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719.【ハル視点】誘惑には誘惑を
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「アキトが誘惑しながら脱いでいくのを見るのは、結構嬉しかったな」
そう告げれば、アキトは不思議そうにパチパチと何度か瞬きを繰り返した。
「え……?ハルは、嬉しかった…の?」
ゆるく首を傾げたアキトは、もしかして聞き間違いかなと言いたげな表情で恐る恐る俺に確認してきた。もちろんアキトを相手に、俺が嘘なんて口にするわけがない。
俺はにっこりと笑みを浮かべて、すぐにコクリと頷いた。
「うん。酔っていたとはいえ、アキトが俺を誘惑しようとしてくれたのが嬉しかったんだ」
さすがに他の人がいる場所であんな誘惑の仕方をされていたら、俺も冷静ではいられなかった。たぶん叱ってから、立ち上がれなくなるぐらい全力で抱きつぶしただろう。
でもアキトはレーブンやローガンがいる部屋で眠っていた時は、ただ普通に寝ているだけだった。それが俺と二人きりになるなり、突然全力で誘惑されたわけだ。
つまり例え酔っていても、アキトが俺を特別な存在だと認識してくれているという事でもある。
酔うと本性や本音が出るものだが、アキトはそんな状態でも俺だけを誘惑してくれた。そんなの嬉しいに決まっているだろう。
俺の説明を聞いてもゆるりと首を傾げたままのアキトは、まだ全然納得できずにいるみたいだ。この説明じゃ駄目みたいだな。
俺は苦笑しながらも言葉を変えて続けてみた。
「あー、嬉しいと言うよりも楽しい…かな?」
嬉しいが通じないなら、楽しいならどうだろう。
そうあれは間違いなく楽しい時間だった。もちろんかなり驚きはしたし動揺もしたけれど、今となっては良いものを見たなとさえ思える。
滅多にみせない、アキトからの誘惑なんだからな。
「えっと、嬉しいもよく分からないけど、楽しくは…ないんじゃないかな?」
「…うーん、言葉だけじゃ分かってもらえないか」
一体どうすればアキトは納得してくれるんだろうと考えていた俺は、そこで不意にひらめいてしまった。
自分の伴侶候補が全力で誘惑してくれるという楽しさを、アキトも経験してみれば良いんじゃないのか。
うん、これはなかなかの名案だな。
「あ、それじゃあ、アキトも見てみたら分かるかな?」
まあ俺に誘惑されてくれるかなというほんのすこしの好奇心と、一体どんな反応をしてくれるのかなという興味もあったんだけどな。
あまりに唐突な俺の言葉に、アキトは大きく目を見開いたまま固まってしまった。明らかに混乱しているみたいで申し訳なくなるけれど、そんなアキトも可愛いんだよな。
ごめんねと心の中でだけ囁いて、俺は触れたままだったアキトの頬からそっと手を離した。そのままベッドの方へと歩き出せば、アキトの視線だけがしっかりと追ってくるのを背中で感じる。
とりあえず絶対に見たくないとまでは思われていないみたいだな。それなら俺にできるのは全力での誘惑だけだろう。
ベッドの横まで辿り着くと、俺はくるりとアキトの方へと身体ごと向き直った。
「ハル…?」
小さな声でぎこちなく名前を呼んでくれたアキトに、俺は笑みを浮かべた。
「アキト、ちゃんと見ててね」
小さな声でそう告げた俺は、まっすぐにアキトの目を見つめながら少しだけ開いていた自分の服の胸元をくいっと指先で開いてみせた。
アキトの昨夜の脱ぎ方を脳内で思い浮かべながら、流れるように手を動かしていく。このゆったりとした動きにも煽られたから、しっかりと再現しないとな。
見せつけるようにゆっくりと、シャツのボタンを一つずつ外していく。普段の脱ぎ方とは違う見る人の視線を意識したこの脱ぎ方は、予想していたよりもかなり難しかった。
面倒くさいと思ってもおかしくないぐらいの難易度だが、耳まで真っ赤に染めたアキトが本気で見入ってくれているのが分かるから止めたくはないんだよな。
ちらりと視線を向ければ、アキトはきちんと俺を見つめてくれていた。
――そのまま見てて。俺の全力で誘惑してみせるから。
アキトの視線を浴びながら、俺はスルリと上の服を脱ぎ落とした。
今までで一番と言うぐらい真っ赤になったアキトの可愛らしい反応に、嬉しくなってしまう。ちゃんと誘惑されてくれてるみたいだな。
