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710.三つのボタン※
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これがハルの履いてるパンツのボタンだとはっきりと意識しちゃったら、きっともう動けなくなる。
そう考えた俺は、視線の先にあるボタンだけをじーっと見つめて作業にとりかかる事に決めた。それが一番良い方法だろうと、ボタンだけを見て必死になって指先を動かした。
自分が履いてる状態ならあんなに簡単につけたり外したりできるボタンなのに、他の人が着ているのを外すとなると不思議な事に一気に難易度が上がるのはなんでだろう。
角度が変わるから難しくなるのかな?それとも単純に俺が慣れてないから?あ、でももしかしたらボタンがどうこうとか慣れとかそういう話じゃなくて、俺が緊張してるせいって理由もあり得るかもな。
そんな事をつらつらと考えて現実逃避をしながらも、なんとか一つ目のボタンを外す事には成功した。
残すはあと二つだ。
もたもたと手間取っている俺に、ハルは特に何も言ってはこなかった。黙って俺の好きなようにさせてくれるみたいだけど、痛いほどの視線だけはずっと感じてる。
しかもハルの視線は明らかに俺の手元とかじゃなくて、俺の顔に固定されてるんだよね。ボタンと格闘してる俺の表情を、無言のままじーっと見つめてるのがよく分かる。
ただそっちを見る勇気は、いまの俺には無い。
だってもし今のハルの表情を見ちゃったら、絶対続きをやるどころじゃなくなると思うんだ。きっとハルは色気たっぷりの表情で、俺を見つめてると思うから。きっと色気にあてられてわーってなって、それこそ動けなくなる。
なんなら、そんなハルの姿を想像しただけでも結構動揺してるぐらいだし。
視線は気にしない。気にせずに慌てずに一つずつと何度も何度も自分に言い聞かせながら、もう一つのボタンを何とか攻略することに成功した。
ここまでくれば残りは後一つだけだ。頑張れ、俺。ゴールは近いぞ。
開いた隙間から見える下着も布地を押し上げている存在も、全て意識しないようにしながらもたもたとボタンを外す。
よし、全部外せたと思った瞬間、ハルの手が俺の髪をくしゃりと撫でた。
突然の優しいその触れ方に驚いて、思わず視線をあげてしまった。視界に飛び込んできたのは、俺の想像以上に蕩けた顔をしたハルだった。愛おしいと視線だけで伝えてくるようなそんな目なのに、その奥にはちらちらと欲望の炎が見え隠れてしている。
それは愛おしさと優しさと荒々しさの混ざった、見惚れてしまうほどの美しい目だった。
「あ…」
俺が咄嗟に出せたのはそんな言葉にもならない音だけだったけど、ハルはふふと口元を緩めた。
「頑張ってくれてありがとう、アキト」
そんな言葉と共に、俺の髪に埋まっていた手がまたゆっくりと動きだす。普段のハルは髪の上から撫でてくれる事が多いんだけど、今日はくしゃりくしゃりと髪をかき混ぜるような撫で方だ。
どんな撫でられ方でも、ハルからされる事なら嬉しいんだけど。
「俺が想像してた以上に、大事な人に脱がせてもらうのって嬉しいんだ…ね」
そう言ってふにゃりと笑ったハルの柔らかい笑みを見て、俺はもう一度気合を入れなおした。
ここまで来たんだから、最後までやり遂げるぞとハルの履いたパンツに震える手を伸ばす。この震えは決して怖いとかそういうのじゃなくて、緊張からくるものだ。
「まだ脱がせてくれるの?」
余裕たっぷりに笑って尋ねてくるハルからそっと視線を反らして、俺は一つ頷いてから動き出した。
両手でぐいっとハルの履いているパンツをずりおろせば、筋肉に覆われた両脚が一気に露わになった。
至近距離で目にしたハルの脚は、思わず見惚れてしまうほど綺麗な筋肉に覆われている。しなやかで実用的な、実用的な筋肉に覆われたそんな脚だ。
普段なら格好良いなとか、俺もこんな脚になりたいなとか思うんだけど、今日はすこし違っていた。
いつもとは視点が違うからか、太ももの内側辺りにうっすらと引きつれたような傷跡があるのに気が付いてしまった。
騎士兼、冒険者という職業柄なのか、それとも魔物や危険の多いこの世界では普通の事なのかまでは分からないけど、ハルの上半身には結構色んな所に傷がある。
ハルが今まで生き抜いてきた証みたいなものだから、痛くないのかなと気にはなったけど嫌だと思った事は無い。
ただパッと見た感じ下半身には傷が無いんだと思ってたから、ちょっとだけ驚いてしまった。まじまじと至近距離で脚を観察する事なんてそうそう無いもんな。
パンツの次はこれだよねと無意識のうちに下着に手を伸ばした俺は、その傷がなんとなく気になって仕方がなかった。
「あ、下着は普通に脱がせられるんだ?」
