?」
商売の関係で何度も辺境領に行ったというカルツさんいわく、辺境領に行くための準備はやりすぎだと思うぐらいしておいた方が良いんだって。
「そうなんですか」
「ええ…でもアキトさんにはハルさんがついているんですから、こんな一商人の忠告は必要なかったですね」
ハルさんがハロルド様だって知っているのに、ついつい口から出てしまいましたと苦笑いを浮かべたカルツさんに、ハルはゆるりと首を振った。
「いいえ。アキトと俺を心配しての忠告、ありがたく受け取ります」
「そう言って頂けると助かります」
ふふと笑ったカルツさんは、俺とハルをじっと見つめてから口を開いた。
「それでは、またお二人にお会いできる日を楽しみにしていますね」
「はい、ありがとうございます」
「カルツさん、絶対にまた会いにきますから!」
「ええ、ぜひ。お待ちしてます」
穏やかな笑みを浮かべて手を振ってくれるカルツさんに、俺とハルも小さく手を振って別れた。
スラテール商会の小道から更に奥へと進んだ裏路地の階段を、俺とハルは手を繋いだままゆっくりと下っていく。狭い階段で手を繋いでいるせいでちょっと歩きにくいんだけど、前から人は来てないからまあ良いかな。
なんだかハルの手を離したくない気分なんだ。
「アキト、次はどこに行きたい?」
ハルの質問に、俺はんーと考えこんでから答えた。
「えーっと…ローガンさんの所はどうかな?」
たしか白狼亭は、スラテール商会からもそんなに遠くなかった筈だよね。そう思って提案してみたんだけど、ハルは困り顔で頭をかいた。
「あれ?ここからだとそんなに遠くなかったと思ったんだけど、間違ってた?」
「うん、それは正解なんだけどね…今日はたしか月に一度の買い出しで白狼亭は店休日だから…店に行っても会えないんだ」
「え、そうなの?」
なんかお店に行けばローガンさんには会えると、勝手に思い込んじゃってたよ。
ハルいわく、白狼亭は毎月一日に買い出しのためのお休みを取るんだって。常連にいつが休みだっていちいち説明するのが面倒だって、ローガンさんがその日に決めたらしい。
ローガンさんらしいワイルドなエピソードだな。
でもそっか。今日を入れても二日しか空きが無いんだから、今日のうちにローガンさんにも会いにいくつもりだったんだけどな。
「アキト、しょんぼりするのはまだ早いよ」
「え?」
「ローガンはね、買い出しの日はいつも黒鷹亭に行くらしいよ」
「黒鷹亭に?」
本当にレーブンさんとローガンさんって仲良し兄弟だよね。
「ああ、良い酒があったとか珍しい食材があったとか、いちいちそういう理由をつけて顔を出すらしいんだ」
白狼亭の常連が教えてくれたんだと、ハルは笑って続けた。
「じゃあ早く黒鷹亭に帰らないとだね!」
「うん。ちょっと急ごうか」
ハルはそう言うとすっと手を上げて細い道を指差した。
「あっちの路地の方が近道なんだ。だからあそこの白い花の花壇を右に曲がって、その次の角で左だよ」
的確に道案内をしてくれるハルにお礼を言ってから、また二人で路地を歩きだす。
「あ、そういえば、アキト」
「ん?」
「ちょっと気になってたんだが、クリスとカーディさんには挨拶しなくて良かったのか?」
アキトが挨拶したい人に入るかと思っていたんだが、とハルは不思議そうに尋ねてくる。
うん、俺もクリスさんとカーディにはできれば挨拶してから行きたいんだけどね、今回はできない理由があるんだ。
「あー…数日前にさ、カーディにばったり会ったでしょ?」
再会した場所がまたしても広場の屋台の前で、しかもお互い屋台飯を買い込んでる所だったのにはカーディと二人で笑ってしまった。
「ああ、会ったな」
「あの時にね、カーディがこっそり教えてくれたんだけど」
「そういえば二人だけで話してる時間があったな」
久しぶりなんだし話してて良いよって、ハルは別の屋台に並びに行ってくれたんだよね。
「クリスさんが、今度は水属性のドラゴンの魔石を手に入れたんだって言ってたんだ」
しかもそれは前にイーシャルで取引して手に入れた火属性の物よりも、更に大きな魔石だったらしい。小さな声でそう続ければ、ハルは明らかに呆れ顔で苦笑を浮かべた。
「あー…なるほど。もうある程度想像はできたな」
うん、ハルの想像通りだと思うよ。
「その魔石のせいで、今はまた新しい魔道具開発に夢中なんだーって言ってたんだ。だからその…邪魔したら駄目かなーと思って」
「ああ、そうだな…まああの二人ならメロウかレーブンから情報が回るだろうしな」
ハルはそう言って、いざとなればレーブンに伝言を頼んでおこうと笑って続けた。
「あ、黒鷹亭見えてきた!」
「普段とは違う道にしてみたんだが、こっちの道の方が近い気がするな…?」
「うん、確かにそんな感じだね」
のんびりとそんな事を喋りながら、俺達は揃って黒鷹亭のドアをくぐった。
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