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749.簡単な料理…?

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「おーい、食事の用意ができたぞー」

 ルセフさんが遠くから呼びかけた声が聞こえた瞬間、ウォルターさんとブレイズはさっとすぐに立ち上がった。え、と思う間も無く、二人はすぐさま競うようにして部屋から出ていった。

 普段から盾使いとは思えないほど身軽なウォルターさんと、いつでもしなやかで俊敏に動くまさに狩人らしいブレイズ。

 二人が素早いのはもちろん依頼を通して知ってはいるんだけどさ…それにしても今のはちょっと素早すぎなかったかな。

 驚きに大きく目を見開いたままちらりとハルに視線を向ければ、ハルも珍しくびっくり顔で二人が消えていった開いたままのドアを見つめていた。

 うん、やっぱりハルもびっくりしたよね、今の二人の素早さ。

「おおー今日のもうまそうだな!」
「本当に美味しそうだねーさすがルセフさん!」
「ああ、ありがとなーじゃあこれとこれはブレイズ、こっちはウォルターに頼んだ」
「おう、まかせろ」
「はーい!運ぶねー!」

 元気に答えている二人とルセフさんのやりとりが、廊下の方からうっすらと聞こえてくる。

「あー、びっくりしたか?うちの食事は基本的にあの二人が取りに行くんだよ。俺はだいたい出遅れるから、いっつも食器用意担当だな」

 笑いながらそう教えてくれたファリーマさんは、部屋の隅にある棚からいそいそと食器を取り出していた。

「あ、俺達も手伝いますよ?」
「いやいや、客なんだからのんびり待っててくれ」

 俺の申し出に、ファリーマさんはぶんぶんと首を振った。

「ファリーマ、良いのか?」
「ああ、むしろ変に手伝わせ方が…後が怖い」

 ルセフの反応が怖いからなーと小声でそう答えたファリーマさんは、食器を並べ終えると今度は魔導収納鞄からいそいそと飲み物を取り出し始めていた。いつもそうだと言うだけあって、慣れた様子で準備を進めている。

 ここはお言葉に甘えておこうかな。

「ね、アキトみてみてー!ほら、すっごく美味しそうだよ!」

 先に部屋まで帰ってきたのはブレイズだった。ニコニコとそれはもう嬉しそうに笑いながら俺に見せてくるのは、チーズをたっぷりとかけて焼いてある色とりどりの野菜のグリルと、こんがりと焼き色のついた大きな塊肉だった。

 これはもしかしてローストビーフみたいに切り分けるのかな。木製の板の上に乗せられた肉の横には、切れ味の鋭そうなナイフまで載っている。

「わー本当だー!すっっっごく美味しそう!」
「ああ、見事だな!」

 うん、これは一目みたら、一瞬でテンションがぐんっと上がっちゃう料理だよね。しかも肉好きのハルがかなり嬉しそうに食いついてる。

「おまえらーこっちのスープも美味そうだぞー」

 そう言ってウォルターさんがわざわざ蓋を開いてくれた鍋を覗き込めば、湯気がふわりとただよう真っ白なシチューがたっぷりと入っていた。具材もゴロゴロと入っていて本当に美味しそうだ。

「うわぁ、これも美味しそう!」

 思わず叫んだ俺の反応に、二人の後ろから歩いてきていたルセフさんは嬉しそうに笑ってくれた。

「あとはサラダとパンもあるぞ」

 大きなお皿を両手に持っていたルセフさんは、テーブルに並べながら続けた。

「ハル、アキト、おまたせ。簡単なもので悪いが食べていってくれ。さっきは浄化魔法ありがとうな」

 テーブルの上に並んだ手料理はどれも見事な出来栄えで、どこに出しても恥ずかしくないぐらいの美味しそうさなんだけど――一体どのあたりが簡単なものなんだろう。料理が得意じゃない俺からしたら、信じられないぐらいの手がこんだものに見えるんだけどな。

 こっちの世界には俺の世界みたいに謙遜なんて文化は無いらしいから、きっとルセフさんは本気でそう言ってるんだろうな。

「料理が得意じゃない俺からしたら、感動するぐらいの料理ですよ!すごく美味しそうです」

 ルセフさんは俺の反応に一瞬だけ目を見張ったけれど、次の瞬間にはふわりと優しい笑みを浮かべた。

「そうか?ありがとうな」

 ルセフさんが作ってくれた料理は、どれも文句なしに美味しかった。そんな料理を楽しみながら、仲の良いメンバーとわいわいと盛り上がるのは本当に楽しい時間だった。

 最近行った採取地とか、受けた依頼の話、手に入れた素材の話、見つけた掘り出し物のお店の話と話題は尽きなかった。

 食事のお礼にしようと珍しい果物を取り出している時に、ルセフさんに切り出されるまで何のためにここに来たのか忘れてたくらいだからね。

「それで何の話しだったんだ…?」
「「あ…」」
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