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746.俺の浄化魔法

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 俺を止める素振りすら見せなかったハルに、慌てたのは話を振ったルセフさんだ。

「待て待て、ハル、そこはちゃんと止めてくれよ」
「いやぁ、まあ止めても良いんだが…」
「良いんだが…?」
「アキトの浄化魔法のすごさを、お前らにも味わって欲しいって気持ちがあるからついな」

 楽し気に笑ってそう続けたハルの言葉に、俺はゆるりと首を傾げた。俺の浄化魔法のすごさって何だろう。別に普通の浄化魔法だと思うんだけどな。

「そんな理由かよ!アキトが疲れても良いのか!?」
「え、でも、浄化魔法ならそんなに疲れないから、そんなに心配してもらわなくても大丈夫ですよ。それに俺、今日は魔法も使ってないですし…」

 ルセフさんはやっぱり優しいよね。俺の事をすごく心配してくれてるのが伝わってくる。でも本当に今日は魔法は使ってない日だから、別に問題は無いんですよと自己主張をしておいた。

 なんなら皆の身体にかけた後で装備にもかけましょうかと提案しようかと思ったんだけど、俺が口を開く前にウォルターさんが叫んだ。

「は!?待ってくれ。浄化魔法ってかなり疲れる魔法なんだよな?」
「え、うん。かなり疲れるよ」

 明らかに戸惑っているファリーマさんの反応に、俺はもう一度首を傾げた。浄化魔法が疲れる魔法…?カルツさんに教わって初めて使った時から今まで、そんな事一度も思った事がないな。

「疲れないですけど」
「あー…俺から説明するけどな、アキトは綺麗好きというか…とにかく頻繁に浄化魔法を使ってるから制御がかなり上手いんだよ」
「え、そうなの?」

 思わずそう聞き返したら、ウォルターさんがお前が聞くのかよと叫んだ。

 だって本当に驚いたんだよ。まあ確かに歯磨き代わり、洗顔代わり、洗濯代わり、ホコリ落とし、部屋の掃除に、お風呂代わりにも使ってるけど…。あれ、俺浄化魔法使いすぎかな。

「ああ、俺が見てきた中で一番浄化魔法が上手いのは、アキトだと思うよ?」
「ハルが見てきた中でって事は…もしかして騎士団も含めてか?」

 ルセフさんの質問に、ハルは即座に頷いた。

「そうだな。辺境領とトライプールの騎士団を含めても、間違いなくアキトが一番だ」

 えっと、そこまで持ち上げられると、この後で魔法を使い難くなるんだけど。そう思ったけど、いまさらやっぱりやめときますとも言えないよね。

「アキト、ハル。もう昼食は食べたか?」

 不意にルセフさんが尋ねてきた予想外の質問に、俺とハルはフルフルと首を振った。

「そうか…それじゃあ俺達四人への浄化魔法をかけてくれたら、昼食は俺が用意するってのはどうだ?」

 ニヤリと笑ったルセフさんの提案に、俺は元気に手をあげて答えた。

「それでお願いします!」
「おい、飯に釣られて良いのか?」
「ルセフさんの料理、本当に美味しかったですからね!俺の方が得な取引だと思います!」

 ハルと一緒にルセフさんの手料理が食べられるなら、それは俺にとってはすごく嬉しい事だ。

「うわーちょっと元気出てきた!!アキト、頼んだぞー!」

 どこまでも魔法が大好きなファリーマさんは、嬉しそうに笑って立ち上がった。

「俺も楽しみ!」

 ブレイズはキラキラと目を輝かせて俺を見つめてくる。

「よっし、じゃあ行きます!」

 俺はすぐに魔力を練り上げると、四人の身体と棚にある装備の方にも浄化魔法をかけた。土魔法のつぶてを複数操れるようになってから、浄化魔法も同時にいくつか発動できるようになったんだよね。

「はい、終わりました!」

 笑顔で四人にそう声をかけたけど、四人は何も言わずに固まってしまったままだった。

 あれ?

「ハル…何かまずかった?」
「いや、ちょっと四人に時間をやってくれ…もうすぐまた動き出すからな」

 苦笑しながらのハルの言葉通り、数十秒の沈黙の後四人はびっくり顔で俺を見つめてきた。あ、四人じゃないや。三人がびっくり顔で、一人はキラキラした目をしながらすごい勢いで俺に近づいてきてたよ。

「アキト、すごいな!しかもこれ!汚れを落とすとかじゃなくて服も髪も綺麗になってないか!?」
「え、うん、そう想像しながらやってるから」
「うわーそうか、感覚派だから余計に浄化の質が良いのか!」

 すっかり元気になったらしいファリーマさんは、俺の浄化魔法ももしかしてまだまだ改良の余地があるのではと騒いでいる。俺の浄化魔法に体力回復効果とかは無い筈なんだけどな。

 さすが魔法大好きなファリーマさんだ。
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