そんなハルの予想外だと言いたげな感想を聞いてから、ハルの服を全部脱がせられたんだとやっと気づいたぐらいの気の散り方だった。
そう考えた俺は、視線の先にあるボタンだけをじーっと見つめて作業にとりかかる事に決めた。それが一番良い方法だろうと、ボタンだけを見て必死になって指先を動かした。
自分が履いてる状態ならあんなに簡単につけたり外したりできるボタンなのに、他の人が着ているのを外すとなると不思議な事に一気に難易度が上がるのはなんでだろう。
角度が変わるから難しくなるのかな?それとも単純に俺が慣れてないから?あ、でももしかしたらボタンがどうこうとか慣れとかそういう話じゃなくて、俺が緊張してるせいって理由もあり得るかもな。
そんな事をつらつらと考えて現実逃避をしながらも、なんとか一つ目のボタンを外す事には成功した。
残すはあと二つだ。
もたもたと手間取っている俺に、ハルは特に何も言ってはこなかった。黙って俺の好きなようにさせてくれるみたいだけど、痛いほどの視線だけはずっと感じてる。
しかもハルの視線は明らかに俺の手元とかじゃなくて、俺の顔に固定されてるんだよね。ボタンと格闘してる俺の表情を、無言のままじーっと見つめてるのがよく分かる。
ただそっちを見る勇気は、いまの俺には無い。
だってもし今のハルの表情を見ちゃったら、絶対続きをやるどころじゃなくなると思うんだ。きっとハルは色気たっぷりの表情で、俺を見つめてると思うから。きっと色気にあてられてわーってなって、それこそ動けなくなる。
なんなら、そんなハルの姿を想像しただけでも結構動揺してるぐらいだし。
視線は気にしない。気にせずに慌てずに一つずつと何度も何度も自分に言い聞かせながら、もう一つのボタンを何とか攻略することに成功した。
ここまでくれば残りは後一つだけだ。頑張れ、俺。ゴールは近いぞ。
開いた隙間から見える下着も布地を押し上げている存在も、全て意識しないようにしながらもたもたとボタンを外す。
よし、全部外せたと思った瞬間、ハルの手が俺の髪をくしゃりと撫でた。
突然の優しいその触れ方に驚いて、思わず視線をあげてしまった。視界に飛び込んできたのは、俺の想像以上に蕩けた顔をしたハルだった。愛おしいと視線だけで伝えてくるようなそんな目なのに、その奥にはちらちらと欲望の炎が見え隠れてしている。
それは愛おしさと優しさと荒々しさの混ざった、見惚れてしまうほどの美しい目だった。
「あ…」
俺が咄嗟に出せたのはそんな言葉にもならない音だけだったけど、ハルはふふと口元を緩めた。
「頑張ってくれてありがとう、アキト」
そんな言葉と共に、俺の髪に埋まっていた手がまたゆっくりと動きだす。普段のハルは髪の上から撫でてくれる事が多いんだけど、今日はくしゃりくしゃりと髪をかき混ぜるような撫で方だ。
どんな撫でられ方でも、ハルからされる事なら嬉しいんだけど。
「俺が想像してた以上に、大事な人に脱がせてもらうのって嬉しいんだ…ね」
そう言ってふにゃりと笑ったハルの柔らかい笑みを見て、俺はもう一度気合を入れなおした。
ここまで来たんだから、最後までやり遂げるぞとハルの履いたパンツに震える手を伸ばす。この震えは決して怖いとかそういうのじゃなくて、緊張からくるものだ。
「まだ脱がせてくれるの?」
余裕たっぷりに笑って尋ねてくるハルからそっと視線を反らして、俺は一つ頷いてから動き出した。
両手でぐいっとハルの履いているパンツをずりおろせば、筋肉に覆われた両脚が一気に露わになった。
至近距離で目にしたハルの脚は、思わず見惚れてしまうほど綺麗な筋肉に覆われている。しなやかで実用的な、実用的な筋肉に覆われたそんな脚だ。
普段なら格好良いなとか、俺もこんな脚になりたいなとか思うんだけど、今日はすこし違っていた。
いつもとは視点が違うからか、太ももの内側辺りにうっすらと引きつれたような傷跡があるのに気が付いてしまった。
騎士兼、冒険者という職業柄なのか、それとも魔物や危険の多いこの世界では普通の事なのかまでは分からないけど、ハルの上半身には結構色んな所に傷がある。
ハルが今まで生き抜いてきた証みたいなものだから、痛くないのかなと気にはなったけど嫌だと思った事は無い。
ただパッと見た感じ下半身には傷が無いんだと思ってたから、ちょっとだけ驚いてしまった。まじまじと至近距離で脚を観察する事なんてそうそう無いもんな。
パンツの次はこれだよねと無意識のうちに下着に手を伸ばした俺は、その傷がなんとなく気になって仕方がなかった。
「あ、下着は普通に脱がせられるんだ?」
そんなハルの予想外だと言いたげな感想を聞いてから、ハルの服を全部脱がせられたんだとやっと気づいたぐらいの気の散り方だった。
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