760 / 1,112
759.【ハル視点】アキトのすごさを伝えたい
しおりを挟む
提案を否定しなかった俺の反応がよほど予想外だったのか、ルセフは慌てた様子で口を開いた。
「待て待て、ハル、そこはちゃんと止めてくれよ」
アキトが四人に浄化魔法をかけるなんて言い出したら、確実に俺が止めると思っていたんだろうな。もしアキトが普通の魔力量だったら、そうしていただろうな。
「いやぁ、まあ止めても良いんだが…」
「良いんだが…?」
「アキトの浄化魔法のすごさを、お前らにも味わって欲しいって気持ちがあるからついな」
思わず笑いながらそう告げた俺に、アキトは不思議そうに首を傾げた。自分の浄化魔法のすごさを理解してないから、そんな反応にもなるよな。
「そんな理由かよ!アキトが疲れても良いのか!?」
「え、でも、浄化魔法ならそんなに疲れないから、そんなに心配してもらわなくても大丈夫ですよ。それに俺、今日は魔法も使ってないですし…」
あっさりとそう断言したアキトは、俺以外の全員が驚いた顔をしている事にも気づいていなかった。
一番最初に我に返ったのはウォルターだった。
「は!?待ってくれ。浄化魔法ってかなり疲れる魔法なんだよな?」
「え、うん。かなり疲れるよ」
そう、本来なら浄化魔法はそうそう連発できる魔法ではないんだよな。明らかに戸惑っている魔法に詳しいファリーマの反応に、アキトはもう一度ゆるりと首を傾げた。
「疲れないですけど」
あっさりとそう答えるアキトに、俺以外の全員が絶句した。うん、びっくりするよな。少しだけ申し訳ない気持ちになった俺は、説明をしてやるべく口を開いた。
「あー…俺から説明するけどな、アキトは綺麗好きというか…とにかく頻繁に浄化魔法を使ってるから制御がかなり上手いんだよ」
「え、そうなの?」
反射的にそう聞き返したアキトに、ウォルターはお前が聞くのかよと力いっぱい叫んだ。
「ああ、俺が見てきた中で一番浄化魔法が上手いのは、アキトだと思うよ?」
「ハルが見てきた中でって事は…もしかして騎士団も含めてか?」
「そうだな。辺境領とトライプールの騎士団を含めても、間違いなくアキトが一番だ」
そう言いきれば、ルセフとウォルターは揃って興味深そうにアキトを見た。その隣のブレイズはキラキラと尊敬の眼差しを向けているし、ファリーマに至っては今にもとびついてきそうなギラギラした目を向けている。
「アキト、ハル。もう昼食は食べたか?」
不意にルセフが尋ねてきた予想外の質問に、アキトと俺はフルフルと首を振った。
「そうか…それじゃあ俺達四人への浄化魔法をかけてくれたら、昼食は俺が用意するってのはどうだ?」
興味があるから見てみたいが、きちんと対価は払うからという提案か。ニヤリと笑ったルセフの提案に、アキトは元気に手をあげて答えた。
「それでお願いします!」
「おい、飯に釣られて良いのか?」
「ルセフさんの料理、本当に美味しかったですからね!俺の方が得な取引だと思います!」
ニコニコ笑顔でそう言ったアキトに、ルセフは心から嬉しそうな笑みを浮かべた。ルセフの料理ならそれだけの価値があると、断言されたようなものだからな。
これを狙っていってるわけじゃないんだから、アキトはすごいと思う。
「うわーちょっと元気出てきた!!アキト、頼んだぞー!」
どこまでも魔法馬鹿なファリーマは、嬉しそうに笑って立ち上がった。魔法への期待だけで元気になるんだな。
「俺も楽しみ!」
ブレイズはキラキラと目を輝かせてアキトを見つめた。アキトはすごいからねと言いたげなのが、視線だけでも伝わってくるな。
「よっし、じゃあ行きます!」
アキトはすぐに魔力を練り上げると、四人の身体と棚にある装備の方にも浄化魔法をかけた。最近は浄化魔法も同時にいくつか発動できるようになっているんだよな。俺も初めて知った時はかなり驚いたのを覚えている。
「はい、終わりました!」
アキトは笑顔でそう声をかけたが、四人は何も言わずに固まったままだった。
うんうん、アキトの規格外さを知らないと、そうなるよな。
「ハル…何かまずかった?」
「いや、ちょっと四人に時間をやってくれ…もうすぐまた動き出すからな」
苦笑しながら告げた俺の予想通り、数十秒の沈黙の後、四人はびっくり顔でアキトを凝視した。いや三人がびっくり顔の中、ファリーマだけはキラキラと目を輝かせてすごい勢いでアキトに詰め寄っていたな。
「アキト、すごいな!しかもこれ!汚れを落とすとかじゃなくて服も髪も綺麗になってないか!?」
アキトが使ったのは精度こそおかしいがただの浄化魔法なんだが、ファリーマはどうやらすっかり元気になったらしい。
「え、うん、そう想像しながらやってるから」
「うわーそうか、感覚派だから余計に浄化の質が良いのか!」
あまりの勢いに圧倒されているアキトの前で、ファリーマは俺の浄化魔法ももしかしてまだまだ改良の余地があるのではと騒いでいる。
まあなんだ、元気そうで何よりだな。