よし、次はこっちだなと、俺は下半身にゆっくりと手を伸ばした。
そう告げれば、アキトは不思議そうにパチパチと何度か瞬きを繰り返した。
「え……?ハルは、嬉しかった…の?」
ゆるく首を傾げたアキトは、もしかして聞き間違いかなと言いたげな表情で恐る恐る俺に確認してきた。もちろんアキトを相手に、俺が嘘なんて口にするわけがない。
俺はにっこりと笑みを浮かべて、すぐにコクリと頷いた。
「うん。酔っていたとはいえ、アキトが俺を誘惑しようとしてくれたのが嬉しかったんだ」
さすがに他の人がいる場所であんな誘惑の仕方をされていたら、俺も冷静ではいられなかった。たぶん叱ってから、立ち上がれなくなるぐらい全力で抱きつぶしただろう。
でもアキトはレーブンやローガンがいる部屋で眠っていた時は、ただ普通に寝ているだけだった。それが俺と二人きりになるなり、突然全力で誘惑されたわけだ。
つまり例え酔っていても、アキトが俺を特別な存在だと認識してくれているという事でもある。
酔うと本性や本音が出るものだが、アキトはそんな状態でも俺だけを誘惑してくれた。そんなの嬉しいに決まっているだろう。
俺の説明を聞いてもゆるりと首を傾げたままのアキトは、まだ全然納得できずにいるみたいだ。この説明じゃ駄目みたいだな。
俺は苦笑しながらも言葉を変えて続けてみた。
「あー、嬉しいと言うよりも楽しい…かな?」
嬉しいが通じないなら、楽しいならどうだろう。
そうあれは間違いなく楽しい時間だった。もちろんかなり驚きはしたし動揺もしたけれど、今となっては良いものを見たなとさえ思える。
滅多にみせない、アキトからの誘惑なんだからな。
「えっと、嬉しいもよく分からないけど、楽しくは…ないんじゃないかな?」
「…うーん、言葉だけじゃ分かってもらえないか」
一体どうすればアキトは納得してくれるんだろうと考えていた俺は、そこで不意にひらめいてしまった。
自分の伴侶候補が全力で誘惑してくれるという楽しさを、アキトも経験してみれば良いんじゃないのか。
うん、これはなかなかの名案だな。
「あ、それじゃあ、アキトも見てみたら分かるかな?」
まあ俺に誘惑されてくれるかなというほんのすこしの好奇心と、一体どんな反応をしてくれるのかなという興味もあったんだけどな。
あまりに唐突な俺の言葉に、アキトは大きく目を見開いたまま固まってしまった。明らかに混乱しているみたいで申し訳なくなるけれど、そんなアキトも可愛いんだよな。
ごめんねと心の中でだけ囁いて、俺は触れたままだったアキトの頬からそっと手を離した。そのままベッドの方へと歩き出せば、アキトの視線だけがしっかりと追ってくるのを背中で感じる。
とりあえず絶対に見たくないとまでは思われていないみたいだな。それなら俺にできるのは全力での誘惑だけだろう。
ベッドの横まで辿り着くと、俺はくるりとアキトの方へと身体ごと向き直った。
「ハル…?」
小さな声でぎこちなく名前を呼んでくれたアキトに、俺は笑みを浮かべた。
「アキト、ちゃんと見ててね」
小さな声でそう告げた俺は、まっすぐにアキトの目を見つめながら少しだけ開いていた自分の服の胸元をくいっと指先で開いてみせた。
アキトの昨夜の脱ぎ方を脳内で思い浮かべながら、流れるように手を動かしていく。このゆったりとした動きにも煽られたから、しっかりと再現しないとな。
見せつけるようにゆっくりと、シャツのボタンを一つずつ外していく。普段の脱ぎ方とは違う見る人の視線を意識したこの脱ぎ方は、予想していたよりもかなり難しかった。
面倒くさいと思ってもおかしくないぐらいの難易度だが、耳まで真っ赤に染めたアキトが本気で見入ってくれているのが分かるから止めたくはないんだよな。
ちらりと視線を向ければ、アキトはきちんと俺を見つめてくれていた。
――そのまま見てて。俺の全力で誘惑してみせるから。
アキトの視線を浴びながら、俺はスルリと上の服を脱ぎ落とした。
今までで一番と言うぐらい真っ赤になったアキトの可愛らしい反応に、嬉しくなってしまう。ちゃんと誘惑されてくれてるみたいだな。
よし、次はこっちだなと、俺は下半身にゆっくりと手を伸ばした。
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