生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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747.賑やかな反応

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 楽し気なファリーマさんの声に反応してか、固まってたウォルターさん、ルセフさん、ブレイズの三人もようやく動き出してくれた。

「はー…びっくりした…すげぇな、アキトの浄化魔法!」

 笑顔で近づいてきたウォルターさんは、そう言いながら俺の髪をぐしゃぐしゃと乱暴にかき混ぜた。明らかにワンコとかにする撫で方なんだけど、不思議とウォルターさんにされると嫌じゃないんだよな。

 褒められてるーって感じがすごくする。なんでだろうなーブレイズじゃないけど、お兄ちゃんっぽさがあるからなのかな?

「えと、ありがとうございます」

 照れつつもなんとかそう返せば、今度はルセフさんが近づいてきた。

「ウォルター、アキトの髪がぐちゃぐちゃになってるじゃないか」
「ああ、悪ぃ。感動してついな」

 ウォルターさんは軽く謝ると、そっと両手をあげた。まったくお前はと苦笑しながら、ルセフさんは俺の髪を優しく整えるように撫でてくれた。

「まあその反応も仕方ないとは思うけどな…俺も本当にびっくりしたよ。でも、アキトのおかげで一気にすっきりした。ありがとうな、アキト」

 ルセフさんの誉め言葉は、なんだかすごく説得力があるんだよね。さすがこのパーティーのリーダーって感じがする。

「いえ、役立てたなら良かったです」
「すごくありがたいよ。ちゃんと礼になるかは分からないが、俺も全力で腕を振るうからな」

 そう言って爽やかに笑ったルセフさんは、俺は厨房に行ってくるから二人の案内は頼んだぞと手を振って去って行った。さっと魔導収納鞄だけ拾っていったから、今から料理の用意をしてくれるんだろうな。

 ルセフさんの作ってくれる料理に思いを馳せていると、不意に叫び声があがった。

「あーっ!」

 あまりに不意打ちで響いた大声に、俺はビクッと身体を揺らしてしまった。元気いっぱいの声で叫んだのはブレイズだ。

「なんだよ、ブレイズ!急に叫ぶな!」

 間髪いれずに叫び返したウォルターさんに、ブレイズはえ?と首を傾げた。 

「でも、ウォルター兄ちゃんも叫んでるよ?」
「誰がお前の兄ちゃんだ!―――じゃなくて、ブレイズ、さっきなんで急に叫んだんだ?」

 いつも通りのやりとりをしてるなーとハルと二人で和みながら見つめていたんだけど、不意にウォルターさんが不思議そうに尋ねた。

「これ!見て!」

 興奮状態のブレイズが指差したのは、皆の装備が並んだ備え付けの棚だった。

「これアキトだよね!?装備まで一緒に綺麗にしてくれたの?」
「あ、うん」
「すごいすごいー!」

 力いっぱい褒めてくれるブレイズの明るい笑顔に、俺までついつい笑顔になってしまう。ここまで喜んでくれるなら、いくらでも浄化魔法ぐらいかけるよと言いたくなるね。

「え、待ってくれ、アキト。さっきのあの一回で俺達四人だけじゃなくて俺達の装備まで浄化したのか…?」

 ずっとブツブツ言いながら自分の浄化魔法の改良案を考えていたファリーマさんも、今は驚いた顔で俺の方を見つめている。

「はい。えっと装備も綺麗にした方が良いかなーとおもって」

 何とかそう答えれば、ファリーマさんは装備を置いた棚の方へとふらふらと近づいていった。ブレイズはそんなファリーマさんをさっと避けると、楽し気に笑いながら俺とハルの隣へと戻ってくる。

「きっと大騒ぎになるよ」

 ブレイズの言葉にえ?と思う間も無かった。

「うわー、本当にすっごく綺麗になってる!えー感覚派だとしても、一体どうやって想像したらこんな事になるんだ?信じられない…俺、アキトに弟子入りさせて欲しいぐらいだよ」

 えっと、なんか急に弟子入りしたいとか言い出してるんですが。俺は師匠みたいに弟子を取ったりできるほど偉い人じゃないから無理です。

 思わず心の中で即答しながらそっと視線を動かせば、ハルもブレイズもただ楽し気に笑っているだけだった。

 あーうん、やっぱりファリーマさんのあれは、本気で言ってるってわけじゃないよね。あれはただの冗談だって、きっとそういう事だよね。

「は…?おいおい」

 ファリーマさんの背後から棚を覗き込んでいたウォルターさんは、不意にそう声をあげた。

 あーそういえばウォルターさんは、自分の装備の手入れを野営中でもちゃんとする人なんだよね。一緒に野営の番をした時に、そう話してくれたのを今急に思い出した。

 もしかして何かこだわりがあって、気に入らない所でもあったかな。そう思った次の瞬間、ウォルターさんは真剣な顔で呟いた。

「嘘だろう!?これ、鎧のつなぎ目にちょっとだけ挟まってた砂まで無くなってるぞ!」

 絶対にここの手入れは面倒だろうなと思ってたんだよと、ウォルターさんは力強く叫んだ。

「おい、ファリーマ、このレベルの浄化魔法使えるようになってくれ!」
「俺だってなれるもんならなりたいわ!」

 もう収拾がつかないなと思って荒ぶる二人をぼんやりと眺めていると、厨房からルセフさんが戻ってきた。

「こら、お前ら!いつまでお客さんを玄関にいさせる気だ?」
「「ごめんなさい」」
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