「待て待て、ハル、そこはちゃんと止めてくれよ」
アキトが四人に浄化魔法をかけるなんて言い出したら、確実に俺が止めると思っていたんだろうな。もしアキトが普通の魔力量だったら、そうしていただろうな。
「いやぁ、まあ止めても良いんだが…」
「良いんだが…?」
「アキトの浄化魔法のすごさを、お前らにも味わって欲しいって気持ちがあるからついな」
思わず笑いながらそう告げた俺に、アキトは不思議そうに首を傾げた。自分の浄化魔法のすごさを理解してないから、そんな反応にもなるよな。
「そんな理由かよ!アキトが疲れても良いのか!?」
「え、でも、浄化魔法ならそんなに疲れないから、そんなに心配してもらわなくても大丈夫ですよ。それに俺、今日は魔法も使ってないですし…」
あっさりとそう断言したアキトは、俺以外の全員が驚いた顔をしている事にも気づいていなかった。
一番最初に我に返ったのはウォルターだった。
「は!?待ってくれ。浄化魔法ってかなり疲れる魔法なんだよな?」
「え、うん。かなり疲れるよ」
そう、本来なら浄化魔法はそうそう連発できる魔法ではないんだよな。明らかに戸惑っている魔法に詳しいファリーマの反応に、アキトはもう一度ゆるりと首を傾げた。
「疲れないですけど」
あっさりとそう答えるアキトに、俺以外の全員が絶句した。うん、びっくりするよな。少しだけ申し訳ない気持ちになった俺は、説明をしてやるべく口を開いた。
「あー…俺から説明するけどな、アキトは綺麗好きというか…とにかく頻繁に浄化魔法を使ってるから制御がかなり上手いんだよ」
「え、そうなの?」
反射的にそう聞き返したアキトに、ウォルターはお前が聞くのかよと力いっぱい叫んだ。
「ああ、俺が見てきた中で一番浄化魔法が上手いのは、アキトだと思うよ?」
「ハルが見てきた中でって事は…もしかして騎士団も含めてか?」
「そうだな。辺境領とトライプールの騎士団を含めても、間違いなくアキトが一番だ」
そう言いきれば、ルセフとウォルターは揃って興味深そうにアキトを見た。その隣のブレイズはキラキラと尊敬の眼差しを向けているし、ファリーマに至っては今にもとびついてきそうなギラギラした目を向けている。
「アキト、ハル。もう昼食は食べたか?」
不意にルセフが尋ねてきた予想外の質問に、アキトと俺はフルフルと首を振った。
「そうか…それじゃあ俺達四人への浄化魔法をかけてくれたら、昼食は俺が用意するってのはどうだ?」
興味があるから見てみたいが、きちんと対価は払うからという提案か。ニヤリと笑ったルセフの提案に、アキトは元気に手をあげて答えた。
「それでお願いします!」
「おい、飯に釣られて良いのか?」
「ルセフさんの料理、本当に美味しかったですからね!俺の方が得な取引だと思います!」
ニコニコ笑顔でそう言ったアキトに、ルセフは心から嬉しそうな笑みを浮かべた。ルセフの料理ならそれだけの価値があると、断言されたようなものだからな。
これを狙っていってるわけじゃないんだから、アキトはすごいと思う。
「うわーちょっと元気出てきた!!アキト、頼んだぞー!」
どこまでも魔法馬鹿なファリーマは、嬉しそうに笑って立ち上がった。魔法への期待だけで元気になるんだな。
「俺も楽しみ!」
ブレイズはキラキラと目を輝かせてアキトを見つめた。アキトはすごいからねと言いたげなのが、視線だけでも伝わってくるな。
「よっし、じゃあ行きます!」
アキトはすぐに魔力を練り上げると、四人の身体と棚にある装備の方にも浄化魔法をかけた。最近は浄化魔法も同時にいくつか発動できるようになっているんだよな。俺も初めて知った時はかなり驚いたのを覚えている。
「はい、終わりました!」
アキトは笑顔でそう声をかけたが、四人は何も言わずに固まったままだった。
うんうん、アキトの規格外さを知らないと、そうなるよな。
「ハル…何かまずかった?」
「いや、ちょっと四人に時間をやってくれ…もうすぐまた動き出すからな」
苦笑しながら告げた俺の予想通り、数十秒の沈黙の後、四人はびっくり顔でアキトを凝視した。いや三人がびっくり顔の中、ファリーマだけはキラキラと目を輝かせてすごい勢いでアキトに詰め寄っていたな。
「アキト、すごいな!しかもこれ!汚れを落とすとかじゃなくて服も髪も綺麗になってないか!?」
アキトが使ったのは精度こそおかしいがただの浄化魔法なんだが、ファリーマはどうやらすっかり元気になったらしい。
「え、うん、そう想像しながらやってるから」
「うわーそうか、感覚派だから余計に浄化の質が良いのか!」
あまりの勢いに圧倒されているアキトの前で、ファリーマは俺の浄化魔法ももしかしてまだまだ改良の余地があるのではと騒いでいる。
まあなんだ、元気そうで何よりだな。
148
お気に入りに追加
4,145
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる